2015年08月16日

「大阪会議はポンコツだから、やっぱり大阪都構想だ」の3つのヘンな点

 「大阪都構想の成否は、議会が決めるべきではない。市民自身が決めるべきだ」と強引に住民投票を実施した挙句、住民投票で否決されて3ヶ月。
 最近のニュースによると、橋下市長や松井知事から「もう一度大阪都構想を」という発言を、次々されているようです。

 例を挙げると、次の通り。

〇大阪府の松井一郎知事(大阪維新の会幹事長)は29日、府と大阪市、堺市の首長と議員計30人でつくる「大阪戦略調整会議」(大阪会議)を「何も決まらない。二重行政の解消には制度を変えなければいけない」と批判し、廃案になった大阪都構想を再び掲げる可能性について言及した。(朝日新聞デジタル 2015年7月29日 元記事

〇橋下氏は、住民投票で否決された「大阪都構想」について「松井知事に訴えてもらいたい。都構想の訴えを続けるのであれば、知事をやってもらうのが一番だ」と語った。また、自民党が都構想の対案として提案した「大阪戦略調整会議」を「ポンコツ会議。絶対にうまくいかない」と批判した。(毎日新聞 2015年08月07日 元記事

〇維新の党の橋下徹最高顧問(大阪市長)は8日、大阪市内で開かれた大阪維新の会の会合で、大阪府と市を統合する「大阪都構想」について、「(住民投票の)一度の否決が決定的にすべてを結論づけるものではない」と述べ、再び実現を目指す考えを示した。(YOMIURI ONLINE 2015年08月08日 元記事

〇(大阪戦略調整会議の第2回会合流会後)報道陣から「これでもう一度都構想を訴えられる?」と聞かれると、橋下氏は「十分だと思います。これで(大阪会議が)大阪都構想の対案でないことはハッキリした」。(スポーツ報知 2015年8月13日 元記事

 総じて言うと「大阪戦略調整会議では、二重行政の解消は行えないから、やっぱり大阪都構想だ」と主張されているのかと思います。


 わたしは、この主張について、次の3つの点でヘンだなぁと思うのです。

【その1】
 「大阪府と大阪市が協議・調整を行っても、利害が対立し、何も決められない」というのは、橋下氏らが大阪都構想について主張していたことですが、それは当然の前提として「大阪府と大阪市が、合意に向けて十分な努力を尽くしても」という前提が付くはずです。
 もしそうでなくて、「大阪府は、交渉に際して何も譲る気がなく、一方的な主張を押し付けようとするだけで、真剣に協議・調整を行って合意を図る気がない」から、「大阪府と大阪市が協議・調整を行っても何も決められない」というのなら、そんなことで大阪市民に「大阪市を廃止して、府だけで決められるようにさせろ」(大阪都構想って、そういうことです)なんて言ってるよりも、まずは、真摯に協議・調整を行って合意をする努力をしろって、話ですから。

 さて、橋下氏らは、2回の大阪戦略調整会議で、「何も決められない」「やっぱり大阪都構想だ」と言うのですが、「大阪府と大阪市が、合意に向けて十分な努力を尽くした」とは、とても思えません。

〇まず、2回ぽっちで、1ヶ月もかけずの決め付けって、おかしいでしょう。しかも、11月の大阪府知事・市長選に向けたパフォーマンスをやってるなんて、みんな知ってることですし。
 選挙向けの応酬とかでなく、まずは何年か、じっくりと腰を落ち着けて協議をして、その間、改善できる点は改善して、評価はそれからでしょう。

〇まだ、具体的な協議は何もしておらず、「会議を、自分たちの好き放題に運営させろ」「そうはさせない」と党利党略をぶつけ合ってるだけです。大阪府と大阪市の対立ですら、無いです。


【その2】
 「反対派(主には自民党ですが。)が主張した大阪戦略調整会議では、うまく行かないから、大阪都構想しかない」
 橋下氏が、よく使う論法ですが、全く論理的ではありません。

 大阪戦略調整会議がダメだった(まだ判断するのは余りにも早計で、まだ初期不良の改善に努める時期と思いますが。)として、大阪府・大阪市にまたがる課題解決の方法が「大阪戦略調整会議」と「大阪都構想」の2つしか無い訳はありませんから、大阪戦略調整会議がダメなら、別の方法を様々に考えるのが先で、住民投票までして退けられた大阪都構想を「これしかない」と持ち出すのは、それが出尽くした後のように思います。

 別の方法の例を思いつきで挙げると、
〇今回、条例設置した大阪戦略調整会議は、その仕組みがうまく行かないと批判が多いようです。
 来年の4月には、同じような課題解消の目的で、地方自治法により指定都市都道府県調整会議を設置することとされていますから、この法設置の会議を、しっかりとした仕組みにして、再挑戦というのも、ひとつの方法かと思います。

 また、この地方自治法に基づく調整会議は、政令市のある道府県すべてに設置されるものです。もし、それでやってみて、大阪府だけうまく行かないのなら、「制度の問題ではない」可能性が高いです。
 「制度の問題ではない」ものを、「制度の問題だ!」として解決しようとしても、普通うまく行きません。

〇橋下氏らが主張する「二重行政の問題」は元々、大阪市が政令市で、府県並みの権限を持つことが問題で、政令市の持つ広域行政権限の一部(例えば港湾など)は府県に一元化されるべきだというものでした。
 普通、この問題提起であれば、政令市の権限範囲の見直しを国政に提起するのが王道です。
 大阪都構想は住民投票で否決されたことですし、王道に立ち戻って考えるのも、ひとつの方法かと思います。


 ただ、橋下氏らは「二重行政解消が必要だ!」と主張する訳ですが、大阪戦略調整会議に彼らが二重行政解消の課題だとして提出した案件を見ると、否決された協定書の府市統合の一部を切り出したもので、二重行政の無駄解消と言えるような統合効果は説明できていなかったものです。
 彼らがいう「二重行政解消」(=府市事業統合)が本当に必要なのか、大元に立ち戻って検討することも、併せて必要なように思います。


【その3】
 上記の話より更に大元の話として、「大阪戦略調整会議では、二重行政の解消は行えないから、やっぱり大阪都構想だ」という主張が成立するには、
「住民投票で大阪都構想に大阪市民が反対の投票をしたのは、『大阪都構想でなくても、大阪戦略調整会議(あるいはその他の方法)で二重行政は解消できる』と考えたから」
・・・というのが、最低限必要です。

 でも、わたしは住民投票で反対を投じた大阪市民のひとりですが、大阪戦略調整会議など眼中になく、「二重行政解消など主張される大阪都構想の効果は、あまり期待できず、住民サービスの低下など付随する問題の方が、ずっと大きい」(参照:大阪都構想を、きちんと考えてみる)と思って反対に投じただけなので、「大阪戦略調整会議では、二重行政の解消は行えないから、やっぱり大阪都構想だ」などと言われても、「何言ってんの、この人」「あれだけ大騒ぎして、住民投票をさせといて、結果が気に入らないと蔑ろかい?」としか思えません。

 住民投票直前の5月9、10日の世論調査の結果を見ても、反対と答えた人の理由は次の通りです。
(朝日)(元記事
「行政のむだ減らしにつながらないから」
「大阪の経済成長につながらないから」
「住民サービスがよくならないから」
「橋下市長の政策だから」

(産経)(元記事
「メリットが分からないから」
「住民サービスが良くならないから」

 「大阪都構想に期待していない」という理由が大半で、「大阪戦略調整会議(あるいは他の方法)でも、効果が期待できる」みたいな意見は見当たりません。

 橋下氏らが「大阪都構想は凄い効果がある政策だ」と主張してたことは、大抵知ってることですから、それに対して「そんなこと言われても、信用できない」「全然期待しない」として反対を投じたのに、「大阪戦略調整会議では、二重行政の解消は行えないから、やっぱり大阪都構想だ」などと言われても、やっぱり「何言ってんの、この人」でしょう。


 住民投票前の期間、橋下氏は住民投票について「何度もやるものではない。1回限り」と述べ、賛成多数にならなかった場合には都構想を断念する考えを示し、街頭演説やテレビ番組などで「衰退する大阪を変える最初で最後のチャンス」と訴えていました。(元記事
 舌の根も乾かぬうちに、「またまた大阪都構想」と言い出したことで、彼らの説明が「信用できないもの」ということを、自ら証明してしまったように思います。


(追記)2015.08.30
 上記の「大阪会議はポンコツだから、やっぱり大阪都構想だ」という主張をどう思うかという話と別に、橋下氏らが今「大阪会議はポンコツだから、やっぱり大阪都構想だ」と主張すること自体に矛盾を感じることを整理しておきます。

 橋下氏らは、「大阪戦略調整会議では、二重行政は解消できない。だから、やっぱり大阪都構想だ」と言い出しています。
 でも、橋下氏は住民投票前、住民投票について「何度もやるものではない。1回限り」と言ってましたし、やっぱり住民投票前、「大阪戦略調整会議では、二重行政は解消できない」と主張されていました。

 もし「大阪戦略調整会議では、二重行政は解消できない。だから大阪都構想だ」とお考えなら、住民投票前から、「住民投票が反対多数でも、再挑戦する」と言ってないとおかしいですよね。
 こういう矛盾というのは、「噓」があるっていうことです。
posted by 結 at 01:22| Comment(0) | その他 | 更新情報をチェックする
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