2013年06月26日

橋下市長の市長選での選挙演説を聴いてみた(敬老パス編)

 以前の記事「10ヶ月前の橋下市長の市長選での選挙演説を聴いてみた」で、橋下市長の選挙演説で話していたことと、その後の実際の大阪市政が随分と違うという話をしました。
 今回は、その敬老パス編です。

 橋下市長が、市長選で敬老パスは維持すると言ってたのに、酷い改悪したというのは今更の話です。

 ただ、わたしは橋下市長が「敬老パスを維持する」と語ったのは何度も聞きましたが、橋下市長の市長選(2011年11月)のマニフェストの敬老パスに関する次の部分を、市長選の中で詳しく説明するのを聞いたことがありませんでした。

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2.市民サービス編(元データ
(4)福祉
A 高齢者向けの敬老パス制度を維持し、さらに私鉄交通、バスでも利用できる制度に改善します。他方で、敬老パス対象外の市民から制度の理解も得れるよう、利用実態に応じた上限額の設定等、制度改善策も行います。
--------------------------- 引用終了 ---------------------------

 ちなみに、大阪維新の会の府・市議選(2011年4月)のマニフェストの敬老パスに関する部分は、次の通りです。(元データ
--------------------------- 引用開始 ---------------------------
 優しい大阪
 特別区(自治区)は、現在大阪市が提供している住民サービスの全て(敬老パス制度を含む)を提供します。また、以下のような取り組みも可能になります。
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 最近、橋下市長が、市長選に際して、敬老パスについて詳しく説明してる動画を教えてもらったので、その説明を見ながら、敬老パスの経過を振り返ってみたいと思います。


 敬老パスについて詳しく説明している動画とは、そのテロップによると「大阪維新の会 区民会議in平野区」(2011年11月5日)の中で、橋下市長と大阪維新の会・大阪市議団団長の坂井良和市議が説明しているものです。
 大阪市長選挙は、2011年11月13日が告示、11月27日が投開票でしたから、実質的には選挙戦、真っ只中でのお話です。

 こちら「大阪維新の会 区民会議in平野区」(2011年11月5日)に該当部分の書き起こしと、動画へのリンクを張っています。
 動画のうち、冒頭10分程度の説明ですので、橋下市長の名調子で、先に一度、聞いていただくことをお勧めします。

 敬老パスに関する部分のポイントを挙げると、次のようなものです。
○敬老パス制度は維持をする。
○敬老パス制度を交通局の赤字補填のための制度ではなく、高齢者のための制度に変え、JRや私鉄でも利用できるようにする。
○ただし、JRや私鉄で利用可能にするに当たっては、現在ある「1ヶ月8万円」といった非常識な利用がされると持たないので、常識的な線での上限だけ設定する。
○「1ヶ月8万円」といった非常識な利用に対して、常識的な線での上限を設定し、今までそれに充てられていた税金は、中学給食などの原資に考えたい。
○敬老パスの利用実態は、オフピーク時間帯の利用が中心なのに、正規運賃で利用料金を支払っているのはおかしい。大幅な割引をさせ、現在80億円の負担を5割引や9割引にして、残りを私鉄でも使えるようにするような工夫が、民営化すれば、できる。


 さて、「1ヶ月8万円といった非常識な利用に対して、常識的な線での上限設定」というのを、言葉通りの解釈するなら、どういった「上限設定」が考えられるでしょう?
 言葉通りに解釈するなら、次の2つの条件を満たすものだと思います。
○常識的な利用を行っている、大多数の敬老パスの利用者に影響を与えるような上限とはしない。
○敬老パス利用者の中でも、突出して利用額の多い利用者を制限対象とする上限設定とする。

 橋下市長や坂井市議は「1ヶ月8万円」の利用を常識から外れた利用として、平成22年度の敬老パスの利用額分布から見ていくと、「年間」20万円を超える利用というのは、利用者の1%に過ぎません。これから言えば「上限20万円」で良さそうなものですが、考えれられる案をいくつか挙げておきます。

年間20万円以上利用者 全体の1% → 1%を制限対象として年間20万円を上限
年間10万円以上利用者 全体の6% → 5%を制限対象として年間10万円を上限
年間7万円以上利用者 全体の10% →10%を制限対象として年間7万円を上限


 では、2011年12月末に橋下市長が、市長になって以降の動きを見ていきます。

 2012年2月、大阪市は平成24年度(2012年度)予算で535億円の財源不足が発生するとし、橋下市長の方針通り「補填財源に頼らず、収入の範囲で予算を組む」形を続けたと仮定すると、今後10年間にわたり、毎年度約570億〜180億円の財源不足が生じることがわかったとしました。
 平成24年度は、不用地の売却など補填財源による収入を見込むが、大阪市は「こうした収入をあてにせず、収支不足を解消したい」としました。(元記事

 2012年4月、橋下市長が敬老パスに半額負担を求めるとして、次のように報じられました。
--------------------------- 引用開始 ---------------------------
橋下市長が敬老パスに半額負担求める 事業は維持
産経ニュース 2012.4.1 19:23
http://kiziosaka.seesaa.net/article/261740585.html

 大阪市の橋下徹市長は1日、70歳以上の市民が市営地下鉄・バスに無料で乗車できる「敬老パス」事業に関し、JRや私鉄でも利用可能にする一方、利用額半分の自己負担を求める考えを表明した。市の財政負担を抑えるため、利用限度額を設定する意向も示した。

 昨年11月の市長選公約でも制度見直しを掲げたが、半額の自己負担に言及したのは初めて。7月の本格予算編成に向け、利用限度額など制度設計の詳細を検討するとみられる。

 市によると、敬老パス事業の昨年度負担額は約80億円。市長就任後初の12年度当初予算では4カ月分の約28億円の計上にとどめ、事業自体を見直す方針を打ち出していた。

 市長率いる大阪維新の会市議の会合で「どんどん高齢者が増えると、予算にして100億円以上のお金が掛かることは目に見えている」と指摘。JRや私鉄の利用を前提に「半額さえ負担してくれれば、場合によっては東京まで行ける。ただ上限は付ける」と述べた。
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 2012年4月、大阪市は、財政難を踏まえ、市独自の福祉事業や施設を廃止し、歳出削減効果を見込む市政改革プランの試案を公表しました。
 この発表に当たり、橋下市長はに「市民は認識していないかもしれないが、至る所で非常にぜいたくな住民サービスを受けている。標準レベルに落とさせてと訴える」と述べました。(元記事

 この市政改革プラン(試案)で示された敬老パスの見直し内容を次の通りです。(元データ
1案 民鉄拡大・利用額の50%負担・上限2万円(予算89億円に対する削減効果50億円)
2案 交通局限定・利用額の50%負担・上限なし(予算89億円に対する削減効果48億円)
3案 交通局限定・利用額に対する負担なし・上限なし・所得に応じて年間千円〜2万円を負担(予算89億円に対する削減効果14億円)


 試案に対し、市役所内部や議会との調整を行い、市民に示すものとして2012年5月に示された、市政改革プラン(素案)での敬老パスの見直し内容は、次の通りです。(元データ
1案 民鉄拡大・利用額の50%負担・上限2万円(削減効果50億円)
2案 交通局限定・利用額の50%負担・上限なし(削減効果48億円)
3案 交通局限定・利用額に対する負担なし・上限なし・所得に応じて年間千円〜2万円を負担(削減効果14億円)
4案 交通局限定・交通局シニア割引を12.3%から50%に拡大・上限なし・課税世帯5千円、非課税世帯3千円を毎年徴収(削減効果額50億円)
5案 交通局限定・利用額の30%負担・上限なし・課税世帯5千円、非課税世帯3千円を毎年徴収(削減効果額42億円)

 この見直し案に対しては、大量のパブリックコメントなどで市民からも強い反発が示されました。そして、議会対策として特に公明党市議団との調整の中で見直し案がまとめられました。

 2012年7月に決定された市政改革プランの中での敬老パス見直し内容は、次の通りです。(元データ
○交通局限定・利用1回につき50円を負担・上限なし・3千円を毎年徴収(削減効果額28億円)
なお、2013年度は年額3千円徴収のみで、利用1回につき50円負担は実施せず。完全実施は2014年度から。

 なお、この協議の途中で橋下市長は、次のように発言しています。
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【橋下日記】(12日)「敬老パスゆくゆくは半額負担で」
産経ニュースwest 2012.6.12 21:28
http://kiziosaka.seesaa.net/article/274772038.html

 午前9時 登庁。70歳以上の市民が大阪市営地下鉄・バスを無料で無制限に利用できる「敬老パス」の利用者負担のあり方について「子供でも半額負担している。高齢者も半額負担するのが納得できる話。いきなり半額というわけにはいかないが、ゆくゆくは半額負担もあると思う」と話す。

 同5分 庁内執務。

 午後4時 松井一郎知事と打ち合わせ。

 8時40分 退庁。
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 2012年10月、衆院選を念頭にした橋下市長の全国遊説の中で、鹿児島市では橋下市長は、次のように述べられていたそうです。
「大阪市なんて、僕が市長になるまで地下鉄もバスも高齢者は全部タダ。こんなバカみたいな政策をずっとやり続けているんですよ」(元記事

 また、2013年6月東京都議選で橋下市長が応援演説をした中でも 「大阪では70歳以上は市営地下鉄、市営バスは無料でした。それを私は改革で有料にしました!」という発言があったと、ネット内での情報ですが伝わっています。


 2013年6月、敬老パスの年間3千円徴収が始まり、区役所窓口などに2万間を超える苦情・問い合わせが殺到しました。(注:1回利用50円負担は、まだ翌年度から。)
 これに対して橋下市長は「ある意味、大阪市政改革の改革の象徴になると思います。」「一部のご負担はやっぱり、お願いしないといけませんから、それこそ、受益と負担の明確化でね、この負担をするんだったら、このサービスは要らないとか、この負担をしてでも、このサービスは要るとか、これは住民のみなさんの選択です。」と述べられました。(元記事


 2013年6月、東京都議会選挙の応援演説のひとコマとして、橋下市長が次のように力強く語る姿が放送されていました。
「本気の改革をやるには、日本維新の会しかできない。選挙前であろうとも、皆さんに良いことばかりは言わない。」(毎日放送、報道特集2013年6月22日放送分)

 「選挙前であろうとも、皆さんに良いことばかりは言わない」なんて、上記の敬老パスの経緯を知ってると「噓つけ!」って気持ちになります。


 選挙前、敬老パスを維持すると語っていたことが、財政難でどうしても守れなかったのだとしたら、せめて敬老パスの改悪を「改革の成果だ!」と誇ったりせず、有料化への苦情・批判へは、謝罪で応じて欲しいです。
 まあ、橋下市長の言動を聞く限り、「敬老パスの維持を約束した」という意識は、もうどこにも無いようですが。


(追記1)
 財政難を掲げて、市の福祉事業や施設の廃止などの市政改革プランを打ち出す中で、敬老パスの制度改悪も打ち出したのですが、その大阪市の財政難についても、いくつかの情報を補足します。

 大阪市が財政難を言い出したのは、橋下市長が市長就任2ヶ月の2012年2月ですが、大阪市の財政難について、橋下市長は市長選マニフェストの中で、方針を明確に示しています。(元データ
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(3)財政改革
@ 大阪市の財政状況
大阪市の地方債残高は、平成21年時点普通会計で2兆7千9百億円であり、全会計では、5兆1千億円にのぼっています。
市税収入についても、平成21年時点で合計6236億円であり、平成8年度と比較して1550億円もの減収となっいます。特に法人市民税については、平成元年当時2482億円であったものが、平成21年度は1034億円となり、6割程度もの大幅減少となっています。
地方税等の経常的な一般財源が、人件費等の経常的な経費にどの程度充てられているかの指数である経常収支比率については、平成21年度100.2%となっおり、100%を超えています。
これは、義務的経費以外に使える財源にまったくの余裕がないことを物語っています。

A 財政改革
このような硬直化した大阪市の財政状況にかんがみれば、現行の大都市制度で持続的発展を期待することは不可能であり、大阪都構想ももとより、既述の市役所改革等様々な構造改革を抜本的に行い、人件費1年以内に約1割、将来的に約3割以上削減することで、約1200億円の財源をねん出するともに、市税収入を高めるような積極的な経済施策を大阪都で行う必要があります。
また、これに加え、次のような財政改革を行う必要があります。
@ 大阪市は大阪市内の約4分の1の土地を保有しているところ、不要な資産を売却し、未利用地を売却することで財源をねん出します。
A 大阪市が所有する公共建物の管理形態を改め、管理費コストを改善します。
B 大阪都が実現するまでの間、現在の24の行政区を市内8〜9にブロック化して、合理化を図ります。
C 市債残高の削減目標値を設定して大幅に減らします。
D 補助金、交付金制度を見直します。
E 大阪府と同様の新公会計制度を導入します。
F 都市計画道路、公園計画の見直しを迅速に行います。未利用地の売却を推進 します。
G 未収金の収納対策を強化します。
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 このマニフェストと市政改革プランとの矛盾をいくつか指摘しておきます。
○市政改革プランに当たり、年間500億円程度の収支不足(市職員の府並み給与カットによる66億円の削減反映済)を問題とするのですが、マニフェストに掲げる人件費削減で1200億円が(全部でなくても)実現するなら、年間500億円の収支不足を問題にする必要はありません。
○マニフェストでは未利用地売却を財源捻出のひとつの柱に掲げていますが、未利用地売却は補填財源に当たります。市政改革プランが解消すべきとする年間500億円程度の収支不足は「補填財源に頼らず」としていますから、財源捻出方法と財政再建の指針が、全くずれています。
○マニフェストでは機構改革による無駄削減(A、B)をひとつの柱に掲げていますが、そういう方向性での財源捻出が示されないまま、マニフェストにはどこにもない、福祉事業や施設の廃止などが主体の市政改革プランが、進められることになりました。


 市政改革プランと財政再建の関係にも、いくつか指摘しておきます。
○市政改革プランは、年間500億円程度の収支不足を解消する必要があるとして打ち出されましたが、市政改革プランによる削減額は、最終年次で年間226億円に止まります。当然、更に市政改革を打ち出し、収支不足をゼロにする「財政再建案」を打ち出すはずなのですが、その気配はありません。
○財政再建は、市民に直接影響する福祉事業や施設の廃止・削減だけでなく、市民へ影響を与えない事務・事業の見直しや人員配置の見直しによる人件費削減(=無駄の削減)に優先的に取り組むのが普通です。
 ところが、大阪市では、先に打ち出した市職員の府並み給与カットによる66億円削減を除くと、市政改革プラン以外の財政再建案の項目が出てこず、更に市長肝いり政策が次々と出され、新規事業による支出の蛇口も締まっていない状態です。
 そのため、2013年3月に示された財政収支の見通し(元ページ)を見ると、平成25年度から平成34年度までの平均収支不足の見込み額は、平成24年2月現在の平均440億円に対して、平成25年2月現在で平均323億円と、収支改善は117億円に止まります。市民に直接影響する福祉事業や施設の廃止・削減などの市政改革プランで年間226億円の削減をしたはずなのに。

 2013年2月、橋下市長は、平成25年度(2013年度)予算案の発表に当たり、平成25年度は346億円の収支不足の見通しに「(収支不足を解消して)住民サービスに切り込むのは無理」と述べ、収支不足を「任期中にゼロにするつもりはない」としました。(元記事

 多分、「収入の枠内で予算を組むことを財政運営の基本方針」と掲げてたはずの橋下市長が、再び思い出したかのように「収支不足が問題だ!」「お金が足りない!」と言い出すのは、市民に負担を押し付けたい事案が出てきた時なのだろうと思います。


(追記2)
 最初に紹介した市長選に際しての橋下市長の敬老パスの説明で、「地下鉄民営化が実現すれば、敬老パスの利用者に大きな負担をかけることなく、敬老パスの予算を大幅に削減し、敬老パスの拡充(や他の予算へ振り向ける)ための財源を生み出すことができる。」としていたのは、どうなったのでしょう?

 2013年2月に示された「地下鉄事業民営化基本方針(案)」(掲載元サイト)では、何も記されてはいません。
 地下鉄民営化が実現すれば、敬老パス改悪を止められるなら、橋下市長はもっとメリットとして強調しそうなものですが、有料化への苦情・批判に対するコメントを見ても、全く考えてなさそうです。

 そもそも、オフピーク利用が中心の敬老パスに料金割引を求めるなら、民営化を待たなくても、部下の交通局長へ検討を指示すればいいだけです。
 例えば、交通局のシニア割引を50%に引上げ、残った50%を敬老パスの予算で補填するなら、敬老パス利用者へ負担を求めず、敬老パス予算の削減を実現し、市議会の抵抗も無かったと思います。
 ただ、そういった検討をした形跡は見当たりません。


(追記3)
 最初に紹介した市長選に際しての橋下市長の敬老パスの説明って、それだけを聞くとそれらしく聞こえます。
 (最初聞いただけで、明らかにおかしいと思われる発言もありますが、)橋下市長の、こういった「それらしく聞こえる」発言に対しては、その発言だけを捉えて反論を試みるよりも、時系列を追いながら反論を試みる方が「おかしな点」が分かり易いことがあるようです。
 橋下市長の「それだけを聞くと、それらしく聞こえる」説明のひとつの問題点は、「その説明を聞いて期待されるものが、多くの場合、実現されない」ということなのですから。


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posted by 結 at 08:00| Comment(0) | 市政 | 更新情報をチェックする
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