2010年08月29日

大阪市の税収って、多すぎないか?(その2)

 前回の話は、大阪市の税収は、多すぎるかもしれないけど、減税ってなかなかできないから、法律通り高い税金を払った分、しっかり行政サービスで返してもらうしかないということでした。

 ところで、大阪都構想に関連して、テレビでこんな発言を聞いたことがあります。
 「大阪市の税収は大きいけれど、大阪市がたまたまそこにあったことで、大きな税収を得ているだけだ。既得権を主張するようなことではない。大阪市の税収の大きすぎる分は、大阪府知事の下に集めて、大阪全体のために使った方がいい。」
 とんでもない話です。大阪市では、石油のように、税金が地下から湧き出てくるとでも、思っているのでしょうか。

 大阪市の税収が大きいっていうのは、どういうことか、都税化などで綱引きの対象となっている固定資産税を取り上げて、考えてみましょう。

 固定資産税は、地価や家屋の資産価値に、一定の税率で課税をするものです。大阪市で固定資産税の税収が大きいのは、地価が高く、農地や山林のような固定資産税をほとんど払わなくていい土地がほとんどないからです。
 固定資産税というと、資産を持ってるお金持ちの税金というイメージを持ちがちですが、そんなことはありません。ローンで買ったマンションでも、しっかり高い固定資産税を請求されますし、賃貸マンションや賃貸駐車場でも、家賃は、固定資産税を賄えるように設定されているので、大阪市内に住んでいる限り、高い地価に基づく、高い固定資産税をしっかりと負担しているのです。

 地価が高くて、高い固定資産税を払うからといって、その地域やそのマンションへの行政コストが高くかかっているという訳ではありません。
 そして、地価が高い地域に住むのが、みんなお金持ちということでもありません。
 結果、地価の高い場所のマンションに住んで、家賃の高い分を、家計を苦しみながらやりくりしてる市民がたくさんいて、地価が高いから、固定資産税はそれなりにたくさん集まって、市民一人当たりの税収が多いというだけのことです。

 だから、税収の多すぎる分を、税率を下げて市民に返すというのなら、大歓迎ですし、税収の多すぎる分を行政サービスを充実させることで、市民に還元するということでも、まあ、いいです。仕方ありません。(固定資産税など、市町村税って、そういうものです。)
 でも、大阪市の税収が多いから、市の行政サービスなんかほどほどにして、大阪府の広域行政に持って行ってしまってもいいだろうなんて話は、ありえないのです。

 大阪市民も、きちんと府税は、支払っています。府の広域行政は、それでやってください。それで足りないというのなら、大阪市民にだけ、過重に負担をさせるのではなく、府民全体で負担するように、府税をどうするかの検討をしてください。

 ちなみに、大阪府の税収は、都道府県の中でも、トップクラスですし、府民ひとり当たりに直しても、やっぱりトップクラスです。府民ひとり当たり税収でも、(一人当たり税収が他府県の3倍近くある東京都を除けば、)平均より2割程度上回っています。しかも、府税の還元割合の少ない大阪市民を除いて計算したら・・・・。

 大阪市の税収が多すぎるなら、大阪府の税収も十分に多すぎます。
posted by 結 at 11:19| Comment(0) | 財務 | 更新情報をチェックする

2010年09月23日

大阪市分割案は、府の増収策かもしれないの仮説

 少し長い前振りから入ります。
 このブログでは、地方行政・財政の話を扱いながら、地方交付税の話には、あまり触れてきませんでした。
 地方交付税制度とは、基準財政需要額(その自治体が最低必要な行政サービスを行うのに必要な予算額。すっごく細かい積み上げで計算します。)から、標準的な税収の75%を引いた額が国から交付されるという制度です。これによって、自治体は、必ず最低限の行政サービスを行う予算を持っていて、標準的な税収の25%+α(標準より税率を上げて、税収を得ている分など)を独自の行政サービスのために使えることになります。ただし、額面通り、全額くれないケースもあるので、過信は禁物です。
 大事な話なのに、今まで触れてこなかったのは、概要くらいは何となく分かっても、基準財政需要額の積み上げとかが、滅茶苦茶複雑で、大阪都構想などで状況が変わったとして、交付額がどうなるかとか、全然検討がつかないからです。
 でも、今回は、大阪都構想と地方交付税の話になります。

 最近、ツイッターで、大阪都構想について、2点興味深いお話を伺いました。(表現は、かなり編集しています。)
 ひとつは、大阪都案は、都と都区の業務を自由に分けられる点がメリットだが、デメリットとして交付税が減ってしまう。大阪市分割案では、(主に分割後の新市で)交付税が増えるメリットがあるということ。(記事末に、注あり)
 もうひとつは、大阪都構想は、大阪府の財政再建を解決するための分析と検討から始まった。ただ、今は財政再建は主目的からは外れて、更に大きな目的を目指している。でも、大阪府の財政が危機的という認識は、今もある。

 この話から、2つのことをイメージしました。
 ひとつは、大阪市分市案は、府の財政再建と矛盾しないのだろうかということです。
 単純に考えると、税収は増えないのに、大阪市の広域業務が府側で増えるので、財政的にはより苦しくなりそうです。でも、府の財政再建から始まった話なら、今は主目的から外れてても、府の財政再建と矛盾する案は、できるだけ避けたいはずです。
 それで、府の財政再建と矛盾しないと考える方法はないかということで、次のように考えました。
○大阪市の広域業務が、大阪府に移管されても、その分の交付税も大阪市から移転されるので、業務に見合った財源は確保される。
○大阪市の広域業務の移管は、市町村合併時と同じような統合効果が期待できるので、多少なりと経費を安く上げて、財源をひねり出せるかもしれない。
○橋下知事は、ちちんぷいぷい出演時に、広域業務で大阪府と大阪市を併せれば、職員をもっと減らすことができて、財源を生み出すことができると力説されていた。
○大阪市の広域業務の移管時に、職員の移管をできるだけ抑えれば、大阪府で大幅なリストラを行ったのと、実質的に同様の効果を挙げることができる。

 効果の規模は、以前の記事の試算で、大阪市の広域業務の割合を5%としました。多少の幅をみて、予算額の10%=1500億円とすると、効果は100億円〜300億円程度を想像します。
 また、財政再建が意識されているのだとしたら、大阪市民は、広域業務の移管で行政サービスが低下しないか、中身がどうなるか、十分注意は払った方がよいように思います。

 二つ目は、大阪市分割案がどうやって出てきたかを想像してみました。ただ、基準財政需要額がどのように動くとか、全く分からないので、以下は、全くのよた話です。

 大阪都構想では、府と各市を統合すると、府と各市をばらばらに計算した時より、基準財政需要額は小幅ですが小さくなります。(って、ことにしておいて。)逆に、都区に、基準財政需要額を基準として、予算措置をしようとすると、大阪市、堺市を分割したことから、各市をばらばらに計算した時より、基準財政需要額は、小幅ですが大きくなります。
 割合が小幅といっても、大阪府と11市の総予算は5兆円を超えますし、分割される大阪市・堺市の総予算も1兆8千億円になります。それぞれ、1%動くだけでも、500億円と200億円です。
 全体の基準財政需要額が減る中で、都区へ配分する基準財政需要額が増えますから、大阪府は、大幅な減収を抱え込むこととなります。

 大阪市から何千億円か、予算を移転できることを期待していたのに、大阪府の予算が大幅な減収になってしまうというのでは、目も当てられません。
 周辺9市、堺市と、順に外して再試算をしてみますが、元凶は大阪市の分割なので、思わしい結果が出ません。

 最終的に、大阪府と大阪市のみとなっていた大阪都案から、都区を市として独立させ、都区の財政調整措置を、国の交付税制度に任せることで、大阪府の使える交付税額の減収を防ぐ案が、大阪市分割案になったというのが、このお話です。
 橋下知事が、大阪市分割案を発表した時に、「法改正の必要がなく、(都区が直接)地方交付税を受けられるメリットがある」と話されたそうです。符合しませんか。

 まあ、全くのよた話で、細部はいろいろ矛盾があうはずですが、何故、大阪都構想(の都税制度導入)で、財源が潤うはずの大阪府が、いきなり大阪都構想で、減収に悩む話となってしまうのでしょうか?

 都税制度が語られるとき、唯一の例となるのは、東京都です。
 でも、東京都は、財源が法外に豊かで、地方交付税も、余裕で不交付団体です。そんな東京都だからこそ、都税制度で45%抜いても、基準財政需要額を十分満たす財源配分を行えるのです。
 対して、大阪府と大阪市は、共に地方交付税の交付を受けています。大阪府と大阪市が合併しても、大阪市を分割した都区へ、基準財政需要額に基づく予算配分をしようとすると、大阪市の予算が右から左へ行ってしまうだけで、抜きようがないのではということです。まして、分割で、需要額が膨らんでしまっては、手に負えなくなる。

 繰り返しますが、この話はよた話です。多分、いろいろとアラもあるに違いありません。ですから、他の記事でも、この話は、前提としません。
 それでも、こんな方向からの捉え方もあってもいいかなと、記事にしてみました。

 でも実際、大阪都構想を考える時、交付税がどうなるかって、重要なファクターのひとつのはずです。でも、このことについての議論って、わたしは聞いたことがありません。語れる材料を持っている人が、限られていて、その人が情報を出さないからなのでしょう。
 こういう重要なファクターについて語られぬまま、統一選挙に向かって時間だけが進んでいく、大阪都構想についての議論。このような状況を「残念」とは、最早いいません。このような状況を、わたしは「恐怖」します。

(注)
誤解があるといけないので、追記します。
「大阪市分割案では、(主に分割後の新市で)交付税が増えるメリットがあるということ。」と書きましたが、分割後新市の交付税が総額で増えるとは、技術上の誤差に近いもので、それで都区や新市が豊かになるといった「増える」ではないと考えます。市町村に平成の大合併があったのは、(三位一体改革による交付税全体の削減などもあり、)財政上、合併しないと市町村が立ち行かなくなったためです。市を分割した方が、財政上有利であれば、合併する市などありません。
ここでの話は、普通の市町村合併であれば、業務統合の効果の方が大きく問題にされない、小さな技術上の増減が、(統合される業務量が小さく、分割される業務量が大きな)大阪都構想では、間に挟まれる大阪府には、大きな問題になったのかもしれないということです。
ちなみに、分市後に交付税額が多い市とは、業務量が多いのに財源に乏しく、独自事業のための財源に乏しい市のことなので、行政サービスがどの程度低下するか、十分注意を払った方よい市ということになります。


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posted by 結 at 01:00| Comment(6) | 財務 | 更新情報をチェックする

2010年12月27日

二重行政が少しでもあるなら、大阪都にすべきなのか

 一回、間が空きましたが、堺市竹山市長の記事の続きです。
 堺市竹山市長は、「大阪都構想は、大阪府と大阪市の二重行政の一元化に意義がある。」「堺市にとって明らかなメリットがないと思う。府と大阪市の二重行政の弊害は堺市にはない。」と語っています。
 では、府と二重行政のある大阪市には明らかなメリットがあり、大阪都構想へ参加すべきなのでしょうか?大阪市民の立場で考えてみます。
 なお、これから数回の議論の多くが、これまでの記事の内容と重なりますが、ご容赦ください。

 まず、二重行政を解消しようとするのは何故なのでしょうか。わたしは、二重行政の無駄を無くして生まれてくる予算で、もっと行政サービスを充実させたいからと考えます。
 つまり、二重行政の無駄を解消して増やせる(わたしにとっての)行政サービスが、デメリットを上回るかということです。
 こういう議論をしようとすると、自治権の制限と行政サービスの向上のどちらを重視するかとか、二重行政の無駄の推定は十分に精度があるかとか、答えの出にくいところへ嵌ってしまいそうですが、この観点に限れば比較的容易に、答えを整理できると思います。
 わたしは、次の2点から、(府と大阪市に二重行政があったとしても)大阪市民に明らかなメリットはなく(というか、大きなデメリットがあり)、大阪市は大阪都へ参加しない方が妥当だと考えます。

 第1に、府・市の二重行政解消の効果より、大阪市を8都区へ分割するコストの方が大きいと考えるからです。
 府市の二重行政解消の効果とは、主に大阪市の広域行政の部門が大阪府と組織統合することで、経費を安くできる金額だと考えます。
 大阪市の広域部門の予算規模って、よく分からないのですが、このブログでは以前の記事での推定作業で、大阪市の年間予算1兆5千億円の約1割1500億円程度を想定します。(ちなみにこの額が3000億円でも、結論には影響しません。)
 統合効果としては、ざっくり5%〜20%程度でしょうか?ここでは、10%=年間150億円のコスト減になると考えることにします。

 大阪都構想では、大阪市の身近な行政を、大阪市を8〜9に分割した都区で、それぞれ独自に運営するとしています。
 身近な行政の予算規模は、ざっくり9千億円程度です。
 2つの組織を統合する場合の統合効果の割合より、組織を8〜9に分割した時のロスの割合の方が一般に大きいと考えられるので、広域の統合効果の割合10%に対して、身近な行政を8〜9に分割した時のロスの割合を20%と考えます。
(ちなみに、組織統合して10%の効果であれば、8分割時は、(8−1)×10%で、70%が理論値です。現実はなんとか抑え込んで30〜40%増し程度にするのではと想像するので、20%想定は過大とは考えていません。)
 9千億円に対する20%=年間1800億円のコスト増が発生すると考えられます。

 大変ざっくりとした想定ですが、広域と身近な行政で予算規模に差がありすぎ、率まで身近な行政の分割の方が大きいと考えられるので、この統合効果によるコスト減と分割ロスによるコスト増が逆転するとは考えにくいと思っています。

 第2に、大阪維新の会のタウンミーティングでは、身近な行政を扱う都区の予算は増えないと説明しているからです。(具体的に上げられている予算額は、現状の所要額をかなり下回ります。この点についての詳細は、別の記事で説明します。)
 都区の予算が増えないということは、二重行政解消で効果が出ても、そこで生み出される予算は、身近な行政の充実には一切充てられず、広域行政(橋下知事が述べられているのでは、主に大規模公共事業)へ充てられるということです。

 しかも、都区では(業務の分割によって)従来よりコスト増になりますが、その分の予算措置もされないということです。都区ではコスト削減の努力もされると思いますが、行政サービスの低下や廃止が行われることになります。
 身近な行政では、法律で決まっていて、止めることのできない業務がかなりの割合を占めます。どんなに困っても、住民票の管理や交付、選挙の実施などが止められるはずもありません。そのため、行政サービスは、住民要望などで行われる(独自の)行政サービスが大幅に影響を受けることになります。

 大阪市民として考えた場合、大規模公共事業など広域行政(ちなみに、道路や学校などの設置、修繕などは、都区の事業のようです。)は、多少拡充されるようですが、身近な行政が大幅に低下するようでは、望ましいとは思えません。

 つまり、二重行政によるコスト減よりも、身近な行政のコスト増の方が大幅に大きいと考えられること。コスト増の多くの部分(というか、全部)が、身近な行政へしわ寄せされると考えられること。から、府と大阪市に二重行政があったとしても、大阪市民にとっては、大阪市は大阪都へ参加しない方が妥当だと考えるのです。

追記
 二重行政の無駄は、現状でも全て大阪市民が負っており、もし解消させるなら、身近な行政の充実に充てるのでなければ、おかしいこと。二重行政の無駄の解消を目指すのであれば、大阪都構想よりも、大阪市による政令指定都市から一般市への移行の方が妥当性が高いことを、以前の記事「二重行政より二重負担」で議論しています。

 また、二重行政の例でよく挙げられる府市による競合施設の設置は、大阪都構想では本質的には解消できず、8都区の間で(ひとつずつの規模は小さくても)八重で無駄な競合施設が整備されるようになるだけということを、以前の記事「二重行政じゃなくて、無駄な競合施設」で議論しています。


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