2010年09月05日

府・市水道事業統合に、大阪市からでもできそうなこと

!!!!注意!!!!(2013年5月25日)
以下の記事は、2008年〜2010年に掛けて行われた大阪府・市の水道統合協議で示された、統合によって大幅なコスト削減が実現できるという試算に基づいて、議論を行っています。
しかし、橋下市長が大阪市長になった後に、大阪市と大阪広域水道企業団との間で始められた統合協議(2012年3月〜)の中で、この記事で府案と呼ばれる方式(大阪市の柴島浄水場を全廃し、大阪市域で不足する水需要に対して、企業団の浄水場から配水を行う案)では、大阪市域のコスト増が現企業団側の収入増を上回り、大阪府全体で捉えても百億円単位のコスト増になると試算されています。
つまり、ちゃんと計算してみると、府市の水道を統合しても解消できる無駄は見つけられなかったということです。
詳細は、当ブログの「水道事業統合の統合効果が見当たらない」(2012年10月10日)をご参照ください。

************* 以下、記事本文 *************
 前回の記事で、大阪府・市水道事業統合の話をしたので、この件で、何かよい方法ってないかを考えてみました。

 ただ、この件って、ひとによって、事実関係の認識がいろいろで、そこで意見が分かれてしまうので、まず、わたしの理解している状況の認識を挙げてみます。(交渉経過や関係者の思惑のようなことは、この際、省きます。)
○大阪府、大阪市共に、浄水場の供給力は、需要に対して、過大な状況にある。
○大阪府は、設備更新時期に来ており、浄水場と送水管などの更新に、5000億円程度の費用が今後必要となる。
○(実現には至らなかったが)府市の合意案によると、大阪府・市両者の水道施設を有効に活用することで、3000億円程度の更新費用を削減できる。
○3000億円の費用削減により、府水道の水1トンの卸売り価格は、88円10銭(うち原価は82円)から、約10円の値下げができることが見込まれている。ちなみに、市水道の原価は、64円。
ただし、府水道は、統合と関係なく、10円10銭の値下げを表明しており、値下げ後は78円。(この値下げが、どのような根拠で行われるのか、大阪市側では不明。)
○大阪市側で、単純な組織統合が取れない理由としては、統合後組織の水卸売り価格は64円より高くなると考えられ、大阪市内の水道料金が値上げになると見込まれること。それと、現状、大阪市は、浄水から給水まで一貫して行っているので、大阪市内の水道料金は、大阪市が100%決定を行うことができるが、統合後組織から水の供給を受けることになると、統合後組織の意向に強く左右されてしまうこと。

 府市水道事業統合の結果で、純粋にもったいないと思うのは、目指すべき効果は、大阪府・市の水道施設を有効に活用して、更新工事の費用を削減することであって、組織統合は必要条件ではないのに、組織統合の形態を巡って対立し、何の効果も挙げることができなかったことです。
 ただ、それだけで放置は、もったいないので、現状を前提に、大阪市側のアプローチとして、何かできることはないかを考えてみました。

 大阪市側の条件となる「府市水卸売価格一本化による水道料金値上げの回避」と「水道料金決定権の低下の回避」は、どちらも、組織統合は無理と言ってるようなものです。これらの条件を満たそうとした大阪市の組織統合案は、トリッキーなものにならずるを得ず、そのことが、交渉経過の混乱を招く一因となったように思います。

 大阪市の条件を満たすためには、組織統合の考え方を捨てて、施設有効活用の方法を探した方がよさそうです。そんな都合のよい方法ってあるのでしょうか?
 比較的容易な方法としては、府水道、市水道の組織は別々のままで、共同で、経営計画委員会のようなものを設けることです。阪急電鉄と阪神電鉄が、持ち株会社の下に置かれる図をイメージしてもらうと、近いのではないでしょうか。上位組織というより、協議組織のイメージの方が近いかもしれませんが。
 この方法でも、水需要見込みや投資計画のすり合わせをすることで、組織統合に近い効果は挙げられるはずです。しかも、市水道も、水道料金や料金決定権の独立(水道料金値上げの回避)は確保できます。
 ただ、現状としては、双方組織の信頼関係は皆無と思われるので、経営委員会の主導権はどうだとか、経営委員会は、府水道・市水道それぞれに、どのような強制権を持つのかといった不毛な議論に終始する可能性が高そうです。

 そこで、できそうな方法として、大阪市が次のような提案をするというのは、どうでしょう?
○大阪市は、日量XXトンまで、XX円で府水道へ供給する協定を結ぶ用意がある。
○また、大阪市北部で受領した水を、大阪市南部で引き渡すことも、日量XXトンまでX円で請け負うことができる。(大阪市が府水道の水の送水を請け負うこと。)
○どちらも、利用実績に料金を求めるのみで、どのように利用するか(あるいは、利用しないか)は、府水道が自由に決めればいい。
○大阪市としては、ひとつの利用プランとして、「このような利用」をすることで、「これだけの投資削減」が可能で、XX円の水道料金の引き下げか可能と考える。(ただし、プランの例を提示するのみで、どのようなプランを採るかは、府水道の自由。)
○協定の期間としては、10年。ただし、この期間を超えても双方の施設の有効活用ができるよう、10年後に向けて、経営計画の協調ができることを望む。
○この提案については、府水道へ提案すると共に広く公表し、水道事業団を構成する市町の市民の活発な議論を期待する。

 とりあえず、大阪市側として、こういった提案をすることでマイナスになる点はないように思いますし、少しでも、府市の水道施設の有効活用ができるきっかけとなるのなら、悪い方法ではないと思うのですが。
posted by 結 at 03:57| Comment(2) | 広域行政 | 更新情報をチェックする

2010年09月15日

大阪府自治制度研究会が「大阪市再編」の中間取りまとめ

 次のような新聞記事が出ていました。(内容は、一部編集して縮めています。)

「大阪市を再編」府自治制度研究会が中間とりまとめ案 2010.9.13

 地方行政の専門家らによる大阪府自治制度研究会で、大阪市について「適切な規模に再編する必要がある」などとする中間とりまとめ案をまとめた。

 とりまとめ案では、大阪の問題の本質は、大阪府と大阪市のそれぞれが独自の都市経営を行った結果、大阪全体の都市経営の所在が不明確になったと指摘。二重行政という表層的な問題ではなく「二元行政」だと、問題提起している。
 今後の自治体のあり方としては「大阪市を適切な規模に再編する」としたが、府をそのままにして、大阪市だけを分市するのか、大阪都制にするのかといった具体的な方法論には踏み込まなかった。

 新川座長は「大阪市を今のままにしておくのはよくないという考えだが、大阪市を残し都市内分権を行ったり、大阪市域を拡大する選択肢もある」としており、今後、都市再編のメリットとデメリットを検証。年内に最終とりまとめを行う方針だという。


・・・・というものです。

 大阪府の外部検討組織の中間報告ということですが、この時期に、こういった内容の報告がされるのが、大阪府の意向と無関係なはずはありません。研究会メンバーは、自由に検討を行い報告を行っているとしても、メンバー選定や検討方針、検討に当たっての事務局案の整理などで、ある程度、大阪府の意向に沿った報告になっていると考えます。

 別に、「大阪府の外部検討組織が中立の第三者機関として機能しているか。」なんて論じるつもりもありません。この記事の中間報告が、大阪府の意向に沿っていると理解すると、なかなか興味深いと思うのです。

 ひとつは、「二重行政」を表層的な問題として、より本質的な問題で解決すべきは、「二元行政」だとしたこと。「二元行政」って、何かまた、新しい言葉を作ってきましたが、今まで使われてきた言葉でいえば、「広域行政の一元化が図られていないこと。」ですね。
 つまり、二重行政の無駄の解消といった次元で捉えるのではなく、都市経営として「広域行政の一元化」を図るべきだとしたわけです。まあ、やや力点の掛け方は違いますが、今までの橋下知事の主張に沿うものです。

 もうひとつは、「二元行政の解消」(=広域行政の一元化)を図る手段として、「大阪市を適切な規模に再編する必要がある」としたことです。
 実は今まで、橋下知事が、大阪市を都区や新市に分割することを語る時は、必ず、「大阪市民の行政参加のため」と言い繕っていて、絶対に言わなかったことだと記憶しています。
(報告書の細かな表現では、色々な言い方をしてるかもしれませんが、大きな文脈としてであれ、)「ストレートに言っちゃったな。」というのが、感想です。
 普通に想像はつく事ですが、当事者側から出てくると、重みが違うなぁと思っています。

 なお、表層的と切り捨てられた「二重行政」ですが、その負担は誰がどのように負っているのか、大阪市民は知っておいた方がいいように思いますので、次回からの記事で取り上げてみます。


・・・もし、この記事を気に入っていただけましたら、目次から、他の記事もどうぞ。
   大まかに大阪都構想のことを知りたい方は、まとめブログをご覧ください。
posted by 結 at 02:09| Comment(0) | 広域行政 | 更新情報をチェックする

2010年09月18日

二重行政よりも二重負担(その1)

 知事も市長も、あまり言わないようですが、大阪府・市の二重行政の無駄について、誰がどのように負担しているのかに着目して、整理してみます。

 まず、ここでは、二重行政とは、「一般に府県の業務とされているが、政令指定都市では、政令指定都市の業務とされていることで、大阪府と大阪市が同じ業務を行っているもの」とします。例としては、都市計画事業や保健所業務などです。

 言葉のイメージでは、水道事業を大阪府と大阪市がそれぞれ行っていて、二重行政になっていると言われると、大阪市内の家庭には、大阪府と大阪市の蛇口が2つあるように聞こえますが、当然そんなことはなく、エリアで住み分けがされています。ここでいう二重行政の無駄とは、「府・市の事業を一体で運営した方が、効率が良くなる点がありそう。」ということです。

 図書館のように、政令指定都市の権限と関係なく、府県でも市町村でもできる事業で、大阪府・市それぞれが行っているという指摘で、二重行政と言われることがありますが、ここでは含めません。それは、また別の話題にします。
 また、概念図的に、色々と数字を挙げますが、現実の数字とは、一切関係ありません。



 まず、大阪市が政令指定都市でない状態で、それぞれの予算・事業のモデルを置きます。

大阪府 支出 240 うち大阪市内向け  80 → 広域業務へ支出
    収入 240 うち大阪市内より 160

大阪市 支出 100 身近な行政(基礎自治体業務)へ100
    収入 100


 次に、大阪市が政令指定都市となり、上記モデルで、大阪府の支出のうち、10を大阪市の予算で行うことにした場合を考えます。

 この場合、大阪府側では、大阪市内向け事業の10の分を減らしますが、費用が10減ることはありません。事業全体の統括業務の費用は減りませんし、スケールメリットも少し失われるからです。二重行政を重く捉える方は、10の大半が無駄になってると捉えますし、わたしは、1〜2のようにごく一部と捉えます。ここでは、費用が減って他に振り向けられるのは、6とし、4がロスになるとします。

大阪府 支出 240 うち大阪市内向け  70 →広域業務  (6を市外へ追加 4はロス)
    収入 240 うち大阪市内より 160

大阪市 支出 100  身近な行政 90 広域業務 10
    収入 100


 大阪市が、政令指定都市の場合と、そうでない場合で、大阪府と大阪市の支出の関係は、このようになります。
 二重行政の無駄とは、大阪府側で発生している「4」のロスのことをいいます。ただ、大阪府は、二重行政の発生で、費用を負担している訳ではありません。逆に、大阪府は、大阪市内地域への業務支出が減り、「6」の余剰が出て、大阪市外などの他の業務へ振り向けることが可能になっています。

 二重行政の無駄は、大阪府側に「4」発生しますが、これを負担しているのは、大阪市側が身近な行政を「10」削り、広域行政へ充てることで、この「4」のロスを負担し、更に、大阪府に「6」の余剰を発生させているのです。

 別の言い方をすると、大阪市民は、府税を払うことで大阪府から受けられるはずの広域行政サービスを受けず、身近な行政を削って大阪市から、その分の広域行政サービスを受けているのです。
 二重行政の無駄というと、よく「4」の部分がロスになっていることをいいますが、その源泉であり、大元の点は、大阪市民が、大阪府へ広域行政のための府税を払った上に、身近な行政への支出を削る形で、大阪市へも広域行政のためのコストを支払っていることです。(=大阪市民は、広域行政のコストを二重に負担しているのです。)

 政令指定都市となり、広域行政のコストを市民に二重に負担させている大阪市は、馬鹿げているのでしょうか。
 その点の考え方を、次回は、もう少し詳しく整理したいと思います。


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posted by 結 at 02:00| Comment(2) | 広域行政 | 更新情報をチェックする
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