大阪府も大阪市も、近年、財政非常事態宣言をしており、財政再建途上です。大阪市は、公表されている限りでは、改善の方向に向かっていて、財政健全化基準は大阪府より良いくらいなので、平松大阪市長が、橋下知事に「掟破りで、他市の財政状況に口出しするくらいなら、自分の府のことをしっかりしろ。」というのは、至極もっともです。
ただ、橋下知事がなんでこんな反発を受けるだけと分かっている提案をしたのか、気になって調べてみました。
調べてみると、大阪府、大阪市、その他10市の公債発行残高です。
(揃った資料が見つからなかったため、年度や決算値か速報値かなどバラバラです。大体くらいに思ってください。)
一般会計 特別会計
大阪府 42100億円 7900億円
大阪市 28288億円 23349億円
その他10市 8788億円 10688億円
地方財政で、兆単位の借金の話ということで、すごい数字です。
この借金を、組織をガラガラポンした後に誰が背負うかというのは、それだけで大変な問題ですが、一番ありそうな、大阪府が大阪府の元の借金と各市の特別会計の借金を負い、新市(都区)は各市の一般会計の借金を負うと考えてみます。
理由としては、市の特別会計は、府が集約化を目指す都市計画、港湾、交通、水道、下水道、病院など事業会計なので、事業を府が引き継ぐなら、事業会計の負債も引き継ぐのが普通だからです。(橋下知事なので、おいしいところ取りを狙っているかもしれませんが。)
そうすると、気になる点が出てきます。
ひとつは、大阪府がそれだけの負債を負いきれるかということです。大阪府の借金は、現在の5兆円から8兆4000億円になります。
借金が増えるといっても、事業会計ですから、事業が黒字である限りは、府の税金で借金返済ということにはなりません。それでも、大阪市のあべの再開発事業のように1千億円単位の赤字を抱えている事業もあり、大阪府民が賛成できるのかは、微妙に感じます。
橋下知事が大阪市財政改革提案で例を挙げたのは、この特別会計部分の借金減らしのようです。大阪市は、公債発行をしながら都市基盤整備をした結果、大きな行政資産を持っている訳ですが、「借金を整理した事業、資産だけを大阪府へ引き継げ。」と読むと、橋下知事が大阪市の財政改革を提案するのを、なるほどと思います。
ただ、大阪市自身、ここ数年は、資産売却も含めて、市民サービスを維持しながら財政再建することに、努めています。知事の提案が、長期的な市民サービスをきちんと踏まえたものであることを望みます。
もうひとつが、分割後の新市(都区)が、大阪市の一般会計の借金を負いきれるかです。
大阪市が、現状、これだけの借金を負いながら、それでも財政健全化へ向かっているのは、大阪市という大きな器があるからだと思います。
大阪市の一般会計の借金2兆8千億円を分割される8市(都区)に分けると、1市(都区)3500億円です。他の10市の一般会計の借金は平均すると880億円、堺市や東大阪市などの借金の特に多い市を除けば、平均的には500億円程度ですから、平均的な30万人都市が負う借金としては、この借金だけで、破綻ということになっても不思議ではありません。
大阪都参加の全市で借金を負うとなると、1市(都区)当たり1850億円。それでも背負いきれるかという額ですし、今の公債残高が300億円とか600億円とかの市が、納得するとも思えません。
大阪府が全部背負えればいいのですが、一般会計部分は特別会計と違って、税金で全部返していく必要のある借金ですから、3兆7千億円も増えると、公債費支払いが1.88倍となり府でも支えきれるか疑問ですし、財政健全化基準に抵触する可能性すら出てきます。
普通に考えると大阪府の提案は、全市の公債を整理会計に移し、都税に移す法人市民税・固定資産税から返済していくということだと思いますが、各市の収入で返済することを分かりにくくしているだけですから、大阪市分割後の8市(都区)が負担する場合か、全市で負う場合と、問題は同じです。
大阪市のこの借金は、現在、ゆっくりとですが、解決に向かっているもので、問題が起こっているものではありません。この借金の返済を可能としている大阪市という大きな器をぶち壊してしまうことで、このような議論となってしまうものです。
大阪都構想を提案するのならば、こういった点もきちんと説明をした上で、市民生活へ影響させない解決策を提示することが必要なのだと思います。
橋下知事の大阪市財政改革提案が、こういった問題をきちんと府民・市民へ説明し、全体としての解決を提案するものであることを望みます。
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