わたしは、大阪都構想は、目的ではなく、政策実現(をやり易くする)のための手段であると捉えます。(大阪都構想を実現しても、そのことで大阪府民が良くなる訳ではなく、力を持った大阪府が、更に具体的な政策を実現することで、大阪府民は良くなるということのはずです。)
そうであれば、様々なものを壊し、市民にたくさんのリスクを負わせる(大阪都という)方法ではなく、目的とする具体的な政策を提示し、実現に取り組まれることを望みます。
その政策が大きいほど、他の自治体などにまたがり、交渉、協力を行っていく必要がありますが、それは必要な手順です。
必要な手順を避けるために、他の自治体を壊し、隷下に置こうとする(基礎自治体の財源を、府が握るというのは、そういうことです。)のは、政策実現の手順として、正道とは思いません。
交渉相手のトップが頑迷で自治体の代表として、正しい判断をしていないと思われる時もあるでしょう。その時は、その具体の政策こそを、選挙なりを通じて、市民そして府民に問えばよいことです。多くの政策について、わたしは支持をしたいと考えています。
大阪府・市再編の必要性として、何事にも大阪市との協議が必要となり、政策が進められないといったことを挙げていますが、2団体間程度の協議がまとめられない政策というのは、大目的は正しくても、実現の手法が雑で、一部のものに負担を押し付けているものの場合が、少なからず、あると思っています。その過程が、多少迂遠であっても、自治体間の協議や調整を通じて、一部のもののみが負担を負うような不備が、少なくなるような、丁寧な実現方法になることを望みます。
閉塞感が漂う時代には、集権的な政治手法の力強さは、人気を博しますが、それなりの弊害もあるからこそ、それぞれに権限を分割した、今の自治体のあり方があるのだと思います。
大阪府と大阪市は、常に角突き合わせているように言われることがあります。(実際には、お互いに行政の様々な場面で、一番密接なパートナーですから、ほとんどの場面で協調しています。角突き合わす関係となるのは、メディアに載るごく一部です。)
水道事業統合の交渉は、そのひとつの典型となったように思います。
当初、不足する水の相互融通で始まった交渉は、議論を進める中で、大阪府は、大阪市の水道事業を、大阪府主導の水道事業へ編入(実質は、市浄水事業の譲渡)することを求めました。大阪市は、当初、他市への水供給の自由を求めていましたが、大阪府の案に対抗する形で、大阪市主導で、大阪府下の水道供給事業を行う案を提出することとなりました。
こんなの衝突するのが当然じゃありませんか。大阪市が他市への水供給を求めることも、府のテリトリーに踏み込む要求で、配慮に欠けるものだと思います。
でも、大阪府の要求は、二重行政解消の名の下に、大阪市の事業や資産の譲渡を求めるだけで、大阪市に何のメリットもなく、(大阪市より、大阪府の水道のコストが高いため)大阪市民の水道料金は高くなる可能性があるというものです。こんなの、大阪市が了承したら、市民への裏切りです。
それで、双方が、相手が呑めないと分かってる提案を、協議の場でぶつけ合うだけで、その後は、進展しないことを理由として、政治力で、相手に要求を呑ませようとする様な交渉ばかりをしている訳です。
自治体間であれ、民間であれ、ゼロサムで要求や負担の押し付け合いの協議や交渉が不毛なのは当然です。協議や交渉は、きちんとWin-Winになるような提案を作ることで進展させるものです。
上記の水道事業でいえば、不足水量の相互供給や供給困難地域への代理供給などで、Win-Winとなる提案だったのです。そこから、将来的な水需要予想の共有や、浄水技術の相互供与、新規浄水場の共同建設などへ進めていけば、いくらでも建設的な関係は、作れたのです。
大阪都構想が、上記の水道事業交渉のような場で、大阪府の要求をそのまま呑ませるためにパワーが必要ということであれば、そこはきちんとした、交渉・協議をしてほしいと思いますし、大阪都構想そのものが、水道事業統合交渉のでっかい版にも、見えてしまいます。
と、こんな風に意見を上げても、大阪都構想は提案されるのでしょうから、次回は、大阪都構想の内容についての意見を整理してみます。
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