2015年03月30日

(論点4)大阪市民だけが、市税を割いて余分に府財政を負担する

 冒頭は、以前の記事「大阪都構想って、こういうこと」の繰り返しになりますが、大事なことなので、もう一度書きます。

 まずは、普通の市町村の話です。
 府県の権限と市町村の権限(=担当する業務)は、法律で決められています。
 普通に市の業務だけ行う「一般市」に対して、政令市、中核市、特例市は、それぞれの市域で、一般の市の業務に加えて、府県の業務の一部を担当します。

01政令市等の権限と財源+東京都.jpg

 政令市、中核市、特例市は、府県の業務の一部を担当するのに、府税(の一部)は移管されてなくて、市税を府県の業務の財源に充てます。(国からの地方交付税が、多少補填してくれますが)

 このことについて、法定協議会の前身の協議会で、橋下市長が端的な指摘をしています。
「大阪市民は、市役所を通じて広域のことを決めようとするから、市税で負担することになるんだ。大阪市民は、府税も払っているからダブル負担だ。市役所を通じて、口出ししようとするから、責任も負わなきゃいけないことになる」(要約済みです。元の発言

 これに対して、大阪都構想は「政令市・大阪市の行っている仕事のうち、広域行政部分を大阪府に移管し、残りを特別区が担当する」(基礎と広域の権限整理)というものです。
 広域行政部分の大阪府への移管に当たっては「事務と財源をセットで移管」としています。

 歳出規模で大阪市1兆7千億円のうち、4千億円部分(財源で2255億円部分)を大阪府に移管します。(H23年度で試算)
 この結果、政令市である大阪市から、特別区は中核市並みへと業務範囲が縮小し、府税と市税の配分は、特別区が市税の概ね4分の3、大阪府が「府税+概ね市税の4分の1」になります。

02特別区の権限と財源+東京都.jpg

 大阪都構想の特別区は、府県業務の担当もあって、中核市に近いのに、財源は市税の4分の3しか持たない結果になりました。
 東京都の特別区と比較しても、権限と財源の関係が、かなり違うことが分かります。

 東京都の場合、「市町村業務を東京都が引き受けるから、市税の一部を東京都が使う」
 大阪都構想の場合、「府県の仕事を大阪府が引き受けるから、市税の一部を大阪府が使う」
・・・というように制度設計の考え方が違うためです。


 特別区は、概ね4分の3の市税しか持ちませんが、自由な住民サービスに使える財源は、更に減ってしまいます。

 一般の市町村は、「法律で決められた業務」と「自治体が自由に決めた住民サービス」を次の配分で、行います。
標準税等(大雑把には市税のこと)の75%・・法律で決められた業務
標準税等の25%・・・自由な住民サービス

 大阪都構想の特別区については、法律で決められた業務に充てる割合(算入率)が85%とされています。(元データ 元サイト
 そのため、特別区は次の配分になります。
標準税等の85%・・・法律で決められた業務
標準税等の15%・・・自由な住民サービス

 自由な住民サービスに使えるのは、一般の市町村が25%に対して、特別区は15%です。25%と15%の差だけで、特別区は4割も少ないことになります。

 特別区設置協議会資料で、特別区の裁量経費(自由な住民サービスの財源額)の試算があった(元データ 元サイト)ので、できるだけ同じ方法で現在の大阪市の試算もしてみました。

05裁量経費試算.jpg
「現在の大阪市」の一般財源額(元データ 元サイト
「現在の大阪市」の基準財政需要額と臨時財政対策債(元データ 元サイト

 現在の大阪市の自由な住民サービスに使える財源額(裁量経費)が2361億円に対し、特別区になった時が1233億円と、ほぼ半減してしまっていることが分かります。


 大阪都構想の結果、市税の4分の1が大阪府へ移管されることについて、橋下氏がどう説明しているかというと、「今まで大阪市役所が担当してきた仕事を、大阪府庁に担当させるだけなので、何も変わらない」です。

 大阪都構想が実現した直後はそうですが、そこから、だんだん事業の組み替えが始まりますから、「何もかわらない」ことはありません。

 既発市債の償還に充てる財源でさえ、毎年少しずつ減っていき、大阪府が新たに行う公共事業の府債償還の財源に、だんだんと置き換わります。
 大阪府が新たに公債を発行して行う公共事業は、「大阪市民のため」ではなく、「大阪府全体の利益のため」に行うことになります。

 元々、大阪市が政令市になったのは「その方が、大阪市民のニーズに適った事業実施ができる」と考えるからです。(特別区の中核市並みの権限設定も、同じ考え方です)
 そして、大阪都構想で広域行政の一元化を言い出してるのは「その方が、大阪府全体の広域行政としてプラスになる」と考えているからです。
 大阪市が担ってきた広域行政を、大阪府へ移管して同じはずはないですし、同じなら大阪都構想を実施する必要もありません。

 それは、どちらが良い・悪いではありません。
 ただ、なぜ大阪市民は、大阪都構想の実現後、大阪府が大阪市域で、府県が行うべき仕事をするからといって、本来、身近な行政のための市税を割いて、その費用を負担しなければならないのでしょうか?


 大阪都構想の矛盾は、「大阪市が、広域行政の権限を持つべきではない」としながら、「(大阪市民の単位で決定するから負担してきた)市財源での広域行政の財政負担を、大阪市民の単位で決定するのを止めても、大阪市民に負担させ続ける」ことです。
 二重行政解消を謳いながら、大阪市民の広域行政経費の二重負担は、より固定化するのです。(「より固定化する」とは、大阪市民の意思で、広域行政に充てる市税を減らして、身近な行政を充実させる選択もできなくなるということです)

 大阪府が、大阪市域で、府県が行うべき仕事をするというのなら、大阪市民が支払っている府税で、行えばいいのです。

 以前大阪市が発表していた大阪市域内税収の内訳によると、平成20年度の大阪府税は7550億円、大阪市税は6708億円です。(元データ 元サイト

 これを基に、大阪府内の府税と市町村税の税収を、大阪市内と大阪市外に分けて整理すると、次のようになります。
大阪市域内 市税47% 府税53%
大阪市以外 市税64% 府税36%

 また、平成20年度の大阪府の税収は、総額1兆2800億円(元データ 元サイト)ですから、大阪市域の府税が7550億円ということは、59%を占めることになります。

 大阪市域内の地方税の半分を府税として支払い、人口割合3割の大阪市地域が府税総額の約6割を支える。

 勿論これは、都市構造などを反映した税制度の結果であって、大阪市域が過重な府税を負担している訳ではありません。
 でも、大阪府が、大阪市域で、府県の行うべき仕事するなら、この府税で十分じゃないですか?
 大阪市民は、47%の市税から更に12%分を割いて、府政を支えなければならないのでしょうか?
 大阪市民から徴収した府税は、どこに行ってしまってるのでしょうか?


 大阪都構想が実現したとして、10年後、20年後、財源不足で身近な住民サービスを諦めさせられることは、きっとあります。(今でもあることですから)
 その時、「中核市と変わらない特別区のはずなのに、自分達で支払った市税全部の使いみちを、なぜ自分達で決められないの?」と、嘆きたくもなるでしょう。

 「過去に政令市だったことが罪なんだ。不平等な制度でも仕方ないんだ」で納得できますか?
 もしできないなら「市民が自分で決めたことだから」が全てになります。

 なぜ、この制度を選んだのか?
 その時、あなたは説明ができますか?


【大阪都構想のまとめ記事】

大阪都構想って、こういうこと

論点1:二重行政の無駄解消って、どれくらい?
論点2:広域行政一元化で、大阪が成長するの?
論点3:特別区になると、住民の意思が反映されるようになるの?
論点4:大阪市民だけが、市税を割いて余分に府財政を負担する
論点5:特別区の行政サービスは低下する
論点6:特別区のコスト試算は杜撰

総論:大阪都構想のメリット・デメリットを見てみたら


過去記事の整理:大阪都構想の議論のかけら
〇橋下氏街頭演説 こういう大阪都構想の説明はいけないと思う・再び(ミニ版)
〇大阪都構想の「事業配分に沿った財源配分」が、大阪市民に損だと思う3つの理由
〇協定書の大阪都構想が出来が悪いのは、こんな所
〇橋下氏の「2200億円は、大阪市域外には流れない。特別会計で管理する。都区協議会がチェックする」に矛盾と思うこと
〇特別区の区議数を、現在の大阪市議と同じ86人にしたのは妥当か?
〇大阪都構想を知るには、協定書を読めばいいのか?

posted by 結 at 02:59| Comment(0) | 概要 | 更新情報をチェックする
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