これだけ聞くと、政令指定都市制度って、とっても悪法です。でも、ちゃんとした存在意義のない制度が何十年も続く訳がないですし、新たな政令指定都市が生まれるはずもありません。
政令指定都市制度の意味を、考えてみます。
日本の行政組織は、基本的には国・府県・市町村の3層構造になっています。その中での「業務」=「権限」の配分の仕方は、実は結構、地方分権の考え方に基づきながら、整理されています。つまり、「地方にできることは、地方に。」です。
市町村にできることは市町村の業務にして、市町村の手に余るようだったら、府県の業務にする。
市町村の手に余る業務の中で、府県にできることは府県の業務にして、府県の手に余るようだったら、国の業務にする。
長年の間、大きな見直しがされていないため、あちこちガタがきていて、地方分権改革が色々と叫ばれますが、財政面を除けば、元からそこそこ「地方分権」なのです。
このように配分したとき、市町村の業務って、小さな村でもできる範囲で決められます。でも、横浜市、名古屋市、京都市、神戸市、大阪市といった、大きな市であれば、もっと幅広いの業務をできる力があります。
そこで、これらの大きな市に、一般的な市町村より幅広い業務(市町村の業務からはみ出しているということは、府県の業務)を担当させるための制度が、政令指定都市制度だと思うのです。
では何故、一般的な市町村ができない業務を(大きな市ならできるからといって)府県の権限から切り出して、大きな市に与えようとするのでしょうか。
地方分権の基本の「地方にできることは、地方に。」というのは、より住民に近い自治体の方が、より細やかに住民のニーズに合わせて、業務を行うことができるという考え方に立っているのだと思います。
大阪府下で、広域行政の権限が大阪府、大阪市、堺市に分割されているのは、統一的に強力に政策を進めるのには、不向きです。ただ、大阪市内、堺市内では、より地元に密着した政策が進められているということです。
大阪市民にとっては、今回の大阪都構想は、広域行政を地元密着で進めるのがいいか、府下で統一的に強力に進めるのがいいかを、問うているのだと思います。
それから更に話を進めるなら、より幅広い視野で、統一的・戦略的に強力に進めようとするなら、きちんとしたトップを据えた道州制ということになりますし、もっと幅広く、強力にしようとするならば、中央集権国家ということになるのだと思います。
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