2010年05月06日

大阪市を分割して市民生活がどうなるのか、なぜ訊かないのだろう?

 大阪都構想についての報道などを聞く中で、不思議なことがあります。
 大阪都構想は、大阪市を8つの新市(都区)に分割することを含んでいます。もし、大阪市が、市を8つに分割するプランを発表したとしたら、間違いなく、次のようなことが訊かれます。
 「市民生活には、どのような影響があるのか。このことで、分割後の市の行政サービスは、どのように改善されるのか。」
 「現在の基礎自治体としての行政サービスは、維持できるのか。」
 少なくとも一部報道にある、市(区)議会議員の数が増えるので給料をどうするかとか、新市(都区)の議場をどうするのかといったことよりも、大切なことのはずです。

 わたしが、報道されている内容や知事の発言を聞く限り、分割後の大阪市の新市(都区)の行政サービスをどのようにしていこうとか、どの点に問題があって、どのように解決していこうとか、あまり具体的に構想されていないように思えるのです。(というか、考えていないんじゃないかと。)

 大阪都構想自体は、太田知事時代からあった構想で、大阪府の役人さんが描いたものです。大阪府の役人さんにしてみれば、大阪府下の府の権限を、如何に統一的に行き渡らせるかには注意を払っても、分割して新たに作る市(都区)の具体的な基礎自治体業務を、どのようにしていくかなんて、興味もなければ、基礎自治体業務の具体的な内容も知りません。30万人都市の区割りをして、平均的な財源を割り当てれば、後は、新市長(区長)とそこに住む住民が、「自由に」どのような市にしたいか、考えてくれればいい。こんな発想であっても、不思議はありません。
 大阪市の現行行政サービスが維持されるか検討しているか以前に、大阪市の現行行政サービス自体を把握しているかが、疑問です。

 橋下知事が、単に役人的発想だけで、大阪都構想をぶち上げたとは思いませんが、これまでの発言から、基礎自治体業務に特に注意を払っているような発言は聞かれませんから、大阪府に集める権限の戦略的活用には色々構想を巡らせても、基礎自治体業務の具体内容に、踏み込んでいこうとするようには思えません。

 また、大阪維新の会のメンバーの方で、大阪都構想実現後は、元大阪市の新市長(区長)になって、基礎自治体行政を具体的にこうしていくといった発言も、今のところ、聞きません。

 もし大阪市が、自ら市の分割案を発表したとして、「分割後の新市(区)の行政サービスがどうなるかは、新市長と住民が自由に考えてもらえばいいので、具体的には考えていません。」なんて説明をしたとしたら、無責任だと集中豪雨のような非難を浴びるでしょうに。

 あまりにも情報は無さ過ぎるのですが、大阪市民であるわたし自身のことでもあるので、できる範囲だけでも、分割後の大阪市の基礎自治体業務がどうなるか、考えてみたいと思います。


・・・もし、この記事を気に入っていただけましたら、目次から、他の記事もどうぞ。
posted by 結 at 01:11| Comment(0) | 基礎自治体業務 | 更新情報をチェックする

2010年05月07日

大阪市を8市に分割するのは、改善になるのか(一般論)

 大阪市を8つの新市(都区)に分割した場合、市(区)が行う基礎自治体業務は、よくなるかどうか、考えてみます。
 今回は、1市役所+24区役所が、8市役所になると考えます。

 まず現在、大阪市でしている多くの業務、例えば、国民健康保険や福祉サービスの申請などですが、市役所と区役所の役割分担がどうなっているかです。
 区役所は、市民からの相談、申請書の受付・審査、申請を受理するかの決定・通知、必要があれば調査と、ほとんど全ての仕事をします。
 では、市役所は何をするのでしょうか。仕事のやり方や手順を決め、条例を作り、通達を区役所へ連絡します。仕事を行うための予算を取り、用紙やパンフレットなども作り、システムの運用や保守なども行います。
 市役所は、通達を出したり、予算を配ったりしてるので、なんか偉そうなのですが、実際は、区役所がひたすら市民に向かって仕事ができるように、それ以外の雑事を引き受けてバックアップをしてると思った方が近いです。

 これが8つの市役所に変わると、24区役所が8市役所になる訳ですから、
○市民にとって、申請や相談の窓口が遠くなります。
○ひとつの市役所で扱う件数が増えますから、申請や相談に行っても、落ち着いて相談とかをしにくくなりますし、市役所の側も、ひとつの窓口で沢山の相談・申請をこなすことが必要ですから、丁寧な対応が難しくなります。
○市役所でやってた仕事は、8つの市役所へ分かれても、同じことをしなければなりませんから、8倍になります。
○印刷物やシステムで、スケールメリットが働かなくなるので、単価が上がりますし、システムを8つ運用するのは、果てしなく、無駄です。

 こうして挙げてみると、悪いことばかりしか出てきませんが、(今の大阪市役所にダメな点もいろいろあるにしても)ある程度、効率的に機能するように作った組織を、ぶった切って窓口を減らしてしまうのですから、どうしてもこうなります。

 ちなみに、大阪市役所が8つに分かれることを、八重行政になるという人は、なぜかいません。
 なぜでしょう???


・・・もし、この記事を気に入っていただけましたら、目次から、他の記事もどうぞ。
posted by 結 at 03:00| Comment(0) | 基礎自治体業務 | 更新情報をチェックする

2010年05月10日

大阪市を分割して、8市長を置くことは改善か?

 大阪市の分割と関連して、橋下知事は、区長公選制と区長の権限強化を主張されているようです。

 橋下知事のいう都区=特別区は、一般の市に準ずる存在(一般の市長より少し権限が少ない。)といわれてますから、大阪市を分割して、8つの新市(都区)を作れば、それぞれ市長(区長)を選挙で選ぶのは当然ですし、市長(区長)が大阪市の中の行政区の長より権限を持つのは当然です。
 色々な言い方をしても、大阪市を8つの市に分割したらいいと言っている訳です。

 それでは、分割して小さくなった市の市長は、今までの大阪市の市長よりも、より良い市民サービスを提供できるのでしょうか。
 現状と比較できるように、まず3つの前提を置きます。

前提1 今ある24区役所を存続させ、市民との関係構築を区役所が補助する。図書館、保健所、区民ホールなど、これまで24区に整備してきた施設は、24のまま存続させる。

 今まで大阪市長が24区役所通して行ってきた住民対応を、1市長が3区を担当するだけとはいえ、区役所を無くして今までどおりの住民対応ができるかは、意見が分かれてしまうと思います。
 また、24区が8市になって、窓口が遠くなったり、図書館や区民ホールが減った状態で、市民サービスを比較するといっても無理と思われるので、この前提を置きます。

前提2 前提1のために必要となる、それなりのコスト増は、マイナスと評価しない。

大阪市役所の業務を8市役所でしたり、市を小さくしてスケールメリットを失うことは、何割かのコスト増になると思いますが、それを市長の手腕として比較するのは、適当ではないからです。

前提3 8つの新市には、現在の大阪市長と同等以上の資質と能力を持つ市長が確保される。

市の数が増えると市長の質が下がるなどと考えると、比較にならないため。また、その位は、人材がいると信じたいです。


 これだけの前提を置くと、理論的には、小さくなった8つの新市の市長は、今の大阪市長より、良い市民サービスを提供できると思います。

 理由としては、
(1) 24区全体より、3区に絞った方が目が行き届き易い。
(2) 24区に提供する市民サービスより、3区に絞った方が、より地域のニーズにフィットした市民サービスを提供できる。
 などが考えられます。

 ただ、もうひとつ考えておかなければいけないのは、より良くなるとして、それが「どの程度か?」ということです。
 市が小さくなったからといって、予算不足でできなかった市民サービスができるようになる訳ではないからです。

 「気がついてさえもらえれば、すぐにも改善されるのに。」と「24区で考えなければ、ここを減らして、ここを増やしたいのに。」というのが、期待される点です。
 様々な点でこういった期待される方は、大きなプラスを期待することになります。

 わたしは、24区が1市3区になったからといって、変えられる点が思いつかないので、あまりプラスになるようには思いません。


・・・もし、この記事を気に入っていただけましたら、目次から、他の記事もどうぞ。
posted by 結 at 01:07| Comment(0) | 基礎自治体業務 | 更新情報をチェックする
×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。