2013年04月11日

過去に主張された地下鉄民営化は、何処へ?

 大阪市の柴島浄水場を廃止し、廃止で水供給が不足する大阪市域に、大阪府(現・大阪広域水道企業団)の浄水場から水を供給しようという府市水道事業統合案は、2008年〜2009年の府市水道統合協議の中では、約2800億円の経費削減効果があると主張され、知事・市長選前の2011年7〜9月に大阪府議会に設置された大都市制度検討協議会でも、大阪維新の会提出資料では、1745億円〜1872億円の削減効果が見込まれるとされました。

 でも、橋下市長の下、昨年から行われている大阪広域水道企業団と大阪市の水道事業統合の協議では、「大阪市の柴島浄水場を廃止し、大阪市域に企業団の浄水場から水を供給する統合案」では、削減効果どころか(大阪市への分担金支払いの減180億円を効果から除くと)270億円のコスト増になってしまい、検討対象から外されてしまいました。
(参照:以前の記事「水道事業統合の統合効果が見当たらない」)

 その結果、「大阪市の浄水場は大阪市域に水供給、企業団の浄水場は大阪市以外に水供給」の関係を変えず、企業団と大阪市の水道事業を会計分離する条件で、大阪市の水道事業を企業団へ無償譲渡するという統合案は、統合効果として打ち出す18年間で221億円の経費削減の大半(180億円)が大阪市の減収によるものということもあり、大阪市議会で暗礁に乗り上げています。

 水道事業統合は、当初語られていた統合効果は結局無く、なぜ統合するのかも、よく分からなくなっているのに、メディアはこのような変質を語らず、「水道事業統合は大阪都構想の1丁目1番地」「橋下市長は水道事業統合を実現できるのか!」と囃します。

 今回は「地下鉄民営化」も、過去に主張されたものと変質していないか、見ていきたいと思います。

 地下鉄民営化は、橋下市長や大阪維新の会が、大阪維新の会立ち上げの比較的早い時期から主張しているもので、何パターンかの説明がありますが、比較的まとまった説明で残っているものとして、大阪維新の会大阪市議団発行の広報誌、維新JOURNAL vol.1(2010年8月23日発行)があります。
 その主張を見てみましょう。(掲載元サイト元データ
維新ジャーナル地下鉄民営化.jpg

 主張のポイントは次のようなものです。
〇大阪市の地下鉄料金は、民間より高い。(初乗りで比較して、地下鉄200円、JR120円、民営140円〜150円。梅田・天王寺間で、地下鉄270円、JR190円)
〇地下鉄の料金が高いのは、職員の給料が高いから。
〇民営化すれば、(職員給料の引下げや無駄排除で)運賃の引下げができる
〇運賃の引下げで、利便性の高くなった地下鉄を多くの人に利用してもらうことで、大阪市へ来てくれる人、大阪市で活動する人が増え、大阪市内の施設利用の増加が見込め、経済効果の上昇も期待できる。
〇駅に役所の出張所やフィットネスクラブ、医療機関などの施設を設け、資産運用を行うと共に、市民へ新しいサービスの提供もできる。

 マニフェストでの記述も見てみましょう。
 まず、2011年1月に出された大阪維新の会の統一地方選用マニフェストです。(元データ
--------------------------- 引用開始 ---------------------------
強くて豊かな大阪
大阪府と政令市の再編で以下のようなことができるようになります。
2 市営バス、地下鉄を民営化し料金を値下げします。
3 堺市を含めた地下鉄ネットワークを形成します。
4 地下鉄と私鉄の相互乗り入れを促進し、広域交通網を整備します。

--------------------------- 引用終了 ---------------------------

 次に、2011年11月に出された大阪市長選挙の橋下市長のマニフェストです。
--------------------------- 引用開始 ---------------------------
第2 マニフェスト各論(政策編)
C経営形態の変更(元データ
@ 地下鉄、バス
完全民営化し、民間に開放することで、経営の合理化を図り、私鉄との相互乗り入れ、乗換を推進し、利便性を高めるとともに、運賃の値下げを行います。

第3 マニフェスト各論(統治機構・府市統合本部編)
2.産業振興編(元データ
(2)鉄道
A地下鉄民営化による料金値下げ
 地下鉄の経営形態を変更し、民営化します。時代遅れの経営形態を合理化することで、運賃の値下げを実現します。
B私鉄の乗継・強化
 地下鉄と私鉄との相互乗り入れや乗継強化を図り、利便性を高め、府民全体が利用しやすい環境を整備します。

--------------------------- 引用終了 ---------------------------

話のポイントを改めて整理すると、次の3つかなと思います。
〇地下鉄・市バスの完全民営化を行い、経営の合理化を行う。
〇地下鉄・市バスの運賃の値下げ
〇地下鉄と私鉄の相互乗り入れの推進で、利便性を高める。


 では、今年2月の市議会に諮られた、地下鉄「民営化」案はどのようなものなのでしょう。

 実は、地下鉄「民営化」案を提案するに当たり、「地下鉄民営化のメリットは何か」について、橋下市長は「税金を使う公営企業体から税金を納める民間企業に変われば、その分住民サービスに還元できる」(産経ニュース「市営地下鉄は民営化で『税金を納める側』に?」2013.1.19より)と言い出しました。どういうことなのでしょう?

 主に「地下鉄事業民営化基本方針(案)」(掲載元サイト)から、ポイントかなと思う点を挙げてみます。
〇「地下鉄民営化」と呼称・報道されていますが、大阪市100%保有の株式会社化ですから「民営化」ではありません。一般に三セク会社というのが近いと思いますが、厳密には三セクとは自治体と民間の共同出資会社のことですから、三セクにすら該当しません。(P14
 半官半民の三セク会社も「民間活力の活用」と評価されるかというと、疑問符が付くでしょうから、全官の株式会社を「民営化」と呼んで、「民営化による経営合理化を図る」と謳うのは、実態と掛け離れるように思います。
 なお、地下鉄事業民営化基本方針(案)には、「将来、株式上場が可能な企業体を目指し、完全民営化も目指す」とは書かれていますが、タイムスケジュールもなく、それを考えるのは遥かに将来の市長(大阪都構想がスケジュール通りなら、特別区の区長)という話なので、リップサービス以上には受け取れません。

〇以前の「地下鉄民営化」で一番に推していた、料金値下げは次の通りです。(P20
(「値下げ」は、2014年4月と2015年10月の2段階としていますが、簡単にするため、現行と2015年10月の最終時点の比較のみ行います。)
料金値下げの内容平成27年10月時.jpg

 果たして、この「料金値下げの内容」って、値下げなのでしょうか?消費税の10%への引上げを織り込んでいるとはいえ、値下げは1区と2区の一部分のみで、その他は全て値上げというのでは、「地下鉄料金の値下げ」という言葉だけを新聞やTVニュースで聞いていた人にとっては、「騙された」という思いを持つ人もきっと出てくることでしょう。

 消費税引き上げ分を除いて、「料金値下げの内容」を見てみても、初乗りに近い区間だけを歪に引き下げた、変な「料金値下げの内容」になっています。
 少なくとも、「初乗りで比較して、地下鉄200円、JR120円、民営140円〜150円。梅田・天王寺間で、地下鉄270円、JR190円」といった比較で、大阪市の地下鉄料金が民間より高いと批判したのに見合う、料金引き下げだとは、とても言えません。

〇地下鉄民営化で推していた「料金値下げ」に替わり、「税金を納める組織へ」が強調されるようになります。補助金の削減と共に、大阪市に約50億円の税金と約25億円の配当が期待できると。(P10
 こういう話になる訳が、次の収支見通しを見るとよく分かります。(P37
収支見通し.jpg

 人件費や利子負担で、大幅な費用圧縮を見込むのですが、租税公課(固定資産税、都市計画税、事業税、事業所税)83億円、補助金減51億円、法人税等44億円が大きな負担となって、税引き後利益は167億円から117億円に減ってしまうのです。大幅な値下げ原資など、出てくるはずもありません。(117億円から更に25億円が配当になるので、残りは92億円へ減)

 コスト削減を行った分が株式会社化による税負担で全部食われてしまう状態を、「税金を納める組織になって、大阪市へ貢献するんだ!」と言い換えた訳です。水道統合で水道会計から大阪市の会計へ年10億円が支払われなくなることを「10億円の経費削減効果」と呼んだのと、ちょうど逆です。

〇関連事業への展開は、以前の「地下鉄民営化」で掲げていたものを更に進めています。広告事業や駅ナカ事業に止まらず、沿線事業、沿線不動産事業にまで、事業を広げていくと掲げます。(P22 P26

〇「地下鉄と私鉄の相互乗り入れの推進で、利便性を高める」については、地下鉄事業民営化基本方針(案)を見る限り、具体的な記述は見当たりません。
 府市統合本部会議の検討資料では、四つ橋線と南海電鉄の乗り入れが議論されてますが、両方の線路を走れる車両がそもそも存在しないという問題に、四つ橋線の線路を4本に引き直しが必要で、更に両方を走れる小型ハイブリッド車両の1からの開発から必要という結論ですから、実現性が見出せなかったのかと思います。(以前から指摘されていた、技術的問題を確認しただけに思います。)(府市統合本部資料P57
 それでも何故か、今回の地下鉄「民営化」案を報じるTVニュースなどで、「地下鉄と私鉄の乗り入れが進む」と報じられるのは、不思議です。


 過去に主張された地下鉄民営化と今年2月の市議会に諮られた地下鉄「民営化」案を比較すると、こんな感じで、随分と違うもののようです。


 あと、今議論されている地下鉄「民営化」案について、気になる点をいくつか、挙げてみます。

 まず、地下鉄での利益を、料金の値下げなどに使わず、税金として支払って、大阪市の会計を潤すことは、大阪市民にとって得なのでしょうか?わたしにはかなり損な方法に思うのです。

〇地下鉄会社が税金を支払ったとして、全部が大阪市の会計に回る訳ではありません。国税や府税となり、大阪市民からかなり遠くなってしまう部分も出てきます。
 上で挙げた収支見通しでも、租税公課(固定資産税、都市計画税、事業税、事業所税)で83億円、法人税等44億円と合計127億円の租税負担を見込んでいるのに、地下鉄事業民営化基本方針(案)が掲げる税収増は50億円に過ぎません。(P10

〇50億円の税収増になったとして、大阪市の財源が50億円増える訳ではありません。税収が増えれば、地方交付税が減ってしまうからです。固定資産税や法人市民税など基準財政収入に含まれる税目では、税収増の4分の3が地方交付税の減額で相殺されてしまい、実質4分の1しか増収になりません。
50億円の税目別内訳は分かりませんが、基準財政収入の対象税目が固定資産税や法人市民税など主要な税目のため、小さな割合とは考えられません。基準財政収入対象税目が6割として50億円は32.5億円に、8割として50億円は20億円の増収効果にしかなりません。

〇補助金の削減も、削減したお金を「大阪市の他の事業に活用できる」というのですが、そもそも不要な補助金なら、「民営化」(実質、三セク化)しなくても削減すれば、良いだけです。
ただ、聞くところでは、法律で決められた補助金もあって、全部は削減できないそうです。でも、法律で決められた補助金なら、基準財政需要額に含められて地方交付税の対象になってるはずですから、補助金支出が無くなっても、地方交付税が減るだけで「他の事業に活用」はできません。

 わたしには、「民営化(実質、三セク化)で、地下鉄で出ている利益を運賃値下げに使わず、税金として支払って大阪市の会計を潤す」という方法は、地下鉄会計側でお金が大きく減る割には、大阪市の会計の側で増える額が少ない、かなり損な方法に思います。
 地下鉄事業で利益が出ているなら、地下鉄事業の中で料金の値下げや施設の改修や新路線や市バスを支えるなど市民の足を支える方向で、普通に市民へ還元した方が、良いように思います。
 また、どうしても大阪市の会計で他の事業に使いたいなら、民営化(実質、三セク化)をしなくても、地下鉄会計から一般会計へ直接、納付金として納める方法もあるそうです。(この方法なら、国税や府税もなってしまうことも、地方交付税が減額されることもありません。)


 ただ、「地下鉄での利益を、税金として支払って、大阪市の会計を潤す」のが、効率の悪い方法でも、「地下鉄での利益」が、民営化しないと生み出せないのであれば、効率の良し悪しは関係ありません。果たして民営化で生み出される利益は、税金などの負担を凌駕するのでしょうか?

 橋下市長は、地下鉄と市バスの民営化条例案が継続審議になったことに、(平成26年度から実施予定の初乗り運賃の値下げについて)「民営化が遅れるほど、値下げがどんどん後ろに延びていく」と先送りに言及しました。(元記事

 また、ABCテレビ「キャスト」2013年3月28日放送分で、橋下市長の会見での発言として、次の内容が放送されていました。
橋下市長「民営化のめどが立たないと、(料金値下げは)無理です。だって、民営化が前提なんですから。」
質問の声(じゃあ、値下げを人質にとるといくことですね?)
橋下市長「人質も何も、だって財源が生まれないですもん。民営化が成立しなかったら、料金値下げはできません。」

 では、「民営化」(実質、三セク化)で、どのような財源の捻出を予定しているのでしょうか?
 この内容は、地下鉄民営化基本方針(案)では見つかりません。でも地下鉄民営化基本方針(案)の検討の元になった第14回大阪府市統合本部会議(2012年6月19日)での、地下鉄民営化・成長戦略PTの地下鉄事業の最終報告書では、次のように挙げられています。(掲載元サイト P20
地下鉄民営化収支の要因分析.jpg

 業務改善効果と投資削減効果の合計で128億円ですが、業務改善効果のうち「新基準による効果額」は、「民営化」を必要としない業務改善部分なので、「民営化による効果額」は(両方の効果の混ざった「投資」を全額含めても)86億円ということになります。

 逆に、「民営化」による収支悪化要因は、ここに挙げられている補助金減と租税公課(固定資産税、都市計画税、事業所税、事業税)で、115億円の負担増となります。
 ここに挙げられていないものを地下鉄民営化基本方針(案)で見ると、法人税等は初年度の2015年で44億円(P37)、配当見込みが25億円です。(P10
 これらを合計すると、地下鉄事業からの資金流出額の合計は184億円にもなります。

 「民営化による効果額」よりも、租税などの負担額の方がずっと大きな額です。184億円という資金流出額を考えると、「民営化が成立しなかったら、財源が生まれないから、料金値下げはできません」どころか、民営化した方が料金値下げは、無理に見えます。
 上で説明した2017年10月の中途半端な値下げにも、59億円の値下げ原資が必要なのだそうですが、どのように捻出する見込みなのでしょうか? 


 この「民営化による業務改善効果」の内訳も見てみましょう。(元データ
 (投資は内訳把握が難しく、年間効果は7億円なので除いて考えます)
 民営化による効果額79億円の内訳は、次のようになります。
〇業務見直し、アウトソーシング    9億円(11%)←構成比
〇契約・調達方法の変更       10億円(13%)
〇公的資金を銀行等へリファイナンス 55億円(70%)
〇駅での福祉的対応を市に移管など   5億円( 6%)

 一般的な業務見直しの効果の割合が1割程度(幅広く解釈しても3割)と、かなり少ないことが分かります。これは「業務見直しが少ない」というよりも、民営化以外の効果額で42億円挙げていることから、「民営化」を直接必要としない業務改善が多いと思われます。

 「民営化による業務改善効果」の実に7割は、公的資金の借り入れができなくなるので、民間金融機関や社債発行で借換えたら支払利息の削減ができるというものです。利子負担が0.85%程度引下げられ、年間55億円の支払利息の削減になるとしています。(P24
 わたしは、この数字の妥当性とか分からないので、単純な疑問だけ挙げておきます。
〇公的資金の借り入れができなくなるので、「民営化」で必然的に借換えが発生して、「民営化による業務改善効果」となってるのだと思いますが、この利子負担の軽減が本当に目指すべきものなら、「民営化」せずに借換えをすることはできないのでしょうか?現在でも、1割以上は市場公募や銀行引き受けで資金調達をしています。(基本方針P29
〇ただ、「民営化」せずに借換えができたとして、借換えは本当に望ましいのでしょうか?国や郵貯などの公的資金での資金供給は、巨額資金を安定的に低利で提供しようとするものです。一時的な市中金利の状況だけを捉えて、借換えを「民営化による業務改善効果」とするのは、望ましいのでしょうか?例えば5年後、この調達金利の関係が逆転するなら・・・

 契約・調達方法の変更に重きが置かれ、かなりの経費削減が見込まれていることには、疑問を覚えます。これまで、随意契約を入札に切り替えることで経費削減をしてきたはずが、入札を随意契約に切り替えると更に経費削減ができるんだと言ってるからです。
 「入札より随意契約の方が効率的で効果的な調達ができる」という主張ができることは、分かります。ただ、その前提として、「調達品や調達品の市場動向に十分な知識を持っている」「交渉力がある」「安直に調達しようとせず、熱心に最善の調達を目指す」「業者と馴れ合ったりせず、誠実に最善の調達を目指す」などの条件を、調達担当者が十分に満たしているならということなのかと思います。

 ただ、それができているなら、随意契約を入札に切り替えた時にコスト増が起こっているはずです。そういった話は聞いたことがないことので、10億円の経費削減どころか、コスト増が起こってしまうかもしれません。(ただし、当面の間だけは、調達担当者は入札で決まった今までの価格を示し「これより安くするなら契約してやる」というだけで良いので、すぐにコスト増になるとは思いませんが。)
 少なくとも、次の報道がされているようでは、難しいと思います。
--------------------------- 引用開始 ---------------------------
大阪市:不適切接待で職員2人の処分検討
毎日新聞 2013年03月28日 22時00分(最終更新 03月28日 23時35分)
http://kiziosaka.seesaa.net/article/353158056.html

 大阪市は28日、市交通局が発注した工事の検査で、職員2人が10年、受注業者から飲食接待や車での送迎を受けていたと発表した。職員は便宜を図ったことを否定しているが、市公正職務審査委員会は「接待を暗に求めていたと見られても仕方がない」と指摘。市は処分を検討する。

 昨年10月、市の公益通報制度を通じて情報があり、同委員会が交通局に調査を求めた。

 交通局によると09年12月、南港ポートタウン線の検車場に拡声機を設置する工事を約1700万円で大阪市内の機械設備会社に発注。職員2人は10年3月、拡声機を検査するため、下請け業者の工場がある福岡県内に出張した際、元請け・下請けの2業者から北九州市内の居酒屋やスナックで接待を受けた。職員2人は、スナック代について「払っていない」と供述。1人は「業者とはホテルで偶然出会い、飲食をする雰囲気になった」と釈明したが、もう1人は「ホテルや新幹線の乗車時間を業者に伝えた」と話している。交通局は今年2月、工事内容を再検証したが、問題はなかった。

 一方、同局の調査では07〜12年、検査の際に業者に送迎させていたケースが他に46件あることも判明した。
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 駅での福祉的対応を「市に移管するんだ」として、56人(年5億円)の削減を民営化効果として挙げているのには、絶句です。(P26
 地下鉄が「民営化」後にそんな会社になることを、市民は望んでいないと思います。少なくとも、わたしは望みません。


 関連事業への展開は、以前の「地下鉄民営化」で掲げた話より更に進め、広告事業や駅ナカ事業に止まらず、沿線事業、沿線不動産事業にまで、事業を広げていくと掲げます。

 これと関連し、気になる報道がありました。
--------------------------- 引用開始 ---------------------------
「がめつい」橋下市長は銀行批判も、市民に巨額ツケ 「オーク200」の支払い命令
産経ニュースwest 2013.3.7 23:49
http://kiziosaka.seesaa.net/article/343401851.html

 オーク200(大阪市港区)の土地信託事業をめぐる訴訟で、巨額の支払い命令を言い渡された大阪市。施設運営は銀行団(信託側)に任せ、市側(受益者)は配当だけを得る−。甘く、ずさんな見通しのまま、市が昭和63年から事業に乗り出した土地信託事業計6事業はことごとく失敗に終わり、さらに2つの民事訴訟で巨額の支払い命令も言い渡された(いずれも係争中)。橋下徹市長は「がめつい」と銀行団を批判したが、つけを背負わされるのは市民だ。

 6事業のうち、浪速区の複合娯楽施設「フェスティバルゲート」(破綻)など4事業はすでに売却済み。残る2事業のうち、商業施設「オスカードリーム」(住之江区)については、「オーク200」と同様に銀行団との訴訟で、276億円の支払い命令を受けた=控訴中。

 オーク200は市が63年に銀行側と信託契約を締結。商業施設やマンションなどが入る地上50階のビルなど4棟で構成され、平成5年に全面開業した。しかしバブル崩壊のあおりで収支計画は大幅に狂い、30年契約で市に入る予定の配当計272億円はゼロ。

 テナント入居率は91%(平成23年度末)と悪くはなく、買い物客の姿も見られるが、賃料は「据え置きか値下げを余儀なくされて」(市担当者)おり、収支は悪化。24年3月末時点の負債総額は約684億円に膨らんだ。

 「フェスティバルゲート」や「オスカードリーム」は、市交通局が過去に行った土地信託事業だ。土地信託事業という方法を選択すること自体、自治体がリスクを負うとの解釈が一般的されている。そのため、市側の見通しが甘く、ずさんだった−との批判は免れない。

 7日の判決について、橋下市長は7日の定例会見で控訴の意向を示し、「(大阪市も銀行も当時は)互いにもうけようとした。銀行ががめつく市に請求するのは筋が違う。今更『市が全責任を取れ』というのは市民に失礼だ」などと声を荒らげた。一方で批判は市自体にもおよび、「民間だったら倒産している。給料も払えない。市役所はなんでこんなにだらしないことをやったのか」と話した。
--------------------------- 引用終了 ---------------------------

 大阪市の土地信託事業のオーク200で、巨額損失の支払い命令を大阪市が受けたことを報じるもので、橋下市長が当時の大阪市を強く批判してますが、この件についてはメディアも大体同じ論調で、「巨額事業をするのに、見通しが甘すぎる」「失敗した時のことを考えてなかったのか!」といった感じです。

 その意見に反対ではありませんが、過去の失敗を批判してもやり直せる訳ではありません。この反省を活かすなら、今後、大阪市や市の関連会社が事業展開を行う時、どれだけ慎重に事業の成否を見極め、失敗しないように事業運営を行うか。そして、当初から、失敗した時にそれが許容できるものかどうか見極めておく、などといったことなのだと思います。

 でも、橋下市長もメディアも、大阪市の過去の失敗事業への批判は熱心なのですが、(土地信託事業のフェスティバルゲートで大失敗を犯した交通局なのに)これから行う事業展開に反省を活かそうとする姿勢はあまり見受けられません。
 過去の土地信託事業は、企画・運営をプロに任そうとした分は、まだ慎重だったと思います。地下鉄「民営化」の関連事業展開は、鉄道マンに「コンサルタントを付けるから、明日から不動産屋をやってくれ」と言うような危うさを感じます。

 オーク200やフェスティバルゲートの数百億円の損失を「挑戦したら、失敗することもあるよね。」と、みんなが鷹揚に許せるのなら別ですが、過去の事業の失敗を批判するくらいなら、これから行う事業に、それだけの慎重さを持った方がいいように思います。


 あと、気になることとしては、市バスのことです。
 地下鉄「民営化」は、市バス事業の切り離し・切捨ての性格が一面としてあり、地下鉄「民営化」そのものよりも、市バス事業の民間売却、事業路線と(補助金投入前提の)地域サービス系路線の分割、路線廃止、地域サービス系路線の実用性などなどの方が、市民に直接の影響が大きいです。
 ここに書き切れる問題ではないので割愛しますが、地下鉄「民営化」の是非を考える時、地下鉄そのものより、「では、市バスはどうなるのだろう?」ということに気を配った方が、市民生活に即した判断ができるかもしれません。


 まとめです。
 「料金の高過ぎる地下鉄を完全民営化して効率化し、(私鉄並みへの大幅な)料金値下げ」を主張した、市長選前の「地下鉄民営化」と、「ただの三セク化に過ぎず、多少の効率化も株式会社化による租税負担などに食われてしまって、言い訳みたいな初乗り近辺だけの運賃値下げしかできない。そして、そのことを『税金を納める組織へ』と言い換えて正当化しようする」現在の地下鉄「民営化」案は、別物です。

 地下鉄で稼いだお金を、税金として支払って大阪市の財源として使うのは、あまり効率がよくありません。
 地下鉄で稼いだお金を市民に還元するのなら、運賃値下げなど交通事業の充実で行った方がいいし、運賃値下げを目指すなら地下鉄「民営化」などしない方が良いようです。


・・・もし、この記事を気に入っていただけましたら、お勧め記事のまとめ目次から、他の記事もどうぞ。
   大まかに大阪都構想のことを知りたい方は、まとめブログをご覧ください。
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2013年06月26日

橋下市長の市長選での選挙演説を聴いてみた(敬老パス編)

 以前の記事「10ヶ月前の橋下市長の市長選での選挙演説を聴いてみた」で、橋下市長の選挙演説で話していたことと、その後の実際の大阪市政が随分と違うという話をしました。
 今回は、その敬老パス編です。

 橋下市長が、市長選で敬老パスは維持すると言ってたのに、酷い改悪したというのは今更の話です。

 ただ、わたしは橋下市長が「敬老パスを維持する」と語ったのは何度も聞きましたが、橋下市長の市長選(2011年11月)のマニフェストの敬老パスに関する次の部分を、市長選の中で詳しく説明するのを聞いたことがありませんでした。

--------------------------- 引用開始 ---------------------------
2.市民サービス編(元データ
(4)福祉
A 高齢者向けの敬老パス制度を維持し、さらに私鉄交通、バスでも利用できる制度に改善します。他方で、敬老パス対象外の市民から制度の理解も得れるよう、利用実態に応じた上限額の設定等、制度改善策も行います。
--------------------------- 引用終了 ---------------------------

 ちなみに、大阪維新の会の府・市議選(2011年4月)のマニフェストの敬老パスに関する部分は、次の通りです。(元データ
--------------------------- 引用開始 ---------------------------
 優しい大阪
 特別区(自治区)は、現在大阪市が提供している住民サービスの全て(敬老パス制度を含む)を提供します。また、以下のような取り組みも可能になります。
--------------------------- 引用終了 ---------------------------


 最近、橋下市長が、市長選に際して、敬老パスについて詳しく説明してる動画を教えてもらったので、その説明を見ながら、敬老パスの経過を振り返ってみたいと思います。


 敬老パスについて詳しく説明している動画とは、そのテロップによると「大阪維新の会 区民会議in平野区」(2011年11月5日)の中で、橋下市長と大阪維新の会・大阪市議団団長の坂井良和市議が説明しているものです。
 大阪市長選挙は、2011年11月13日が告示、11月27日が投開票でしたから、実質的には選挙戦、真っ只中でのお話です。

 こちら「大阪維新の会 区民会議in平野区」(2011年11月5日)に該当部分の書き起こしと、動画へのリンクを張っています。
 動画のうち、冒頭10分程度の説明ですので、橋下市長の名調子で、先に一度、聞いていただくことをお勧めします。

 敬老パスに関する部分のポイントを挙げると、次のようなものです。
○敬老パス制度は維持をする。
○敬老パス制度を交通局の赤字補填のための制度ではなく、高齢者のための制度に変え、JRや私鉄でも利用できるようにする。
○ただし、JRや私鉄で利用可能にするに当たっては、現在ある「1ヶ月8万円」といった非常識な利用がされると持たないので、常識的な線での上限だけ設定する。
○「1ヶ月8万円」といった非常識な利用に対して、常識的な線での上限を設定し、今までそれに充てられていた税金は、中学給食などの原資に考えたい。
○敬老パスの利用実態は、オフピーク時間帯の利用が中心なのに、正規運賃で利用料金を支払っているのはおかしい。大幅な割引をさせ、現在80億円の負担を5割引や9割引にして、残りを私鉄でも使えるようにするような工夫が、民営化すれば、できる。


 さて、「1ヶ月8万円といった非常識な利用に対して、常識的な線での上限設定」というのを、言葉通りの解釈するなら、どういった「上限設定」が考えられるでしょう?
 言葉通りに解釈するなら、次の2つの条件を満たすものだと思います。
○常識的な利用を行っている、大多数の敬老パスの利用者に影響を与えるような上限とはしない。
○敬老パス利用者の中でも、突出して利用額の多い利用者を制限対象とする上限設定とする。

 橋下市長や坂井市議は「1ヶ月8万円」の利用を常識から外れた利用として、平成22年度の敬老パスの利用額分布から見ていくと、「年間」20万円を超える利用というのは、利用者の1%に過ぎません。これから言えば「上限20万円」で良さそうなものですが、考えれられる案をいくつか挙げておきます。

年間20万円以上利用者 全体の1% → 1%を制限対象として年間20万円を上限
年間10万円以上利用者 全体の6% → 5%を制限対象として年間10万円を上限
年間7万円以上利用者 全体の10% →10%を制限対象として年間7万円を上限


 では、2011年12月末に橋下市長が、市長になって以降の動きを見ていきます。

 2012年2月、大阪市は平成24年度(2012年度)予算で535億円の財源不足が発生するとし、橋下市長の方針通り「補填財源に頼らず、収入の範囲で予算を組む」形を続けたと仮定すると、今後10年間にわたり、毎年度約570億〜180億円の財源不足が生じることがわかったとしました。
 平成24年度は、不用地の売却など補填財源による収入を見込むが、大阪市は「こうした収入をあてにせず、収支不足を解消したい」としました。(元記事

 2012年4月、橋下市長が敬老パスに半額負担を求めるとして、次のように報じられました。
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橋下市長が敬老パスに半額負担求める 事業は維持
産経ニュース 2012.4.1 19:23
http://kiziosaka.seesaa.net/article/261740585.html

 大阪市の橋下徹市長は1日、70歳以上の市民が市営地下鉄・バスに無料で乗車できる「敬老パス」事業に関し、JRや私鉄でも利用可能にする一方、利用額半分の自己負担を求める考えを表明した。市の財政負担を抑えるため、利用限度額を設定する意向も示した。

 昨年11月の市長選公約でも制度見直しを掲げたが、半額の自己負担に言及したのは初めて。7月の本格予算編成に向け、利用限度額など制度設計の詳細を検討するとみられる。

 市によると、敬老パス事業の昨年度負担額は約80億円。市長就任後初の12年度当初予算では4カ月分の約28億円の計上にとどめ、事業自体を見直す方針を打ち出していた。

 市長率いる大阪維新の会市議の会合で「どんどん高齢者が増えると、予算にして100億円以上のお金が掛かることは目に見えている」と指摘。JRや私鉄の利用を前提に「半額さえ負担してくれれば、場合によっては東京まで行ける。ただ上限は付ける」と述べた。
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 2012年4月、大阪市は、財政難を踏まえ、市独自の福祉事業や施設を廃止し、歳出削減効果を見込む市政改革プランの試案を公表しました。
 この発表に当たり、橋下市長はに「市民は認識していないかもしれないが、至る所で非常にぜいたくな住民サービスを受けている。標準レベルに落とさせてと訴える」と述べました。(元記事

 この市政改革プラン(試案)で示された敬老パスの見直し内容を次の通りです。(元データ
1案 民鉄拡大・利用額の50%負担・上限2万円(予算89億円に対する削減効果50億円)
2案 交通局限定・利用額の50%負担・上限なし(予算89億円に対する削減効果48億円)
3案 交通局限定・利用額に対する負担なし・上限なし・所得に応じて年間千円〜2万円を負担(予算89億円に対する削減効果14億円)


 試案に対し、市役所内部や議会との調整を行い、市民に示すものとして2012年5月に示された、市政改革プラン(素案)での敬老パスの見直し内容は、次の通りです。(元データ
1案 民鉄拡大・利用額の50%負担・上限2万円(削減効果50億円)
2案 交通局限定・利用額の50%負担・上限なし(削減効果48億円)
3案 交通局限定・利用額に対する負担なし・上限なし・所得に応じて年間千円〜2万円を負担(削減効果14億円)
4案 交通局限定・交通局シニア割引を12.3%から50%に拡大・上限なし・課税世帯5千円、非課税世帯3千円を毎年徴収(削減効果額50億円)
5案 交通局限定・利用額の30%負担・上限なし・課税世帯5千円、非課税世帯3千円を毎年徴収(削減効果額42億円)

 この見直し案に対しては、大量のパブリックコメントなどで市民からも強い反発が示されました。そして、議会対策として特に公明党市議団との調整の中で見直し案がまとめられました。

 2012年7月に決定された市政改革プランの中での敬老パス見直し内容は、次の通りです。(元データ
○交通局限定・利用1回につき50円を負担・上限なし・3千円を毎年徴収(削減効果額28億円)
なお、2013年度は年額3千円徴収のみで、利用1回につき50円負担は実施せず。完全実施は2014年度から。

 なお、この協議の途中で橋下市長は、次のように発言しています。
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【橋下日記】(12日)「敬老パスゆくゆくは半額負担で」
産経ニュースwest 2012.6.12 21:28
http://kiziosaka.seesaa.net/article/274772038.html

 午前9時 登庁。70歳以上の市民が大阪市営地下鉄・バスを無料で無制限に利用できる「敬老パス」の利用者負担のあり方について「子供でも半額負担している。高齢者も半額負担するのが納得できる話。いきなり半額というわけにはいかないが、ゆくゆくは半額負担もあると思う」と話す。

 同5分 庁内執務。

 午後4時 松井一郎知事と打ち合わせ。

 8時40分 退庁。
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 2012年10月、衆院選を念頭にした橋下市長の全国遊説の中で、鹿児島市では橋下市長は、次のように述べられていたそうです。
「大阪市なんて、僕が市長になるまで地下鉄もバスも高齢者は全部タダ。こんなバカみたいな政策をずっとやり続けているんですよ」(元記事

 また、2013年6月東京都議選で橋下市長が応援演説をした中でも 「大阪では70歳以上は市営地下鉄、市営バスは無料でした。それを私は改革で有料にしました!」という発言があったと、ネット内での情報ですが伝わっています。


 2013年6月、敬老パスの年間3千円徴収が始まり、区役所窓口などに2万間を超える苦情・問い合わせが殺到しました。(注:1回利用50円負担は、まだ翌年度から。)
 これに対して橋下市長は「ある意味、大阪市政改革の改革の象徴になると思います。」「一部のご負担はやっぱり、お願いしないといけませんから、それこそ、受益と負担の明確化でね、この負担をするんだったら、このサービスは要らないとか、この負担をしてでも、このサービスは要るとか、これは住民のみなさんの選択です。」と述べられました。(元記事


 2013年6月、東京都議会選挙の応援演説のひとコマとして、橋下市長が次のように力強く語る姿が放送されていました。
「本気の改革をやるには、日本維新の会しかできない。選挙前であろうとも、皆さんに良いことばかりは言わない。」(毎日放送、報道特集2013年6月22日放送分)

 「選挙前であろうとも、皆さんに良いことばかりは言わない」なんて、上記の敬老パスの経緯を知ってると「噓つけ!」って気持ちになります。


 選挙前、敬老パスを維持すると語っていたことが、財政難でどうしても守れなかったのだとしたら、せめて敬老パスの改悪を「改革の成果だ!」と誇ったりせず、有料化への苦情・批判へは、謝罪で応じて欲しいです。
 まあ、橋下市長の言動を聞く限り、「敬老パスの維持を約束した」という意識は、もうどこにも無いようですが。


(追記1)
 財政難を掲げて、市の福祉事業や施設の廃止などの市政改革プランを打ち出す中で、敬老パスの制度改悪も打ち出したのですが、その大阪市の財政難についても、いくつかの情報を補足します。

 大阪市が財政難を言い出したのは、橋下市長が市長就任2ヶ月の2012年2月ですが、大阪市の財政難について、橋下市長は市長選マニフェストの中で、方針を明確に示しています。(元データ
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(3)財政改革
@ 大阪市の財政状況
大阪市の地方債残高は、平成21年時点普通会計で2兆7千9百億円であり、全会計では、5兆1千億円にのぼっています。
市税収入についても、平成21年時点で合計6236億円であり、平成8年度と比較して1550億円もの減収となっいます。特に法人市民税については、平成元年当時2482億円であったものが、平成21年度は1034億円となり、6割程度もの大幅減少となっています。
地方税等の経常的な一般財源が、人件費等の経常的な経費にどの程度充てられているかの指数である経常収支比率については、平成21年度100.2%となっおり、100%を超えています。
これは、義務的経費以外に使える財源にまったくの余裕がないことを物語っています。

A 財政改革
このような硬直化した大阪市の財政状況にかんがみれば、現行の大都市制度で持続的発展を期待することは不可能であり、大阪都構想ももとより、既述の市役所改革等様々な構造改革を抜本的に行い、人件費1年以内に約1割、将来的に約3割以上削減することで、約1200億円の財源をねん出するともに、市税収入を高めるような積極的な経済施策を大阪都で行う必要があります。
また、これに加え、次のような財政改革を行う必要があります。
@ 大阪市は大阪市内の約4分の1の土地を保有しているところ、不要な資産を売却し、未利用地を売却することで財源をねん出します。
A 大阪市が所有する公共建物の管理形態を改め、管理費コストを改善します。
B 大阪都が実現するまでの間、現在の24の行政区を市内8〜9にブロック化して、合理化を図ります。
C 市債残高の削減目標値を設定して大幅に減らします。
D 補助金、交付金制度を見直します。
E 大阪府と同様の新公会計制度を導入します。
F 都市計画道路、公園計画の見直しを迅速に行います。未利用地の売却を推進 します。
G 未収金の収納対策を強化します。
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 このマニフェストと市政改革プランとの矛盾をいくつか指摘しておきます。
○市政改革プランに当たり、年間500億円程度の収支不足(市職員の府並み給与カットによる66億円の削減反映済)を問題とするのですが、マニフェストに掲げる人件費削減で1200億円が(全部でなくても)実現するなら、年間500億円の収支不足を問題にする必要はありません。
○マニフェストでは未利用地売却を財源捻出のひとつの柱に掲げていますが、未利用地売却は補填財源に当たります。市政改革プランが解消すべきとする年間500億円程度の収支不足は「補填財源に頼らず」としていますから、財源捻出方法と財政再建の指針が、全くずれています。
○マニフェストでは機構改革による無駄削減(A、B)をひとつの柱に掲げていますが、そういう方向性での財源捻出が示されないまま、マニフェストにはどこにもない、福祉事業や施設の廃止などが主体の市政改革プランが、進められることになりました。


 市政改革プランと財政再建の関係にも、いくつか指摘しておきます。
○市政改革プランは、年間500億円程度の収支不足を解消する必要があるとして打ち出されましたが、市政改革プランによる削減額は、最終年次で年間226億円に止まります。当然、更に市政改革を打ち出し、収支不足をゼロにする「財政再建案」を打ち出すはずなのですが、その気配はありません。
○財政再建は、市民に直接影響する福祉事業や施設の廃止・削減だけでなく、市民へ影響を与えない事務・事業の見直しや人員配置の見直しによる人件費削減(=無駄の削減)に優先的に取り組むのが普通です。
 ところが、大阪市では、先に打ち出した市職員の府並み給与カットによる66億円削減を除くと、市政改革プラン以外の財政再建案の項目が出てこず、更に市長肝いり政策が次々と出され、新規事業による支出の蛇口も締まっていない状態です。
 そのため、2013年3月に示された財政収支の見通し(元ページ)を見ると、平成25年度から平成34年度までの平均収支不足の見込み額は、平成24年2月現在の平均440億円に対して、平成25年2月現在で平均323億円と、収支改善は117億円に止まります。市民に直接影響する福祉事業や施設の廃止・削減などの市政改革プランで年間226億円の削減をしたはずなのに。

 2013年2月、橋下市長は、平成25年度(2013年度)予算案の発表に当たり、平成25年度は346億円の収支不足の見通しに「(収支不足を解消して)住民サービスに切り込むのは無理」と述べ、収支不足を「任期中にゼロにするつもりはない」としました。(元記事

 多分、「収入の枠内で予算を組むことを財政運営の基本方針」と掲げてたはずの橋下市長が、再び思い出したかのように「収支不足が問題だ!」「お金が足りない!」と言い出すのは、市民に負担を押し付けたい事案が出てきた時なのだろうと思います。


(追記2)
 最初に紹介した市長選に際しての橋下市長の敬老パスの説明で、「地下鉄民営化が実現すれば、敬老パスの利用者に大きな負担をかけることなく、敬老パスの予算を大幅に削減し、敬老パスの拡充(や他の予算へ振り向ける)ための財源を生み出すことができる。」としていたのは、どうなったのでしょう?

 2013年2月に示された「地下鉄事業民営化基本方針(案)」(掲載元サイト)では、何も記されてはいません。
 地下鉄民営化が実現すれば、敬老パス改悪を止められるなら、橋下市長はもっとメリットとして強調しそうなものですが、有料化への苦情・批判に対するコメントを見ても、全く考えてなさそうです。

 そもそも、オフピーク利用が中心の敬老パスに料金割引を求めるなら、民営化を待たなくても、部下の交通局長へ検討を指示すればいいだけです。
 例えば、交通局のシニア割引を50%に引上げ、残った50%を敬老パスの予算で補填するなら、敬老パス利用者へ負担を求めず、敬老パス予算の削減を実現し、市議会の抵抗も無かったと思います。
 ただ、そういった検討をした形跡は見当たりません。


(追記3)
 最初に紹介した市長選に際しての橋下市長の敬老パスの説明って、それだけを聞くとそれらしく聞こえます。
 (最初聞いただけで、明らかにおかしいと思われる発言もありますが、)橋下市長の、こういった「それらしく聞こえる」発言に対しては、その発言だけを捉えて反論を試みるよりも、時系列を追いながら反論を試みる方が「おかしな点」が分かり易いことがあるようです。
 橋下市長の「それだけを聞くと、それらしく聞こえる」説明のひとつの問題点は、「その説明を聞いて期待されるものが、多くの場合、実現されない」ということなのですから。


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posted by 結 at 08:00| Comment(0) | 市政 | 更新情報をチェックする
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