2012年05月27日

大阪市の市政改革プランは、大阪都構想と矛盾しないのか?

 大阪市の市政改革プランを何回かにわたって扱ってきましたが、このブログは大阪都構想を扱うブログです。
 そこで今回は、橋下市長がメインの政策だと言ってたはずの大阪都構想の視点から見て、市政改革プランって矛盾しないかを考えてみます。

 先に結論を言ってしまうと、ある視点から見ると、市政改革プランは、大阪都構想に関する主張と大きく矛盾します。でも、違う視点から見ると、市政改革プランは、大阪都構想の目指す道筋に、とても沿ったものです。
 では、まず「矛盾して見える」の方から見ていきましょう。

 大阪都構想の次のような主張から見ると、市政改革プランは、大きく矛盾して感じます。

〇大阪府と大阪市は、同じような事業を行っていて、膨大な無駄がある。府市統合による重複事務の解消で、莫大な財源を生み出すことができる。

 ずっと主張されてきた話です。(ただ、このブログでは、昨年、大阪府議会の大都市制度検討協議会で示された「大阪市の政令市権限のうち統合対象となる範囲」が一般財源規模で330億円に過ぎないため、否定的です。)
 ただ、この大阪府・市の統合効果による財源ねん出が見込まれるなら、大阪都実現を予定する4年後には、収支不足は解消するはずです。(大阪都実現がない前提での)大阪市単独の10年間の財政見通しで、年間500億円の収支不足が続くという財政収支見通しを振りかざして「お金が足りない!」と騒ぐ理由もありません。(3年間なら、収支不足の計算の時に収入から省いた、不用地売却代や基金の取崩しで十分しのげます。)

 「府市統合で莫大な財源を生み出せる」と「お金が足りない」のどちらが違うのかは別として、矛盾していると思います。


〇大阪市は規模が大き過ぎて非効率的になっている。基礎自治体として最も効率のよいのは30万人程度の規模であれば、市民1人当たりだと半分近い行政経費で、住民サービスを提供できる。

 大阪府議会の大都市制度検討協議会での維新の会提出資料によると、大阪市の市民1人当たり行政経費が60万円を超える(資料はコレ)のに対して、30万人規模の市では市民1人当たり行政経費が平均30万円程度(資料はコレ)しかかかっておらず、30万人程度が規模として適正で効率的なのだそうです。(このブログでは、提供される住民サービスの内容を比較していない議論として、否定しています。)
 大阪都実現時には、大阪市を適正規模である30万人程度の特別区に再編し、中核市並みの予算と職員数で、効率的な行政運営を行うのだそうです。

 この議論が正しいと信じているなら、橋下市長であれ、大阪維新の会の市議さんであれ、「お金が足りないから、住民サービスの削減を」というのは、おかしな話です。
 大阪市の行政単位を小さくすることで数千億円単位の効率化が行えるのですから、「お金が足りない」なら住民サービスの削減を行うよりも、行政単位を小さくして効率化で財源を生み出せばいいのです。

 「区割りとか決まらないから、そんなにすぐにはできないよ」という声もあるかもしれませんが、この資料でいうと行政経費が最も小さい30万人未満が29万3千円に対して、10万人未満でも30万3千円と、大阪市の60万円と比較すると、差は大したことありません。
 この「適正規模」の議論が正しいなら、(平均人口10万人規模の)区役所統合の効果は小さいので、市役所の本庁機能を分割して、ブロック単位に配置するだけでも、大きな効率化を図ることができる理屈になります。(区役所の統合までしなくても、それなりの効果までなら上げられるということです。)

 しかも、この市役所本庁機能を、ブロック単位に分割配置するという手法は、別に大阪市が政令市のまま行っても、法律上、何の不都合もありません。
 市役所の機能を市民に近づけるという意味で、大阪都構想の特別区への移行にも沿う話です。(市長選の直後には、ブロックを管轄する総括区長を置くという話も報じられていたほどです。)(元記事はコレ

 「お金が足りない」なら、なぜやらないのでしょう?
 維新の会の市議さんは、市議会で、住民サービスを大幅に削減・廃止する改革プランに「市民負担は最後の選択。まず市が身を切るべき」(元記事はコレ)と発言されたそうです。
 「市が身を切る」前に更にできることがあるのですから、維新の会の市議さんは「市役所・本庁機能のブロックへの分割で財源を作ろう!」と提案すればいいじゃないですか。

 わたしは、以前の記事「大阪市の本庁機能の分割を考える」で説明した通り、「市役所・本庁機能のブロックへの分割」は莫大なコスト増と機能低下を招くことになると思うので絶対にやりませんが、莫大なコスト増と機能低下が正しいなら、「大阪都構想をやってはいけない」レベルの問題点になります。


〇260万人規模の大阪市は、市長が市民から遠過ぎて、市長へ市民の声は届かない。適正規模の特別区に公選の区長を置き、区民の声がちゃんと区長に届くようにすることで、区民自らが自分たちのニーズに合った住民サービスを選べるようにすることが、(広域行政の一本化と共に)第一の目標だ。

 以前の記事「橋下市長の下で住民サービスの選択をする矛盾」でも書きましたが、「260万人規模の市長では規模が大き過ぎて、市民の声が届かず、区ごとに多様な住民のニーズにそれぞれ合った住民サービスを選択できない。特別区に公選の区長を置いて、区民が住民サービスを選べるようにすることを目指すんだ」というのなら、なぜ、全市一律で住民サービスの削減・廃止をするのでしょう。
 なぜ、全市一律で「現役世代への重点的な投資」(しかも、いくつかの事業の拡充だけで、現役世代に負担になる住民サービスの削減・廃止もたくさんあります。)なんて決めてしまうのでしょう。

 もし「お金が足りない」のだとしても、「特別区の単位で、公選区長の下で、住民サービスを選択する」ことが何よりも大事なら、住民サービスの形をどのようにしていくかは、大阪都が実現して、特別区になってから決められるようにするのではないでしょうか?
 (3年間なら、収入から省いた不用地売却代や基金の取崩しで十分しのげるので、待てないはずはないのですが、)もし、3年後まで待てないと言うなら、市長の部下の公募区長などでなく、政令市のままでも実施できる準公選制で区長を決めるようにして、すぐに始めればいいじゃないですか。区長公募の期間を考えれば、十分にできたと思います。

 「赤バスの補助金を15億円から5億円弱に削減することは、市政改革プランで市長が決めたから、4〜5億円で赤バスをどのように残すかは各区長が相談して『自由に』決めればいい。」
 そういう「自由」が、大阪市を分割して特別区にしないとできない、「区民自らが自分たちで住民サービスを選べるようにする」ってことなのでしょうか?

 橋下市長の今までの言葉と裏腹に、今回の市政改革プランのような形での住民サービスを変えてしまう(しかも削減・廃止)のは、「区の単位で住民サービスを選択し、予算の使い方を決める」ことなんて、全然大事に思っていないように見えてしまいます。


 以上が、大阪都構想の主張から見て、市政改革プランが大きく矛盾してる感じる点です。

 次に、市政改革プランが大阪都構想の目指す道筋に沿ったものに見えるという話の前に、先に住民サービスの予算の話をしたいと思います。

 まず、現在の大阪市の予算額ですが、少し前になりますが、平成20年度で1兆5500億円なので、24区で1区平均約650億円です。大阪都になった時の特別区を3区相当(8つの特別区の場合)とすると、大阪市の予算をそのまま8等分して特別区に分けると、1950億円になります。
 ただし、一般財源で330億円部分は、広域行政の業務として「都」へ移管されますから、これが予算規模として800億円として(8等分して)1950億円から差し引くと、1850億円になります。
 特別区が担当する業務に、今、大阪市が使っている予算をそのまま割り振ると、特別区の予算額は概ね1850億円ということになります。

(基礎自治体の業務の一部を、都に移管する部分の予算の振り分けは考慮していません。その部分は、移管部分が決まって所要額が決まれば、ここで議論している予算額から差し引かれることになると思われるので、今は無視していいと考えています。)

 それに対して、特別区に与えられる予算額はどのくらいでしょうか?
 現在までで最も妥当性が高いと思われるのが、次の記事が報じられた際の数字です。
--------------------------- 引用開始 ---------------------------
2015年に「大阪都」 維新の会、ダブル選公約固める
asahi.com 2011年9月12日15時0分
http://kiziosaka.seesaa.net/article/266668078.html

 大阪府の橋下徹知事が率いる大阪維新の会は、11月の知事・大阪市長のダブル選で提示するマニフェスト(公約)と、大阪都構想の具体像や工程表をまとめた「推進大綱」の概要を固めた。2013年度中に「都移行計画」をつくり、14年度に住民投票にかけ、15年度に都への移行をめざす。

 公約と大綱では、ダブル選後すぐに府、大阪・堺両市に「大阪都移行本部」を立ち上げ、知事や市長らがメンバーの協議会を設けるとした。15年4月以降に両市を人口約30万〜50万人で中核市並みの権限を持つ特別自治区に分割。16年度以降には両市以外の市町村合併も進め、人口30万人以上の中核市に再編する方針。

 大阪都は、成長戦略や警察、環境、広域的な危機管理、雇用対策などを受け持つ。特別自治区は、住民生活に近い保健衛生や福祉、小中学校教育、防災などを担う。区議会のほか住民代表からなる地域協議会も設置し、住民の意見を反映させる「ボランティア議員」の役割を担う。区議会の定数と議員報酬は今の市議会より低いコストに抑える。都と区の職員数は現在の3府市の8割以下にする。税財源は、地方交付税などを都に39%、区に61%に配分すれば、中核市並みの運営は可能と試算した。
--------------------------- 引用終了 ---------------------------

 この記事の際のマニフェスト原案はネットに出回りました。ポイントになる箇所を抜粋すると次のとおりです。
(財源問題について)
5.財源・人員体制問題
 政令指定都市を廃し、その内に特別自治区を設置することで懸念される財源・人員体制問題は、全て制度の構築で解決される。
 特別自治区には中核市並みの財源を保障する。現在大阪市が提供している住民サービス分の財源は特別自治区に保証する。
 特別自治区間の税収格差問題は、基礎自治体間の財政調整制度として現在唯一存在する東京都区財政調整制度を参考に新たな大阪都区財政調整制度を創設すれば解決できる。大阪市に交付される交付税、固定資産税、法人市民税、特別土地保有税を財源とし、その61%を特別自治区に配分すれば、各特別自治区は中核市並みの財源を有することになる。現在の大阪市役所体制が各区の財政調整を担っているが、より透明性の高いルールの下、各区民の意思がしっかりと反映する新たな大阪都区財政調整制度を創設する。
 各特別自治区の職員数は中核市の職員数を基本とするが、現在の大阪市の職員数で十分賄える。

(特別自治区について)
(1)区長
特別自治区の長である区長を置く。区長は特別自治区の住民が直接選挙る。(編集注:原文まま)
特別自治区制への単純な住民参画・住民決定という理由だけではない。特別自治区の権限と財源は中核市並みとなる。現在の行政区と異なり、特別自治区は規制行政の許認可権の行使、報告徴収、立ち入り検査、また行政代執行や被虐待児の一時保護等の強い強制力の行使を権限として持ち、財源も1000億円規模を扱う。そして何より特別自治区は課税自主権を有する。これほどの権限と財源を有する組織の長は、選挙によって選ばれる職であることは当然である。
また、現在のように市長の部下として市役所の言いなりになっている区長ではなく、新たに創設する大阪都区財政調整制度や都区協議において、真の区民代表として都知事や都に対し堂々とモノを申し、自らの区の財源や権限確保に努める区長でなくてはならない。区長公選制は、特別自治区がきめ細やかな住民サービスを提供する機関になるための必須条件である。


 これに対して、知事・市長ダブル選挙で実際に発表されたマニフェスト別添の「大阪都構想推進大綱」の同じ部分の表現は次の通りです。

(財源問題について)(オリジナルはコレ
5、財源・人員体制問題
 政令指定都市を廃し、その内に特別自治区を設置することで懸念される財源・人員体制問題は、全て制度の構築で解決される。
 特別自治区には中核市並みの財源を保証する。現在大阪市が提供している住民サービス分の財源は特別自治区に保障する。
 特別自治区間の税収格差問題は、基礎自治体間の財政調整制度として現在唯一存在する東京都区財政調整制度を参考に創設する新たな大阪都区財政調整制度によって解決する。大阪市に交付される交付税、固定資産税、法人市民税、特別土地保有税等を財源とし、その約6割を特別自治区に配分すれば、各特別自治区は中核市並みの財源を有することになる。現在の大阪市役所体制が各区の財政調整を担っているが、より透明性の高いルールの下、各区民の意思がしっかりと反映する新たな大阪都区財政調整制度を創設する。
 各特別自治区の職員数は中核市の職員数を基本とするが、現在の大阪市の職員数で十分に賄うことが可能である。

(特別自治区について)(オリジナルはコレ
(1)区長
 特別自治区の執行機関として区長を置く。区長は特別自治区の住民が直接選挙する。


 長々と、案文と発表分を引用しましたが、説明します。
 案文で特別自治区の区長は「財源も1000億円規模を扱う」としていますが、発表分では記載が無くなっています。予算規模は変わったのでしょうか?
 区長の予算額が変わったのかどうかの手がかりとなるのが「5、財源・人員体制問題」部分の文面です。
 この部分は、大阪市の基礎自治体財源を「都」と特別自治区にどのように配分するかを説明しているのですが、(案文)「大阪市に交付される交付税、固定資産税、法人市民税、特別土地保有税を財源」を(発表分)「大阪市に交付される交付税、固定資産税、法人市民税、特別土地保有税等を財源」と「等」を追加し、(案文)「その61%を特別自治区に配分」を(発表分)「その約6割を特別自治区に配分」にしただけです。一部をぼかしただけで、財源配分はほぼ変わっていないと考えられます。

 これらから、特別区の予算額は約1000億円と考えるのが、現状で最も妥当性が高いと思われます。

 なお、上記の「5、財源・人員体制問題」部分の中で、特別区の予算については、「特別自治区には中核市並みの財源を保障する。現在大阪市が提供している住民サービス分の財源は特別自治区に保証する。」としています。

 特別区が30万人規模で予算額1000億円というのは、「中核市並みの財源」として、概ね妥当な数字です。
 ただし、現状1850億円の予算額が、特別区になって1000億円で「現在大阪市が提供している住民サービス分の財源は特別自治区に保証する。」を成立させるには、上で説明した「大阪市は規模が大き過ぎて非効率的で、30万人規模なら半分近い行政経費で済む」というのが、空想ではなく、本当に機能してくれないと無理です。

 それでもって、「大阪市は規模が大き過ぎて非効率的で、30万人規模なら半分近い行政経費で済む」などということが現実にあるはずなく、現状1850億円の予算額が特別区になって1000億円でやっていこうとすると、予算を減らす分だけ住民サービスの削減も必要になる・・・とした場合が次の説明になります。


 では次に、このように考えると、市政改革プランが大阪都構想の目指す道筋に沿ったものに見えるという話です。

 今回の住民サービスの見直しについての考え方の「基本原則」は、次のものです。(オリジナルはコレ
■基本原則
(1)大阪府下で統一的に実施されている施策・事業については、その水準に合わせる。
(2)その他の施策・事業については、4指定都市(横浜市・名古屋市・京都市・神戸市。以下「比較4市」という。)の標準的な水準に合わせる。

 個別に見ると、恣意的な適用は見られます(4市のうち2市だけ挙げて、「2市がやってないから廃止」のような。)が、基本はこういうことなのでしょう。

 この基準は、「他市に合わせる」と言ってるだけですから、市町村間で住民サービスの水準に差異がなければ、見直しは発生しません。「個々の住民サービスの水準に差異はあっても、平均すると同水準」であれば、削減・廃止の見直しと同程度の規模で住民サービスの新規・拡充が出てくることになります。

 基本原則の「他市に合わせる」で、大規模に住民サービスの削減・廃止だけが発生してくるのは、大阪市の住民サービスが「他市」よりもかなり(というか、相当)充実していることを示しています。

 大阪都実現後の特別区は、中核市並みの予算を持ち、中核市並みの職員数で、中核市として標準的なレベルの住民サービスの提供をします。

 大阪市の住民サービスが「中核市として標準的なレベルの住民サービス」よりも相当充実しているのなら、「中核市として標準的なレベル」へ引下げないと、特別区はやっていくことができません。

 また、国民健康保険のように「都」で府下一律で運営しようとしているものについては、大阪市が繰出し金を府下市町村より増やして保険料を安くしていたり、大阪市独自で低所得者向けの減免を行っていたりするのは、邪魔です。

 だから、「大阪市はお金が足りないんだ!」とぶち上げて、住民サービスの一部を見直し、「中核市並み」へ少しだけでも近づけるために住民サービスの水準を引き下げるのは、大阪都実現後の特別区の住民サービスの水準へ移行するために、とても目的に適っているといえます。

 ただし、まだまだ、第一歩を着手したというレベルです。
 「中核市として標準的なレベル」まで住民サービスを引き下げるためには、現状1850億円規模の住民サービスを1000億円規模まで引き下げる必要があります。
 今回の市政改革プラン(素案)の改革規模は、年間にすると266億円です。8等分すると、1特別区当たり33億円。まだ、1850億円を1817億円へ引き下げただけです。

 「中核市並み」への道のりは、遥かに遠いですが、3年後の大阪都実現の時には、なんとかしなくちゃなのです。


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posted by 結 at 08:10| Comment(0) | 市政 | 更新情報をチェックする
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