2014年03月16日

橋下氏街頭演説 こういう大阪都構想の説明はいけないと思う

 昨日、橋下氏の行った出直し市長選の街頭演説で、「あんまりだなぁ」と思うものがあったので、つっ込みを入れておきます。

 2014年3月15日に、都島区ベルファ前で橋下氏が街頭演説を行ったものです。
 気になる部分の内容は、コチラに書き起こしました。該当部分の音声もアップしてありますので、できれば一度聞いていただければ思います。

 街頭演説の要旨をまとめると、次のようなものです。
〇大阪市民だけで、周りの住民の大阪府民全体の負担を大幅に背負っている
〇例えば、地下鉄には今まで1兆円投入してきているが、大阪市民は利用者の3割。
総合医療センターには年間100億円投入しているが、大阪市民は利用者の6割。
市立大学には年間100億円を投入しているが、学生のうち大阪市民は27%。
歴史博物館は400億円で建てたが、来館者のうち大阪市民は2割などなど。
〇こういう府民全体に関わることは、大阪市民だけでやる必要はない。府民全体でやったらいい。市立ではなく、府立にしてしまえばいい。
〇府立にして府民全体で負担したら、大阪市民の負担を楽になる。大阪市民の負担をいかに軽くするかを徹底的に考えたのが、大阪都構想。

 この演説には、つっ込み所がいっぱいあります。「大阪市は、市内のことだけで大阪全体のことを考えていないと、批判しまくってたじゃないか」みたいに。

 でも、この街頭演説を「あんまりだなぁ」と思う一番の点は、「市立の施設などを府立にして、府民全体で負担し、大阪市民の負担を軽くするのが大阪都構想」という、大阪都構想の説明が、大阪都構想を具体化したパッケージ案の内容と全然違うからです。
 つまり、「市立の施設などを府立にしても、大阪市民の負担は軽くならない」のです。


 この点について、大阪都構想を見てみましょう。(以下についての資料の元サイト

 まず、大阪都構想実現後、現在大阪市が行っている事務を、特別区の担当と大阪府の担当に区分した結果が次の表です。(元データ パ01-P29)
01大阪都構想実現後の大阪市分の事務分担.jpg

 大阪市が行っている事務を、1929に分類し、特別区が1676、大阪府が253、担当するとしています。

 この事務分担を歳出面から見た図が、次のものです。(元データ パ04-P6)
02大阪都構想実現後の歳出区分.jpg

 大阪市の歳出1兆7千億円のうち、約4000億円を大阪府が担当しますが、事業とセットになる特定財源は1697億円で、地方交付税など事業とセットで移行する一般財源は621億円です。
 このため、大阪府の側で1634億円の財源不足が発生すると、パッケージ案では指摘します。

 この財源不足に対応するものとして、パッケージ案が示す財源配分方法を示す図が、次のものです。(元データ パ04-P27)
03大阪都構想実現後の財源配分.jpg

 現在の大阪市の一般財源額8605億円のうち、2255億円を大阪府に移管しますが、地方交付税など、制度的に事業とセットで移管されるのは621億円に止まるため、大阪市の市税(6361億円)+地方交付税(1088億円)の計7449億円うち、5849億円(79%)を府税などとし、7割方は調整財源として特別区に配分しますが、1634億円を中抜きして府の財源に充てるということです。

 このうち、市町村の法定業務である消防(370億円)や下水道(314億円)部分は一定理解できますが、その他は、まさに上の街頭演説で紹介した「大阪府全体で行う事業だから大阪府へ移管する」としたものに対して、「今まで通りに260万市民で費用を負担しろ」と、固定資産税など市町村の財源で大阪市民に負担をさせるものです。

 そして、この「広域業務の対する大阪市民の本来市税として支払う税からの負担」が長期的に減らしていく想定があるのかというと、そういった期間限定的な制度設計はなく、今後19年間に渡って行われた財政シミュレーションの中でも、想定されていません。

 また、上で紹介した街頭演説では、高等学校についても全部府立高校にしてしまえばいいと主張している部分があります。
 確かに大阪都構想が実現すれば、市立高校も全部府立高校になり、大阪市民であった特別区の区民は、大阪府から特別区以外の府民と同じように、府立高校の住民サービスを受けます。
 でも大阪都構想実現後、府立高校のサービスに対して、特別区以外の府民は府税で負担をするだけですが、特別区の府民は同じサービスを受けるだけなのに、府税の他に、本来市税として支払う税からも、余分に負担をし続ける、とても不公平な状態になるのです。(本来市税として支払う税から余分に負担するということは、身近な住民サービスが、その分、貧しくなるということです。)

 まとめです。
〇大阪都構想では、大阪市が行っている事業のうち、橋下氏らが「大阪府全体で行うべき事業だ」とする、(歳出規模で)約4分の1の事業を大阪府へ移管します。

〇この大阪府への移管部分について、最初に紹介した街頭演説で橋下氏は「府立にして府民全体で負担し、大阪市民の負担を軽くする」と説明しますが、大阪都構想の実際の制度では、本来市税として支払う税から、大阪市民が負担をし続けます。

〇そのため、特別区の区民は、大阪府から同じサービスを受けるだけなのに、府税に加えて、本来市税として支払う税からも余分に負担を続ける、(特別区以外の府民と比べて)、不公平な状態になります。

〇大阪市が行っている事業は、大阪市民を代表する市長が、実施や廃止、もっと増やすべきとか、もっと減らすべきという選択をすることができます。でも、大阪都構想で、大阪府へ移管されると、大阪市民の単位で決めることができなくなります。880万人の大阪府民を代表する府知事が、事業の実施を決め、その経費負担だけを260万人の特別区の区民(=大阪市民)が負うのです。


 大阪都構想は「よく分からない」とよく言われます。それは制度の複雑さよりも、政治的思惑での説明ばかりされ、学校の授業でされるような制度的に客観的な説明が行われないことに、大きな理由があると思っています。
 それなのに更に、橋下氏らが大阪都構想について「きちんと説明しない」どころか、自分たちの都合の良いように「実際に検討されている制度と異なる、誤った説明を行う」というのは、「駄目だろう」と思ってしまうのです。


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posted by 結 at 20:27| Comment(0) | その他 | 更新情報をチェックする
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