2012年05月20日

大阪市・市政改革プランの改革規模は1786億円?それとも500億円?

 4月に市政改革プランの試案が打ち出されてとして、次の記事が報じられました。
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大阪市「3年で548億円削減」 高齢者に厳しい改革案
朝日デジタル 2012年4月5日13時51分
http://kiziosaka.seesaa.net/article/262505565.html

 大阪市は5日、市政改革プランの試案を公表した。財政難を踏まえ、市独自の福祉事業や施設を廃止し、2014年度までの3年間で約548億円の歳出削減効果を見込む。橋下徹大阪市長は「現役世代の重視」を掲げており、高齢者や低所得者には厳しい内容のリストラ策となりそうだ。

 橋下氏は、5日の市戦略会議で試案を了承。報道陣に「市民は認識していないかもしれないが、至る所で非常にぜいたくな住民サービスを受けている。標準レベルに落とさせてと訴える」と述べた。

 市は今後、地下鉄運転士ら現業職員の給与カットや外郭団体の統廃合、新たな歳入確保策などを盛り込んで6月に成案をまとめ、7月に開かれる臨時市議会に提出する方針。

 市は2月、今年度の一般会計の収支不足が535億円にのぼり、今後10年は500億円規模の収支不足が続くと試算。「民間でできることは民間に」「現役世代への重点投資」を基本方針に、1億円以上の事業について総点検してきた。

 この結果、比較的手厚かった住民サービスは、横浜市や神戸市など他の政令指定市の水準に合わせ、各種団体への補助金も443事業のうち104を廃止、削減するとした。
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 一般会計の通常収支(収入から、土地の売却代金や蓄積基金を取り崩した収入を除いた収支)が、毎年500億円ほど不足するから、大阪市民の「贅沢な」住民サービスを削減・廃止して、3年間で548億円(最終年度で年間288億円)の歳出削減を打ち出しますよ、という話でした。
 現業職の給与カットや外郭団体の統合で、更に歳入確保をするともしています。

 この発表から1ヶ月、主に市役所内で事業の担当部局と協議して(また、市民や市議さんの反応も見て)、5月に市政改革プランの「素案」が発表され、新聞の記事では次のように報じられました。
(1768億円の記事)
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橋下行革、3年で1768億円捻出 現役世代に重点投資
朝日新聞デジタル 2012年5月11日
http://kiziosaka.seesaa.net/article/269613653.html

 大阪市は11日、今年度からの3年間で市が取り組む行財政改革をまとめた「市政改革プラン」の素案を発表した。人件費カットや市民サービスの見直しで最大1768億円の財政効果を見込み、中学校給食の実施など新規事業に振り向ける。橋下徹市長が掲げる「現役世代への重点投資」を反映し、市民の意見や来週開会の市議会での議論を踏まえて6月中に成案をまとめ、7月編成の本格予算案に盛り込む。

 橋下氏は11日、報道陣に「素案は住民サービスに直結しており、様々な意見を聞いて総合判断した」と述べた。

 市長直属の改革プロジェクトチーム(PT)は4月、1億円以上の445事業のうち106事業を廃止・削減する改革プランの試案を公表。その後、担当部局とPTの討論を踏まえ、区民センターを34館から9館に絞る当初方針を修正して全館存続させるほか、反発が大きい70歳以上が市営地下鉄やバスを無料利用できる敬老パス制度の見直しについては、自己負担や上限額を設定する五つの案を提示。市民の意見を募る。

 素案では、2014年度までの3年間で、事業費の見直しで488億円の財政効果を見込むほか、人件費の削減で408億円、不要な市有地の売却で554億円をそれぞれ確保。外郭団体との競争性のない随意契約266億円も見直し対象とし、団体数も72団体(昨年度)を半数以下にするとした。
市政改革プラン財政効果.jpg
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(488億円の記事)
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大阪市:市政改革素案 歳出削減、60億円圧縮 反発考慮、収支均衡遠のく
毎日新聞 2012年05月11日 大阪夕刊
http://kiziosaka.seesaa.net/article/269614176.html

 大阪市は11日、今年度から3年間で市民サービスに関わる106事業を廃止・縮小し、計488億円の歳出を削減する「市政改革プラン」の素案を公表した。市の改革プロジェクトチーム(PT)が4月に公表した事業見直しの「試案」をたたき台に、担当部局との議論や議会の要望を反映した。区民センターの統廃合を白紙に戻すなど、削減額を試案より約60億円圧縮した。市民負担が緩和される一方、橋下徹市長が目指す財政収支の均衡は遠のいた。

 橋下市長は11日、「市は基礎自治体なので住民サービスに直結している。さまざまな意見を聞いて総合判断する」と述べた。29日まで市民の意見を募るパブリックコメントを実施し、6月上旬に改革プランの成案を作成。7月の議会に議案として提出する。

 PTは4月、3年間で計548億円削減する試案を公表した。高齢者が無料で市営地下鉄・バスを使える「敬老パス」は、利用者の半額負担など3案を提示し、区民センターは34カ所から9カ所程度に統廃合するとした。上下水道基本料金の減免廃止や、新婚世帯家賃補助の新規募集停止など市民生活に影響が大きく、市民や議会から批判が相次いだ。
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 上の「1768億円の記事」では、改革プランが「素案」になって、最大1768億円の財政効果となったとしています。4月の試案が548億円の削減ですから、比較すると3倍以上の財政効果を上げる改革になったという報道です。(他の新聞の記事やTVニュースでも、こちらの方向性が多かったように思います。)

 下の「488億円の記事」では、議会の要望などで、改革プランの「素案」は、4月の試案548億円より60億円圧縮され、歳出削減は488億円に減少するのだそうです。
 そのため、市民の負担は緩和されるけど、橋下市長の目指す(土地売却代金や基金の取り崩しの収入を除いた収支での)収支均衡は遠のいたのだそうです。

 上の「1768億円の記事」と下の「488億円の記事」では、同じ市政改革プランの「素案」に対して、全く違うことを言ってるように見えます。
 「この二つの記事、何か変だなぁ」というところから、市政改革プラン(素案)について、今回は見ていきたいと思います。


 どうやら、記事で使われている数字は、市政改革プラン(素案)の中のこの表の数字ようです。(オリジナルはコチラ
取組見込額11.jpg
(表の注釈 ※1〜5)
※1
・大幅な人件費削減効果をスピーディに得るべく、特例減額(いわゆる給与カット)により、平成24年度当初から人件費を削減(一般会計第1部ベースの効果見込額 ▲約66億円
・なお、効果見込額の()内の額については、財政収支概算(粗い試算)に既に織り込み済みのため、通常収支不足に対する効果見込額には算入していない。
・また、この改革取組期間終了後も人件費削減効果が得られるよう、今後も引き続き人員削減や現業職員等の見直しに取り組む。
※2
・取組見込額については、競争性のない随意契約の見直し対象額であり、この金額の全てが削減されるものではない。
・効果額については、今後の取組による決算額の検証を踏まえ確定するものであることに加え、「施策・事業の聖域なきゼロベースの見直しと再構築等」などと重複するものもあるので、通常収支不足に対する効果見込額には算入していない。
※3
取組見込額及び効果見込額については、平成24年度通年見込みベース
※4
個別実施計画策定時に算定
※5
・効果見込額の()内の額については補てん財源のため、通常収支不足に対する効果見込額に算入していない。
・また、平成24年度の効果見込額からは特定財源分(72億円)を除いている。


 上の表が「取組見込額」となっていて合計1748億円、下の表は「通常収支不足額(500億円)に対する効果見込額」で合計505億円。
 「1768億円の記事」は上の表の数字を「財政効果」の額としていて、「488億円の記事」は、上下の表で共通する「施策・事業の聖域なきゼロベースの見直しと再構築等」の項目の数字を使って報じてるようです。
 でも、上の表の「取組見込額」と下の表の「効果見込額」、数字に大きな開きがありますが、どう違うのかはよく分かりません。
 なので、項目を一つずつ見ていきたいと思います。

 まず、「人件費の削減」です。
 上の表では、毎年136億円、合計408億円が計上されていますが、下の表では毎年66億円が()書きになっていて、下の表の全体の合計には計上されず、上の表と下の表で大きな差がある、大きな要因となっています。

 この人件費削減の「136億円」というのは、今年1月に発表し当初予算にも計上済みの「大阪府並みへ14〜3%の給与カット」(当時の記事はコレ)のことです。
 下の表が66億円になってるのは、給与カット136億円のうち、税金から給料を支払っている職員さんの給与カット分(一般会計分)が66億円ということで、この分は住民サービスに使ったり、収支不足の補填に使ったりすることができます。
 136億円と66億円の差額の70億円は、例えば水道のような事業会計から、給料を支払っている職員さんの給与カット分なのでしょう。この分は、水道会計なら、基本は水道料金から支払ってる給料なので、給与カットをしても水道事業のためにしか使えません。(住民サービスの財源や、一般会計の収支不足の補填に使うことはできません。)そのため、差額の70億円は計上しないのでしょう。

 66億円が()書きになっていて、下の表の全体の合計に計上されていないのは、この給与カットが今回の改革プランで新たに実施するものではなく、500億円の収支不足だとした2月の「今後の財政収支概算」の段階で、66億円の給与カットを計上した後の数字だからです。(平成24年度当初予算では、66億円の給与カットの他に、記事によると[当時の記事はコレ]172億円の歳出増もあったようです。)

 つまり、上の表の人件費削減136億円は、既に実施済みのもので今回の改革プランで行う訳じゃないし、全額が行政サービスや収支不足のための財源になる訳じゃないけど、それだけの給与カットをしたのは間違いないから、成果として挙げておこうというもののようです。
 でも、今回の改革プランの中で、500億円の収支不足を改善する効果額はゼロだから、下の表では()書きだけしておいて、全体の効果額には含めないでおこう、ということのようです。


 次に「外郭団体との競争性のない随意契約の見直し」を見ていきましょう。
 でも、これが何とも奇妙な数字なのです。
 上の表では合計266億円を計上していますが、下の表では実施してみないと効果額が分からないとして、全体の効果額に計上されていません。

 「1768億円の記事」でいう「最大1768億円の財政効果」というのは、「外郭団体との随意契約の見直し」で、契約額を266億円削減できた場合の数字です。別の記事では、この部分を「OB再就職の受け皿となっている外郭団体への事業発注について、割高になりやすい随意契約を見直し、発注額を最大266億円減らす。」と説明しています。

 でも、表の注書き(※2)でこの項目について「取組見込額については、競争性のない随意契約の見直し対象額であり、この金額の全てが削減されるものではない」とされています。
 つまり、266億円とは外郭団体との(見直し対象にする契約の)契約金額の全額であり、(競争入札に切り替えや値下げ交渉をするなどの)見直しで何割か安くなることはあるかもしれないが、266億円の削減とは、現在、合計266億円で契約してる事業を全部無料で契約できた場合なので「絶対にない」と言ってるのです。

 その点を理解すると、上記の記事の「最大1768億円の財政効果」とか「随意契約を見直し、発注額を最大266億円減らす。」の説明が「誤った説明」であることが分かります。

 「人件費の削減」の項目も、「施策・事業の見直しと再構築等」の項目も、(人件費の全額や施策・事業予算の全額ではなく)削減額を書いているのに、「外郭団体との随意契約の見直し」は削減額でなく「契約額の全額」を挙げてしまっているので、削減額と契約額全額を足してしまった1768億円が、意味不明の数字になっているのです。
 意味不明でも何でもいいから、市政改革プランと共に報じられる数字ができるだけ大きくなるように、契約額の全額266億円を上の表に計上したのでしょうけれど、報道では1768億円は(表現は様々でも結局)削減額として報じられてますから「誤報」が市民に伝えられていることになります。


 次に「未利用地売却収入」です。
 上の表では合計554億円が計上されてますが、下の表では合計482億円が()書きで挙げられるだけで、全体の効果額には計上されていません。

 わたしは、「未利用地売却収入」を今回の改革プランに計上するのは、2つの意味でおかしいと思っています。

 一つ目は、今回の改革プランを必要だとした500億円規模の収支不足とは、「補填(ほてん)財源に頼らず、収入の範囲で予算を組む」(元の記事はコレ)として、「税収のような毎年の収入とはいえない」基金の取り崩しや未利用地売却収入を除いて計算した時の収入の不足額です。
 未利用地売却収入は、毎年150億円程度ありますから、これを収入に含めるなら、元々、不足額は350億円程度なのです。

 未利用土地売却収入を自治体収入として、当てにしていいかどうかは、様々な考え方がある部分に思います。
 でも、「未利用土地売却収入は除いて計算するべきで、そうすると500億円規模の収支不足だ!」「だから収支改善が必要だ」としながら、未利用土地売却収入を改革プランの取組額に計上したり、効果額に表記するのは、おかしいでしょう。

 二つ目は、未利用土地売却収入は、別に新たな収入ではなく、これまでからあった収入です。昨年度も146億円、今年度も当初予算時点から182億円計上されていて、500億円が収支不足になるとした2月の「今後の財政収支概算」でも、平成25年度から平成30年度で840億円(年平均140億円)を予定しています。(元資料はコレ
 元々予定されている収入を、新たに収入確保を行ったかのように、改革プランの取組額に計上するのは、おかしいでしょう。


 大きなものとしては、以上の3項目を疑問に思います。
 「人件費の削減」(408億円)は、今回の改革プランでの取り組みではない。
 「外郭団体との随意契約の見直し」(286億円)は、見込みが立てられず計上できない。(下の表の効果見込額で「決算額を踏まえて毎年度確定」として見込額を計上してないのはそういうことです。)286億円の財政効果はありえない。
 「未利用土地売却収入」(554億円)は、元々「除いて収支改善を図る」がスタンスだったし、元々予定されていた未利用土地売却収入を取組額に計上するのはおかしい。

 上の表の1768億円から、この3項目(合計1248億円)を除外すると、520億円で、下の表の効果見込額505億円とほとんど差はなくなります。

 結論として、これまで見てきた考え方からすると、上の表の「市政改革プラン(素案)に基づく取組見込額」1768億円は意味のある数字とは考えられず、「最大1768億円の財政効果」とか「最大1768億円のリストラ効果」といった報道は、「誤報」の類と思われます。

 下の表に挙げられた「市政改革プラン(素案)に基づく効果見込額」の505億円(最終年度、年間266億円)が、今回の改革プランの改革規模と捉えるのが良いようです。(ただし、未利用土地売却収入の項目は表記だけでもおかしいですが。)
 橋下市長は今回の市政改革プラン(素案)を「知事時代にやった3年9カ月分の改革を詰め込んだ。難しかった敬老パス事業の改革案が入っており、自治体としてこれ以上のものを出すのは無理。」(元記事はコレ)とまで自画自賛されてますので、改革規模をできるだけ大きな数字で、報道させたかったのでしょう。
 3年間で累計505億円(最終年度、年間266億円)の改革規模で、住民サービスを削減・廃止しまくるというのでは、関・平松市政当時の市政改革と比較すると、かなり見劣りしてしまいますから。


 「488億円の記事」や市政改革プラン(素案)そのものにも、つっこみたい点があるので、もう少し、続けます。

 「488億円の記事」の記事で「区民センターの統廃合を白紙に戻すなど、削減額を試案より約60億円圧縮した。市民負担が緩和される一方、橋下徹市長が目指す財政収支の均衡は遠のいた。」とあるのですが、違うかなと思う点があるのです。

 まず、「橋下徹市長が目指す財政収支の均衡は遠のいた。」というのですが、橋下市長のいう「収入の範囲で予算を組む」の計算方法で年間500億円の収支不足に対し、今回の改革プランで財政収支均衡を目指すというのですが、試案の時で収支改善額は最終年度で年間288億円、素案では補助金の削減なども含めて年間266億円。
 500億円の収支不足には全然足りなくて、素案で若干減ったとはいえ、収支均衡といえるような案は、試案の時から元々示せていないのです。

 次に3年間で約60億円の圧縮は、「区民センターの統廃合を白紙に戻すなど」と議会や市民に配慮した結果のように報じられています。ここにも疑問があります。

 国民健康保険の見直しですが、試案時がコレです。そして、素案時でコレです。

 比べてもらうと分かりますが、見直し内容は何も変わっていません。なぜか、試案から素案になって、当初の予算額が11億2300万円減っていて、効果見込額が年間10億円減るのです。結果、3年間の効果見込額は、これだけで20億円減っています。

もうひとつ、市民病院への繰出金ですが、試案時がコレです。そして、素案時がコレです。

 色々と書いてあって分かり辛いのですが、「一床あたりの繰出金の額を府の水準並みにする」という見直しの考え方は何も変わっていません。ただ、素案になって大阪府と大阪市で単純比較できない点を補正すると、試案の効果見込額、年10億円が、素案では5億円に減るそうです。結果、効果見込額の累計は、試案の21億円に対して素案10億円の削減と、11億円減っています。

 どちらも資料を見る限りでは、市民からすれば誤って過大に効果見込額を計上した分を、訂正しただけに見えます。改革案の数字が誤って過大になっていたら、修正するのは当然ですが、それにしても金額が大き過ぎます。
 素案になっての歳出削減の圧縮が全部で60億円ですから、国民健康保険と市民病院の数字の訂正の31億円が半分を占めることになってしまいます。(記事で見直しの代表に挙げられた区民センターの廃止中止が5億円(うち一般財源4億円)です。)

 こんなので「市民負担が緩和される一方、橋下徹市長が目指す財政収支の均衡は遠のいた」なんて記事に書かれても、圧縮額の半分は誤って過大に計上した数字を訂正しただけだろうと突っ込みたくなります。


 市政改革プラン(素案)自体にも、いくつか突っ込みです。

 前々回の記事「維新の会のマニフェストは市民サービスをどう言ってたか」で「マニフェストに書いてない住民サービスの削減・廃止なんて言い出すのは、マニフェストに書いてある財政改革を全部やって、その結果を報告してからだろう」と書きました。
 その話と似てますが、上の「市政改革プラン(素案)に基づく取組見込額」の表でも、人員削減や施設の維持管理費の抑制は、まだこれから考えるとしてます。外郭団体統合による経費削減も、まだこれからのようです。
 住民サービスの削減・廃止だけ先に、ばっちり中身を決めて示されたのですが、それ以外は、スローガンだけで中身のはっきりしない話ばかりに見えます。
 普通、こういう住民に負担を伴う住民サービスの削減・廃止なんて、他にできる改革を、まず全てやって、それでも足りない部分がどうしても残るから、どうしても足りない分を、住民サービスの削減・廃止で負担して欲しいという話に思うのです。
 今やってるのって、「大阪市民の住民サービスって、俺の感覚だと贅沢極まりないから、名目だけ理由が付けば、いくらでも削っちゃっていいや」という風にしか見えません。

 また、次の表は、以前の記事「橋下市政の『お金が足りないから、住民サービスを下げる』を考える」で使った、関・平松市政の時の行財政改革計画(平成18年度〜22年度)ですが、これを見ると、いくつ思う点があります。
行財政改革計画(平成18年3月)の目標と達成状況.jpg

 関・平松市政の行財政改革計画が5年計画、橋下市政改革プランが3年計画の差はありますが、年間削減額の規模が橋下市政改革プラン(素案)が266億円(人件費削減の66億円を加えても332億円)に対して、関・平松市政の行財政改革計画が計画2287億円(達成額2719億円)だから、1桁違います。

 それに、橋下市政改革プランって、公共事業費の削減が無いんです。公共事業費を減らしたくないのかもしれませんが、わたしの感覚だと、歳出削減の優先順位って、無駄の削減>公共事業の削減>住民サービスのカットの順だと思うので、これだけ大規模な住民サービスの廃止・削減を打ち出しながら、公共事業費の削減がないのって、不思議に思います。

 また、橋下市政改革プランって、今回の改革プラン(素案)にも「ムダを徹底的に排除」って書いてあったり、スローガンとしては聞くのですが、ムダの排除が取り組みや実績に見えてこないのです。
 関・平松市政の行財政改革計画の「経常的施策経費及び管理費」の削減目標額年間354億円って、橋下市政改革プランの住民サービスの削減・廃止をまとめた「施策・事業の聖域なきゼロベースの見直しと再構築等」の削減目標額年間258億円より規模が大きいので、橋下市政改革プランのように、住民サービスの削減・廃止でやってたら、もっと大騒ぎになってますし、今、削減・廃止で批判が上がってるような住民サービスが残っているはずもないです。
 勿論、一部は住民サービスの削減・廃止もあったでしょうが、「経常的施策経費及び管理費」の大きな部分を、管理経費の削減や事業の合理化などで、市民への影響をできるだけ少なくしながら、行ったのだと思います。
 橋下市政改革プランって、住民サービスの削減・廃止のように直接市民へ影響するものが多くって、市民への影響を避けるような、管理経費の削減や事業の合理化が少ないというか、あまり見当たりません。(全く無いとまでは言いませんが)
 「経常経費の削減(定期刊行物等の購入の見直し)」年間1億円なんていうのが、効果見込額の表のわずか8項目の中の1項目になっているのを見ると、「経常経費の削減」って他にないんか!って、突っ込んでしまいます。


 また、今回の市政改革プランで、住民サービスの削減・廃止をするのは、財政が苦しいからと言ってるはずなんですが、橋下市長の言動で、本当に財政が苦しいと思ってるのかな?と感じてしまうものがあります。

 例えば、この記事。
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子どもら近現代史学ぼう、施設設置へ「つくる会」にも協力要請
産経ニュースwest 2012.5.11 11:58
http://kiziosaka.seesaa.net/article/269611447.html

 大阪市の橋下徹市長は11日、子供たちが近現代史を学ぶための施設を大阪府市で設置する方向で調整を進めていることを明らかにした。「新しい歴史教科書をつくる会」のメンバーら有識者に協力を求めていく意向も示した上で、「(歴史のとらえ方について)両論を併記していく。任期中にやりたい」と意欲を見せた。

 施設の必要性について、橋下市長は「中国がなぜ歴史問題を厳しく言うのかなど、今の国際情勢を認識するために近現代史を外してはいけない」と強調。「教科書改善の会」のメンバーが執筆した育鵬社の教科書についても言及し、「教育現場は全然採択しないが、教科書検定を通った教科書。しっかり子供たちに出さないといけない」と語った。

 つくる会、育鵬社などの関係者に協力を要請していく。この構想について大阪府の松井一郎知事や、市議会最大会派の大阪維新の会大阪市議団、第2会派の公明党市議団と協議したといい、「政治的な地ならしはできた。府市統合本部で大まかな方針を決めていきたい」と話した
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 朝日新聞の記者さんは、ツイートでこんな風にも言ってます。
https://twitter.com/#!/asahi_hb/status/203509813903245312
「橋下氏は『(松井)知事に(新たな学習施設に)200億円くらい使いたいと言ったら一蹴された』『知事になった頃から(この構想を)思っていた』とも語っています。相当思い入れが強いようです。この件は引き続き、取材していきます。」

 ねえ、財政が苦しくって、国民健康保険料の低所得者向けの減免制度まで廃止って言ってるのに、新しい箱もの施設を作るんですか?
 それに、200億円かけるんですか?


 例えば、この記事。
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大阪城でモトクロス世界大会 橋下市長が都市戦略明かす
産経ニュースwest 2012.4.10 21:04
http://kiziosaka.seesaa.net/article/267408252.html

 10日の大阪府市統合本部会議では、大阪が世界的都市を目指すための都市魅力戦略についても協議した。大阪市の橋下徹市長は、民間企業からモトクロスの世界選手権を大阪城の西の丸庭園で開催したいという打診があったことを明かし、前向きに検討するよう指示を出した。

 同庭園は、文化財指定されており、コース設置など土木工事が必要な営利目的のイベントは基本的に認められていないが、橋下市長は府を通じて国に許可を求める意向も示した。

 また、橋下市長は、大阪フィルハーモニー交響楽団や財団法人・文楽協会などへの助成金を一部カットして生み出した1億円程度の財源を賞金化し、大規模なコンテストを開催することなども提案した。

 一方、大阪市立の天王寺動物園が、市外の中学生以下を入場無料にしていることについては、「ちゃんと市外からは料金をもらって経営し、内外から注目される動物園を目指すべきだ」と指摘、有料化に踏み込んだ。

 この日の会議では、都市魅力戦略の中間報告が示され、民間資本を活用したシンボルイベントとして道頓堀プールなどの集客イベントも盛り込まれた。6月に最終案を取りまとめる。
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 大阪フィルハーモニー交響楽団や財団法人・文楽協会への助成金のカットって、収支不足の解消を少しでも埋めるためではなくて、モトクロス大会の1億円の賞金にするんですか?
 しかも、大阪フィルハーモニー交響楽団や財団法人・文楽協会への助成金のカットって4000万円しかないから、6000万円は、その他の住民サービスの削減・廃止をしたお金を充てるんですか?

 わたしには、財政が苦しくてどうしようもないから、住民サービスを削らしてくれと、市民に提案してる市長の発言とは思えないのです。


・・・もし、この記事を気に入っていただけましたら、お勧め記事のまとめ目次から、他の記事もどうぞ。
   大まかに大阪都構想のことを知りたい方は、まとめブログをご覧ください。
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2012年05月27日

大阪市の市政改革プランは、大阪都構想と矛盾しないのか?

 大阪市の市政改革プランを何回かにわたって扱ってきましたが、このブログは大阪都構想を扱うブログです。
 そこで今回は、橋下市長がメインの政策だと言ってたはずの大阪都構想の視点から見て、市政改革プランって矛盾しないかを考えてみます。

 先に結論を言ってしまうと、ある視点から見ると、市政改革プランは、大阪都構想に関する主張と大きく矛盾します。でも、違う視点から見ると、市政改革プランは、大阪都構想の目指す道筋に、とても沿ったものです。
 では、まず「矛盾して見える」の方から見ていきましょう。

 大阪都構想の次のような主張から見ると、市政改革プランは、大きく矛盾して感じます。

〇大阪府と大阪市は、同じような事業を行っていて、膨大な無駄がある。府市統合による重複事務の解消で、莫大な財源を生み出すことができる。

 ずっと主張されてきた話です。(ただ、このブログでは、昨年、大阪府議会の大都市制度検討協議会で示された「大阪市の政令市権限のうち統合対象となる範囲」が一般財源規模で330億円に過ぎないため、否定的です。)
 ただ、この大阪府・市の統合効果による財源ねん出が見込まれるなら、大阪都実現を予定する4年後には、収支不足は解消するはずです。(大阪都実現がない前提での)大阪市単独の10年間の財政見通しで、年間500億円の収支不足が続くという財政収支見通しを振りかざして「お金が足りない!」と騒ぐ理由もありません。(3年間なら、収支不足の計算の時に収入から省いた、不用地売却代や基金の取崩しで十分しのげます。)

 「府市統合で莫大な財源を生み出せる」と「お金が足りない」のどちらが違うのかは別として、矛盾していると思います。


〇大阪市は規模が大き過ぎて非効率的になっている。基礎自治体として最も効率のよいのは30万人程度の規模であれば、市民1人当たりだと半分近い行政経費で、住民サービスを提供できる。

 大阪府議会の大都市制度検討協議会での維新の会提出資料によると、大阪市の市民1人当たり行政経費が60万円を超える(資料はコレ)のに対して、30万人規模の市では市民1人当たり行政経費が平均30万円程度(資料はコレ)しかかかっておらず、30万人程度が規模として適正で効率的なのだそうです。(このブログでは、提供される住民サービスの内容を比較していない議論として、否定しています。)
 大阪都実現時には、大阪市を適正規模である30万人程度の特別区に再編し、中核市並みの予算と職員数で、効率的な行政運営を行うのだそうです。

 この議論が正しいと信じているなら、橋下市長であれ、大阪維新の会の市議さんであれ、「お金が足りないから、住民サービスの削減を」というのは、おかしな話です。
 大阪市の行政単位を小さくすることで数千億円単位の効率化が行えるのですから、「お金が足りない」なら住民サービスの削減を行うよりも、行政単位を小さくして効率化で財源を生み出せばいいのです。

 「区割りとか決まらないから、そんなにすぐにはできないよ」という声もあるかもしれませんが、この資料でいうと行政経費が最も小さい30万人未満が29万3千円に対して、10万人未満でも30万3千円と、大阪市の60万円と比較すると、差は大したことありません。
 この「適正規模」の議論が正しいなら、(平均人口10万人規模の)区役所統合の効果は小さいので、市役所の本庁機能を分割して、ブロック単位に配置するだけでも、大きな効率化を図ることができる理屈になります。(区役所の統合までしなくても、それなりの効果までなら上げられるということです。)

 しかも、この市役所本庁機能を、ブロック単位に分割配置するという手法は、別に大阪市が政令市のまま行っても、法律上、何の不都合もありません。
 市役所の機能を市民に近づけるという意味で、大阪都構想の特別区への移行にも沿う話です。(市長選の直後には、ブロックを管轄する総括区長を置くという話も報じられていたほどです。)(元記事はコレ

 「お金が足りない」なら、なぜやらないのでしょう?
 維新の会の市議さんは、市議会で、住民サービスを大幅に削減・廃止する改革プランに「市民負担は最後の選択。まず市が身を切るべき」(元記事はコレ)と発言されたそうです。
 「市が身を切る」前に更にできることがあるのですから、維新の会の市議さんは「市役所・本庁機能のブロックへの分割で財源を作ろう!」と提案すればいいじゃないですか。

 わたしは、以前の記事「大阪市の本庁機能の分割を考える」で説明した通り、「市役所・本庁機能のブロックへの分割」は莫大なコスト増と機能低下を招くことになると思うので絶対にやりませんが、莫大なコスト増と機能低下が正しいなら、「大阪都構想をやってはいけない」レベルの問題点になります。


〇260万人規模の大阪市は、市長が市民から遠過ぎて、市長へ市民の声は届かない。適正規模の特別区に公選の区長を置き、区民の声がちゃんと区長に届くようにすることで、区民自らが自分たちのニーズに合った住民サービスを選べるようにすることが、(広域行政の一本化と共に)第一の目標だ。

 以前の記事「橋下市長の下で住民サービスの選択をする矛盾」でも書きましたが、「260万人規模の市長では規模が大き過ぎて、市民の声が届かず、区ごとに多様な住民のニーズにそれぞれ合った住民サービスを選択できない。特別区に公選の区長を置いて、区民が住民サービスを選べるようにすることを目指すんだ」というのなら、なぜ、全市一律で住民サービスの削減・廃止をするのでしょう。
 なぜ、全市一律で「現役世代への重点的な投資」(しかも、いくつかの事業の拡充だけで、現役世代に負担になる住民サービスの削減・廃止もたくさんあります。)なんて決めてしまうのでしょう。

 もし「お金が足りない」のだとしても、「特別区の単位で、公選区長の下で、住民サービスを選択する」ことが何よりも大事なら、住民サービスの形をどのようにしていくかは、大阪都が実現して、特別区になってから決められるようにするのではないでしょうか?
 (3年間なら、収入から省いた不用地売却代や基金の取崩しで十分しのげるので、待てないはずはないのですが、)もし、3年後まで待てないと言うなら、市長の部下の公募区長などでなく、政令市のままでも実施できる準公選制で区長を決めるようにして、すぐに始めればいいじゃないですか。区長公募の期間を考えれば、十分にできたと思います。

 「赤バスの補助金を15億円から5億円弱に削減することは、市政改革プランで市長が決めたから、4〜5億円で赤バスをどのように残すかは各区長が相談して『自由に』決めればいい。」
 そういう「自由」が、大阪市を分割して特別区にしないとできない、「区民自らが自分たちで住民サービスを選べるようにする」ってことなのでしょうか?

 橋下市長の今までの言葉と裏腹に、今回の市政改革プランのような形での住民サービスを変えてしまう(しかも削減・廃止)のは、「区の単位で住民サービスを選択し、予算の使い方を決める」ことなんて、全然大事に思っていないように見えてしまいます。


 以上が、大阪都構想の主張から見て、市政改革プランが大きく矛盾してる感じる点です。

 次に、市政改革プランが大阪都構想の目指す道筋に沿ったものに見えるという話の前に、先に住民サービスの予算の話をしたいと思います。

 まず、現在の大阪市の予算額ですが、少し前になりますが、平成20年度で1兆5500億円なので、24区で1区平均約650億円です。大阪都になった時の特別区を3区相当(8つの特別区の場合)とすると、大阪市の予算をそのまま8等分して特別区に分けると、1950億円になります。
 ただし、一般財源で330億円部分は、広域行政の業務として「都」へ移管されますから、これが予算規模として800億円として(8等分して)1950億円から差し引くと、1850億円になります。
 特別区が担当する業務に、今、大阪市が使っている予算をそのまま割り振ると、特別区の予算額は概ね1850億円ということになります。

(基礎自治体の業務の一部を、都に移管する部分の予算の振り分けは考慮していません。その部分は、移管部分が決まって所要額が決まれば、ここで議論している予算額から差し引かれることになると思われるので、今は無視していいと考えています。)

 それに対して、特別区に与えられる予算額はどのくらいでしょうか?
 現在までで最も妥当性が高いと思われるのが、次の記事が報じられた際の数字です。
--------------------------- 引用開始 ---------------------------
2015年に「大阪都」 維新の会、ダブル選公約固める
asahi.com 2011年9月12日15時0分
http://kiziosaka.seesaa.net/article/266668078.html

 大阪府の橋下徹知事が率いる大阪維新の会は、11月の知事・大阪市長のダブル選で提示するマニフェスト(公約)と、大阪都構想の具体像や工程表をまとめた「推進大綱」の概要を固めた。2013年度中に「都移行計画」をつくり、14年度に住民投票にかけ、15年度に都への移行をめざす。

 公約と大綱では、ダブル選後すぐに府、大阪・堺両市に「大阪都移行本部」を立ち上げ、知事や市長らがメンバーの協議会を設けるとした。15年4月以降に両市を人口約30万〜50万人で中核市並みの権限を持つ特別自治区に分割。16年度以降には両市以外の市町村合併も進め、人口30万人以上の中核市に再編する方針。

 大阪都は、成長戦略や警察、環境、広域的な危機管理、雇用対策などを受け持つ。特別自治区は、住民生活に近い保健衛生や福祉、小中学校教育、防災などを担う。区議会のほか住民代表からなる地域協議会も設置し、住民の意見を反映させる「ボランティア議員」の役割を担う。区議会の定数と議員報酬は今の市議会より低いコストに抑える。都と区の職員数は現在の3府市の8割以下にする。税財源は、地方交付税などを都に39%、区に61%に配分すれば、中核市並みの運営は可能と試算した。
--------------------------- 引用終了 ---------------------------

 この記事の際のマニフェスト原案はネットに出回りました。ポイントになる箇所を抜粋すると次のとおりです。
(財源問題について)
5.財源・人員体制問題
 政令指定都市を廃し、その内に特別自治区を設置することで懸念される財源・人員体制問題は、全て制度の構築で解決される。
 特別自治区には中核市並みの財源を保障する。現在大阪市が提供している住民サービス分の財源は特別自治区に保証する。
 特別自治区間の税収格差問題は、基礎自治体間の財政調整制度として現在唯一存在する東京都区財政調整制度を参考に新たな大阪都区財政調整制度を創設すれば解決できる。大阪市に交付される交付税、固定資産税、法人市民税、特別土地保有税を財源とし、その61%を特別自治区に配分すれば、各特別自治区は中核市並みの財源を有することになる。現在の大阪市役所体制が各区の財政調整を担っているが、より透明性の高いルールの下、各区民の意思がしっかりと反映する新たな大阪都区財政調整制度を創設する。
 各特別自治区の職員数は中核市の職員数を基本とするが、現在の大阪市の職員数で十分賄える。

(特別自治区について)
(1)区長
特別自治区の長である区長を置く。区長は特別自治区の住民が直接選挙る。(編集注:原文まま)
特別自治区制への単純な住民参画・住民決定という理由だけではない。特別自治区の権限と財源は中核市並みとなる。現在の行政区と異なり、特別自治区は規制行政の許認可権の行使、報告徴収、立ち入り検査、また行政代執行や被虐待児の一時保護等の強い強制力の行使を権限として持ち、財源も1000億円規模を扱う。そして何より特別自治区は課税自主権を有する。これほどの権限と財源を有する組織の長は、選挙によって選ばれる職であることは当然である。
また、現在のように市長の部下として市役所の言いなりになっている区長ではなく、新たに創設する大阪都区財政調整制度や都区協議において、真の区民代表として都知事や都に対し堂々とモノを申し、自らの区の財源や権限確保に努める区長でなくてはならない。区長公選制は、特別自治区がきめ細やかな住民サービスを提供する機関になるための必須条件である。


 これに対して、知事・市長ダブル選挙で実際に発表されたマニフェスト別添の「大阪都構想推進大綱」の同じ部分の表現は次の通りです。

(財源問題について)(オリジナルはコレ
5、財源・人員体制問題
 政令指定都市を廃し、その内に特別自治区を設置することで懸念される財源・人員体制問題は、全て制度の構築で解決される。
 特別自治区には中核市並みの財源を保証する。現在大阪市が提供している住民サービス分の財源は特別自治区に保障する。
 特別自治区間の税収格差問題は、基礎自治体間の財政調整制度として現在唯一存在する東京都区財政調整制度を参考に創設する新たな大阪都区財政調整制度によって解決する。大阪市に交付される交付税、固定資産税、法人市民税、特別土地保有税等を財源とし、その約6割を特別自治区に配分すれば、各特別自治区は中核市並みの財源を有することになる。現在の大阪市役所体制が各区の財政調整を担っているが、より透明性の高いルールの下、各区民の意思がしっかりと反映する新たな大阪都区財政調整制度を創設する。
 各特別自治区の職員数は中核市の職員数を基本とするが、現在の大阪市の職員数で十分に賄うことが可能である。

(特別自治区について)(オリジナルはコレ
(1)区長
 特別自治区の執行機関として区長を置く。区長は特別自治区の住民が直接選挙する。


 長々と、案文と発表分を引用しましたが、説明します。
 案文で特別自治区の区長は「財源も1000億円規模を扱う」としていますが、発表分では記載が無くなっています。予算規模は変わったのでしょうか?
 区長の予算額が変わったのかどうかの手がかりとなるのが「5、財源・人員体制問題」部分の文面です。
 この部分は、大阪市の基礎自治体財源を「都」と特別自治区にどのように配分するかを説明しているのですが、(案文)「大阪市に交付される交付税、固定資産税、法人市民税、特別土地保有税を財源」を(発表分)「大阪市に交付される交付税、固定資産税、法人市民税、特別土地保有税等を財源」と「等」を追加し、(案文)「その61%を特別自治区に配分」を(発表分)「その約6割を特別自治区に配分」にしただけです。一部をぼかしただけで、財源配分はほぼ変わっていないと考えられます。

 これらから、特別区の予算額は約1000億円と考えるのが、現状で最も妥当性が高いと思われます。

 なお、上記の「5、財源・人員体制問題」部分の中で、特別区の予算については、「特別自治区には中核市並みの財源を保障する。現在大阪市が提供している住民サービス分の財源は特別自治区に保証する。」としています。

 特別区が30万人規模で予算額1000億円というのは、「中核市並みの財源」として、概ね妥当な数字です。
 ただし、現状1850億円の予算額が、特別区になって1000億円で「現在大阪市が提供している住民サービス分の財源は特別自治区に保証する。」を成立させるには、上で説明した「大阪市は規模が大き過ぎて非効率的で、30万人規模なら半分近い行政経費で済む」というのが、空想ではなく、本当に機能してくれないと無理です。

 それでもって、「大阪市は規模が大き過ぎて非効率的で、30万人規模なら半分近い行政経費で済む」などということが現実にあるはずなく、現状1850億円の予算額が特別区になって1000億円でやっていこうとすると、予算を減らす分だけ住民サービスの削減も必要になる・・・とした場合が次の説明になります。


 では次に、このように考えると、市政改革プランが大阪都構想の目指す道筋に沿ったものに見えるという話です。

 今回の住民サービスの見直しについての考え方の「基本原則」は、次のものです。(オリジナルはコレ
■基本原則
(1)大阪府下で統一的に実施されている施策・事業については、その水準に合わせる。
(2)その他の施策・事業については、4指定都市(横浜市・名古屋市・京都市・神戸市。以下「比較4市」という。)の標準的な水準に合わせる。

 個別に見ると、恣意的な適用は見られます(4市のうち2市だけ挙げて、「2市がやってないから廃止」のような。)が、基本はこういうことなのでしょう。

 この基準は、「他市に合わせる」と言ってるだけですから、市町村間で住民サービスの水準に差異がなければ、見直しは発生しません。「個々の住民サービスの水準に差異はあっても、平均すると同水準」であれば、削減・廃止の見直しと同程度の規模で住民サービスの新規・拡充が出てくることになります。

 基本原則の「他市に合わせる」で、大規模に住民サービスの削減・廃止だけが発生してくるのは、大阪市の住民サービスが「他市」よりもかなり(というか、相当)充実していることを示しています。

 大阪都実現後の特別区は、中核市並みの予算を持ち、中核市並みの職員数で、中核市として標準的なレベルの住民サービスの提供をします。

 大阪市の住民サービスが「中核市として標準的なレベルの住民サービス」よりも相当充実しているのなら、「中核市として標準的なレベル」へ引下げないと、特別区はやっていくことができません。

 また、国民健康保険のように「都」で府下一律で運営しようとしているものについては、大阪市が繰出し金を府下市町村より増やして保険料を安くしていたり、大阪市独自で低所得者向けの減免を行っていたりするのは、邪魔です。

 だから、「大阪市はお金が足りないんだ!」とぶち上げて、住民サービスの一部を見直し、「中核市並み」へ少しだけでも近づけるために住民サービスの水準を引き下げるのは、大阪都実現後の特別区の住民サービスの水準へ移行するために、とても目的に適っているといえます。

 ただし、まだまだ、第一歩を着手したというレベルです。
 「中核市として標準的なレベル」まで住民サービスを引き下げるためには、現状1850億円規模の住民サービスを1000億円規模まで引き下げる必要があります。
 今回の市政改革プラン(素案)の改革規模は、年間にすると266億円です。8等分すると、1特別区当たり33億円。まだ、1850億円を1817億円へ引き下げただけです。

 「中核市並み」への道のりは、遥かに遠いですが、3年後の大阪都実現の時には、なんとかしなくちゃなのです。


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2012年07月03日

大阪市の市政改革プラン(案)の施策・事業の見直し一覧

 この記事の大阪市改革PT試案、市政改革プラン(素案)、市政改革プラン(案)に続き、7月30日にその一部を見直した市政改革プランが発表されました。
 市政改革プランに基づく、8月5日現在最新の施策・事業の見直し一覧は、「大阪市の市政改革プランの施策・事業の見直し一覧」の記事をご利用ください。

 また、混乱・混同をさけるため、この記事の掲載内容は削除します。
 6月の「案」時点の内容を確認されたい方は、当面の間、コチラに退避してありますので、ご活用ください。

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