2013年05月02日

二重行政の無駄解消は、どうなった?

 かつて橋下市長は、二重行政の無駄を排除して、余ったお金で福祉や医療などにお金を回すのが大阪都構想なんだと、次のように語っていました。

--------------------------- 引用開始 ---------------------------
 あのう、区長をね、選挙で選びましょう。自分たちの税金は自分たちで使いみちを決めましょうていうのを、大きなそういう方針としてお話をさしてもらいましたが、大阪都構想のもう一つの重要なメリットはね、無駄の排除、これもね、少々の無駄の排除じゃないですよ。もう、それこそ、みなさんね、「びつくり」、びっくり通り越してね、「びつくり」状態になるくらいの無駄の排除ができますよ。

 どういうことかと言えばね、体育館から何から何まで、もう全部、大阪府と大阪市は別々に作ってる。
 挙句の果てには、あのビル、高層ビル、大阪府は臨空タウン、あっちにゲートタワービル作って、大阪市はWTC作ってるでしょ。こんな馬鹿な都市ありませんよ。あれ、高さ張り合って、256mか何か張り合って、どんどん高くして。

 大学、東京でも、首都大学・東京、ひとつですよ。大阪府は、府立大学と市立大、しかもこれ、総合大学ふたつ持ってる。
 兵庫県も神奈川県も名古屋も愛知県も、みんな同じように、県と市で大学を持ってますが、全部役割分担してるんです。どっちかが総合大学を持てば、どっちかはたんがく大学、税金をうまく使ってるんです。大阪の場合には、府と市が張り合ってる。お互いにそれぞれ総合大学を作ってるもんですから、合わして230億、40億の金を注ぎ込んでる。一方東京の方は、財布をひとつにして、ひとつの大学を運営してる。170億の運営金でやってるんですよ。

 全部、ふたつ作ってる。これをガッチャンコして、そりゃあね、別に大阪市内にある施設を全部削るわけじゃないですよ。それは、市議会議員のみなさん、みなさんの意見を踏まえさせてもらう。どっちの施設を潰していくのかをきっちりと議論をして、余ったお金で、福祉や医療、そういう所にお金を回す。これが僕らの構想なんです。

 もう、国からね、お金を頼ることなんかできませんよ、自分たちで稼いでいかなきゃ。強い大阪都を作って、しっかりとお金を稼いで、そして先程言った、区、市町村に金を渡して、福祉や教育や医療の金をしっかり使ってもらう。これが大阪都構想なんです。よろしくお願いします。

(大阪維新の会 生野区タウンミーティング(2010.06.22)から一部抜粋 この抜粋部分の音声 タウンミーティング全体の音声はこちらから
--------------------------- 引用終了 ---------------------------

 でも、前回の記事「過去に主張された地下鉄民営化は、何処へ?」で見たとおり、「地下鉄を民営化して料金値下げ」と言ってたはずが、民営化とは名ばかりの三セク化で、民営化した方が値下げ原資が失われてしまってる始末。話が全然違ってしまってました。

 「大阪府と大阪市が、全部、ふたつ作ってる」「二重行政だ、無駄だ」と語られていた施設は、現在の検討の中では、どうなっているのか、今回は見ていきたいと思います。


 まずは、水道事業です。
 大阪府と大阪市の水道事業を統合することで、巨大なコスト削減(=統合効果)が見込まれるとされた水道事業は、「二重行政の象徴」と言われてきました。
(現在、大阪府の水道事業は大阪広域水道企業団へ移管されましたが、運営主体が変わっただけで、事業の中身は同じものです。)

 昨年から始まった、大阪市と企業団の水道統合協議では、過去の府市水道統合協議の際に約2800億円の統合効果があるとされた、大阪府の統合案をベースに統合案(大阪市の柴島浄水場を全廃し、廃止で不足する水を企業団の浄水場から大阪市内へ供給する案)が作られました。でも試算の結果は、大阪市内分のコスト増が、現企業団の増収額を大幅に上回り、大阪府全体で通算してもコスト増になってしまうというもので採用されませんでした。(以前の記事「水道事業統合の統合効果が見当たらない」参照)

 結局、その後まとまった統合案は、現在の水の供給体制を変えずに、大阪市内には現在の大阪市の浄水場から水を供給、大阪市以外には現在の企業団の浄水場から水を供給するというもので、大阪市内分の水道会計と現企業団の会計も別々にするというものです。(余剰の施設は、大阪市と企業団の浄水場をそれぞれ少しずつ削減。)
 つまり、大阪市の水道事業と現企業団の水道事業は、水の供給体制も会計も独立させたまま、大阪市の水道事業の運営主体だけを、大阪市から企業団へ移管するというものです。

 現在この統合案は、大阪市議会で大きな反発に遭い、実現が危ぶまれていますが、例え実現したとしても、過去に言われていたコスト削減(=統合効果)はありません。
 つまり現在の検討結果で言えば、水道事業統合が実現する・しないに関わらず、過去に言われたいた「二重行政の無駄」は無かったというのが結論です。

 なお、現在の統合案の統合効果は(18年間で)221億円と報道されますが、大阪市の水道会計から一般会計に支払っている分担金・年間10億円を、企業団移管で支払わなくなることが「経費削減だ!」といって統合効果に計上されているため、裏返しで大阪市の一般会計側では18年間で180億円の減収となります。この減収分を相殺すると、実質は18年間で41億円が現在の統合案の統合効果です。


 次に海外事務所です。
 橋下市長は「大阪の外交は府が担うもの。海外事務所の運営は市の業務ではない」(元記事)と述べていました。
 大阪市には4つの海外事務所がありましたが、橋下市長の市政改革プランの中で、シカゴ事務所、パリ事務所、シンガポール事務所は廃止(1億4600万円の削減)し、唯一大阪府の海外事務所がある上海の事務所については、大阪府の上海事務所と共同事務所化して存続となりました。(4800万円から3000万円へ1800万円の削減)(元データ

 「海外事務所の運営は市の業務ではない」のなら、上海も含めて全部廃止で良さそうなものと思います。それでも現在の案の上海事務所の大阪府・大阪市の共同事務所化による1800万円の削減(大阪府側でも同規模の削減があると思われるので、全体で3000万円から4000万円の削減)は、大阪府・大阪市の二重行政解消による無駄の削減として、典型的なものと言えます。


 次に大学です。
 大阪府・大阪市には、大阪府立大学と大阪市立大学があり、府立大には年間105億円(他に付属の工業専門学校に12億円)、市立大には年間111億円(他に付属病院に22億円)の運営交付金を投入しています。
 この両大学については、ひとつの大学に統合する方針が、大阪府市統合本部会議で出されており(元データ掲載サイト)、具体化に向けて「新大学構想<提言>(案)」が出されています。(元データ掲載サイト

 このふたつの資料の大学統合案を概観したところ、そのコンセプトを最もよく表していると思うのは、次の一文です。
「選択と集中の視点から、両大学の重複分野を統合・再編する。そこから生み出された資源を大学の強みを活かせる分野や戦略分野に集中投入する。また、大学院の重点化を進める。」(「新大学構想<提言>(案)」(2)改革の3本柱 U選択と集中による教育組織の再編 元データ

 重複分野の統合・再編で生まれた資源を「コスト削減」として運営交付金の削減に充てるなら、削減分を市民や医療に使えるのですが、統合・再編で生み出された資源を大学の戦略分野へ投入するなら、運営交付金を削減することはできません。
 つまり、この両大学の統合は、基本的には「大学の経営資源を『1+1=2』にする統合で、それによって大学の成果を3にも5にもすることを目指す」というものです。
 逆に言うと「大学の成果を維持しながら、大学の経営資源を『1+1=1』に統合して、余った経営資源の『1』を統合効果として市民の福祉や医療のために使う統合」ではない訳です。
 だから、府市統合本部会議の統合方針でも、新大学構想<提言>(案)でも、運営交付金の削減目標額のようなものは見当たりません。

 両大学の統合が実現したとして、新大学構想で謳う素晴らしい大学になるか、大失敗だったとなるかは分かりません。
 ただ、「ふたつの大学をガッチャンコして、余ったお金で、福祉や医療、そういう所にお金を回す」といったような「二重行政の無駄の解消」は、実現されそうにありません。


 次に病院です。
 大阪府には5病院、大阪市には3病院(市立大学付属病院、弘済院付属病院を除く)があり、府立病院には年間118億円、市立病院には年間98億円の運営拠出金を投入しています。(元データ
 府市の病院の統合の議論は、府市統合本部会議での資料を参照しました。(こちらこちらから)
 府市の病院統合の主なテーマは、(1)府市の病院を新たな独立行政法人に移管することと、(2)住吉市民病院と府立急性期・総合医療センターの統合 のようです。

 当然メインは、(1)の府市の病院の新たな独立行政法人への移管のはずですが、検討内容を概観する限りでは「独立行政法人への移管」が目的化しており、現在すでに地方独立行政法人である府立病院と、地方公営企業である市立病院が、新たな独立行政法人に移管されるだけで、経営の効率化が期待される議論は見当たりません。
 経営の効率化で、最も具体的に指摘されてる問題が、(統合と直接関係があるとは言えない)医師・看護師・職員の給料水準の高さですから、もし給与の引下げがあったとしても、それ以上の統合効果と呼べるような経費削減は無さそうです。

 それだけに、実際に住吉市民病院を廃止する(2)の住吉市民病院と府立急性期・総合医療センターの統合は「統合効果」が期待されそうですが、この2病院の統合は、大学の統合と同じく「経営資源を『1+1=2』にする統合」であり、運営拠出金の削減といったようなものは統合検討の中には見当たりません。大幅な運営拠出金の削減を伴うような「統合効果」は無さそうです。

 そもそも、どちらの病院も多くの患者を受け入れてフルに機能してる訳ですから、「府と市が、それぞれ病院を建設しているなんて無駄なんだ。ひとつにすれば、大幅な経費削減ができるんだ」のような乱暴な二重行政の議論を、当てはめられるはずもないのです。

 結果、わたしの見る限り、「府と市の病院を一本化して、大幅に経費を削減し、余ったお金で、福祉や医療、そういう所にお金を回す」といったような「二重行政の無駄の解消」は、実現されそうにありません。


 次に体育館、図書館、プールです。
 「『中央』と名の付く体育館や図書館は、都道府県にひとつでいいんです。そういう体育館や図書館を府と市がそれぞれ持っている無駄が、大阪市民に巨大な借金を負わせることになってるんです」といったような話って、何度聞いたかと思います。
 これらの市民利用施設の統合についても、大阪府市統合本部会議の中で議論され、一定の方向が作られています。

 多少表現は違いますが、3施設の検討結果はかなり似通ったものなので、体育館を例に見ていきたいと思います。(元データ 図書館の元データ プールの元データ 掲載サイト
体育館の二重行政.jpg

 読めば分かる話ですが、整理してみます。
〇府立体育会館は、興業・イベント中心の施設で広域自治体が管理するもの。市中央体育館は、地域スポーツの利用が中心で基礎自治体の管理するもの。用途が異なり、役割分担もされているので、統合や(広域自治体への)運営の一本化を行うようなものではない。
〇市中央体育館はこのまま利用を続けながら、今後、7〜9の特別区に再編された後に、(特別区自身の判断で)最適な規模・配置を考えればいい。(つまり、特別区自身の判断で、「大1小24」の現状から「中7〜9」に移行すればいい。)

 より簡単に言ってしまうと、大阪府市統合本部会議の検討結果としては、これらの施設は「二重行政でなど無かった」ということです。


 「二重行政」と過去に語られた時、よく名前の挙がった施設の、大阪府市統合本部会議や橋下市政での検討状況を概観してみましたが、「大阪府と大阪市が、全部、ふたつ作ってる」「二重行政だ、無駄だ」「府と市が統合されれば無駄が解消され、余ったお金で、福祉や医療、そういう所にお金を回す」といったような「二重行政の無駄の解消」がされる様子は、あまり見当たりません。

 大阪府市統合本部会議では、大阪府・大阪市のその他多数の事業の統合についても検討されていますので、次回は、それらを概観したいと思います。


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posted by 結 at 02:34| Comment(0) | 広域行政 | 更新情報をチェックする
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