2010年08月26日

都区が30万人の市なみの数百億円の予算を持つということの意味

 ちちんぷいぷいで、橋下知事は、次のような話をされました。
 生野区の予算は1億8千万円しかない。13万8千人規模の市であれば、380億円の予算を持っている。大阪都の都区は、(30万人規模の)市なみの何百億円単位の予算を持つ。大阪都構想は、まずそこからスタートしましょう。・・・と。

 少し前の記事のコメントでも書きましたが、1億8千万円というのは、生野区が独自に使える予算のことだと思います。この金額では、生野区役所の職員数約270人の人件費の1割にもなりませせん。区役所の業務が賄えないどころか、大阪市は独自事業を市域全体で行いますから、敬老パスや新婚家賃補助などの大阪市の独自事業の予算も、そこには含まれていません。
 対して、13万8千人規模の市の380億円の予算は、市のすべての仕事の予算だと思われます。生野区で言えば、区役所で行う仕事だけでなく、学校の建設や施設管理、図書館、消防署、(大阪市でいうと)保健所などの予算も、全部含んだものとなります。

 橋下知事は、大阪都の都区は、(30万人規模の)市なみの何百億円単位の予算を持つといいました。これが、現状の大阪市と比較して、どうなのか、整理をしたいと思います。

 まず、30万人規模の市なみの予算って、具体的にはいくら位なのでしょうか。
 大阪府下で、25万人台〜35万人台の市を探すと、次の4市でした。
高槻市 人口35万5千人  予算 965億円  税収508億円
吹田市 人口34万8千人  予算1043億円  税収653億円
茨木市 人口27万人    予算 727億円  税収457億円
八尾市 人口26万6千人  予算 834億円  税収411億円

 こいった数字を平均するのはあまり意味がありませんが、ちょうど30万人を挟んで、上下2市ずつなので、平均の数字を基準市の予算にしてみます。
平均  人口31万人    予算 892億円  税収507億円

 これに対して、大阪市は予算1兆5500億円 税収6700億円です。
 ただし、大阪市の予算には、政令指定都市の広域行政に関する予算も含んでいますから、都区の予算として比較しようとすると、広域行政部分を除く必要がありますが、そんな数字はありません。
 以前の記事で取り上げた、東京都の財政問題資料の中に、東京都が固定資産税など都税化した市税を広域行政に使う分と、一般の市の事務に使う分に分けた数字がありました。ここへ、特別区の税収+都税の配分額を加えて、東京23区内で、市民税や固定資産税などが、広域行政と一般の市の事務に、どのような比率で支出されているか、推計してみました。(推計の途中計算は、ややこしいので、コメント欄に掲載しています。)
 結果からいうと、広域行政への支出1412億円(5%)、一般の市の事務2兆1641億円(78%)、府県・市町村のどちらでもできる事務4659億円(17%)でした。
 どちらでもできる事務とは、地下鉄、東京港、首都高速道路、大気汚染対策、文化スポーツ施設、障害者施設、病院、公園、住宅、大学、高校などで、これをどちらに割り振るかは、とても難しいです。乱暴ですが半々に分けて、広域行政への支出を13.5%、一般の市の事務を86.5%と考えることにします。(本当は、78%〜95%のどこか程度に捉えるのがいいのですが。)

 大阪市の一般の市の事務の分として、予算などの86.5%分を計算すると、予算1兆3407億円、税収5795億円となります。この数字を8分の1にすると、1都区分は、予算1675億円、税収724億円となります。

 30万人規模の市なみの予算 推計892億円に対して、大阪市の現行予算から算出した1都区で必要となる予算は、推計1675億円。しかも、1675億円は、スケールメリットを失って単価が上がる分を含めていないので、この差は、更に大きくなります。

 大阪市の今の行政サービスをそのまま移行しようとすると、必要になる予算は推計1675億円以上。それに対して、橋下知事が、都区が持てるとした予算額は、推計892億円。
 相当な予算カットをしなければ、対応できないことになります。

 しかも、市にしろ都区にしろ、住民基本台帳の管理や選挙、学校、消防署の運営など、義務的業務の割合が大きいので、それ以外の都区の裁量で行う行政サービスから、特に大幅にカットする必要があります。(選ぶというより、何か残せるのでしょうか?)

 更に、都区への移行チームは、何とかして今の行政サービスを守ろうとするため、更に状況が悪くなると予想するのですが、これはまた、別の話です。
posted by 結 at 08:47| Comment(1) | 財務 | 更新情報をチェックする

2010年08月28日

大阪都移行前に、大幅リストラをしないとしたら

 前回、大阪市の今の行政サービスを移行しようとすると、(スケールメリットの喪失を考慮しなくても)1都区1675億円。それに対して、橋下知事がイメージとして提示した1都区の予算額は、約900億円というように、推計しました。
 多少、この900億円に積み増しするとしても、この差は大きすぎます。でも、今の行政サービス確保を前提に予算をつけてしまうと、(スケールメリットを失って費用がかさむこともあって)知事が使える市税収入が無くなってしまいます。

 この場合、900億円の予算に見合った行政水準に持っていく、真っ当な方法としては、大阪都への移行前に、@行政サービスの簡素化や削減を実施し、Aそのことで余剰になる職員のリストラを行うことです。
 けれども次の理由から、大阪都移行前に、大幅な職員のリストラはしないと考えています。(税金で実質的に給料を払っている職員の減に繋がらない、地下鉄民営化のような職員減はあるかもしれませんが。)

○市長選後、次の統一地方選挙まで、約3年半です。
 大阪都構想の実現の手順を整理すると、具体案作成−市議会・府議会での審議・決議−住民投票の実施−住民投票結果を持って、法律制定を国に要請−特別法の成立−大阪都への移行準備事務−大阪都政への移行 といったところでしょうか。*2011年3月の追記(住民投票は、特別法の国会での決議後の順番のようです。ただし、スケジュールがきつい事実は変わりません。)
 来年の統一地方選挙で、予定通り大勝できたとして、大阪都構想がより具体的になっていく4年後の選挙で、同じように勝てる前提では、考えないはずです。
 そうすると、市長選後、次の統一地方選挙までの3年半で、後戻りできない状態となる特別法の制定にまで、持ち込みたいはずです。けれども、国会審議なんて水物であることを考えれば、住民投票から特別法制定までの期間を最低1年間、できれば2年間取りたいはずなのです。
 そうすると、具体案の作成から、議会審議、住民投票までの期間は、かなりきつめのスケジュールになるはずです。
 そんなキツキツのスケジュールの中で、時間も労力もかかる職員のリストラなど行いたくもないでしょう。

○職員のリストラを推し進めるには、行政サービスの簡素化や削減を具体化しなければ、実効あるものにはなりません。けれども、行政サービスの簡素化や削減は、住民投票が終わるまでは、市民に提示したくはないでしょう。また、知事が行政サービスの簡素化や削減を指示したとするよりは、都区の代表が自発的に行ったような形を取りたいでしょう。

○大阪府自身、橋下知事は、財政再建案をまとめる中で、テレビで、人員削減はしたいが、やる方法がないと発言をされていました。現在に至るも、給与の一時カットは行いましたが、大幅な人員削減はされていません。
橋下知事は、大阪市に対して、職員数の多さを繰り返し批判されていますが、平松市長の人員の大幅削減の発表には、「本当にできるのか。」と疑念を示したのみで、対抗して、人員削減の表明を行うことはしませんでした。


 そして、大阪都移行前に、大幅な職員のリストラはしないとしても、都庁サイドとしては、あまり困らないのではないかとも、思います。
 次のように推移するのかなと、想像してしまったからです。

○都庁サイドとしては、過剰な人員を含めて、大阪市の職員が都区へ移管されれば、それで問題はなくなります。

○大阪都移行の準備期間におそらく作られると思われる、住民代表を含めた移行チーム(もしかすると、仮の区長選挙も行われているかもしれません。)は、現行行政サービスを維持する方向で、都区の体制を作るはずです。例え、900億円の予算が示されていたとしても、都区内に3つづつあるかもしれない、区役所、保健所、図書館、区民ホール、体育施設、消防署などの施設のうち、2つづつを廃止するような判断などできないのです。(特に、どこの区の施設が廃止になるかといった議論になると、なおさらです。)その他の行政サービスにしても、拡充要請はいくらでも出てきても、削る判断ができるとは思えません。
予算不足は、事前に予想されるかもしれませんが、「各都区が一丸となって、不足予算分の保証を行うよう、都庁へ要請する。」といった問題先送りに終始する可能性が高いと予想します。(特に、先に行政サービスを削る決定をしてしまうと、予算の増額も要請できないので、より現状確保になり易いのです。)

○都区が、現行の大阪市施設を維持し、現行の行政サービスを維持する方向で都区の体制を作るなら、今まで市役所で行ってきた業務を8つの区役所で行う必要もあり、人員は、今より多く必要ということになります。
さすがに、増員まではしないと思いますが、都庁は、人員の押し付けとかをしなくても、大阪市の職員を、都区へ移管させることができます。

○大阪都実施後、都庁は、都区へ一般的な30万人の市の予算900億円程度だけを与えます。
一般的な30万人の市を基準にすれば、過剰な人員と施設を抱えた都区は、すぐに財政的に行き詰ります。
それでも、都庁としては、「30万人規模として、適正な予算が持てるようにしている。それでちゃんとした行政ができないのは、都区の責任だ。」と言えば、いいわけです。

○勿論、都庁は、都区が行き詰ったことを放置したりはしません。都区に財政再建計画の作成を求め、それを支援するとして、多少だけ、予算配分を増やしたり、公債発行を認めるなどの支援を行うと思います。
ただ、都区に求められる再建計画は、大幅な人員のリストラと、大幅な行政サービスの切り捨てを行うことになります。過剰人員や過剰施設を抱える中での再建では、行政サービスの切り捨ては、一般的な30万人の市のレベルより、ずっと厳しいものになるはずです。もしかすると、「夕張市なみ」というのが、流行語になるかもしれません。
また、再建計画を確実に進めるためとして、都庁は都区に対して、財務課長と総務課長の出向受け入れなども、求めるのではと思います。

 この手順であっても、人員のリストラは強力に進められますし、都区が行う身近な行政サービスの簡素化も、十分達成されると思います。

 ただ、市民が不幸なだけです。
posted by 結 at 02:58| Comment(0) | 財務 | 更新情報をチェックする

2010年08月29日

大阪市の税収って、多すぎないか?(その1)

 ここ何回かの記事を読んでいただいた方で、「大阪市の行政サービスの予算って多すぎないか?」って思われた方って、いませんか。いえ、わたしもそう思いましたから。
 同じ30万人規模で比較しているのに、大阪府下4市平均の900億円に対して、大阪市1675億円(広域行政への支出を引かなければ、1940億)と、約2倍です。本来、同じ行政サービスの内容であれば、規模が大きくなる分、安上がりになるはずなのに。
 そして、予算規模が大きいということは、それだけ、税収が多いということです。

 だから、こんな風に思いませんか?「行政サービスは、もっと、他市並に簡素にして、その分、減税するなり、給付をするなりして、返して欲しいな。」とか。
 えぇ、わたしは、結構そう思います。

 でも、これには少し、難しい点が出てきます。
 まず、減税ですが、日本の地方自治制度では、法律で決められた税率からほとんど下げられないようになってます。だから、名古屋市で市民税を、ほんの少し下げただけで、大ニュースになったりするのです。法人市民税の超過税率を廃止するとかは、できなくないですが、そんな話をしてるんじゃないと思いますし。

 そこで、「減税ができないなら、給付で返してくれたらいい。」となる訳です。
 ひとつの例として、こども手当てに大阪市独自の上乗せをして、給付したらという方法があるかもしれません。でも、「こども手当てに上乗せ給付なんてするくらいなら、保育所をもっと増やして、誰でも入り易くしてくれる方がうれしい。」(=行政サービス提供)という意見が出てくるかもしれませんし、そのために、「保育所の新設を。」(=公共施設の整備)という意見も出てくるかもしれません。

 ただ、これらの給付などの話は、「大阪市の税収って、大きすぎるから、他市並に簡素にして市民に返してよ。」という問題の解決には、なりません。
 こども手当ての上乗せ(=給付)にしろ、保育所の定数拡大(=行政サービス提供)にしろ、保育所の新設(=公共施設の整備)にしろ、予算として支出している訳です。
 つまり、減税ができないなら、税収も予算も、減らしようがないのです。

 ただ、このことは、税収や予算が多いことが問題なのではないということも意味しています。法律に従って支払われた税金が、標準的と思う行政サービスに必要な額と比較して多すぎるなら、使われ方をしっかりと監視して、給付なり何なり、行政サービスとして市民に還元してくれれば、いいということですから。
posted by 結 at 02:07| Comment(0) | 財務 | 更新情報をチェックする
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