2014年07月15日

大阪都構想は何を間違えたのか?(その2)パッケージプラン

 昨年の今頃は、それなりに普通な実現可能性もあった大阪都構想。最近は地方自治法に定められた臨時議会の招集まで、松井知事・橋下市長ともに法律違反までして拒否する暴走状態。
 それらは、今年1月末の第13回特別区設置協議会(=法定協議会)後の「ちゃぶ台返し」的な出直し市長選の表明に始まりますが、出直し市長選に至らない選択は無かったのか?出直し市長選に至ってしまったのは、何を間違えた結果なのか?そんなお話をしています。

 前回「大阪都構想は何を間違えたのか?(その1)スケジュール」では、 スケジュール管理がダメダメで、「(2014年の)夏までに設計図を完成」させるつもりなら、実際は、いくらでもやりようがあったことを見てきました。

 ただ前回も触れましたが、スケジュール管理に問題はありつつも、「ちゃぶ台返し」的な出直し市長選に至ったのは、根本的には「第2ステージで議論するパッケージ案の内容が、膨大なのに完成度が低く、それなのに提案者側がしっかり是正する姿勢を示さないという、どうしようもない状態」だっただからです。
 今回は、パッケージ案の内容などが、どう影響を与えたかを見てみます。


 まず、パッケージ案とは何でしょう?
 パッケージ案は、第6回特別区設置協議会(=法定協議会)に提出された資料の呼称ですが、資料としては2通りの見解があるように思います。

(1)大阪都構想後の組織構造や財政構造など、内部構造全般を整理したもの
(2)協定書項目の事務分担、税源配分、財政調整等について、整理したもの

 資料を普通に見た人は、わたしの知る限り(そしてわたしも)(1)の内部構造全般の資料と受け取ったようです。
 ところが橋下市長らは、協定書項目に関係のない統合効果について、大袈裟な発表をし、散々強調した後、統合効果額の議論が不利になると、効果額は協定書項目ではないので、法定協議会で質疑対象にするなと言い出します。つまり、(2)の協定書項目の事務分担や財政調整等の資料だと言い出したのです。

 パッケージ案だけであれば、どちらの主張も可能ですが、協議の全体見ると、どういう位置付けになるかは分かります。協定書のまとまる段階(=議会決議や住民投票へ至る段階)では、単に協定書の項目だけでなく、大阪都構想の制度的全体像(=「設計図」と言っていいもの)がまとまっている必要があるのです。

 協議スケジュール全体から見ると、パッケージ案を検討する第2ステージでは内部構造全般、第3ステージでは「区の名称」「区役所の位置」「区議会定数」「府の名称」など、大切ですが外部的(表面的?)検討をすると捉えないと、大阪都構想の制度的全体像は出来上がりません。

 パッケージ案が、もし協定書項目だけを整理したものならば、内部構造全般を整理した別の資料が必要で、それはパッケージ案の検討前か、せめて同時に検討されることが必要です。勿論、そのような資料はありません。
 ですから、パッケージ案は内部構造全般を整理したものの必要があるし、そうあろうとして一定の整理がされています。

 橋下市長は、出直し市長選の中で「設計図だけでも作らせてください」「せめて設計図だけでも見てみませんか?」そういう発言を繰り返し、真に受けたメディアの報道なども見かけました。
 でも制度設計の大半は、既にパッケージ案は示されてるので、それを見れば、実像に一番違いものが分かるのです。


 次に、なぜ、パッケージ案の出来が悪いと評価しているかです。(パッケージ案や財政シミュレーションへの問題指摘は、過去の記事で散々行ってるので、大枠だけ)

 まず、知事・市長ダブル選挙当時の主張から、制度的全体像を理想的に整理するなら、要点は次のようになると思います。

(1)大阪府・大阪市の二重行政の無駄解消として、大阪市の広域行政部門を府と統合し、二重行政の無駄解消による大規模な統合効果の創出
(2)大阪市の広域行政部門の統合と大阪府庁の解体的再編を行い、更に統合効果を追加財源として投入して生み出す、「強い大阪」を実現する広域行政体の組織像
(3)スムーズな住民の意見反映ができる規模(彼らの当時の主張は30万人規模。ただし、意見反映を主体に考えるなら10万人規模または24区体制が求められると考えています。)で、現行大阪市の住民サービスを量的・質的に低下させないで、しっかりと住民福祉に機能する特別区の組織像
(大阪市より、ずっと小さな規模の行政体となる特別区は、(例え5区・50万人規模であっても)当然に、行政コストは増加し、行政レベル(専門性)は低下します。その回避のため、規模縮小によりコスト増と行政レベル低下を抑える仕組み作りと、追加財源としての統合効果の投入が必要になります。勿論それは、特別区単位の住民サービス選択を妨げるものであってはなりません。)

 これが100点満点で実現するなら、わたしが大阪都構想に反対する理由の半分以上はなくなります。つまり、100点満点ではないものしか出てこないだろうと予想してたのは事実です。
 それでも看板政策として掲げるのですから、せめて70点程度の具体化を図った制度的全体像(ここではパッケージ案)が示されるものと思っていました。

 例えば、(1)の統合効果について、二重行政の無駄など、実際には無くても、せめて大阪府・大阪市の類似事業統合による統合効果は、最大限に出してくるとか、(2)の広域行政体の組織像は、提案側は「大阪府も解体的に再編して、強い大阪を実現する広域組織体の組織案だ」と提案するが、客観的には、ちょっと誇大評価だろう、という程度のものです。

 でも、パッケージ案が示す大阪都構想の内部構造は、わたしの評価では40点の赤点ラインも遥かに下回る、10点とか20点の代物です。


 まず(1)の統合効果についてです。(説明を簡略化したので、詳しくは記事末の【補足】を参照ください。)

 大阪都構想の統合効果は当初4000億円と報じられましたが、これは積算方法自体が変なので、ありえません。
 パッケージ案で、大阪市から広域行政分として、大阪府に移管される歳出4000億円から、統合対象事務事業の統合後の全体規模を1兆2千億円と推計し、「『二重行政の無駄』があるなら2割くらい経費削減できてもいいよね」で推計すると、生み出される財源額は1000億円と2000億円の間、ざっくりと1500億円程度が期待できるはずです。

 もし「二重行政の無駄」が出鱈目だったとしても、類似事業統合による経費削減くらいは期待できますから、経費削減が1割くらいだったとして、生み出される財源額は500億円と1000億円の間、ざっくりと750億円程度は期待できるはずです。
 類似事業統合の経費削減がたった5%だったとしてさえ、生み出される財源額は250億円と500億円の間、ざっくりと400億円弱は期待できるはずです。

 でも、パッケージ案発表当時の統合効果876億円〜976億円(一般財源で815億円〜915億円)から、数字の誤りや既に実施済みの市政改革効果額、大阪都構想と関係のない効果額や大阪市を特別区に再編する効果額を除くと、大阪府・大阪市の統合効果は実は31億円しか計上されていません。(以前の記事「(補1)大阪都構想の統合効果が悲し過ぎる」参照)

 「二重行政の無駄」など無いにしても、大阪市の4000億円の事業を、(仮の推計ですが)大阪府の8000億円の類似事業と統合したことによる経費削減(=統合効果)として、31億円というのは小さ過ぎます。
 統合効果創出の点から見てパッケージ案は、完全に失敗プランなのです。

 統合効果創出失敗の一番の理由は、(細かな点を除き)大阪市から移管する4000億円について、大阪府の対応事業と統合後に必要となる予算額を試算することなく、単純に「大阪府の現在の歳出額+4000億円」で計上しているのですからです。これで、まともな統合効果が出てきたら、その方が不思議です。

 府市統合の統合効果創出の失敗は、大阪都構想への期待感を萎ませます。
 でもそれ以上に、パッケージ案の協議を進める中では、「強い大阪の広域行政体」を作るためにも、分割後特別区の住民サービス維持のためにも、追加投入できる財源がほとんどないということですから、かなり協議の足を引っ張る原因となりました。


 次に(2)「大阪市の広域行政部門を統合し、統合効果を追加財源として投入し、大阪府庁の解体的再編によって生み出す、『強い大阪』を実現する広域行政体の組織像」です。

 この点については、簡単です。全く何の記述もなく、「『強い大阪』を実現する広域行政体の組織像」など何も示されていないのです。
 ただ、大阪市から大阪府へ移管する事業、財源、資産が示されているだけです。
 これでは「強い大阪の実現」など期待しようもありません。「大阪都構想は、ただの大阪市解体プランだ」と批判されるのも当然です。


 次に(3)「スムーズな住民の意見反映ができ、住民サービスを維持しながら、しっかり機能する特別区の組織像」です。

 「理想的に整理した場合」として、大阪市より、ずっと小さな規模の行政体となる特別区は、行政コストの増加や行政レベル(専門性)の低下が見込まれるので、それを抑える仕組み作りと統合効果の一部を活用した追加財源が必要と指摘しました。

 でもパッケージ案に、現状より小さな規模となる特別区で、行政コストの増加や行政レベル(専門性)の低下を抑える仕組み作りは、ほとんど無策です。
 少し一部事務組合で共同運営する提案はあり、「巨大過ぎる一部事務組合だ」と批判されてはいますが、分割の難しい業務の避難場所に使っているだけで、「行政コストの増加や行政レベルの低下」を抑えるものにはなっていません。

 追加財源は、統合効果から持ってこれないので、市政改革効果を充てるとしていますが、当面の収支不足対策が精一杯で、行政コストの増加に対応するものではありません。

 ではパッケージ案では、行政コストの増加や行政レベルの低下に対して、どのような対応を示しているのでしょうか。

 まず、行政レベル(専門性)の低下については、一切無視です。第1ステージの事務分担の議論で、生活保護事務の企画部門の府移管を提案した時だけ、行政レベル(専門性)の低下に言及しましたが、パッケージ案では、生活保護事務の企画部門も特別区へ分割移管になりましたから、第1ステージで主張してたことさえ無視です。

 行政コストの増加も、基本「増えない」で乗り切る内容です。(以前の記事「大阪都構想財政シミュレーション(その3) 今のサービス維持に必要な職員数が知りたいのに」「大阪都構想財政シミュレーション(その4) 家を建てるなら見積もりは取りたいよ」参照)

 橋下市長がおっしゃるには「現在1兆3千億円でやってる事務が、特別区でそれぞれ行うことにして、1兆3千億円でできないはずがない」そうで、歳出額の90%について分割後の試算も行わず(=コスト増の計上は無し)、歳出額の9%を占める人件費について「大阪市を5つの特別区に分割すると職員数を削減できる」という不思議な試算を行うと、歳出の1%を占める3項目の試算で5割増の結果が出ても、5区案なら「大阪市を特別区に分割すると、行政コストが削減される」という不思議な試算が出来上がります。

 このような試算ですから、パッケージ案の中で、試算結果の予算額と職員数で、今まで通りの住民サービスを維持できるかの検証など、行っていません。法定協議会で野党委員からそういった要求もありましたが、拒否してました。
 実際、パッケージ案の発表直後に報じられた記事(元記事)では、このパッケージ案の作成に関わった幹部職員が「市長や知事の意向に沿うように資料をまとめたので、相当無理な作りになっている。机の上で機械的に数字をはじいただけで、うまくいくかシミュレーションしたわけではない」と不備を認めたと伝えています。

 大阪市を5つの特別区に分割すれば、普通に考えれば、必要な予算額も職員数も増えるはずなのに、「今まで通りの予算額と15%減の職員数をあてがうから、それでどうするかは、特別区ができてから、それぞれの特別区で考えてくれ」というのが、パッケージ案が示している中身なのです。


 こういう出来の悪いパッケージ案ですから、法定協議会の場でも、多数の問題指摘を受けています。
 「成長戦略はどうしたのか?」「効果額に関係のない項目が多数含まれている」「特別区のコスト試算は3項目だけでいいのか」「移行のコストを無理に抑えているのは、移行後悪影響を及ぼさないか」などなどの指摘が、自民・民主・共産の委員から指摘されました。

 ただ、これらの質疑は、出直し市長選に繋がるものではありません。
 橋下市長らは「自民・民主・共産の委員の質疑が入り口論に終始し、協議が妨げられた」と盛んに主張しますが、出来の悪いパッケージ案の問題を指摘し、修正を求めることは、入り口論どころか、委員としての本務です。
 でもそれ以前に、橋下市長らは、自民・民主・共産の委員と合意を図ろうとは一切してませんでしたから、自民・民主・共産の委員は、割当時間の質疑を行い、事務局や橋下市長、松井知事が何がしかの答弁をしますが、追加の資料提供をするでもなく、ましてパッケージ案の修正をするでもなく、それだけです。協議の妨げようなどありません。


 橋下市長らが、法定協議会で合意を目指して、協議・答弁をしていたのは公明の委員だけでした。公明の委員の協力さえ得られれば、特別区設置協議会(=法定協議会)も、府議会・市議会も、多数で通すことができるからです。
 ですから、法定協議会でのパッケージ案の議論が、3ヶ月の予定から6ヶ月でもまとまらなかったのは、ひたすら公明の委員との協議です。

 実際、公明の委員が協議で求めたことも、自民・民主・共産の委員の委員とは少し違っていました。

 パッケージ案について、公明の委員がどのような質疑をしていたか、主な内容を挙げてみます。

【第7回法定協議会】
(1)特別区の(当面の)収支不足対策に不十分な点がある
(2)移行後の大阪府と特別区の10年から30年後までの財政シミュレーションと財政の健全化判断指標を示して欲しい。
(3)新制度移行までのスケジュール(移行計画)を示して欲しい。
(4)特別区の職員数試算で予定している大量の新規採用や技能労務職員から事務職への大量転任は、現実的にできるのか
(5)純粋に二重行政の解消効果はいくらあるのか

【第8回法定協議会】(前回との重複除く。以下同様)
(1)児童相談所一時保護所が共同設置とあるが、児童相談所を各区設置なら、一時保護所もセットで設置する必要がある。
(2)大阪市の債務を大阪府へ継承するとあるが、実質公債費比率などの財務指標が悪化して、財政健全化団体に転落するのではないか

【第9回法定協議会】
(1)大阪市の財務リスクが、大阪市から府へ移管の財政調整基金で賄えなくなった時の取扱いは、はっきりと決めておいた方がいい。

【第11回法定協議会】
(1)財政シミュレーションで、特別区の当面の収支不足に対する補填財源の一部として、土地売却収入を挙げているが、売却資産として試算している土地に他用途へ転用済みの土地や売却困難と思われる土地が見受けられる。もっとしっかりしたものを示して欲しい。
(2)財政シミュレーションの数字の内訳を示して欲しい。

【第12回法定協議会】
(1)純粋な二重行政解消の効果額を明らかにして、どれだけの成長戦略投資をしていくのか、明らかにしていくことが必要。
(2)その他各所の解決すべき問題について列挙


 この論点を整理して、改めて思いますが、この程度の指摘で、なぜ決裂になってしまうのか?と思ってしまいます。

 パッケージ案の根本的な問題指摘はあまりなく、大阪都実現からすぐ(5〜10年?)に特別区や大阪府が行き詰ったりしないよねという話が大半なのです。(橋下市長らが、パッケージ案の区割り絞込みを強引に求めていた時期の第12回分質疑を除く)
 簡単な話ばかりではないですが、解決の必要な問題が大半ですから、「一緒に解決を目指そう」ということで真摯に応じればいい話です。
 それなのに、橋下市長や事務局の答弁では、「できない、やらない」理由ばかりを並べ立てるばかりで、松井知事に至っては「スケジュール作れというなら、そのスケジュールを守ると先に約束せえ」と無茶をしつこく迫って怒らせる始末。

 結局、特別区の財政シミュレーションは作りましたが、大阪府側の財政シミュレーションや財政健全化指標、移行スケジュールの提示はしないままです。(大阪府は、特別区の財源を大きく預かることなどもあり、公明の委員は、大阪府の財政健全性を明らかにすることは重視していました。)

 橋下市長って、自分に不利な情報は資料から除いておくだけでなく、提示を求められても拒むという、提案者側としては、あるまじき態度で協議に臨みます。しかし、協力を求める公明の委員にまでその対応で、協議がまとまるはずもありません。

 結局、公明の委員の求めに真摯に対応することはないまま、12月以降は「決裂する気か!」という恫喝で、区割り案の絞り込み(=実質は、原案のパッケージ案丸呑みでの検討終結)を公明党へ迫るのですが、別に公明側でそんなことに応じる理由もなく、1月末の「ちゃぶ台返し」的な出直し市長選表明に至ってしまうのです。

 つまり、わたしの見るところでは、パッケージ案の検討という一番肝心な所で、合意を求めるべき公明委員の求めに真摯に対応しなかったことが、出直し市長選以降の現在の状況に繋がる、一番の原因です。

 わたしは、(公明との関係をあまり拗らせない)どこかのタイミングで、公明委員の求める資料提示に応じ(何なら、問題の解決策も頑張って提示し)、公明委員の顔を立てる形で、協議を進めると思っていました。大阪都構想全体を引っくり返すような話は何も求められていないのですし、どう考えても、大阪都構想へ正攻法で近づく、一番の近道だからです。

 もし1月から数ヶ月遅れても、元々2015年4月の大阪都構想実現なんてスケジュールは無かった訳で、2015年4月の統一地方選挙までに住民投票ができれば無問題だったはずです。
 またもし、2015年4月の統一地方選挙までに住民投票ができなかったとしても、公明党との協力関係が維持されていれば、統一地方選挙後の住民投票の芽も普通にあったでしょうし。


 まとめです。
 1月末の「ちゃぶ台返し」的な出直し市長選表明に至ったのは、それまでのスケジュール管理の甘さやパッケージ案の出来の悪さなどが背景にありつつも、パッケージ案に対する公明委員の指摘に、真摯に取り組み、共に解決を目指そうとしなかったことが、一番の原因に思います。

 どう考えても、公明委員の指摘に真摯に対応するのが一番の近道だったのに、それをしなかった理由というのは、わたしには理解できません。

 「公明党は最初から引き伸ばすだけのつもりで、協議をまとめるつもりはなかったんだぁ!」みたいな決め付けの主張が聞こえてきそうですが、そんなのは、公明委員の指摘に最大限の対応をしてから、言うことです。
 移行スケジュールの提示にさえ応じずに協議がまとまらないのは、「引き伸ばし」以前の当然のことでしょう。


【補足】「(1)の統合効果について」の説明の詳しいバージョン

 まず(1)の統合効果についてです。
 大阪都構想の統合効果は当初4000億円と報じられました。(正しくは、第1回府市統合本部会議で、統合による経費削減4000億円、経済成長による税収増4000億円の計8000億円を目指すというもの(元データ 元サイト))
 ただ、この4000億円の統合効果は、大阪府の全会計規模4兆円、大阪市の全会計規模4兆円の5%の経費削減を行うというもので、統合効果の算出としては出鱈目です。
 統合効果が財源として使えるためには、一般会計の歳出規模で見ないと意味がありませんし、統合と全く関係のない部門は除く必要があります。府市の事業統合を行っても、事業統合と無縁な区役所の住民票の窓口や、警察署の予算で「統合効果」が生まれるはずがないのです。

 パッケージ案で大阪市から広域行政の業務として、大阪府に移管するとしたのは、歳出規模で4000億円。(一部、府で行っていない業務もありますが、そこはざっくり無視して)府下人口の3割を占める大阪市に対して、大阪府の事業規模は概ね2倍とすると8000億円。合わせて1兆2千億円が統合対象事業の歳出規模と、非常に粗っぽいですが推計してみます。

 もし「二重行政の無駄」(大阪府と大阪市が類似の事業を重複して行っていて、非常に無駄な状態になっている)というのが正しいなら、理論値としては大阪市の4000億円の歳出が丸ごと不要になるはずですが、理論値通りにゼロになるというのは無理でしょう。
 ただ「二重行政の無駄」が正しいなら、一般的な類似事業統合の経費削減の期待値(わたしは、類似事業だけを取り出すなら、1割程度の経費削減を想定します。)より、ずっと高いと思われますから、2〜3割、2000億円〜3000億円の経費削減は期待して良いのでは?と思います。
 2000億円の歳出削減として、財源となる一般財源規模は概ね半分です。ただ、「二重行政の無駄の解消」=「行政効果を維持したままの経費削減」であれば、歳出削減割合より、特定財源の削減割合は小さいと期待できます。つまり、2000億円の歳出削減で、使えるようになる財源額は1000億円と2000億円の間、ざっくりと1500億円程度は期待できるはずです。

 もし「二重行政の無駄」が出鱈目だったとしても、大阪府と大阪市の類似事業を統合するなら、一定の統合効果は期待できます。大阪府と兵庫県の間で、二重行政などあるはずもありませんが、「大阪府と兵庫県の業務・事業は大半が類似事業ですから、統合すれば統合効果が期待できる」というのと同じ意味です。
 「二重行政の無駄」とかでない、類似事業の統合による経費削減を1割程度とするなら、1000億円の歳出削減。歳出削減割合より、特定財源の削減割合は小さいと期待すると財源効果額は500億円と1000億円の間、ざっくりと750億円程度は期待できるはず。
 類似事業の統合による経費削減を小さく見込んで5%程度としても、500億円の歳出削減。歳出削減割合より、特定財源の削減割合は小さいと期待すると財源効果額は250億円と500億円の間、ざっくりと400億円弱は期待できるはず。

 パッケージ案の発表当時、統合効果は876億円〜976億円(一般財源で815億円〜915億円)とされましたが、数字の誤りや既に実施済みの市政改革効果額による上げ底などで膨らんだ数字で、今後実際に発生する財源額は、(地下鉄民営化など、大阪都構想と関係の無い項目による改革効果を含めても)5区分離案で362億円に過ぎない財政シミュレーションは示しています。(以前の記事「大阪都構想財政シミュレーションを見てみた(その1)」参照)
 ここから、地下鉄民営化などの大阪都構想と関係のない効果額と大阪市を特別区に再編する効果額(区の数が減るとして、老人福祉センターや子育て活動支援拠点、スポーツセンターなどを削減できるとして、効果額が計上されています)を除くと、大阪府・大阪市の統合効果は実は31億円しか計上されていません。(以前の記事「(補1)大阪都構想の統合効果が悲し過ぎる」参照)

 「二重行政の無駄」など無いにしても、大阪市の4000億円の事業を、(仮の推計ですが)大阪府の8000億円の類似事業と統合したことによる経費削減(=統合効果)として、31億円の効果というのは小さ過ぎます。
 統合効果創出の点から見てパッケージ案は、完全に失敗プランなのです。

 統合効果失敗の分析は、以前の記事「(補1)大阪都構想の統合効果が悲し過ぎる」で行っていますが、最大の原因は、(細かな点を除き)大阪市の広域事業として移管する4000億円について、大阪府の対応事業と統合後に必要となる予算額を試算することなく、単純に「大阪府の現在の歳出額+4000億円」で計上していることです。
 ふざけています。これで、まともな統合効果が出てきたら、その方が不思議です。

 府市統合の統合効果創出の失敗は、大阪都構想への期待感を萎ませる意味もあります。
 でもそれ以上に、パッケージ案の協議を進める中では、「強い大阪の広域行政体」を作るためにも、分割後特別区の住民サービス維持のためにも、追加投入できる財源が非常に乏しいことを意味していて、かなり協議の足を引っ張る原因となりました。


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posted by 結 at 04:47| Comment(0) | その他 | 更新情報をチェックする
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