2010年05月04日

橋下知事の大阪市財政改革提案で気になること

 先日、橋下知事が「大阪市の」財政改革提案を行うという発表をしました。具体例としては、地下鉄民営化や森之宮ごみ焼却場建替え案の見直しが挙がったようです。
 大阪府も大阪市も、近年、財政非常事態宣言をしており、財政再建途上です。大阪市は、公表されている限りでは、改善の方向に向かっていて、財政健全化基準は大阪府より良いくらいなので、平松大阪市長が、橋下知事に「掟破りで、他市の財政状況に口出しするくらいなら、自分の府のことをしっかりしろ。」というのは、至極もっともです。
 ただ、橋下知事がなんでこんな反発を受けるだけと分かっている提案をしたのか、気になって調べてみました。

 調べてみると、大阪府、大阪市、その他10市の公債発行残高です。
(揃った資料が見つからなかったため、年度や決算値か速報値かなどバラバラです。大体くらいに思ってください。)
         一般会計    特別会計
大阪府     42100億円    7900億円
大阪市     28288億円   23349億円
その他10市   8788億円   10688億円
 地方財政で、兆単位の借金の話ということで、すごい数字です。

 この借金を、組織をガラガラポンした後に誰が背負うかというのは、それだけで大変な問題ですが、一番ありそうな、大阪府が大阪府の元の借金と各市の特別会計の借金を負い、新市(都区)は各市の一般会計の借金を負うと考えてみます。
 理由としては、市の特別会計は、府が集約化を目指す都市計画、港湾、交通、水道、下水道、病院など事業会計なので、事業を府が引き継ぐなら、事業会計の負債も引き継ぐのが普通だからです。(橋下知事なので、おいしいところ取りを狙っているかもしれませんが。)

 そうすると、気になる点が出てきます。
 ひとつは、大阪府がそれだけの負債を負いきれるかということです。大阪府の借金は、現在の5兆円から8兆4000億円になります。
 借金が増えるといっても、事業会計ですから、事業が黒字である限りは、府の税金で借金返済ということにはなりません。それでも、大阪市のあべの再開発事業のように1千億円単位の赤字を抱えている事業もあり、大阪府民が賛成できるのかは、微妙に感じます。

 橋下知事が大阪市財政改革提案で例を挙げたのは、この特別会計部分の借金減らしのようです。大阪市は、公債発行をしながら都市基盤整備をした結果、大きな行政資産を持っている訳ですが、「借金を整理した事業、資産だけを大阪府へ引き継げ。」と読むと、橋下知事が大阪市の財政改革を提案するのを、なるほどと思います。
 ただ、大阪市自身、ここ数年は、資産売却も含めて、市民サービスを維持しながら財政再建することに、努めています。知事の提案が、長期的な市民サービスをきちんと踏まえたものであることを望みます。

 もうひとつが、分割後の新市(都区)が、大阪市の一般会計の借金を負いきれるかです。
 大阪市が、現状、これだけの借金を負いながら、それでも財政健全化へ向かっているのは、大阪市という大きな器があるからだと思います。
 大阪市の一般会計の借金2兆8千億円を分割される8市(都区)に分けると、1市(都区)3500億円です。他の10市の一般会計の借金は平均すると880億円、堺市や東大阪市などの借金の特に多い市を除けば、平均的には500億円程度ですから、平均的な30万人都市が負う借金としては、この借金だけで、破綻ということになっても不思議ではありません。

 大阪都参加の全市で借金を負うとなると、1市(都区)当たり1850億円。それでも背負いきれるかという額ですし、今の公債残高が300億円とか600億円とかの市が、納得するとも思えません。

 大阪府が全部背負えればいいのですが、一般会計部分は特別会計と違って、税金で全部返していく必要のある借金ですから、3兆7千億円も増えると、公債費支払いが1.88倍となり府でも支えきれるか疑問ですし、財政健全化基準に抵触する可能性すら出てきます。

 普通に考えると大阪府の提案は、全市の公債を整理会計に移し、都税に移す法人市民税・固定資産税から返済していくということだと思いますが、各市の収入で返済することを分かりにくくしているだけですから、大阪市分割後の8市(都区)が負担する場合か、全市で負う場合と、問題は同じです。

 大阪市のこの借金は、現在、ゆっくりとですが、解決に向かっているもので、問題が起こっているものではありません。この借金の返済を可能としている大阪市という大きな器をぶち壊してしまうことで、このような議論となってしまうものです。

 大阪都構想を提案するのならば、こういった点もきちんと説明をした上で、市民生活へ影響させない解決策を提示することが必要なのだと思います。
 橋下知事の大阪市財政改革提案が、こういった問題をきちんと府民・市民へ説明し、全体としての解決を提案するものであることを望みます。


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posted by 結 at 16:32| Comment(0) | 財務 | 更新情報をチェックする

2010年05月24日

大阪府は、広域行政権限を移譲されたら、もしかして、困るのだろうか?

 先の結論で、大阪府・市の二重行政を解消し、広域行政権限の一元化を図るだけなら、大阪都構想なんて身近な市民サービスを危うくする方法は必要ないと書きました。
 これと関連して、少し疑念を持っていることがあります。個人が少し調べたくらいで確認できることではないので、あくまでも邪推なのですが、大阪府は、大阪市から広域行政権限を移譲されたら、財政的にもたないという結論が出ているのではないかと。

 大阪府も財政的に余裕のある状況ではないはずです。広域行政権限の移譲に伴って、譲与税など一緒に移ることになりますが、多分、これだけで必要な予算を賄いきれないのではないかと思っているのです。(二重行政の解消が、言葉の持つイメージ通りであれば、大阪市から広域業務を引き取っても、予算はほとんど増えないはずなので問題ないのですが、そんなにうまくはいかないものです。)
 だから、基礎自治体業務などには興味もないのに、市の財源を自由に府に移すことのできる大阪都構想を持ち出してきたのではないかと。

 広域行政権限と業務を移譲するのですから、それに必要な財源もセットで移す必要があるのではと、思う人もいるかもしれません。でも、わたしは違うと思っています。
 橋下知事は、大阪市の財源が豊かであることを攻撃されますが、大阪市の財源の大元は、大阪市内の法人の活動です。(大阪市民って、個人はそれほど、豊かということではなかったと思います。)大阪市は、確かにここから税収を得ますが、大阪府だって、同じ金袋の大阪市内の法人から、府の広域行政のためとして、事業税などの税収を得ているのです。そして、この税収を、(橋下知事自身、大阪市は他府県のようだと言っているくらい、)大阪市内にはお金を掛けず、大阪市外の広域行政のために、消費しているのです。

 大阪府は、本来、お金が余って仕方がない構造になっているのです。大阪市から広域行政権限の移譲を受けたとしても、そのために必要な財源は、過去からずっと大阪市内から徴収し続けている訳で、そのお金を別の用途で使ってしまっているのなら、橋下知事の取り組むべき財政改革は、大阪市に対してではなく、やっぱり大阪府の財政改革なのです。

 まあこれは、あくまで邪推です。でも、大阪府が大阪市内からあがる税収を大阪市域外の広域行政で使い果たしているために、ただの広域行政権限の一元化でなく、身近な市民サービスに影響を与えてしまう大阪都構想なんて持ち出されているのだとしたら、巻き込まれてしまった大阪市民は、どういう気持ちになればいいのでしょう。わたしは、ため息をつく気にも、なりません。
posted by 結 at 19:07| Comment(0) | 財務 | 更新情報をチェックする

2010年08月24日

大阪市の市税の都税化は、やるらしい

 以前、「ちちんぷいぷい」が大阪都構想に関連して都税制度の説明をしたら、橋下知事は、「デタラメな解説をしている。」と批判し、知事自身がちちんぷいぷいに出演した際も、「区になると、お金を都に吸い上げられるっていう議論がでてきますけど、そこは、東京都の制度をマネしなくて、もっともっと区の方に、お金を渡したらいいと思うんです。」と発言されてますが、橋下知事が、「ちちんぷいぷい」に出演した際の発言を、注意深く聞いていると、やっぱり、市税の都税化は、やるようです。

 その前に、「都税制度」について、簡単に説明しておきます。
 日本では、国、府県、市町村、全部、別の団体(自治体)です。ですから、それぞれに、収入とする税の種類が違います。国は、所得税、法人税、消費税。府県は、府民税(個人、法人)、事業税。市町村は、市民税(個人、法人)、固定資産税などです。
 基本的に、国が府県や市町村の税を横取りしたり、府県が市町村の税を横取りしたりはできませんが、それを唯一行っているのが東京都です。東京23区内は、法人の市民税と固定資産税などを都税にして、都が徴収し、その一部(55%)を特別区に配分するという制度を行っています。東京都では、下水道、消防など、区をまたがる(通常、市の業務とされる)業務を、都庁が行うので、市税の一部を都の収入にするという理屈のようです。

 大阪都構想では、都庁は広域業務を担い(=府県)、都区は基礎自治体業務を担う(=市町村)ようなので、市税を都税にする理屈は立たないと思うのですが、大阪市の市税を都税にして、都庁(=大阪府)の裁量の下に置くのでなければ、法律上できない「大阪都」なんて目指す意味はないので、道理は引っ込むのでしょう。

 橋下知事は、「市税を都税化する」とはひと言もいっていませんが、都税制度を前提とした発言が、そこかしこにあり、市税の都税化はやるのねと思うのです。
 いくつか、例を挙げてみます。

「橋下知事、大阪都構想を語る(その3)」より
(固定資産税は、各都区に渡すのかの質問に対して)
「それはね、固定資産税にするのか、例えば、東京都制度だと、市町村の法人税を(都が)もって、住民税分は区が持とうとか、そこはね、制度設計、どの項目のどの額は、どう渡すかって、後で決めればいい訳ですから。」と、答えられています。

 この発言が何故、都税制度を前提にしているかというと、都税制度の逆は、市税が基礎自治体である都区に固有の税だと認めることです。(都区は、基礎自治体の業務を行うのですから、今の法律でいうと自然なことです。)
 でも、「どの項目(多分、税目の意味を含むと思うのですが。)のどの額を、どう渡すかは、後で決める。」というのは、「市税をどのように扱うかは都庁が決める。」と宣言した訳で、都区固有の税とは認めないということです。
 「どう渡すか。」まで、後で決めるとなると、都税制度のような一定割合の配分ではなく、市税をすべて都庁の収入とした上で、都区に(大阪府の部局のひとつのように)都庁が認めた額だけ予算を渡すということすら含んでいそうです。

「橋下知事、大阪都構想を語る(その3)」より
「何故、市の職員が多いかっていうと、大阪全体のことをやる職員もいっぱいいるからなんですよ。大阪府庁とダブっちゃってるんですよ。
 これ全部一緒にしてですね、大阪の全体のことをやる職員と、住民に身近な職員を分ければね、大阪府庁と大阪市役所、併せて考えれば、職員、もっともっと減らせられるんです。
 で、そのお金を、どんどん、教育、福祉、医療に回せばいいじゃないですか。」と発言されてます。

 ここでいってることを、予算の観点で整理すると、広域行政をやっている大阪府の職員(組織)と広域行政をやっている大阪市の職員(組織)を統合すれば、府と市の今の予算を合わせたよりもスリムになるので、そこで節約した予算を(大阪府の)教育、福祉、医療に回せる。(都区に下ろすとは言ってません。)
 この話は、また別の記事で検証しますが、大阪市が広域行政で負担していたコストは、広域行政が都庁へ移行しても、市税でコストを負担してくれといっている訳です。都庁に移管された広域行政のコストを、市税で負担しようとすると、都が市税から収入を得る必要があるので、都税制度が前提となります。

 何故、市税が都税化されるのが問題なのでしょうか。
 橋下知事は生野区を取り上げて、「予算の使い道は、自分たちで決めよう。」と言います。
 でも、一般には、「自分たちの払った税金の使い道は、自分たちで決めよう。」です。
 現在、大阪市民は、260万人で、自分たちの払った税金の使い道を、自分たちで決めています。
 大阪都になったら、30万人で決めることになります。でも、わたしたちが身近な行政のために払うはずの市民税や固定資産税が、知事や府議会の下に消えてしまって、知事や府議会が分け与えてくださった予算(多分、支払った額より結構減ってるはずです。)だけ、その使い道を自分たちで決められるだけになります。つまり、身近な行政を決める権利の半分を、失うことになるのです。

 橋下知事は、今の区は独立していないから、都区は、それより、ちょっとだけ独立させるんでいいんだと語ります。
 でも、「区」なんていう自治体はありません。都区は、大阪市という立派に独立して行政を営んでいる自治体を分割して作るだけです。そんなこと、都区を都庁に財源で縛って従属させる理由になりません。
 もし、きちんと独立して行政を行っている大阪市を分割して作った都区が、独立した自治体としてやっていけないというのならば、そういう分割そのものが、どこかおかしいのです。
posted by 結 at 03:10| Comment(0) | 財務 | 更新情報をチェックする