2015年03月05日

(論点2)広域行政一元化で、大阪が成長するの?

 大阪都構想では「大阪市が政令市で、都道府県に近い権限を持っていることで、大阪府内の広域行政が大阪府と大阪市に分断され、大阪の発展を妨げている。大阪府内の広域行政が、大阪府に一元化されれば、東京と並ぶ世界的都市に発展する」と主張しています。

 なんとかして、それらしく説明しようとするのを、数年に渡って何度も繰り返し聞きましたが、裏付けとなる論拠は見当たりませんでした。
 ですから、単純に言ってしまうと、この話は、明確な論拠が無くても、橋下氏らの主張を信じるのか、それとも信じないのか、で終わってしまいます。

 ・・・という話でも何なので、わたしなりに整理をしてみます。


 大阪府への広域行政の一元化が「良いのか悪いのか」で単純に言ってしまうと、大阪府庁が大阪府全域の仕事をしようとしてるなら、大阪市と調整をしながらするより、大阪府だけで決められる方が、大阪府庁としては仕事をし易い・・・という程度の意味で「良い」と思います。

 ただ、大阪府への広域行政の一元化が「良い」として、「その効果がどの程度なのか?」「そのために、どういったコスト(犠牲)が発生するのか」が問題です。

 まず、「どの程度の効果なのか?」です。
 そうは言っても、細かな数字の話は無理なので「東京と並ぶ世界的都市に発展」と「府民が気付かない程度」に大別してみましょう。

 大阪府の予算規模で見ると、大阪都構想実現後に、大阪市から大阪府へ移管される事務の規模は、予算額で約4千億円、財源規模で約2300億円です。
大阪府の予算 2兆7800億円→3兆1800億円(14%増)
大阪府の財源 1兆7600億円→1兆9900億円(13%増)
(ただし大阪府内全体では、大阪市の規模が減になるので、差引ゼロです)

 数字は大きいのですが、大阪府全体では増減無しの中で、大阪府庁がこの程度大きくなったからといって、「東京と並ぶ世界的都市に発展」というのは、何とも大袈裟です。
 だから、この一元化が「大阪の発展」に繋がるには、1+1=2ではない、1+1を10にも100にもする行政組織の革新的な変革が必要です。しかも、物凄く効果的だと分かるようなものが。
 ・・・でも、そんなものは見当たらないのです。

 もし大阪府庁が、大阪府全体の広域行政を必死に実現しようとしてるなら、この機会に、大阪府全体として実現しようとする政策を、行政組織の姿を、その財政的裏付けを、各部門が次々と打ち出してくるはずです。それですらも「行政組織の革新的な変革」でなく、ただの大阪府全体の広域行政体に過ぎません。

 もし大阪都構想が看板通りなら、ただの大阪府全体の広域行政体ではない、「強くて豊かな大阪」を実現するための広域行政体の設計図が、そこには示されているはずです。

 でも、法定協議会での協定書作成の議論の中で示されているのは、大阪市の1929事務のうち、253事務を大阪府に移管するということだけです。

 しかも、前回「(論点1)二重行政の無駄解消って、どれくらい?」で指摘した「通常の類似事業統合の統合効果の捻出にも失敗してる」のは、大阪市から移管されてくる253事務を取り込んだ、大阪府を一体とした政策の姿も、各部局の行政組織の姿も、描けていないということです。
 ただの「大阪府全体の広域行政体」の絵姿も、描けていないのです。

 それでも大阪都構想を実現すれば、大阪市の253事務は移管されます。時間を掛ければ、ただの「大阪府全体の広域行政体」程度にはなるのでしょう。
 でも、それは、近畿2府4県の中で、政令市を抱えて広域行政が分断された大阪府、京都府、兵庫県のグループから、今も広域行政が一元化されている奈良県、滋賀県、和歌山県のグループに移る程度でしかありません。

(注)大阪府の中で大阪市は巨大過ぎ、特殊だと喧伝されますが、人口の割合でいうと、大阪府887万人のうち、大阪市266万人(30%)、兵庫県566万人のうち、神戸市155万人(27%)、京都府259万人のうち、京都市142万人(55%)と、特別というほどでもないようです。

 「大阪市の広域行政が移管されて、少し大きな大阪府庁になるよ」ということしか示せていない、現在の大阪都構想案に「広域行政一元化で、大阪が成長」のような期待は抱けません。


 次に「広域行政一元化のコスト(犠牲)は?」です。

 まず、コストというよりも、確認しておいた方が良いこと。

 「大阪都構想って、こういうこと」でも説明しましたが、政令市、中核市、特例市というのは、府税の移管も無いのに、市税を割いてまで府県の業務の一部を引き受ける制度です。
062政令市等の権限と財源.jpg

 これは、財源の移管無しで引き受けても、府県が行うより、市で行った方が市民に良い行政サービスが行えるということで成り立ちます。
(大阪都構想でも、中核市並みの業務を担当する特別区は、府県の業務をいっぱい担当しますから、その部分は「府で行うより、区で行う方が区民に良いサービスが行える」という考え方に成り立ちます)

 橋下氏は「大阪市がやってた事業を大阪府が行うことになるだけで、何も変わらない」と主張しますが、本当に変わらないのかは、確認が要るのだと思います。

 例えば、
〇国道・府道の管理って、大阪市の仕事内容も、大阪府の仕事内容も、本当に同じないのでしょうか?道路の傷み具合の点検も、傷みが見つかった後の補修までの期間も、清掃の頻度も、街頭や植樹の配置も。
〇大阪府の病院って、専門性の高い医療機関のみを設置してて、地域医療の総合病院は市町村任せのようです。そんな中で十三市民病院って、どんな風に運営されるのでしょう?
・・・みたいなこと。市民に関係しそうなことは、それぞれにです。

 大阪市のサービスと大阪府のサービスの比較って、ずっと気にしてたのですが、見当たりません。
 でも、「大阪市がやってた事業を大阪府がやる」と決めるなら、その前に、どう違うのか位は、確認しとかなきゃですよね。


 「広域行政一元化のコスト(犠牲)は?」の2番目です。

 広域行政の一元化というのは、結局、「大阪府が、大阪市との調整無しで、大阪市域の広域行政を自由に決められること」です。
 でも、大阪市からの広域の権限の移管に当たっては、権限と(市税など市の)財源をセットで移管するとしていますから、広域行政の一元化を財源面で言うと「大阪府が、大阪市(大阪市民の代表)との調整無しで、大阪市民の(市税などの)市財源を使えるようにすること」だと言えます。

 橋下氏は、移管される広域権限は、大阪市がやっても大阪府がやっても何も変わらないと主張するのですが、何も変わらないなら、広域行政の一元化には何の意味も無いことになるので、当然、大阪府の視点で、どういう事業を実施するのか、組み替えていくことになります。

 橋下氏らが、広域行政一元化の必要性を訴える代表例に、淀川左岸線延伸部(北区豊崎(新御堂筋)と門真ジャンクションを結ぶ、自動車専用道路。大深度にトンネルを掘って建設する計画)となにわ筋線の建設があります。(参考記事

 でも、どちらも問題になっていたのは財政負担の問題です。大阪府の立場で、ぶっちゃけて言ってしまうと「いかにして、大阪市に財政負担を呑ませるか」が問題だった訳です。
 確かに大阪都構想は、大阪市の市税などの財源を大阪府が握りますから、この問題を解消します。

 ただ、淀川左岸線延伸部を取り上げてみると、地中深くにトンネルを掘って、北区と門真を結ぶ高速道路を、数千億円掛けて建設するという話で、大阪市の財政負担も1千億円単位になります。
 市内をただ通過するだけの道路を作るために、巨額の財政支出をする位なら、大阪市民にもっと直接還元される施策を求めるという市民は当然いるでしょう。そして、そういった声も無視できない大阪市は苦慮することになります。
 大阪府なら、一部住民(大阪市民のこと)のことなど気にせず、大阪府全体の視点で財政支出を行えるのです。

 (大阪市民も支払っている)府税を、大阪府が大阪府全体の視点で、使途を決めるならそれでいいのですが、大阪市民の市税を大阪府全体の行政の費用負担に充てようとするなら、「協議や調整なんて、面倒で時間が掛かるだけだ」と投げ出さず、大阪市民の代表とちゃんと協議・調整し、(府民の一員というだけでなく)大阪市民という単位でも、負担に見合った利益になるように、ちゃんと刷り合わせることは必要なのだと思います。
 そうでないと、大阪市民は、身近な行政に充てる財源を削って、府税を余分に負担させられてるだけになってしまいます。

 広域行政一元化は、ともかくとして、大阪市民に市財源でその財政負担を強いるのは、あまり正当性のない負担のように思います。


 広域行政の一元化を実現しようとすると、財源面で、大阪市民に市財源での負担を強いることは、どうしようもないのでしょうか?
 そんなことはありません。大阪市が一体で中核市に移行すれば、政令市の権限は大阪府に一元化されます。(そんなこと希望する政令市は無かったので、手続きの整備は必要になります)

 2006年に堺市が中核市から政令市になりました。大阪市の中核市移行って、これを逆にするだけのことですから、地方自治制度として言えば、大阪都構想などよりも、よほど自然な形で広域行政の一元化を実現できます。
 中核市から政令市になる時、府からの権限移管とセットで府税の移管など無いのですから、政令市から中核市になって、市から府へ権限移管するからといって、市税の移管などありません。

 まとめです。
 広域行政の一元化が悪いこととは思いませんが、過度の期待をすることとも思いません。
 少なくとも、「大阪市の広域行政が移管されて、少し大きな大阪府庁になるよ」ということしか示せていない、現在の大阪都構想案に「広域行政一元化で、大阪が成長」のような期待は抱けません

 広域行政一元化は、ともかくとして、大阪市民に市財源で、その財政負担を強いるのは、あまり正当性のない負担のように思います。
 そんな財政負担を大阪市民に強いなくても、広域行政の一元化なら、大阪市の中核市移行で十分に実現できます。


【大阪都構想のまとめ記事】

大阪都構想って、こういうこと

論点1:二重行政の無駄解消って、どれくらい?
論点2:広域行政一元化で、大阪が成長するの?
論点3:特別区になると、住民の意思が反映されるようになるの?
論点4:大阪市民だけが、市税を割いて余分に府財政を負担する
論点5:特別区の行政サービスは低下する
論点6:特別区のコスト試算は杜撰

総論:大阪都構想のメリット・デメリットを見てみたら


過去記事の整理:大阪都構想の議論のかけら
〇橋下氏街頭演説 こういう大阪都構想の説明はいけないと思う・再び(ミニ版)
〇大阪都構想の「事業配分に沿った財源配分」が、大阪市民に損だと思う3つの理由
〇協定書の大阪都構想が出来が悪いのは、こんな所
〇橋下氏の「2200億円は、大阪市域外には流れない。特別会計で管理する。都区協議会がチェックする」に矛盾と思うこと
〇特別区の区議数を、現在の大阪市議と同じ86人にしたのは妥当か?
〇大阪都構想を知るには、協定書を読めばいいのか?

posted by 結 at 01:18| Comment(0) | 概要 | 更新情報をチェックする
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