新聞記事にあった、検討結果は、次のとおりです。
○地下鉄 (府)広域的ネットワーク形成の視点が必要
(市)すでに市が他社とのネットワークを整備
○病院 (府)基礎自治体がそれぞれ行うと非効率
(市)地域に密着した高度な医療が必要
○産業振興 (府)府地域全体の戦略的な取り組みが必要
(市)市周辺圏域の経済力向上に貢献
○図書館 (府)広域の住民の学習機会を提供
(市)府立よりも市立の図書館利用者が多い
○公立大学 (府)重複する学部があり、府市トータルで検討
(市)※市内部で議論分かれ、結論出ず
主に大阪市の事業ですから、大阪市が大半を「大阪市のままでいい」としたのは、まあ、それだけのことです。
それでもって、府の結論に、この記事のテーマの実績の観点で、ちょっと感想です。
まず、新聞社が、なぜ、この5項目を選んだのか、分かりませんが、いずれも、政令指定都市の広域行政権限に関するものじゃなくて、府県でも、一般の市町村でもできる事業です。これを二重行政と呼び、その解消を図ろうとすると、多分、ほとんどの市を解体する必要が出てくるはずです。
産業振興課なんて、大抵の市に(名前は違っても)あるでしょうし、病院や図書館も、結構多くの市にあったと思います。地下鉄なんて、東京都以外、(市域内交通の高度化として建設されることが多いので、)大抵、市営だったんじゃないでしょうか。
つまり、これらの項目は、「政令市の広域行政権限による二重行政解消の検討」とやらではなく、「こういう立派な事業は、大阪市が持ってるなんてもったいない。大阪府の事業にした方が、相応しい。」と言ってるのだと、思った方がよさそうです。
まず、産業振興ですが、なぜ、こんな項目が出てくるのか、理解に苦しみます。府県が産業振興課を置いたら、市町村は産業振興事業をするべきでないということでしょうか。さまざまな市の、産業振興のための取り組みを否定する考え方のように見えます。それほど、大阪府って、府の産業振興事業に自信をもっているのでしょうか?
こんな項目こそ、いかにうまく協力体制を作るかを考えるべきと思うのですが。
次に、図書館って、前回の実績比較の考え方が、うまく当てはまるように思います。
大阪府立図書館(東大阪の中央図書館と大阪市北区の中之島図書館の2つですね。)が、大阪市域外で地域図書館と連携しながら、(大阪市の図書館が、市内で提供しているよりも、)どれ程、素晴らしい読書環境をどれだけの人に提供しているのかは、ぜひ教えて欲しい情報です。
新聞上の「広域の住民の学習機会を提供」という理由だと、府立図書館だと、大阪府民全体が利用対象となり、市立図書館だと、大阪市民だけが利用対象って、言いたいように見えるのですが、本気でしょうか?それじゃあ、ただの机上論でしょう。(ちなみに、大阪市の図書館は、利用、貸し出しなど、住所による制限ないそうです。府外の方の利用もどうぞ、とのことでした。)
運用実態や利用実態(ひいては、行政能力の評価にも繋がるはずです。)を無視した議論に、市民の財産を委ねろと言われているのかと思うと、情けなくなります。