2010年06月14日

大阪都の都区は、東京23区のように豊かになるか(その3)

 前回の話は、大阪都の都区と東京23区の財政力を、歳出規模で比較しようとすると、東京23区では、東京都が本来「市」が行う業務の一部を行っていて、その規模が分からないため、うまく比較できないということでした。

 今回、比較のものさしにしようとするのは、都区になった際の税収などの自由に使える収入です。

 まず、市などの自治体においては、税収は、歳出の半分以下でしかありませんが、とても貴重です。
 なぜかといえば、法律で決められた事業や国の補助事業を行う場合でも、事業全体の何割かは、税収などその自治体の一般財源を充てる必要があるからです。逆にいえば、自治体は、基本となる税収があれば、国などからの交付金や補助金で割増をして、2倍〜3倍の規模の事業を行うことができる訳です。
 また、市などで独自に工夫して行う事業は、補助金などがありません。それだけに、税収などの一般財源にゆとりがないと、なかなかできないということもあります。

 大阪都移行後の都区の主な収入は、個人市民税です。地方交付税がどうなるか分かりませんが、一応、現在と同額あると想定します。これに、法人市民税と固定資産税の55%(東京都の配分率と同じにします。)を加えたものを、東京23区と比較してみます。(この財源を、国の補助金などを引っ張ってきて大きく使うか、独自事業に使うかは、それぞれの自治体の裁量ということです。)

 比較が成り立つ前提は、都政移行後の大阪府が、東京都と同じ業務範囲で、市の業務の一部を大阪府が行うことです。
 しかし、今までの報道記事などを見る限りでは、(大阪市の政令市権限を大阪府へという話はあっても、)一般市の業務を大阪府が行うとの情報は、あまりありません。逆に、府の業務を、都区の担当に振り向けたいという話もあります。その業務が、都区が望む業務であったとしても、財源も同時に移すのでなければ、都区は財政的には、東京23区より苦しくなります。
 つまり、東京23区より業務範囲が広いと思われる大阪都の都区は、東京23区より収入が多くて、やっと同じ豊かさになる訳です。

           収入     人口    1人当たり収入
大阪都11市    7600億円  546万人  14万円
東京都23区  1兆9800億円  848万人  23万円

収入の内訳は、大阪都11市は、個人市民税+地方交付税+2税の55%。
東京都23区は、税収+特別区財政調整交付金(2税の交付金)。東京都は、地方交付税は、不交付。

 収入額全体で差があるのは当然として、人口1人当たりで比べても、大阪都11市が14万円に対して、東京都23区は23万円と、大きな差があります。東京23区なみになるためには、大阪都11市の方が多くなければならないのに。

 ちなみに、大阪都11市が、東京23区並みの1人当たり収入23万円を達成するためには、あと5000億円ほど必要で、法人市民税・固定資産税の配分率を100%にしても、3000億円ほどしか増えません。

 大阪維新の会は、「都区は、東京都の特別区よりも、権限と財源を有する基礎自治体である。」としています。
 どのような尺度で、「東京都の特別区より財源を有する」というのかはよく分かりませんが、大阪都の都区が、東京都の特別区より、財源的に豊かというのは、相当に無理があるように思います。
posted by 結 at 00:17| Comment(0) | 基礎自治体業務 | 更新情報をチェックする

2010年06月23日

意思決定の一元化が、大切だったのでは?

 橋下知事が、大阪都構想を提案したのって、広域行政権限の多くで、大阪市域以内は大阪市の権限になるため、広域行政で何かしようとすると、大阪市との調整が必要になって、機動的に進めることができないって話だったと思うのです。
 ですから、橋下知事は、意思決定を一元的に行うことを、大切に考えているのだと思っています。

 ただ、気になるのは、その割には、知事が関係しない意思決定については、一元的な意思決定が行えるかについて、あまり頓着していないように見えることです。

 橋下知事は、府権限の市への移譲を、かなり大胆に打ち出しています。記憶に新しいものとしては、ひとつは、教職員の人事権を府北部5市町の広域連合へ移譲したこと。もう一つは、府の水道事業を、府下市町(大阪市を除く。)の共同事業として移譲したことです。

 市側も望むものであれば、権限の移譲はよいのですが、問題と思うのは、ひとつの市では権限・事業を受けられないため、いくつもの市町の共同事業として、移譲されることです。(府の権限って、多くは、一般規模のひとつの市では対応できないから府の権限にされているのであって、無理に市へ移譲しようとすると、複数市が共同で受けることになるのは、当然なのですが。)

 この場合、問題となりそうなのは、ひとつは、各市が持ち回りで事務局を行うような場合で、どの市も、自分の市の事務ほど積極的な対応をせず、ずるずると毎年、同じ事務を見直しもせず、繰り返すようなことになりがちなことです。

 もうひとつ、問題になりそうなこととしては、水道事業が典型ですが、府下市町の共同事業で水道事業を行うといっても、事業主体の実態は、旧府水道部です。各市から代表を出して、理事会を設け、その下で事業を行うといっても、理事会は、専門家集団である旧府水道部の形式的な承認機関にしかならない可能性が十分にあります。
 もし、わたしが摂津市民で、水道事業団の経営が非効率なために、水道料金が高くなっていると知ったとしましょう。摂津市役所へ抗議に行ったなら、それは水道事業団のことなので、こちらではどうにもならないという回答をするでしょう。そして、水道事業団へ抗議しようとすると、水道事業団は市民対応窓口はないので、各市の方へ行ってくれというのかもしれません。もし、無理に水道事業団へ押しかけても、事業は、きちんと効率的に行っていて、各市で構成される理事会にも、きちんと承認を貰っている。承認内容に不満があるなら、摂津市の方へ行ってくれという対応になるのでしょう。

 府の水道部であれば、府知事が明確な責任者となり、選挙民の信託の下に置かれます。
 これに対して、多数の市の共同事業となると、どこの市も明確な責任者とならず、けれども、形式的には各市の承認を受けているということになり、選挙民の意思と乖離した状態を生み出しやすいのです。何か問題があった時には、近畿整備局がダム事業を「いったい誰のためにやっているのか?」といった、もどかしさと、同じようなことになりかねません。

 このような話を出したのは、ひたすら府政批判ということではありません。
 大阪都構想は、都庁では意思決定の一元化が図られますが、都区レベル(特に、分割される大阪市、堺市。)では、都区間の共同事業が大量に生み出され、上記のような弊害が様々な場面で起こってくる可能性があるからです。
 この話は、次回の話にさせていただきます。
posted by 結 at 06:05| Comment(0) | 基礎自治体業務 | 更新情報をチェックする

2010年06月26日

大阪市が都区になると、今より市民の意思が反映しにくくなるかもしれないと思う理由

 前回、大阪都構想で分割される大阪市や堺市では、ひとつの市(都区)で行う場合と比較して、事務改善や市民の意思反映が難しい(いくつもの都区の)共同事業や事務が、大量発生するかもしれないと書きました。
 今回は、そう思う理由です。

 ひとつは、想像し易いと思いますが、現在の市域全体で行っている事業は、(大阪市の場合)8市(都区)に分割されても、事業を分割するのは、とても非効率なため、そのままの形態で8市の共同事業として行われることが、予想されます。府(都庁)の事業となる場合、このような共同事業化は避けられますが、検討状況についての報道を見ると、かなり府への移行は、限定的なようです。

 例としては、市バス事業です。大阪市が8市に分割されるからといって、営業範囲を都区毎に限定するように分割するというのでは、不便極まりないことになります。基本、今の営業路線を8市共同で行うと考えた方が妥当です。
 上水道も、浄水事業は府全体の共同事業に組み込まれるとして、給水事業は、8市共同で行う必要があります。下水道、ゴミ処理、消防・救急など、多分数え上げればきりがありません。
 病院事業のように、所在する市(都区)だけが管轄することにすると負担が大きくなりすぎる事業も、8市で負担を平均化するために、共同事業にする可能性は、十分あります。そうすると、美術館、博物館、大規模公園、高等学校、工業研究所、中央卸売市場など、様々な施設も、共同事業として、運営される可能性があります。

 それと、想像しにくいかもしれませんが、新市(都区)の区役所内の事務(例えば、住民票管理とか。)も、8市の共同事業になる可能性が、高いと考えています。
 何故かというと、今の自治体の事務って、その多くの部分で、システムが導入されています。大阪市でも、計算センターを置いて、多くの事務を、システムを使用しながら行っています。
 8市(都区)に分割されたからといって、計算センターを8つ作ったり、システムを8つに分割して、8倍の労力を掛けて、運用したり、修正したりするのは、無駄が多すぎるのです。(多分、共同運用してさえも、8都区化対応だけで、システム担当者は、システム修正の予算と労力に悲鳴を上げます。)そのため、8市に分割されても、今のシステムに修正を加えた上で、計算センターを共同運用すると考えられるのです。

 地方行政のシステムというものは、かなり事務のやり方を決めてしまいます。そのため、システムを共同運用するということは、事務処理マニュアルも、共有する必要が出てくるのです。こうなってくると、システムと直接関係しない申請書やパンフレットなどでも、共同発注した方が、手間を減らして、安く発注できますから、共通化しようと考えることは、十分にあり得ます。
 システム化って、規模の大きな事務ほど、導入されていますから、住民票管理、税、国民健康保険、福祉サービス、文書管理、職員の勤怠管理、給与事務などなど、こういった事務のシステム管理や事務処理マニュアルを8市の共同事業で行うとすると、その共同事業を行う部門は、解体したはずの市役所と見間違えるようなものになってしまいます。

 しかも、この共同事業を行う部門は、事務のやり方などについて、都区へ様々な指示を出してくるのに、建前としては各都区の事務を補助しているだけという立場で、市民に責任を負いません。そして、この共同事業を行う部門には、市民から選ばれた市長も市議会もありません。

 以前、8市分割のコストとして、今の大阪市の市役所でやっている仕事を、8つの新市でそれぞれで行う必要があるので、費用が8倍になると書きました。でも、その一部は、8市の共同事業として運用することで、そこまでの費用増は、避けられるのかもしれません。
 けれども、その替わりに、昔の市役所の幽霊のようなものに新市の区役所は統率されていて、その市役所の幽霊には、市民の意思を届けることができない。そんなもどかしい思いをする場面が、出てくることになるのかもしれません。
posted by 結 at 01:24| Comment(0) | 基礎自治体業務 | 更新情報をチェックする