2013年06月19日

二重行政の無駄解消は、どうなった?(その2)

 前回の「二重行政の無駄解消は、どうなった?」では、かつての橋下市長の「二重行政の無駄を排除して、余ったお金で福祉や医療などにお金を回すのが大阪都構想なんだ」という説明に対し、いくつかの事業を例に挙げて、現状、府市統合の検討が具体的にどうなっているか、見てみました。
 ざっくりと言って、「府と市が統合されれば無駄が解消され、余ったお金で、福祉や医療、そういう所にお金を回す」といったような「二重行政の無駄の解消」がされる様子は、あまり見当たりませんでした。

 今回は、大阪府と大阪市で類似・重複していると思われる事業について、検討された結果を見ていきたいと思います。

○第14回大阪府市統合本部会議(2012年6月19日)で検討された、「経営形態の見直し検討項目(A項目)基本的方向性(案)」と「類似・重複している行政サービス(B項目)基本的方向性(案)」の2資料を見ていきます。
○この2資料で取り上げられた30以上の事業は、府市で統合検討される全事業ではありませんが、かなりの範囲を網羅的に取り上げたと理解しています。
 ただ、「経営形態の見直し検討項目(A項目)」の中に、府市の事業統合検討対象が多数含まれているため、「経営形態の見直し検討項目(A項目)」と「類似・重複している行政サービス(B項目)」の事業を全て挙げた上で、地下鉄やバス、ゴミ処理のように、府の事業との統合検討対象とならない分(府に統合検討の対象となる事業が元々無い事業)については、末尾に並べて区分しました。
○約1年前の資料ですが、いくつかの事業を追いかけて見ている範囲では、この案をベースに検討を進めているようです。

 以下は、上記2資料の各事業について、「統合の可否」と「期待される効果」を整理したものです。「期待される効果」については、質的効果と量的効果に区分した以外、上記2資料の「期待される効果」欄の内容をそのまま挙げています。
 なお、備考は、わたしが適宜記載しました。表末尾の統合検討対象とならない事業は、備考に経営形態の見直しの方向性を記載しています。
 また、ここで使用した2資料の掲載元です。(A項目 B項目

 また、表は読んでいただけるのが嬉しいですが、大変なので、最初は、ざっと見て、表の後の本文に移っていただくのが推奨です。

AB項目表01.jpg

(1)病院(経営統合) 元データ
(2)病院(急性期総合医療センター、住吉市民病院) 元データ
(3)港湾 元データ
(4)大学 元データ

AB項目表02.jpg

(5)公営住宅 元データ
(6)下水道 元データ
(7)府・市信用保証協会 元データ
(8)堺泉北埠頭・大阪港埠頭 元データ
(9)産業技術総合研究所・工業研究所 元データ

AB項目表03.jpg

(10)公衆衛生研究所・環境科学研究所 元データ
(11)府・市こども青少年施設(野外活動施設) 元データ
(12)府立高校・市立高校 元データ
(13)府立支援学校・市立特別支援学校 元データ
(14)こころの健康総合センター・こころの健康センター 元データ
(15)マイドームおおさか・産業創造館 元データ

AB項目表04.jpg

(16)国際交流財団・国際交流センター 元データ
(17)保健医療財団・環境保健協会 元データ
(18)府・市道路公社 元データ
(19)府・市住宅供給公社 元データ
(20)府立中央図書館・市立中央図書館 元データ
(21)府立体育会館・市立中央体育館 元データ
(22)門真スポーツセンター・大阪プール 元データ
(23)府立大型児童館ビッグバン・キッズプラザ大阪 元データ
(24)大阪国際会議場・インテックス大阪 元データ
(25)障がい者交流促進センター・障害者スポーツセンター 元データ
(26)ドーンセンター・クレオ大阪 元データ

AB項目表05.jpg

(27)犬管理指導所・動物管理センター 元データ
(28)市場 元データ
(29)水道 元データ
(30)文化施設 元データ
(31)文化財センター・市博物館協会 元データ
(32)市こども青少年施設(センター) 元データ

AB項目表06.jpg

(33)地下鉄 元データ
(34)バス 元データ
(35)一般廃棄物(ごみ収集輸送事業) 元データ
(36)一般廃棄物(ごみ焼却処理事業) 元データ
(36)消防 元データ


 ざっと事業名・施設名・団体名を見るだけで、「二重行政だ!」「府と市で、同じようなことをやってて無駄だ!」と指摘を受ける事業であることが分かります。
 でも、その割りに、統合の可否を上の表の項目の単位で数えてみると、ある程度可否の分類のできた「(27)犬管理指導所・動物管理センター」までで、可15件、否12件ですから、これだけ「類似・重複している(と思われる)行政サービス」を集めてきた割には、統合対象としない事業が多いです。

 更に特徴的と思うのは、統合対象とする上の3表の事業(1)〜(15)で、「期待される効果」が数多く挙げられている割に、その大半が質的効果で、コスト削減など具体的に目に見える効果(=量的効果)があまり挙げられていないことです。

 特に、数少ない量的効果の中に「間接部門の経費減」「総務部門の経費削減」という説明が見られます。
 総務部門(=間接部門)の経費減は、割合の大小を除けば、組織統合をすれば、必ず発生するものです。ただ、総務部門は事業本体と比べると、ごく小さいのが普通です。だから、組織統合で必ず発生するが、影響の小さい「総務部門の経費削減」というのは、事業本体に十分な統合効果があるなら、普通挙げないものです。(ある程度の規模の組織統合を行って、総務のアルバイトを2人減らしたとかいうのは、普通瑣末だからです。)
 「間接部門の経費減」「総務部門の経費削減」というのは、事業本体で効率化や経費削減を挙げることができない時に、無理に効果の説明を列挙する時の項目と考えます。
 だから、量的効果から「間接部門の経費減」「総務部門の経費削減」といった種類の効果は外して考えた方が実際的に思いますが、そうすると量的効果は、更に少ないものになります。

 量的効果のない事業統合とは、どういうことでしょうか?
 ひとつは、統合案の中に結構見られるのですが、例えば、二つある研究所を(場所もそのままで)ひとつの法人組織に統合するというものです。形式的に「統合」は達成できますが、それだけでは、研究所の看板を「独立行政法人○○ ××研究所」と架け替えるだけで、実質は何も変わらないということに、なりかねません。

 もうひとつは、例えば、二つある協会を1ヶ所にまとめてひとつの協会に統合するが、ふたつの協会のメンバーが1ヶ所に集って同じ仕事をするだけで、特に効率化は見込まないというものです。
 それだけでは無意味な統合となってしまうので、色々と質的効果を並べているようです。

 でも「二重行政だ!無駄だ!」という最初の話に立ち返って考えてみましょう。
 同じような事業を大阪府と大阪市がそれぞれ行っているのは「無駄だ!」というのが、二重行政の無駄として繰り返し語られてきたもののはずです。
 大阪府と大阪市がそれぞれ事業を行うことで「無駄」になっているならば、府市の事業を統合すれば、無駄が無くなり、効率化されるはずです。明らかに「無駄」だったのならば、統合でどの程度の効率化ができるのか、金額などを示して明示できるはずです。

 大阪府と大阪市がそれぞれ行っていた事業を統合しても、解消される無駄(=量的効果)が見つからないということは、その事業は、府市がそれぞれ行っていても、「二重行政だ!無駄だ!」に該当するものでは無かったのだと思います。

 結局、「類似・重複している(と思われる)行政サービス」を集めてきて、府市統合本部会議で検討してみても、無駄の解消(=量的効果の創出)を説明できるものは、ごく一部で、その一部についても説明される効率化は具体性を欠きます。(統合対象を集めた上の3つの表の量的効果と、最後の表の「統合検討対象とならない事業」の量的効果の説明を比較すると歴然としています。)

 前回の記事で、いくつかの施設・事業の検討状況を概観して、「府と市が統合されれば無駄が解消され、余ったお金で、福祉や医療、そういう所にお金を回す」といったような「二重行政の無駄の解消」がされる様子は、あまり見当たらないとしました。

 今回の「類似・重複している(と思われる)行政サービス」をある程度網羅的に集めて統合検討した結果を見ても、効率化を説明できるのは極一部で、「府と市が統合されれば無駄が解消され、余ったお金で、福祉や医療、そういう所にお金を回す」といったような「二重行政の無駄の解消」は、あまり期待できないようです。


 また、多数挙げられている質的効果についても、質的効果ですから、本当に効果があるのか確認しようがない「効果」がいっぱい挙げられている訳で、「凄く効果があるよ」という説明を膨らませるために、役人さんが作文的に作った効果が混ざってるんじゃないかと、疑いを持っています。(どういう点から、そう思ってるかの説明は、ここでは割愛します。)


 また、上でまとめた2資料(「経営形態の見直し検討項目(A項目)基本的方向性(案)」と「類似・重複している行政サービス(B項目)基本的方向性(案)」)に基づき基本方針を決めた、第14回大阪府市統合本部会議(2012年6月19日)を受けて、次のように報じられました。
--------------------------- 引用開始 ---------------------------
大阪府市統合本部:1万人を非公務員化 地下鉄など民営に
毎日新聞 2012年06月19日 23時03分(最終更新 06月19日 23時31分)
http://kiziosaka.seesaa.net/article/276125385.html

 公営企業などの経営形態見直しや二重行政の解消策を検討していた大阪府市統合本部は19日、市営地下鉄やバス、ごみ収集などの経営形態を見直し、市の技能職員ら約1万人を非公務員化する基本方針を決めた。3事業で少なくとも年約200億円の経費削減につながるが、当初掲げた削減目標と比べると当面は20分の1にとどまる。府市で類似した18団体・施設の統合・一元化、10団体の廃止や補助金打ち切りなども決めた。

 統合本部は、府市の行政サービスや施設について、地下鉄やバス、上下水道などの経営形態を見直す「A項目」▽類似団体や施設を統廃合する「B項目」と分類して検討した。市単体で所管する地下鉄やバスなどは民営化に向けた日程などが示された一方、水道や消防など他市町村との協議が必要な事業は具体的進展がなかった。橋下徹市長と松井一郎大阪府知事は昨年12月の初会合で、事業の統合などで府市で年約4000億円を生み出すとしていた。
--------------------------- 引用終了 ---------------------------

 そしてこれ以降、大阪府・大阪市の統合効果は「少なくとも年200億円以上」と語られるようになります。

 でも、(記事にも書かれている通り)効果額が挙げられているのは、地下鉄、バス、ごみ収集・焼却の3事業だけで、「少なくとも年200億円以上」というのは、この3事業の経費削減額を積み上げたものです。
 そして地下鉄、バス、ごみ収集・焼却の3事業は、府に統合する事業が無く、組織形態の見直ししか検討していませんから、大阪市の市政改革効果と言うことはできても、大阪府・大阪市の統合効果とは言えないのです。

 この資料に基づく限り、大阪府・大阪市の統合効果は「少なくとも年0円以上」としか言えません。

 また、2012年9月、大阪府市と府議・市議が集って協議を行う第6回「大阪にふさわしい大都市制度推進協議会」を受けて、次のように報じられました。
--------------------------- 引用開始 ---------------------------
【大阪都構想】市の再編、最大800億円のコスト増
ABC NEWS (2012/9/10 12:44)
http://kiziosaka.seesaa.net/article/291565787.html

大阪都構想について議論する大阪府と市の協議会に、市を特別区に再編した場合、最大で800億円のコストが発生するとの試算が示されました。

大阪都構想では、大阪市を8つから9つの特別区に再編する計画です。協議会に示された試算では、特別区に区議会を設置するなどの新たなコストが200億円から800億円発生するということです。また、特別区ごとの税収の差を埋めるための財政調整制度の案も初めて示され、橋下市長は、「特別区の運営は可能だ」と強調しました。一方、先月、国会で大阪都構想を可能にする法案が成立したのを受け、市長は、法に基づく新たな協議会の設置を希望していますが、民主系や自民の議員らからは、「今の協議会で、まず、結論を出すべき」と反対意見が相次いでいます。
--------------------------- 引用終了 ---------------------------

 この記事では分かりにくいですが、会議の元資料(元資料 掲載元)を辿ると、大阪市を特別区に分割すると、年200億円〜800億円のコスト増になるというのです。(ただし、試算の方法をみると非常に雑で信頼性の低い数字です。上にも下にも、大きくぶれると考えておいた方が妥当です。)

 ニュース報道などをみると「大阪都構想は、府市を統合して行政の無駄をなくすんだ」と思ってる方が、少なからずいるようです。実際、橋下市長が市長就任直後に開催された第1回大阪府市統合本部会議では、松井知事の発議で、府市統合で年4000億円の経費削減を行うと決めました。

 でも上の2つの会議の結果だと、府市統合効果は「少なくとも年0円以上」で、大阪市を特別区に分割すると「年200億円〜800億円のコスト増」。
 大阪都構想は、府市統合で行政の無駄を無くすどころか、大きな無駄を生み出しそうです。
(大阪市の予算のうち、大阪府と統合する部分より、特別区へ移管するため5〜7つに分割する部分の方が遥かに大きいのですから、当たり前なんですけどね。)


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   大まかに大阪都構想のことを知りたい方は、まとめブログをご覧ください。
posted by 結 at 05:30| Comment(0) | 広域行政 | 更新情報をチェックする
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