2013年08月20日

今更ですが、大阪都構想での事務分担の議論

 2013年8月9日の第6回特別区設置協議会(いわゆる法定協議会)で、大阪都構想の制度設計を示したパッケージ案が示され、物議を呼んでいます。(パッケージ案の内容はコチラ
 ただ、そちらの話の前に、第3回特別区設置協議会(4月12日開催)以降、3回に渡り同協議会で取り上げられた、8業務の事務分担の議論の内容を押さえておいた方がいいと思うので、今回は、事務分担の議論です。(参照元サイトはコチラ

 なお、8業務として取り上げられた「児童相談所」「義務教育(小中学校の設置管理)」「都市計画」「下水道」「消防」「保健所・保健センター」「国民健康保険」「生活保護」のうち、特別区の業務体制の話と関わりの深い「児童相談所」「義務教育(小中学校の設置管理)」「保健所・保健センター」「国民健康保険」「生活保護」の5つを取り上げます。


 「保健所・保険センター」です。
保健所体制.jpg

 現在の体制は、表の通りです。(元データ
 【本庁】の企画・統括業務を行うのが、80人。病院等の立ち入り検査や食品関係市説の営業許可など事業者向けなどの全市的な保健所業務を行うのが、359人(加えて食品衛生検査所など81人)。乳幼児健診や予防接種などを行う(24区に設置された)保健福祉センターが540人。
 特に大阪市では、法律上の保健所と保険センターの機能にとらわれず、保健所と保健センターの役割を再構築し、対人保健サービスは保険センターが保健所に近い機能を果たし、保健所は事業者を対象としたサービスや1ヶ所に集約した方が効率的な業務を担当。

 事務分担案は、次の通り。
 まず、保健所。(元データ
保健所検討の方向性1.jpg

A案 広域自治体が設置
メリット
○機能維持
○府の他の保健所と連携し効率化(?)
デメリット
○保健所と保険センター分離によるサービス低下
○(追記事項)地域の実情に応じた保健サービスが難しい(現状より低下)

B案 特別区が水平連携により設置
メリット
○機能維持
デメリット
○保健所と保険センター分離によるサービス低下
○水平連携では、緊急時の対応力低下が懸念
○(追記事項)水平連携では、業務の改革・改善への対応力低下が懸念

C案 特別区ごとに設置
メリット
○地域の実情に応じた保健サービス
デメリット
○専門人材の確保できるか
○コストアップ

 保険センター。(元データ
保健所検討の方向性2.jpg

A案 特別区単位に1ヶ所設置
メリット
○効率化
デメリット
○住民の利便性低下

B案 各特別区に現在の行政区をベースに複数設置
メリット
○住民の利便性維持
デメリット
○コスト高(現状よりアップするとは言えない)
○専門人材の確保(現状より、増えるとは言えない)


「児童相談所」
児童相談所体制.jpg
 
 現在の体制は、表の通りです。(元データ
 こども相談センター170人。24区役所の子育て支援室6人×24区=144人。区役所子育て支援室などの企画・統括業務を行う部署があるはずですが、こども相談センターの170人に含まれるか、別枠かは不明。
 関連施設として、児童自立支援施設の阿武山学園、児童養護施設の長谷川羽曳野学園、情緒障害児短期治療施設の児童院などの施設を保有。

 事務分担案は、次の通り。(子育て支援室についての議論は無し)(元データ
児童相談所検討の方向性.jpg

A案 広域自治体が設置
メリット
○緊急時の対応体制、専門人材の確保、ノウハウの蓄積・活用、施設の確保が可能
(現状機能の維持を示唆しているか、現状より向上を示唆しているかは不明)
デメリット
○特別区の実情に応じた施策展開が難しい

B案 特別区が設置
メリット
○特別区の実情に応じた施策展開が可能
○地域、NPOと連携したネットワーク作りなども期待できる
デメリット
○緊急時の対応体制や専門人材の確保が難しい
○ノウハウの蓄積、活用が難しく、スキル低下
○区毎の施設確保は困難で、児童福祉施設の広域的確保と調整の必要(機能低下)
○(追記事項)コストアップ


「生活保護」
生活保護体制.jpg

 現在の体制は、表の通りです。(元データ
 【本庁】の企画・統括業務を行うのが、75人。区役所の健康福祉センターが1846人。全市的な業務を行う更生相談所・緊急入院保護センターが64人。

 生活保護についての事務分担の議論では、「大阪市では、区役所が生活保護の実施機関としての役割を果たすとともに、本庁の福祉局が生活保護の企画立案や国等の関係機関との連絡調整、区役所への監督・指導等の機能を担っております。各区役所で培われた現場のノウハウを集約して企画立案や国への制度提案に繋げて、これをさらに現場にフィードバックする仕組みは、他の市町村にはない大阪市の特色ある取り組みと整理しております。生活保護率の高い地域が大阪市域を超えて大阪府内に広がっているという状況も踏まえ、こうした中、これまで大阪市が培ってきた企画立案機能やノウハウ、取り組みを継続・発展させていくためには広域自治体と基礎自治体の役割がどうあるべきかという視点で・・・」(元データ)として、【本庁】の企画・統括業務へ議論を集中させています。
 そのため、以下の事務分担案も【本庁】の企画・統括業務について、のみです。

 事務分担案は、次の通り。(元データ
生活保護検討の方向性.jpg

A案 特別区の水平連携により担う
メリット
○企画立案機能等の維持が可能
デメリット
○大阪市の企画立案機能等が市域内にとどまる
○(追記事項)地域の実情に応じた施策展開が難しい(現状より低下)

B案 広域自治体が担う
メリット
○大阪市の企画立案機能等を府域全体に広げられる
○府域全体の知見を集約するので、企画立案機能等が向上(特別区へもフィードバック)
デメリット
○企画立案機能等の維持には、特別区と広域自治体の連携や人事交流が必要

 この事務分担案の議論は、他の事務の議論と違い、大変トリッキーなものとなっています。
 恐らく、問題の多い生活保護の実務部門は基礎自治体に任せたまま、府内の生活保護事務の企画・指揮・指導だけ、府知事の下で行いたい、そのためのスタッフが欲しいということなのでしょう。
 でも普通に考えて、企画・統括部門と実務部門の分割など機能するはずもありませんから、特別区設置協議会の委員の議論で一蹴されます。

 ただ、上記の【本庁】の企画・統括業務の説明は持ち上げ過ぎにしても、説明のような機能を果たしていることは事実です。そして、区役所などの現場の業務が、高い事務水準で効率的かつ円滑に機能するために、一定の役割を果たしていることも事実です。
 また、ここでは、生活保護事務の企画立案機能等だけが特別であるかのような説明をしていますが、区役所などの現場の業務を抱える【本庁】の企画・統括業務に共通する話でもあります。

 なお、A案・B案がトリッキー過ぎるので、A案・B案の議論の裏返しとして、「C案 特別区が担う」を追加しておきます。

(独自追加)C案 特別区が担う
メリット
○地域の実情に応じた施策展開ができる
デメリット
○企画立案機能等の維持が困難(行政レベルの低下)
○コストアップ


「国民健康保険」
国民健康保険体制.jpg

 現在の体制は、表の通りです。(元データ
 【本庁】の企画・統括業務を行うのが68人。区役所の健康福祉センターが498人。【本庁】68人の中に、全市的な業務を行う担当者が、一部含まれると思われます。

 業務としての重点課題は「保険料収入の確保(収納率向上)」、「医療費の適正化」。
 国民健康保険は、国で都道府県単位での運営(=広域化)が検討されており、今回の事務分担は広域化までの当面の間についての検討。

 事務分担案は、次の通り。(元データ
国民健康保険検討の方向性.jpg

A案 特別区に再編
メリット
○医療費抑制対策や収納率向上対策などに地域の実情に応じた特色ある施策が期待
デメリット
○保険財政の安定化に不安
○特別区間で保険料格差が生じる可能性

B案 特別区の水平連携で実施
メリット
○大阪市の保険財政や保険料の枠組みが維持できる
デメリット
○医療費抑制対策や収納率向上対策などを、特別区で実施できる仕組みが必要


「義務教育(小中学校の設置管理)」
義務教育体制.jpg

 現在の体制は、表の通りです。(元データ
 教育委員数6人。事務局職員数497人。

 小中学校の設置管理を特別区が持つことは議論がないようで、議論の対象は教職員の人事権と研修業務です。

 事務分担案は、次の通り。(元データ
義務教育検討の方向性.jpg

A案 人事権等は広域自治体
メリット
○広域的な観点からの人事や効率的な研修が可能
デメリット
○区長の教育行政に対する理念や方針などが、教職員に伝わりにくい

B案 人事権等は特別区
メリット
○特別区の教育行政に対する理念や方針などが、教職員に伝わりやすい
デメリット
○規模が小さいなど、教職員の異動や採用、研修で課題を生じる。
○(追記事項)コストアップ


 概観してみると、業務特有の検討課題もありますが、一般化できるメリット・デメリットもありそうです。
 体制の構成要素となる、【本庁】の企画・統括業務、全市的な業務、区役所などの業務に分け、それぞれの部門に、どのようにメリット・デメリットが出てくるか、整理すると、次のようになりました。(シンプルにするため、「広域自治体が担う」「特別区の水平連携で担う」「特別区が担う」のうち、「特別区が担う」だけを取り上げます。)

「特別区が担う」

【本庁の企画・統括業務】【全市的な業務】
メリット
○地域の実情に応じた施策展開が可能

デメリット
○コストアップ
○ノウハウの蓄積、活用が難しく、スキル低下
○企画立案機能等の維持が困難(行政レベルの低下)
○専門人材の確保が難しい(一般事務でも、事務精通者の確保は課題。)

【区役所などの業務】
A案 特別区単位に1ヶ所設置
メリット
○効率化
デメリット
○住民の利便性低下

B案 特別区内の支所ごとに設置
メリット
○住民の利便性維持(現状の水準)
デメリット
○コスト高(現状の水準)
○専門人材の確保(現状の水準)


 今回の特別区設置の協議に当たっては、「地域の実情に応じた施策展開」を目指すとしているので、上記のような業務であれば、デメリットがなければ、「特別区が担う」でみんな良いのです。

 でも、「特別区が担うとすると、地域の実情に応じた施策の展開が可能ですが、○○な問題も、××な問題もあります。『広域自治体が担う』『特別区の水平連携で担う』『特別区が担う』のどれにしますか?」と判断を求められても、特別区設置協議会の委員の方々も、これだけでは答えの出しようがありません。

 そこで、特別区設置協議会では、次のような問答が交わされることになります。
(第4回特別区設置協議会(2013年5月16日)より 元資料 元サイト
--------------------------- 引用開始 ---------------------------
(清水委員)
 次に、同資料の児童相談所の4ページを見ますと、全体の総受付相談件数につきましても、児童虐待の相談対応件数につきましても、都道府県の中で大阪府が最も多いということでございます。
 こうした状況から、児童相談の体制については、さらに充実、強化を図っていく必要があると考えられますけれども、この児童相談所に係る制度設計に当たって、児童相談所業務において中心的な役割を果たしています児童福祉司、また、児童心理司等の専門職員について、必要数をどのように想定されているのか。規模が小規模になればなるほど、組織内部でも事務分担の見直し等で業務、それから、要員の確保というのは、非常に融通が利かなくなる、余裕がなくなるということがあると思うのですけれども、現在、大阪市で働いていらっしゃるこういった要員を、区割りに合わせて、按分していく、5分割、7分割、または人口比率によって按分するというようなやり方をしますと、必要な体制が構築できないおそれがあると思うのですけども、業務を適正に執行するということから、どのような職員体制が必要かを検討していく必要があるのではないかと思いますが、いかがですか。

(府市大都市局中谷事務事業調整担当課長)
 事務分担に伴う職員体制につきましては、現在、税源配分、財政調整などと合わせたパッケージで区割り案ごとに作成をした上で、8月上旬の協議会で示せるよう、鋭意作業を進めているところでございます。
 職員体制の検討に当たりましては、単に区割りにあわせて要員を按分するということではなく、他都市の状況等も参考にしながら、事務分担に応じた適正な職員体制はどうあるべきかについて、十分検討を行っていくことが必要だと認識をしております。

(清水委員)
 児童虐待に適切に対応していくためには、一つは、一時保護等に必要な施設、どれだけきちんと確保できるのかということと、専門職員を適切に配置できるのかどうか、ここは非常に重要なところでありますし、こうした点に具体的な絵姿を、わからないままに方向性を議論していくというのはどうかなというふうに思っています。
 他の項目についてもそうなのですけれども、事務分担案だけで広域にするのか、特別区にするのかという仕切りだけではなくて、その事務事業を、その事務分担を実現していくためにはどのような体制が必要なのか、それから、コストはどのくらいかかるのか、それで、住民サービスの向上、効果というのはどういうふうに図られるのかというのを、ある程度、情報を共有した上で、この費用対効果ということも踏まえて判断できていくのではないかなというふうに思っていますが、こうしたコスト面について、概算だけでも示すことはできないのでしょうか、事務局としての準備はできませんか。

(府市大都市局中谷事務事業調整担当課長)
 今回の資料につきましては、今後、事務分担の仕分け作業を進めるに当たって、共通した論点があると考えられる項目について、8つの事務事業を抽出して、先行的に御議論いただき、今後、仕分け作業を進めていく上での、基本的な考え方や視点、課題などを明確にするために取りまとめたものでございます。
 先ほど、御説明したとおり、財政調整や職員体制につきましては、パッケージ案として示す予定となっております。
 今回、示した事務事業項目についても、パッケージ案を検討する中で、精査、検証をしていくこととしておりますので、御理解いただきますようお願いいたします。

--------------------------- 引用終了 ---------------------------

 今回の事務分担をどうするかなど、考えていく上で必要な
「事務分担案だけで広域にするのか、特別区にするのかという仕切りだけではなくて、その事務事業を、その事務分担を実現していくためにはどのような体制が必要なのか、それから、コストはどのくらいかかるのか、それで、住民サービスの向上、効果というのはどういうふうに図られるのか」
 という情報は、パッケージ案で示されるということのようです。

 では次回は、今回の事務分担案などの妥当性を検討するための材料、特に大阪都構想実現後の運営コストについて、パッケージ案の中でどのように示されたのかを、見ていきたいと思います。


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posted by 結 at 04:42| Comment(0) | 概要 | 更新情報をチェックする
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