2010年07月18日

大阪府と大阪市の実績の比較も知りたいよね(その2)

 最近、二重行政仕分けというのですか、主に大阪市の行っている事業を、大阪府と大阪市(広域行政体と基礎自治体)のどちらが行うのがいいか、大阪府と大阪市、それぞれが検討した結果を発表したと、新聞記事にありました。

 新聞記事にあった、検討結果は、次のとおりです。
○地下鉄 (府)広域的ネットワーク形成の視点が必要
      (市)すでに市が他社とのネットワークを整備

○病院   (府)基礎自治体がそれぞれ行うと非効率
       (市)地域に密着した高度な医療が必要

○産業振興 (府)府地域全体の戦略的な取り組みが必要
       (市)市周辺圏域の経済力向上に貢献

○図書館 (府)広域の住民の学習機会を提供
      (市)府立よりも市立の図書館利用者が多い

○公立大学  (府)重複する学部があり、府市トータルで検討
        (市)※市内部で議論分かれ、結論出ず

 主に大阪市の事業ですから、大阪市が大半を「大阪市のままでいい」としたのは、まあ、それだけのことです。
 それでもって、府の結論に、この記事のテーマの実績の観点で、ちょっと感想です。

 まず、新聞社が、なぜ、この5項目を選んだのか、分かりませんが、いずれも、政令指定都市の広域行政権限に関するものじゃなくて、府県でも、一般の市町村でもできる事業です。これを二重行政と呼び、その解消を図ろうとすると、多分、ほとんどの市を解体する必要が出てくるはずです。
 産業振興課なんて、大抵の市に(名前は違っても)あるでしょうし、病院や図書館も、結構多くの市にあったと思います。地下鉄なんて、東京都以外、(市域内交通の高度化として建設されることが多いので、)大抵、市営だったんじゃないでしょうか。
 つまり、これらの項目は、「政令市の広域行政権限による二重行政解消の検討」とやらではなく、「こういう立派な事業は、大阪市が持ってるなんてもったいない。大阪府の事業にした方が、相応しい。」と言ってるのだと、思った方がよさそうです。

 まず、産業振興ですが、なぜ、こんな項目が出てくるのか、理解に苦しみます。府県が産業振興課を置いたら、市町村は産業振興事業をするべきでないということでしょうか。さまざまな市の、産業振興のための取り組みを否定する考え方のように見えます。それほど、大阪府って、府の産業振興事業に自信をもっているのでしょうか?
 こんな項目こそ、いかにうまく協力体制を作るかを考えるべきと思うのですが。

 次に、図書館って、前回の実績比較の考え方が、うまく当てはまるように思います。
 大阪府立図書館(東大阪の中央図書館と大阪市北区の中之島図書館の2つですね。)が、大阪市域外で地域図書館と連携しながら、(大阪市の図書館が、市内で提供しているよりも、)どれ程、素晴らしい読書環境をどれだけの人に提供しているのかは、ぜひ教えて欲しい情報です。

 新聞上の「広域の住民の学習機会を提供」という理由だと、府立図書館だと、大阪府民全体が利用対象となり、市立図書館だと、大阪市民だけが利用対象って、言いたいように見えるのですが、本気でしょうか?それじゃあ、ただの机上論でしょう。(ちなみに、大阪市の図書館は、利用、貸し出しなど、住所による制限ないそうです。府外の方の利用もどうぞ、とのことでした。)
 運用実態や利用実態(ひいては、行政能力の評価にも繋がるはずです。)を無視した議論に、市民の財産を委ねろと言われているのかと思うと、情けなくなります。
posted by 結 at 02:52| Comment(0) | 広域行政 | 更新情報をチェックする

大阪府と大阪市の実績の比較も知りたいよね(その3)

 前回に続いて、次は地下鉄事業です。
 新聞の記事によると、地下鉄は、「広域的ネットワーク形成の視点が必要」だから、大阪府の事業であるべきということのようです。

 そこで根本的な疑問。大阪府が、「広域的ネットワーク形成の視点」を持ち、その中で大阪市の地下鉄事業を大切に思っているのならば、大阪市が地下鉄と私鉄各社との乗り入れで実現した、広範な交通網は、大阪府が構築しているはずではないのでしょうか?

 でも現実は、報告書で運営を不適格としている大阪市が、地下鉄・市バスによる広範で細密な交通網を構築し、報告書で運営がふさわしいとされた大阪府は、北大阪急行、泉北高速、大阪モノレールと、一部拠点間交通を作っただけです。
 しかも、北大阪急行など3社は、別々の会社で、株主の構成もバラバラなので、一体的な経営にすらなっていないのです。橋下知事が主張されてるのは、地下鉄の民営化ですから、このバラバラの3社体制を4社体制にするのが、「広域的ネットワーク形成の視点」に立った経営ということのようです。

 しかも、以前にも指摘しましたが、やっぱり「地下鉄」です。大阪市にとっては(たぶん、市民にとっても)、地下鉄と市バスは、一体の交通事業なのですが、「広域的視点」では、かなり見え方が違うようです。(市バス事業なんて、そんなに欲しいって、思わないってことなのでしょう。)

 このような現実を見ようとしない報告書(というか、行政的な態度)に、自分の住むまちのあり方を、託させられるのでしょうか。

 少し、議論の補足をすると、大阪市が、地下鉄のような都市基盤の整備ができたのは、大阪市が財源を独り占めにしてたからと、思われる方っているのでしょうか?
 ただ、少なくとも、この見方は、大阪府と大阪市の間には、成り立たないと思っています。

 以前の記事にも書きましたが、大阪市の税収が豊かなのは、大阪市内の法人の経済活動のお陰です。でも、大阪府も同じ法人(というか、ずっと幅広い法人)から、同様に税収を得ています。
 しかも、大阪市は、政令指定都市として、一般の市以上の(つまり、府が支出すべき項目の)支出をしますが、大阪府は、多大な税収をもたらす大阪市内に、(大阪市の支出が大きくなってる分)小さな支出しかしていないのです。
 財源的には、大阪府の方が(当然のこととして)大阪市より遥かに豊かですから、府営交通の現状は、交通網の整備に大阪市ほど熱心ではなかったとしか思えません。多分それが「広域的視点」の結果なのでしょう。

 あとは、病院事業を大阪府の事業であるべきとしていることについてですが、わたしは、この点に強い怒りを覚えます。
 その理由は、次の記事とさせていただきます。
posted by 結 at 18:36| Comment(0) | 広域行政 | 更新情報をチェックする

2010年07月21日

大阪市立病院を大阪府にという仕分けに怒りを覚えるわけ

 新聞の記事によると、大阪府の検討結果では、大阪市の病院事業は、大阪府の事業であるべきで、理由としては、「基礎自治体がそれぞれ行うと非効率」だからだそうです。
 前回、この大阪府の見解に怒りを覚えると書きました。それは、あるドキュメント番組を以前に見ていたからです。

 その番組は、2008年5月にテレビ大阪で放送された「胎動2」という番組で、市立貝塚病院と市立泉佐野病院の産科の統合を取り上げたものです。
 この番組は、主に2つのテーマを取り上げていて、ひとつは、研修医制度の変更で医師不足となった中、医師派遣元の阪大病院から、分娩を行う病院を両病院で1本にするように求められたこと。
 そして、もうひとつは、統合した周産期センターを担う市立泉佐野病院が、それによって拡大する赤字をどのように負担していくかということで、わたしが気になったのは、こちらです。

 番組のうち、赤字負担の部分をまとめると、次のような感じです。
○市立泉佐野病院は、2006年までに10億円の赤字を抱え、2007年度には更に10億円増える見込みで、病院の存続が苦しくなってきている。
○周産期センターを抱えることて、さらに約1億円赤字が膨らむことが見込まれる。
○泉佐野市と貝塚市は、周産期センターの設立協議会を利用実績の多い周辺5市3町で立ち上げ、センター運営費の赤字の負担を呼びかけた。
○各自治体は、大阪府へ財政支援を求めたが、スタートに合わせた支援は見送られた。このため、関係自治体の足並みは乱れ、岸和田市と阪南市から理解を得られなかった。
○泉佐野市長「泉佐野市、貝塚市からの呼びかけだけで、市民から預かる税金を拠出するのはいかがなものかと言われている首長が、まだ参加されていない。」
○大阪府の支援を期待し、ぎりぎりまで待ったため、参加が最後になった岬市の市長「私共の気持ちからすれば、大阪府全体として、大阪府の医療をどうあるべきかということは、やはり府としての指導っていう部分もあるべきだと。」
○病院の担当者も、大阪府の冷ややかな対応には納得いきません。「ある団体さんがおっしゃっていたが、府税を払う意味がどこにあるねん。というふうな言葉を投げかけてて。その苛立ちというのは、大阪府が結局リーダーシップを発揮してない。そこに尽きるでしょうね。今回の問題は。」
○泉佐野市は、財政を破綻させては元も子もないとして、赤字負担をいただけない市町の住民の分娩費用を13万円値上げすることとした。

 この負担金対応の結果、住む市によって分娩費用が大幅に変わる対応は、自治体のエゴとして、当時、新聞にも取り上げられました。
 現状、詳細がどのようになっているかは分かりません。少なくとも、阪南市は負担金に参加を行いました。また、居住市別の分娩費用は、今も続いています。

 わたしには、上記の大阪府の対応が非難されるべきなのかどうかは、分かりません。大阪府が、府下の医療体制にどのような関わりを取ってきたのかは、知らないからです。

 ただ、大阪市が設置し運営している病院を、大阪市が望んでもいないのに、「基礎自治体がそれぞれ行うと非効率」と大阪府の運営であるべきだと見解を示されるのであるならば、人口10万人弱の泉佐野市が、財政逼迫の中、公立病院が泉州地域から失われないように必死に支えている市立泉佐野病院は、(財政支援などといわず)とっくに大阪府に移管されていて、当然ではないですか。

 為すべき時に、為すべきことをなさなかった人が、都合の良い時だけ手前勝手な理屈を振りかざしている。
 わたしには、そのように感じられ、怒りを覚えてしまうのです。

 上記の周産期センター「泉州広域母子医療センター」設立についてのゴタゴタがあったのは、橋下知事就任の前年のことです。
 橋下知事就任後のドキュメンタリー番組で、一度だけ、市立泉佐野病院の名前を見かけました。それは、橋下知事就任後の大幅な予算カットを検討する中で、市立泉佐野病院に併設されている大阪府の救急救命センターを(赤字を含めて)泉佐野市へ移管することで、予算を節約できないかと検討を行うものでした。(実現はしませんでしたが。)
posted by 結 at 07:02| Comment(0) | 広域行政 | 更新情報をチェックする
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