2011年12月12日

橋下市政の方向性を考える(総論)

 ダブル選が終わり、今後の市政・府政は、大阪都構想に直結すると思います。なので、メディアで散々語られて食傷気味かと思いますが、大阪都構想を中心にしながら、橋下市政の傾向を概観したいと思います。

 まずは、大阪都構想の具体化についてです。

 もし大阪市議会で、維新以外の他会派が大阪都構想の阻止を目指す場合、基本戦略はシンプルです。
〇3年半後の次の市議選まで、議会で反対姿勢を貫く。
〇市議会での議論で、大阪都構想の内容を明らかにするように努める。(その中で問題となる点も明らかにしていく。)
〇次の市議選で、維新の会の過半数を阻止し、できれば、今年4月の市議選で失った議席の回復にも努める。
〇大阪市の事業の府との統合や、区役所業務の拡充などの大阪都構想の準備作業については、是々非々で対応する。

 国会と違って、大阪都構想に反対するからと、市議会で審議拒否などの衝突は基本ありませんから、市議さんとしては、大阪都構想に反対と言っても、よく話を聞いて、是々非々で対応するでしかありません。
 また、国会議員の維新の会への接近がさかんに報じられ、他会派の一部が大阪都構想への反対を取り下げる場合が考えられますが、それでも「議会で反対姿勢を貫く」の項目が無くなるだけで、その他の対応は、あまり変わらないかなと思います。

 これに対する、維新の会の大阪都構想に向けた動きは、他会派の裏返しっぽいかなと思います。
〇大阪都構想の法制化や府市統合の枠組み作りの協議などの具体化作業は、一気に進められると思います。
 スケジュールでは2年程度とされていますが、法制化のための働きかけは、次期衆議院選のタイミングを睨んだ動きが必要になりますから、国の動き次第でいつでも具体案の提示を行えるように、粗方の部分は1年以内でまとめるようなスケジュールで進めるかなと思っています。
〇ただし、これらの具体化作業の結果が、どの程度公表されるかは、かなり疑問です。府市統合協議の大枠の話ぐらいは出てくると思いますが、都構想後の市民にとっての行政がどのようになるかの具体的な姿が分かるような情報は、これまで通りあまり示されないと考えます。
 大阪都構想は具体化した姿を明確にするほど、批判にさらされることになりますし、総論でなんとなく賛成していた人たちを各論で反対に回してしまう可能性が十分にあるからです。
〇ただ、進んでいない印象を与えたり、忘れられても困るので、時々、様々な発表を重要そうにしますが、大阪都構想の内容を十分理解できるような情報はあまりなく、名前はよく聞くがよく分からないという、現状と同じような状況が当面続くと考えます。
〇大阪都構想の説明が市民向けに本格的に行われるようになるのは、住民投票に向けた半年〜1年の時期で、市議会への対処方法に目途が付くことが前提になると考えます。
 なお、市民向けの説明に、当然のこととして不利な情報を出すはずもなく、現状のメディア戦略に加えて、ひたすら正当化し、メリットのみを強調する宣伝を、地域説明会など市役所の組織を挙げて行うということです。
 それ以外の説明を求める人には、資料室いっぱいのファイルを示して、自由に調べてくださいとされるのかなと思います。

 行政改革についてです。
 職員の給与カットや外郭団体廃止などについては積極的に進めると思われます。
 労働組合と戦っている姿勢を示したり、「市役所の既得権益」の解体を進めている印象を与えることが重要なので、そのことで、どの程度の税金の支出が抑えられるかといった効果額や、その効果額がどのように市民に還元されるかは、市民の側でよく注意を払う必要があります。記事の見出しで「すごい取組み」と報じられることほどには、重視されないかもしれませんから。
 昨年の大阪府の職員組合との給与カットに関する協議のように、協議前に方針だけを大々的に発表し、協議の結果は発表しないなんて手法を採ることも考えられます。(勿論、市民にとっては、協議の方針などよりも、協議結果の方がずっと重要です。)

 府市の事業の統合についてです。
 府市統合本部の下で、大阪市の事業を、大阪府主導の事業主体へ移管していく作業は、積極的に進められると考えます。 
 これは一面として、大阪都構想の先取りになるもので、大阪都構想が頓挫した場合も、大阪府の影響力強化の成果を残すものです。
 この事業統合は、ケースにもよりますが、基本としては、市の事業を、市民の利益よりも大阪府全体の利益のために活用する体制へ移管し、維持経費だけは今まで通り(または今まで以上に)市へ負担を求める内容になると思われるので、市民の利益に反する場合も多く出てくると思われます。
 市議会での対立する場面も、出てくるかもしれません。

 区役所業務の強化についてです。
 これも、ひとつには大阪都構想実現後の特別区の先取りとして、推進しようとされると思われます。
 もうひとつ、橋下氏の場合、基礎自治体業務の責任者になって関わり合いになるのは、避けたいのかなと思われるので、身代わりになる責任者を作る意味でも重要です。
 橋下氏としては、こんなこと、来年度にもすぐに始めたいでしょうし、3年半後に実現するとしている大阪都構想のプレ版なら、来年度(遅くても2年後)には始めないと意味がなくなります。

 けれども、現在、市役所と区役所が一体で行っている業務(あるいは市役所だけで行っている業務)を、ちゃんと区長の下で行えるようにしようとすれば、3〜4年で実施できるか分からない程度には、時間も費用もかかります。
 3年半後には終了する期間限定として、区長が基礎自治体業務の責任者となれるような体制を作ることは、現実的には無理があります。
 そのため、名目的には、区長の権限強化を高らかに謳いますが、現実との乖離・衝突はかなり大きいものになると思われます。そういった制度の中途半端さから発生する衝突・問題も、政令市制度の問題だとすり替えの宣伝が行われると思いますが。

 最後に、大阪都構想後に、特別区の基礎自治体業務は、中核市レベルに移行するとしているので、真っ当に考えると、これを先取りしながら、徐々に中核市レベルの行政サービスレベルへ移行していくはずですが、この点は、大阪都が実現するまでやらないんじゃないのかなと思っています。
 橋下氏にとって、これから、大阪都移行が決定するまでの2〜3年の期間は、ずっと選挙期間が続いているようなものです。
 実質的な住民サービスの切り下げになるようなことは、大阪都移行が決まるまでは、なるべく市民に知らせたくはないでしょうから。


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posted by 結 at 04:56| Comment(0) | 市政 | 更新情報をチェックする

2012年02月22日

橋下市長は、大阪市民にも応分の負担を求めていくというのだけど

 大阪市の2012年度予算案が発表されました。
 この予算には、橋下市長肝いりの新事業の予算や必要と認められる予算は1年分計上しますが、見直し対象として凍結する事業は、まず7月までの4ヶ月分のみを計上し、見直し結果で8月以降の予算を追加して、全体の予算となる考え方のようです。
 主な新規事業は、朝日新聞によると、「子どもの医療費助成を中学生まで拡充」51億円、「生活保護適正化」35億3千万円、「『保育ママバンク』創設など保育所待機児童解消」28億7千万円、「教育バウチャー交付による塾代助成(試行の西成区分のみ)」8千万円。
 「職員給与・退職手当などの削減」は、135億5千万円。

 この予算案の発表に、2月20日の産経ニュースで次の記事がありました。
http://kiziosaka.seesaa.net/article/253432037.html
--------------------------- 引用開始 ---------------------------
「既得権を液状化」初の予算編成でも橋下節
2012.2.20 21:36

 「既得権を液状化させる」。20日、大阪市で初めての当初予算編成について説明した橋下徹市長。記者会見は2時間余りにわたり、自信たっぷりの表情で「不連続への挑戦」への決意を語った。労働組合などの反対を押し切る形で職員人件費の削減を断行したことをとらえて「市役所も身を削った」と訴え、今後は市民に対しても“痛み”を伴う応分の負担を求めていく考えを示した。

 ■住民が選択

 橋下市長が強く訴えたのは「住民が選択できる行政システム」への転換だ。

 目玉の一つとなる西成区で中学生を対象に試行実施する塾代補助事業では、生徒1人当たり月1万円の補助について、学習塾だけでなく、文化教室やスポーツ教室などの中から選べる形を取る。市長は「これまでのように各種団体を通じて一方的に住民サービスを提供するのではなく、住民が自分のニーズにあったものを選べるようにしたい」と説明した、

 一方で、諸施策の財源については「天から降ってくるものではない」と強調し、「これからは住民の皆さんにも、他都市と比べて負担が低い部分は応分の負担をお願いする」と明言。家庭ゴミ収集の有料化などについて検討していることを明らかにした。
(以下略)
--------------------------- 引用終了 ---------------------------

 今後という話ですが、大阪市民に“痛み”を伴う負担を求めることを強調したようです。

 該当部分について、読売新聞では次のように報じています。
 「橋下市長一問一答」(2012年2月21日 読売新聞)より抜粋。
http://kiziosaka.seesaa.net/article/253432229.html
--------------------------- 引用開始 ---------------------------
 住民の受益と負担の関係を再検討する。国民健康保険料(の減免措置)やごみの収集費用も考えないといけない。現役世代を強力にサポートするため、子育て、教育の充実、雇用の創出に力を入れるが、財源は天から降ってこない。市民に応分の負担をお願いする。
--------------------------- 引用終了 ---------------------------

 この大阪市民に“痛み”を伴う負担を求めるメッセージの背景について、2月20日ABCテレビのキャストで、府市統合本部顧問の古賀茂明氏をコメンテーターとして臨席する中、次のように解説をしていました。(古賀氏は、概ね同意の様子でした。)
〇橋下市長の打ち出す新規事業を加え、橋下市長は収入の範囲内で予算を組む方針を示している(公債を発行しないというのではなく、基金の取り崩しをしないという意味)が、税収の落ち込みもあり、2012年度535億円の収入不足が発生する。
〇今回、(見直し対象として)凍結した補助金(など)が653億円なので、もしこの不足分を(見直し対象として凍結した)補助金(など)だけで賄おうとすると、ほとんど全てカットになってしまい、市民生活に大きな影響が出てしまう。
 そうもいかないので、経費カットも更に踏み込むと言ってますが、私達の生活に必ずしわ寄せが来ます。
〇また、予算のカットだけでは未来がないので、大阪の経済活性化のための予算を府市統合本部で考えているが、これに充てるお金が本当にない。府の予算も火の車。これをどうやって捻出するかが、橋下市長の悩みどころ。

 ニュース番組の解説が必ずしも正しい訳ではないでしょうが、概ね理解できますし、古賀氏が同意の様子であれば、見当違いということもないでしょう。
 橋下市長が打ち出す新規事業や、府市統合本部で打ち出す事業の予算の捻出や、税収不足を賄うためには、数百億円程度の歳出カットが必要で、そのためには、他都市より恵まれている住民サービスの切り下げを行うということのようです。住民サービスのカットで大阪市民に“痛み”を伴う負担を求めるけど、覚悟してねということのようです。
 その具体例として、一般のごみ収集の有料化や国民健康保険料の減免措置の見直し(廃止か、対象の縮小)を挙げているようです。(勿論、例ですから、これだけって話ではありません。)


 でも、この話、変だなと思うんです。
 知事時代からの橋下市長の発言からすると、大阪市役所って無駄でダブダブで、大阪市の予算なんで無駄を無くすだけで、いくらでも財源なんて出てくると言ってたはずです。
 そのことを、明確に記しているのが、1年前の維新の会統一選用マニフェストです。(昔の話と思う方もいるかもしれませんが、今の維新の会の市議さん、府議さんは、このマニフェストを掲げて、4月の府・市議選で当選された方々です。)

 このマニフェストの資料編には、次の記述があります。(原文はコチラ
--------------------------- 引用開始 ---------------------------
(人口一人当たりの行政経費の比較表として、次の数字を表として掲げ)
 大阪市 614957円
 横浜市 377970円
 名古屋市445370円

 また、大阪市が名古屋市なみの経費で行政サービスを提供できるようにすれば4500億円の財源が生まれます。これが成長戦略の原資になります。
(統一選用マニフェストP26)
--------------------------- 引用終了 ---------------------------

 また、マニフェスト本編にも、次の記述があります。(原文はコチラ
--------------------------- 引用開始 ---------------------------
 優しい大阪

 特別区(自治区)は、現在大阪市が提供している住民サービスの全て(敬老パス制度を含む)を提供します。また、以下のような取り組みも可能になります。

(統一選用マニフェストP12)
--------------------------- 引用終了 ---------------------------

 つまり、大阪市の行政は、無駄がいっぱいだから、現在の大阪市の住民サービスを維持したまま、4500億円の財源を捻出できるとマニフェストで主張しているのです。
 それならば、1兆6千億円の予算から、たかだか数百億円の財源を生み出すのに、住民サービスのカットで大阪市民に“痛み”を伴う負担を求めるなんて、変な話です。


 わたしは、維新マニフェストのような理屈で財源捻出ができるとは、全然思いません。大阪市は、財政非常事態宣言を出して10年近く、毎年経費削減に努めてきたのですから、更に歳出カットをしようとすると、住民サービスへ影響するものが多いでしょう。

 でも、「大阪市役所は無駄ばかりだ」と市役所や前市長を攻撃して、市長になったのですから、その言葉に「責任」は負わなければならないでしょう。その言葉に沿った努力をして、できないなら、ちゃんと市民に詫びなければならないでしょう。
 市長になって、たった2ヶ月。最初の予算案の説明で「お金、財源は、天から降ってくるものではありません。大阪市民のみなさんには、これから応分の負担を求めていく」だなんて。


 結局、これまで説明してきた「名古屋市なみの経費で行政サービスを提供できるようにすれば、多大な財源が生まれる」という話は、市長になって、実行する場面になったら、かなぐり捨てるようですが、この話、大阪都構想の組み立てにも大きく影響するのです。

 大阪都構想では、特別区に1000億円程度の予算を与えるとしています。これで、中核市並みの行政運営が可能で、住民サービスは基本的には変わらないとしている訳です。
 でも、特別区を3区相当として現状の大阪市予算を按分すると、(広域行政の業務として都に移管される部分を差し引いても)1850億円になります。
 大阪市を分割してもコスト増にならないという(多分に無理な)前提を置いたとしても、特別区は、今までの予算投入額1850億円を1000億円程度と、ほぼ半減させることになるのです。

 この「予算を大幅減しても、大阪都移行後の特別区の住民サービスは基本的に変わらない」という説明が立脚するのが「中核市なみの経費で行政サービスを提供できるようにすれば、1000億円で(現状と変わらない)十分な住民サービスを提供できる」という(屁)理屈です。

 「名古屋市なみの経費で行政サービスを提供できるようにすれば、多大な財源が生まれる」という説明が実行できないものならば、特別区が1000億円で現状と変わらない、十分な住民サービスを提供することも、多分できません。
 大阪市民は、大阪都移行後の特別区では、1850億円から1000億円程度と大幅に削減した予算で可能な、大幅に低下した住民サービスしか受けられないという、当たり前の現実しか、そこにはありません。(しかも、大阪市分割によるスケールメリット喪失のコスト増が、追い討ちをかけます。)

 橋下市長は「これからは住民の皆さんにも、他都市と比べて負担が低い部分は応分の負担をお願いする」と語ります。
 わたしには、この言葉は「特別区になったら住民サービスを下げるのだから、それに合わせるように、段々、住民サービスを低下させるよ」と聞こえます。


 ちなみに「大阪市は豊かな財源があって、大阪市民は豊かな住民サービスを受けているかもしれないが、他都市並みに住民サービスを下げるだけなら、いいじゃないか」という声もあるのかもしれません。

 でも、大阪市の豊かな財源って、地下から勝手に湧き出すものじゃなく、大阪市民が、高い地価に基づく高い固定資産税や高い家賃(高い固定資産税が含まれてます。)を支払うことで支えられているものです。
 都制度の議論だと、住民サービスを下げた分で生まれた財源は広域行政体に持っていかれるだけで、住民サービスを他都市並みに下げても、固定資産税の支払額を減らしてくれる訳ではありません。

 現状の地方税のルールの中で「自分たちの支払った税金で、自分たちの住民サービスを受ける」のは、当たり前の地方自治なのだと思っています。
 地価が高くて高い税金を払わなければならないなら、高い税金に相応しい住民サービスを求めます。


 また、記事では「職員人件費の削減を断行したことをとらえて『市役所も身を削った』と訴え、今後は市民に対しても“痛み”を伴う応分の負担を求めていく考えを示した。」とありますが、理解に苦しむ主張です。
 「市役所職員の給料は高過ぎる」と主張し、人件費の削減は「高過ぎる給料」の是正としていたはずです。「高過ぎる給料」を是正したら、市民は「“痛み”を伴う応分の負担」を求められるのでしょうか?

 それとも「市役所職員の給料は高過ぎる」が嘘だったのでしょうか?
 もし「市役所職員の給料は高過ぎる」が嘘だったなら、人件費削減をすべきかに話を戻さなければならないことになると思います。


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2012年04月15日

大阪市改革PT試案の施策・事業の見直し一覧

 この記事の大阪市改革PT試案、市政改革プラン(素案)に続き、6月27日にその一部を見直した市政改革プラン(案)が発表されました。
 市政改革プラン(案)に基づく、7月2日現在最新の施策・事業の見直し一覧は、「大阪市の市政改革プラン(案)の施策・事業の見直し一覧」の記事をご利用ください。

 また、混乱・混同をさけるため、この記事の掲載内容は削除します。
 4月の試案時点の内容を確認されたい方は、当面の間、コチラに退避してありますので、ご活用ください。


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