2013年02月05日

大阪都構想が嫌な訳(その1)

 このブログは、大阪都構想を色々な切り口で取り上げますが、今回のタイトルのような大元の話は、しばらくしていなかったので、今回と次回で、一度整理して置きます。
 今回は「大阪都構想は、大阪市民を(大阪市以外の府民と比較して)不平等で不利な扱いをする制度なので嫌だ」という話です。

 まず、大阪都構想が実現すると、どうなるのでしょう?
 大阪市を廃止して、大阪市のあった地域に大阪府が(市町村の替わりをする)5〜7つの特別区を設置します。
 大阪市民にとっての基礎自治体は、大阪市から特別区に切り替わるということなので、大阪市民から見ると(住民サービスが「良くなる・悪くなる」というのを別にすれば)大阪市を分市して、5〜7つの市ができたのと、あまり変わりません。

 特別区は、一般的な市(その中でも、規模の大きな中核市)と同じ仕事を市民のためにしてくれますし、(一般的な市で市長・市会議員を選ぶように)区長・区議会議員を選びます。
(注1:特別区の区役所は、一般的な市の市役所と同じものです。大阪市など政令市が設置する、市役所の一部署に過ぎない区役所とは、呼び方が同じだけで、全く別物です。)
(注2:区長・区議会議員を選ぶと言っても、現在の大阪市で、市長・市会議員を選ぶのに加えて、区長・区議会議員を選ぶ訳ではありません。大阪市は無くなっていますから、市長・市会議員を選ぶ替わりに、区長・区議会議員を選びます。「区長」「区議会議員」という名称ですが、市長・市会議員と呼び方が違うだけで同じものです。)

 また、大阪府は、(大阪市・堺市以外の)府民に対してと同じ仕事を、特別区の区民のためにしてくれます。(ただし、特別区は中核市並みの業務を担当するとされています。中核市は、政令市には及びませんが、幅広く府県の業務を担当するので、大阪市や堺市の市民を除く府民の中では一番少ない部類の仕事しか、特別区の区民に対して、大阪府はしてくれません。)
 逆に言うと、大阪都構想の場合、(東京都と違って)特別区の区民を大阪府が特別扱いをして、特別区以外ではやらない行政サービスを区民のためにするという考え方は採りません。大阪都構想の考え方は、大阪府内の自治体の広域行政と基礎自治体事務の業務範囲を整理し、基礎自治体事務とした業務を特別区や市町村に負わせるというものですから、特別区でも、特別区以外の市町村でも、大阪府は基本的に同じ仕事をします。


 では、特別区の区民から見て、普通の市と特別区は何が違うのでしょうか?

 (大阪府と特別区の関係で見ると、大阪府が特別区の財源の半分以上を握るので、特別区は区民より大阪府の言いなりにならざるを得ないとかもありますが、)区民から見て分かり易い点を挙げると、「同じ税金を払ってる割には、特別区は貧乏」なのです。

 少し言い方を変えます。
 特別区の区民も、特別区以外の市町村の府民も、府税と市税を合わせた地方税の支払額は同じです。
 でも、特別区の区民は、普通市町村に直接支払う税金(市税)などの7割を大阪府へ支払い、大阪府はそこから4割引いて、特別区へ配分します。
 結果、特別区では、市税など基礎自治体財源の約3割(27%)が大阪府の収入となります。つまり、特別区の区民は、府税を普通に大阪府へ支払った上に、市税の3割を大阪府へ支払い、残った7割の市税で、身近な住民サービスを受けるのです。(知事・市長ダブル選挙マニフェスト別添の「大阪都構想推進大綱」を基に試算しました。試算の詳細は、以前の記事「大阪都構想での大阪府と特別区の(基礎自治体財源の)財源配分(参照用)」を参照ください。)

 特別区以外の市町村では、市税を全部使って、市民の身近な住民サービスを提供します。
 特別区では、市税の7割しか、市民の身近な住民サービスを提供するための原資がありません。
 だから特別区は「同じ税金を払っている割には貧乏」で、特別区の区民は、同じ税金を払っている割には、貧しい住民サービスしか受けることができません。

 わたしは、大阪府から同じサービスしか受けないのに、大阪府民の中で(特別区になる)大阪市民だけが、(大阪市以外の府民より)余分な税金を大阪府へ支払い、結果、(同じ税金を払ってる割には)貧しい身近な住民サービスしか、受けられないなんて嫌なのです。
(しかも、一度特別区になってしまうと、基礎自治体に相当するはずの特別区の区民の意思で普通の市になることはできません。特別区の区民から余分な税金を受け取る知事や府議会は、当然、特別区が普通の市になることを積極的に認めると思えませんし、そもそも(わたしの知る限り)特別区が普通の市になる法律上の手続きがありません。)
 こんな大阪市民だけを差別的に扱う不平等な制度が、当たり前のような顔で主張されていることが、不思議でなりません。


 では、大阪市民だけが、大阪府へ余分な税金を支払う制度が、どのように「正当だ」として説明されてきたのでしょうか?

 ひとつの説明方法としては「仕事に合わせてお金を移動させよう」です。
 例えば、2012年9月の第6回大阪にふさわしい大都市制度推進協議会で、橋下市長は「この財政調整の制度というのは、仕事に合わせてお金を移動させようということですから、大阪都のところにですね、基礎自治体からの事務移転ということが書いていますけど、この仕事に合わせて、お金を広域行政に移して行こう」ということだと説明しています。(該当部分の発言の書き起こしは、コチラの発言1を参照。)

 つまり、大阪市は政令市で、府県の業務を大幅に大阪市が担当しています。特別区への移行に伴い、大阪市が担当してきた府県の業務の一部(主に、政令市と中核市の差分の業務)を大阪府に戻すので、大阪市がその府県の業務に使ってきた予算分の財源を大阪府へ移すのは当然だと、言うわけです。(大阪府へ移管するとしている3割の基礎自治体財源は、大阪府への移管業務の所要額よりかなり多いのでは?という疑義がありますが、次回のテーマの一部なので、ここでは触れません。)

 これがおかしい理屈だと、同じ第6回大阪にふさわしい大都市制度推進協議会の中で、(自民党の「大阪府と大阪市が協議機関を設けて大阪府の広域行政を行えば、二重行政は解消できる」への反論として)橋下市長自身が次のように説明しています。

「大阪市民が大阪全体のことに対して口を出すのは、大阪市議会や大阪市役所を通じてではなく、大阪市内選出の大阪府議会議員や大阪府知事に口を出して、物事決めてもらったらいい訳じゃないですか。(中略)大阪府議会、大阪府知事ってものを選んでおきながら、大阪全体のことに関して、また市民の代表ってことで市議会や市長が出てくるってのは、おかしいって言ってる訳です。(中略)それから、淀川左岸線の延伸部のところですけどね、これは大問題ですよ。(中略)財源はどうするんですか。これ、大阪市の方で財源を負担して、市民税で負担する。更に、大阪市民は府民税も負担しています。そうすると、大阪市民以外と大阪市民は完全に不公平になりますね。ダブルで積算される訳ですから。(中略)淀川左岸線の延伸部は、もし、大阪全体の仕事だと、今までの大阪市役所の言い分では、これは通過道路だから、これは大阪全体の広域行政の話であれば、これは広域行政体で全部、財源を持ってもらわなければいけません。大阪市民は府民税も払ってる訳ですから。
 ですから、権限で口を出すということは、財源も責任も負うことになることですからね。僕は、口を出すな、口を出すなと言ってる訳ではなくて、あらぬ口を出したら、責任も負わなきゃいけない。」(該当部分の発言の書き起こしは、コチラの発言2を参照。)

 少し整理すると、次のような意味と思います。
 大阪市は政令市として、大阪市域の広域行政の一部を担当していて、大阪市民は、大阪市長・大阪市役所を通じて、大阪市域の広域行政をどうするか決め、市税でその経費を負担している。でも、これはおかしいんだ。
 大阪市民も(大阪市民以外の府民と同じように)大阪市域を含めた大阪府全体の広域行政を、大阪府知事、大阪府議会を通じて決めればいい。
 また、大阪市民は、大阪市役所を通じて広域行政をどうするか決めるため、その経費を市民税で負担する。大阪市民は府民税も負担しているから、大阪府の広域行政の経費とダブルで負担していることになる。大阪市民は大阪市民以外と比較して、不公平に重い負担をしている。
 大阪市民は、大阪市役所を通じて広域行政に口出しをすることで、不公平に重い負担を負うことになってしまっているんだ。

 わたしは「大阪市役所が大阪市域の広域行政を負うべきだ」とも「負うべきでない」とも思いません。どちらの考え方もあると思っています。
 だから「大阪市の単位で、大阪市域の一部の広域行政をどうするか決めるから、大阪市民は、府税で広域行政経費を負担するのに加えて、市税の一部でも広域行政経費を負担する」という考え方も分かりますし、「大阪市民も、大阪市以外の府民と同じように、府知事・府議会を通じて(大阪市域を含む)大阪府全体の広域行政をどうするか決めればいい。その代わり、広域行政経費は府税のみ負担し、市税で広域行政経費は負担しない。」という考え方も分かります。
(ちなみにもうひとつ、「大阪市の単位で、大阪市域の一部の広域行政をどうするか決めるから、大阪市民は府税の一部を大阪市に支払う」という考え方もあることを指摘しておきます。特別自治市の考え方が、これに近いです。)

 それでは、大阪都構想の財源調整の「仕事に合わせてお金を移動させよう」を、この考え方に当てはめると、どうなるのでしょうか。
 「大阪市民は、大阪市の単位で大阪市域の広域行政を決めるのを止め、大阪市以外の府民と同じように、府知事・府議会を通じて(大阪市域を含む)大阪府全体の広域行政をどうするか決めることにする。でも、大阪市民は、府税で広域行政経費を負担するのに加え、今まで通りの額で、市税でも広域行政経費を負担する」になります。
 やっぱり変ですよね。
(しかも、市の事業を府の事業と統合することで、うまく経費節減ができたとしても、大阪市民は、経費節減前の額で、市税から広域行政経費を負担し続ける。・・・というオマケ付き)

 もうひとつ、大阪都構想の財源調整の「仕事に合わせてお金を移動させよう」への反論を挙げておきます。

 特別区への移行に伴い、大阪市から大阪府へ移管される主な業務は、「政令市として担当する府県の業務」の一部です。
 つまり、「府県の業務を政令市が担当するのがおかしい。府に一元化しろ」と言いながら、「府県の業務を、府に返すのに、市の財源を付けて返せ」という話になっているのです。

 なぜ、こんな変な話になってしまうかというと、堺市が政令市になった時の業務移管・財源移管を見るとよく分かるのですが、政令市として府県の業務移管をする時に、(一部特定財源などを除いて)府税の移管など行われていないのです。(基本、業務移管に伴う財源移管は、地方交付税算定時の基準財政需要の移管として行われます。)
 政令市として府県の業務移管を受ける時に府税の移管が行われていれば、政令市の担う府県業務を大阪府へ戻す時にも、移管されていた府税をセットで戻せばいいことですから、簡単な話です。
 でも、政令市として府県の業務移管を行う時に府税の移管など行われていないのに、政令市の担う府県業務を大阪府へ戻す時に、市税の一部を財源として付けて返すという話なので、何とも変なのです。


 では、なぜ大阪都構想なのか、という話に戻してみましょう。
 広域行政の一元化の話は置いておくとして、「大阪市の260万人規模は、基礎自治体の規模として大き過ぎる。」「適正規模の30万人規模の基礎自治体にすべきだ」というのが、基の主張だったかと思います。
 そして、大阪都構想を言い出した当初としては、大阪市の分割案と都制度の2案がありましたが、「分割案では分割後の市の間で大幅な財政格差が発生し、大阪市を9市に分割すると、地方交付税による財政調整があっても7市が年間100億円以上の赤字となり、うち5市は財政再生団体に転落する」という試算が示されたことで批判が殺到し、大阪市分割案は撤回され、分割後の基礎自治体間の財政調整のためとして、都制度を採るとされました。(詳細は、以前の記事「大阪都構想は、大阪市分市案より本当にマシなのか?」を参照。なお、当時の当ブログの記事 記事1 記事2 記事3 記事4 もあります。)

 この経緯から言うと、「財政調整に変なところがある。だから、大阪都構想は嫌だ」と言っても、「大き過ぎる大阪市の解消が必要だ。大阪市を、適正規模の基礎自治体に分割すると財政格差が発生するので、財政調整のためには都制度が必要だ。財政調整に少し変なところがあるといって、大阪都構想がダメという理由にはならない。」という議論展開が考えられます。
 ただ、この経緯から言うと、次の2点の疑問が出てくるように思います。
〇財政調整をするからといって、調整財源の4割、基礎自治体財源全体からみて3割を、大阪府が吸い上げる理由にはならないと思います。特別区間の財政調整のために都制度が必要というなら、特別区への配分率100%が当然に思うのですが。
〇都制度による財政調整の結果は、大阪市を複数市に分割して財政格差で貧乏な市になるよりも本当にマシなのでしょうか?わたしが、分市案の試算と条件を揃えて、財源調整後の特別区の財源規模を試算したところでは、「全ての特別区で、分市時より赤字幅が拡大」しました。(詳細は、以前の記事「大阪都構想は、大阪市分市案より本当にマシなのか?」を参照。)

 なお、わたしは「大阪市の260万人規模は、基礎自治体の規模として大き過ぎる。」とも「適正規模の30万人規模の基礎自治体にすべきだ」とも、思わないこと。そして、もし市民の意見反映(あるいは地域を単位とする決定)を重視するなら、「30万人規模が基礎自治体の適正規模」と思わず、もっと基礎自治体の規模は小さなものになるはずと考えていることを、付け加えさせていただきます。


・・・もし、この記事を気に入っていただけましたら、お勧め記事のまとめ目次から、他の記事もどうぞ。
   大まかに大阪都構想のことを知りたい方は、まとめブログをご覧ください。
posted by 結 at 18:57| Comment(0) | 結論 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント