2014年06月08日

特別区か、都市内分権かの二択ではなくて

 前回「域内分権のコストと効果は見合うのか」では、特別区や都市内分権(=行政区の権限強化)について、コストと行政選択改善の効果が、どのように発生するかを、見てみました。
 そして、
〇コスト発生と効果発生は全然連動しないこと(つまり、やり方などによっては、コストばかりかかって、行政選択改善が図れないことも十分にある。)
〇特別区と都市内分権では、コスト発生の仕方や行政選択改善範囲にかなり差異がある。
・・・ということを見ました。

 そして、最後に「地域別のサービス選択の希望」の表を与えられて、その実現を行うだけなら、最も効率的に希望通りに実現できるのは、(区長への権限移譲を頑張らない場合の)現行の市役所体制ということをみました。
 ただ、現行の市役所体制でうまく行かない理由についての考えを挙げ、「何とかならないの?」を今回のテーマとしました。

02希望分布.jpg

 前回、(区長への権限移譲を頑張らない場合の)現行市役所体制が、このような表を与えられて、表通りの行政選択を実現するだけなら、最も効率的にできそうなのに、うまく行かない理由として、次の2つを挙げました。
〇「表で挙げたような『地域別のサービス選択の希望』を把握すること」が(現行の市役所体制では)苦手なのではないか
〇「地域別に異なるサービス選択の意思決定を行うこと」が(現行の市役所体制では)苦手なのではないか

 ではなぜ、地域別の希望の把握や、地域別のサービス実施の決定が苦手となるのでしょうか?
 それは、普通には「効率性」「公平性」に反するものだからです。

 「効率性」に反するというのは分かり易いかと思います。
 上記の表の業務6で「m」と「r」の選択がある場合、地域別に「m」と「r」に分けてサービス提供を行うより、「m」か「r」かのどちらかに決めて全市一律でサービス提供を行う方が、コストが低い=効率的なのは当然です。

 もし担当者が地域別に「m」と「r」に分けてサービス提供を行おうとしても、余分なコストをかける妥当性を、上司や財務担当者に納得させるのは難しいでしょう。
 逆に、現在、地域別に「m」と「r」に分けてサービス提供を行っているのだとしたら、一本にまとめてコストカットを行うことこそ、「行政改革」「事務の合理化」だとして、推奨されるはずです。


 「公平性」に反するというのは、説明し難いのですが、簡単に。
 「m」と「r」の選択がある場合、北区民が全員「m」を選び、都島区民が全員「r」を選ぶということは普通ありません。
 当然、要望としては北区民からも「m」と「r」の両方の希望が出てきますし、都島区民からも両方の希望が出てきます。その中から、どちらを選択するかを模索するのです。
 行政にとって、市民と公平に接するということは、北区民1の「m」という希望も、北区民2の「r」という希望も、大阪市民のひとりとして、希望を受け取るといことです。それは、北区民1の「m」という希望と都島区民1の「r」という希望も、大阪市民のひとりとして、希望を受け取るということでは同じです。
 地域に特有の特別な事情があるようなものを別とすれば、北区扇町の区民1の希望と、北区天満の区民2の希望を特に地域別の希望として、区別しないように、北区民1の希望と都島区民1の希望も、大阪市民のひとりとして、特に区別しないことが、基本的になります。
 地域別の希望の把握というのは、市民を同じ大阪市民のひとりとして、区別せず接する中では、結構難しいことなのだと思います。


 では「区長への権限移譲」は、この「効率性」「公平性」をどのように解決するのでしょうか。
 公平性については簡単です。区長は、基本的に区民の意見を聞き、他の区の区民の意見を聞きません。彼が聞く区民の意見の中で判断したものが、自然に「地域の選択」となり、解決します。
 区の中の地域別の意見を汲み取ろうとすれば同じ問題が出てくるので、行政区を5つも集めて特別区を作れば、元の行政区単位の地域の意見を汲み取るのは、やっぱり難しいでしょう。

 効率性については、ちょっと乱暴です。「区長への権限移譲」の時点で、業務分割により、コスト増が既に発生してしまっています。だから、区別で行政選択を行う時には、(既にコスト増になっているので)新たなコスト増は(基本)発生しません。そのため、選択段階で効率性は問題となりません。

 つまり、「区長への権限移譲」という手法は、シンプル(容易で確実性が高い)だけど、効率性は頭から犠牲にした手法といえます。


 市役所組織が、地域別ニーズの把握や地域別選択を認める意思決定が苦手であるならば、市役所組織より上位の立場で、地域別ニーズの把握や実施の意思決定を行い、事業実施を市役所組織を行えばいいという考え方が、出てくるように思います。

 単純に言って、市長が地域別ニーズ把握と実施の意思決定を行えばいいのですが、市長には、それ以外の行政運営の仕事がどっさりあるはずなので、現状、そんな風に機能していないのだと思います。(大阪市の場合、もう少しあって良いようには思いますが。)

 公募区長は、言い出した当初は副市長格とされ、各局より上位になるとされていました。(制度上は、現在も副市長格のはずです。)
 ですから、公募区長が地域別ニーズ把握と実施の意思決定という役割を担えても良かったの思うのですが、実際には、そうなってはいないようです。

 公募区長が、制度上副市長格のはずなのに、市役所組織(特に市役所本庁部局など)に対して、上位者として行政ニーズの反映ができない理由を、次のように考えています。

(1)区長が、区役所事務の長であること
〇所管事務が、本庁から指示を受ける立場なので、本庁にお願いする立場になりやすい。
〇所管事務の立場で考えるので、市政全般を判断する立場から、市役所組織に意見反映することが難しい。
〇区域の大阪市政全般をどうするかではなく、区役所事業の充実に終始してしまう。

(2)専門スタッフがいない
〇区役所事業以外の事業について、住民ニーズを持ち込まれても、妥当性を判断することができない。
〇本庁部局へ提案・交渉できる能力がない。


 この「公募区長が副市長格として市役所組織に対して上位者として機能しない理由」の想定が正しいのならば、「市役所組織より上位の立場で、地域別ニーズの把握や実施の意思決定を行う者」に必要なことが、裏返しで見えてきます。

〇区単位で区民と接し、区域内の市政全般に責任を負う立場にたつ。
〇区役所事務とは、完全に切り離す。(区役所事務の長とはしない)
〇本庁部局へ提案・交渉できる程度の専門スタッフを抱える。
〇特定の所管事務は持たず、区民要望の吸い上げに専念する。

 こういう責任者を「方面担当副市長」として設置するとして、どのように制度設計をすればいいか、少し考えてみます。

〇区長と全く別に、3区程度の担当地域について、市政全般を担当する8名程度の副市長を設置する。

〇方面担当副市長毎に、各局から専門人材の派遣を受け、10〜20人程度のスタッフを抱える。

〇区民の要望を聞き、各局との調整、交渉、政策反映に専念する。

〇2〜3ヶ月に1度、区役所単位で、区民が誰でも参加できる市政報告会を行い、質問・要望を受ける。質問・要望は、できるものはその場で回答するが、無理なものは、次回に報告する。

〇区民の声を聞ける行事等には、区長と共に参加する。

〇他地域担当の副市長・スタッフと、情報交換・相談・協調し、特に埋もれた市民の意見で共通するのものは、個別地域の意見とせず、複数地域あるいは全市共通の市民の声として、意見反映を図る。

〇方面担当副市長は、交渉・調整による事務事業への意見反映を主とするが、各局へ意見反映を働き掛けるための権限として「方面担当副市長が指定する任意の決裁について、副市長として決裁権者になることができる」というのがあればよいのかなと思う。(橋下市長が拘る「予算編成権」は不要かと。)

〇人材的には、公選や民間出身者ではなく、職員出身者のイメージ。自身の思いの実現ではなく、区民の意見の吸い上げに徹する調整型人材であることが必須。


 この方法のメリット

〇100人〜200人に人員体制が必要となるが、それでも、地域の声の行政への反映手段として、特別区設置や(ある程度の規模の)都市内分権と比較して、はるかに低コストで、制度移行のコストやトラブルも考え難い。

〇特に都市内分権と比較して、地域の声を反映できる業務範囲を絞る必要は無く、幅広い市政に対して、意見反映が可能。

〇特に特別区と比較して、現行24区の枠組みは、何も変える必要はなく、区長や区役所事業としての取り組みも、現状のまま推進できる。

 デメリット
〇コストとなるのは、人員体制程度。

〇想定通りに機能させられるかが、最大のポイント。そのためには、徹底的な問題点の洗い出しと対策、実施後の見直しが不可欠。


 地域意見の行政反映を低コストに実現する方法として、「方面担当副市長の設置」についてのイメージを、書き並べてみました。
 これは、前回「域内分権のコストと効果は見合うのか」で、特別区や都市内分権について整理した中で、特別区について「地域意見を反映したい規模と比較して、酷く大掛かりで高コストなのに、特別区の人口規模が大きくて、地域意見の反映には中途半端」と思う点や、都市内分権について「地域意見を反映したい業務と、区長に移管できる業務のミスマッチが起きるよね」と思う点に対して、「もっとシンプルに考えてみよう!」ということでまとめてみたものです。

 書き並べてはみましたが、「特別区や都市内分権より、方面担当副市長の方が優れてるから、ぜひこっちでやろう!」と提案するものではありません。
 個人の思いつきなんて、穴だらけが当然で、叩けばいっぱい問題が出てくるものです。
 実際、特別区はどうにも反対ですが、「ちょうど良い塩梅」の都市内分権なら、それなりに良いと思いますし。(「ちょうど良い塩梅」が難しいのですが。)

 地域内分権の目指すものは、区長の権限強化ではなく、地域の声をいかにうまく行政反映するのかですから、個人の思いつきでも、違うアプローチがあるよと、提示してみました。

 特別区か、都市内分権か、視野を狭めた二択の議論に陥らず、幅広い視野を持って検討してほしいなというのが、この記事の結びです。


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posted by 結 at 04:35| Comment(0) | 行政組織 | 更新情報をチェックする
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