2012年05月01日

維新の会のマニフェストは市民サービスをどう言ってたか

 今回の大幅な住民サービスの引下げを伴う改革PT試案の発表に当り、橋下市長は次のように語っています。
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橋下市長「税金支出 バブル期のまま」(2012年4月6日 読売新聞)
http://kiziosaka.seesaa.net/article/262603016.html

 104事業を見直し、3年間で総額548億円をカットする、大阪市の改革プロジェクトチームの「施策・事業の見直し」試案について、橋下市長は5日、報道陣の取材に、「収入に合わせ、ぜいたくを改める」と理解を求めた。

 ――かなり市民に負担を求める内容だ。

 「全国の自治体で税収が伸び悩んでいるのに、税金を使う方はバブルの絶頂期から変わっていない。特に大阪市のサービスは手厚く、税収が減ったのに、住民サービスに手をつけられていない。家計では、収入が伸び悩んでいる時は支出を絞り、ぜいたくを改める」

 「市政改革室に大号令をかけ、同じような他都市と同レベルに落とした。標準レベルに落とさせてくださいと、市民に訴えていく」

 ――今年度の削減効果額は38億円。一方で収支不足は535億円。収入の範囲内で予算を組むのは難しいのでは。

 「府知事として改革をした時もそうだったが、改革元年に全部のお金は集められない。改革案を固めれば、(当初は)多少の補填(ほてん)財源を使っても、次年度に向けて収入の範囲で予算を組むルールを守る。道筋を示すことが重要だ」

 「数字を合わせるのが目的ではなく、他都市と比べてどうなのか、見直すことの方が本質的な問題だ。収支均衡も目指し、既得権化している事業は廃止して新しい政策にシフトする。この作業を繰り返さないと地域の活性化はあり得ない」
--------------------------- 引用終了 ---------------------------

 わたしには、選挙前の橋下市長の発言からすると、かなり唐突な主張に聞こえました。(ただ、このブログでは「橋下市長の大阪都構想は大阪市民の住民サービスを大幅に引き下げるもの」と主張してますから、ある程度の予想はしてましたが。)

 では、今回の改革PT試案が取り組もうとする、大阪市の財政改革や住民サービスについて、これまで大阪維新の会のマニフェストでは、どのような主張がされてきたのか、今回は見てみたいと思います。


 その前に、今回の改革PT試案の前提となる、今年度の大阪市予算について概観しておきましょう。

 2月20日の朝日新聞の記事「橋下予算案 子育て重点、凍結補助金も 大阪市12年度」によると、主な新規事業と削減は、次の通り。

〇新規事業(その他の事業も含め合計172億円) 
・子どもの医療費助成を中学生まで拡充 51億円
・生活保護適正化           35億3千万円
・「保育ママバンク」創設など保育所待機児童解消 28億7千万円
・中学校給食実施           20億7千万円
・教育バウチャー交付による塾代助成 8千万円
(教育バウチャーは試行の西成区分のみ。来年度から全市に広げ34億円程度になる見込み)
〇削減
・職員給与・退職手当など 66億円(記事の135億円5千万円は全会計ベース。一般会計分は66億円)

 ただし、この結果として535億円の収支不足が発生するため、事業の見直しをするとして出てきたのが、年間288億円を削減する今回の改革PT試案です。(ただし、今年度の削減額は38億円のため不足は、基金の取り崩しなどで対応)

 橋下市長は就任当初、「大阪府並み」の職員給与のカットを大々的に打ち出しましたが、その効果額は市長の打ち出す新規事業の経費にも届かない中で、「収支不足だ!」として住民サービスのカットを迫っている状況です。


 ではまず、昨年(2011年)1月に発表された大阪維新の会の統一選用マニフェストから見ていきます。(内容は、発表当時と一部修正されていますので、2011年11月にダウンロードしたものです。)
 1年前のもう古いマニフェストにも見えますが、維新の会の市議・府議は、このマニフェストを掲げて当選したきた方々です。

(大阪市民の住民サービスについての記述)(オリジナルはコレ
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 優しい大阪
 特別区(自治区)は、現在大阪市が提供している住民サービスの全て(敬老パス制度を含む)を提供します。また、以下のような取り組みも可能になります。

1 各特別区(自治区)毎の教育委員会の設置
2 公立中学の完全給食の実施
3 乳幼児医療費助成を中学生まで無償化
4 待機児童の解消
5 療育施設の増設、充実
6 高齢者施設の増設
7 小中学校普通教室へのクーラー設置
8 子宮頸がん予防ワクチンの接種、麻疹、風疹予防ワクチン(MRワクチン)接種の無償化
9 その他、これまで各区民が大阪市役所に要望していたにもかかわらず大阪市役所が実施しなかった事柄について、各特別区(自治区)毎の判断で実施していきます。
--------------------------- 引用終了 ---------------------------

 1〜9で「色々やります」的に並んでますが、この部分は「取り組みも可能」としているだけなので、実施を約束したものではありません。
 この部分で実施としているのは「現在大阪市が提供している住民サービスの全て(敬老パス制度を含む)を提供します。」だけですが、橋下市長のいう「(住民サービスについて)ぜいたくを改める」というのは、それさえも守れていないように見えます。
 また、1〜9は実施を約束したものではないとはいえ、「6 高齢者施設の増設」を謳いながら、今回の改革PT試案で高齢者施設を大幅に削減・廃止しようとしているのは、さすがにマズイように思います。


(大阪市の行財政改革についての記述)(オリジナルはコレ
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大阪市役所の行政改革断行
大阪市役所を特別区役所に再編する過程において、橋下府政が断行した改革手法で大阪市役所の役人体質を徹底的に見直していきます。

1 橋下府政が行った改革と同レベルの職員給与体系の徹底的見直し
 わたり・現給保障・管理職の定額昇給の廃止
 現業職の給与水準を民間並みに徹底見直し
2 橋下府政が行ったと同様の職員退職金の一部カット、給与カット
3 橋下府政が行った改革と同レベルの職員厚遇の徹底的見直し
4 将来世代にツケを回さないための橋下府政が行ったと同様の徹底した財政再建
 全事務事業の徹底した見直し
 特定の既得権益団体へのお金の流れをストップ
 職員を養うだけの仕事を徹底排除
5 公務員でしかできないこと以外は民間に任せる
 市場化テストの徹底
6 橋下府政が行ったと同様の天下りの徹底的排除、外郭団体の徹底的見直し
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 選挙前、橋下市長が声高に主張していたように、市役所の体制を改め、特定の既得権益団体へのお金の流れや外郭団体を見直すのだと、掲げています。
 一応、「全事務事業の徹底した見直し」という項目はあります。でも住民サービスの項目で「現在大阪市が提供している住民サービスの全て(敬老パス制度を含む)を提供します。」としていること、それから「全事務事業の徹底した見直し」は「大阪市役所の役人体質を徹底的に見直し」の一項目として掲げているものであることから、「全事務事業の徹底した見直し」をするとしても、その結果が「住民サービスの削減・廃止」に繋がるのは、ダメでしょう。


(財源論についての記述)(オリジナルはコレ
(マニフェスト資料編からになります。)
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大阪維新の会の成長戦略

(略)
大阪都構想の基本は、住民に身近で、住民に優しい行政(基礎自治)の実現を可能にし、住民サービスを向上させるのに必要な財源捻出の仕組づくりです。即ち、広域行政を一元化するという成長戦略です。広域行政ですから、住民の身近なサービスにかかわることではありません。

例えば、政府も景気対策・雇用対策・円高対策など様々な政策に力を入れますが、これは具体の住民サービスが直ちにどうなるかという話ではありません。政府の景気対策・雇用対策・円高対策によって、保育所がいくつ増えるとか、図書館がいくつ増えるとか、ゴミの収集日が一日増えるとか、給食費が安くなるとか、そういう話ではありません。

成長戦略は、日本全体の景気を良くする、企業に儲けてもらい、従業員の給料を上げる。すなわち国民の所得を上げ、税収を上げる。これが目標です。
(略)


大阪都構想

大阪都構想は、成長戦略を実現する手段です。広域行政を一元化。司令官を1人にして成長戦略を展開します。二重行政を解消し、生み出した財源を成長戦略の原資にします。

以下は人口一人当たりの行政経費の比較表です。
行政経費比較01.jpg

仮に、東京都制と全く同じ仕組みにして行政サービスを提供すれば1人当たり117807円安上がりになり、大阪市の人口を260万人とすると3063億円の財源が生まれます。

行政経費比較02.jpg

また、大阪市が名古屋市なみの経費で行政サービスを提供できるようにすれば4500億円の財源が生まれます。
これが成長戦略の原資になります。
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 大阪都構想は直接的に住民サービスの改善を行うものではないと強調しますが、「住民サービスを向上させるのに必要な財源捻出の仕組づくり」なのだとしています。
 そして、大阪市役所が「名古屋市なみの経費で行政サービスを提供できるように」するだけで、多大な財源を生み出すことができるし、都制移行での機構改革でも多大な財源を生み出すことができるとしている訳です。

 これらの財源は「成長戦略の原資に振り当てる」としていますが、3年後の大阪都移行で多大な財源が生まれ、それによる投資は「住民サービスを向上させるのに必要な財源捻出の仕組づくり」だとしているにも関わらず、年間500億円程度の収支不足を振りかざし、大阪市の住民サービスは「バブル期のままのぜいたくなもの」で「他都市並み」に住民サービスを落とすべきという主張は、矛盾しているように思います。


 続いて、昨年(2011年)11月の市長選マニフェストを見てみます。

(「大阪市の現状」に関する認識についての記述)(オリジナルはコレ
(図表は省略します。)
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大阪市の現状

 大阪市は、市民の最貧困化が進んでいます。
 大阪市における年収200万円以下の世帯は、約4分の1を占め(32万8千世帯:全世帯数126万世帯)、名古屋市:14万5千世帯(全世帯数96万5000世帯)、横浜市:14万4千世帯(全世帯数149万世帯)と比較して、大阪市が突出しています。
 生活保護率についても、大阪市:人口千人あたり56.3人、名古屋市:19.6人、横浜市:17.8人であり、その貧困度は突出しています。
 しかも、大阪市の状況の悪化、貧困化は、日に日に進行しています。
 すなわち、生活保護者率について、昭和60年時点は、人口千人あたり22.2‰(‰は千分率です)であるのに対し、平成17年時点では40.2‰であり、約2倍程度も膨れ上がっています。

 大阪市民の一人当たりの平均所得についても、平成5年時点で412万1千円であったにもかかわらず、平成20年時点では322万9千円に急落しています。

 また、大阪市の市民一人当たりの借金(地方債残高)は、1人あたり168万円にのぼり、東京都のそれに比べ、約3倍にもなっています。

 その他の生活指標についても、悪化の一途を辿っています。
 このように大阪市は、他の政令指定都市と比較して、最貧困地域となり、しかもそれが日々進行しています。

 その一方で、市民一人当たりが負担する行政経費は、過大を極めています。
 すなわち、大阪市の市民一人当たりの職員の人件費負担額は、10万1586円に対し、名古屋市:8万5306円、横浜市:5万7354円であって、大阪市民が最も多額の職員人件費を負担させられています。
 市民人口1万人あたりの職員数についても、大阪市:150人、名古屋市:118人、横浜市75人であり、大阪市が突出しています。
 さらに、大阪市職員の刑法犯罪、薬物事犯等、職員不祥事も後を絶ちません。
 つまり、大阪市民は、多額の借金を抱えさせられ、最貧困生活を強いられ、しかもその状況は日々悪化しているにもかかわらず、他方で、税金と借金で過剰な職員を抱え、職員を養っているのが現状です。

 大阪市の抜本的改革
 以上のような大阪市の現状を抜本的に改革するためには、現在の平松市政における職員優遇型の縮小改革では不可能です。いわば非常事態にある大阪市においては、現行制度を前提とした狭い視点での改革では焼け石に水です。もはや、大阪市を含めた大阪全域において、将来的に発展、持続可能な統治機構の改革を実現することが不可欠です。つまり、経済発展や産業インフラ等の広域業務については、大阪都に、住民に優しいサービスを実現するための基礎自治体業務については、特別自治区に再編する、責任と役割分担を明確にする大阪都構想を実現する必要があります。
(以下、略)
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 橋下市長や大阪維新の会の行う、統計値の解説や現状分析には、恣意的な傾向が強く見られるという批判は多くあり、上記の市長マニフェストの認識に、わたしは与するものではありません。
 でも、市長マニフェストに謳っているものですから、橋下市長は、このような認識なのだと考えて良いのでしょう。

 でも、橋下市長が、このような認識に立っていると考えると、年間500億円程度の収支不足を振りかざし、大阪市の住民サービスは「バブル期のままのぜいたくなもの」で「他都市並み」に住民サービスを落とすべきとした、今回の改革PT試案は何とも、不可解です。
〇「現行制度を前提とした狭い視点での改革では焼け石に水」としているのに、今回の改革PT試案は、「現行制度を前提とした狭い視点での改革」そのものです。
〇「平松市長の縮小改革」を批判しますが、今回の改革PT試案も「縮小改革」そのもので、平松前市長が「市民に影響を与えない丁寧な改革」を行ってきたのに対し、今回の改革PT試案は「市民へ負担を転嫁する乱暴で安易な改革」と、より程度の悪い改革になっています。
〇「多くの市役所職員を抱えることで、最貧困生活にある市民は過剰な負担を負っている」ことを強調しますが、今年度予算の職員給与カットなどで人件費を135億円削減しても、市民1人当たりでは5千円程度の削減にしかならず、名古屋市・横浜市などと比較した「市民1人当たりの職員の人件費負担額」に大きな差異はありません。
 そのような中で、上下水道料金の福祉措置の廃止や国民健康保険料の低所得者に対する3割減免の廃止、国民健康保険料の所得200万円層での値上げ(繰入金の削減)といった弱者に負担を強いる政策をなぜ採るのでしょうか?


(大阪市民の住民サービスについての記述)(オリジナルはコレ
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2.市民サービス編
(1)子育て支援
@ 保育所、幼稚園を民営化し待機児童の解消、サービスの充実を実現します。
A 保育ママ制度を拡充します。
B 中学校卒業までの通院入院医療費を無償化し、所得制限は撤廃します。
C 妊婦健診や予防接種の内容を充実させます。
D 区役所や保育所・学校等における児童虐待防止体制を強化します。
E 子育て世代への市営住宅入居枠を拡大します。
F 市内各ブロックに子供相談センターを設置し、児童虐待防止体制強化します。

(2)教育
@ 公立小中学校普通教室にクーラを設置します。
A 公立中学校の生を対象に給食(全員喫食)を実施します。
B 私立小中学校を積極的に誘致して、教育の選択機会を増やします。
C 学校の判断により土曜日授業及び放課後を可能します。
D 習熟度別の少人数授業を拡充し、習熟度に応じた教育を実現します。
E 市内各ブロックに教育委員会分室を設置し、周辺地域住民や保護者の意見を教育に反映しやすい体制を整えます。

(3)保健医療
@ 民間の医療機関で手薄となっている産科、小児科、救急医療を充実、強化します。
A 健康診断受診の補助や受診機会の拡大を行い、市民の健康保持増進に努めます。
B 医療監視等の強化、診報報酬の適正化を図り、良質な医療の発展を目指します。
C 市内各ブロックに保健所支所を設置し、周辺地域住民に身近な保健サービスを強化します。

(4)福祉
@ 高齢者の介護老人保健施設等増を図り、充実させます。
A 高齢者向けの敬老パス制度を維持し、さらに私鉄交通、バスでも利用できる制度に改善します。他方で、敬老パス対象外の市民から制度の理解も得れるよう、利用実態に応じた上限額の設定等、制度改善策も行います。
B 生活保護の不正受給を徹底的に排除するともに真に必要な困窮者を救済します。

(5)住民生活
@ 民間活力、資本を利用した放置自転車対策を行い、放置自転車ゼロを目指します。
A 消費者センターを府市一体化し、身近で便利な消費者相談を実現します。
B 住基カードを利用し、コンビニエストアでの住民票、印鑑証明書の発行も可能にします。
C 御堂筋や大阪城周辺、ベイエリア等を観光集客の拠点として積極活用します。

(6)防災対策、エネルギー
 (略)

(7)計画施設についての対応
@〜B (略)
C 区民センター未整備地域の建設に着手します。

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 さて、この市長マニフェストの文章を読んで、大阪市民の住民サービスは「現状より充実させる」と受取ったでしょうか?それとも、「大阪市民の住民サービスは、バブル期のままで、ぜいたくは改める」と受取ったでしょうか?
 わたしには、この文章は「大阪市民の住民サービスを現状よりも充実させる」としか、受取れませんでした。

 改革PT試案と直接矛盾すると思われる点もあります。
(1)Fで「市内各ブロックに子供相談センターを設置し、児童虐待防止体制強化します。」としますが、改革PT試案では子育ていろいろ相談センターは廃止で、市民交流センター等に設置したサテライトでの教育相談事業も廃止です。
(3)Aで「健康診断受診の補助や受診機会の拡大を行い、市民の健康保持増進に努めます。」としますが、改革PT試案では総合健康診査事業(ナイスミドルチェック)を廃止です。
(7)Cで「区民センター未整備地域の建設に着手します。」としますが、改革PT試案では、区民センターは9ヶ所相当と現状より削減です。

 統一地方選用マニフェストにあった「現在大阪市が提供している住民サービスの全て(敬老パス制度を含む)を提供します。」の文言はなくなっていますが、これを以って「現在大阪市が提供している住民サービスの全て(敬老パス制度を含む)を提供します。」は、「やらないことにした」と市民に対して掲げたと理解することには、無理があるでしょう。
 橋下市長は、統一地方選用マニフェストを掲げた地域政党の代表ですから、統一地方選用マニフェストの内容にも、一定責任を負うでしょう。市長選マニフェストに「現在大阪市が提供している住民サービスの全て(敬老パス制度を含む)を提供します。」の文言はありませんが、「取り下げる」の文言もない以上、統一地方選用マニフェストで掲げた責任を引き続き負うと理解するのが、自然と思います。
 なお、マニフェスト別添の「大阪都構想推進大綱」には、次の文言があります。
「特別自治区には中核市並みの財源を保障する。現在大阪市で提供している住民サービス分の財源は特別自治区に保障する。」

 興味深いのは、敬老パス制度です。
 統一地方選用マニフェストには「現在大阪市が提供している住民サービスの全て(敬老パス制度を含む)を提供します。」としていましたが、市長マニフェストでは、(4)Aで「高齢者向けの敬老パス制度を維持し、さらに私鉄交通、バスでも利用できる制度に改善します。他方で、敬老パス対象外の市民から制度の理解も得れるよう、利用実態に応じた上限額の設定等、制度改善策も行います。」となっています。
 マニフェスト上では、統一地方選用マニフェストの「現状維持」を、市長選で「見直しを行う」に改めて、選挙を戦った訳ですから、今回の改革PT試案の見直しは筋が通っています。
 それでも敬老パスの見直しについて「騙された」という声が絶えないのは、敬老パスは市長選の中で、維持されるかが特に問われ、「廃止しない」と強調されたからです。見直しの言及はありましたが、「半額負担」などという利用者には廃止と同等に感じられる改悪とは、思わない人が多かったからです。
 橋下市長は、改革PT試案の敬老パスの見直しはマニフェスト通りと説明するのかもしれません。しかし、マニフェスト通りか否かの評価は、本来、市民の側が行うことというのは、しっかりと理解しておきたいです。


 市長選マニフェストの中で、上記のように住民サービスの説明がされていますが、住民サービスの実現には、財源面も大きく関係します。
 次は、市長選マニフェストの中で、財政改革について、どのように書かれていたかを見てみましょう。

(大阪市民の住民サービスについての記述)(オリジナルはコレ
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(3)財政改革
@ 大阪市の財政状況
大阪市の地方債残高は、平成21年時点普通会計で2兆7千9百億円であり、全会計では、5兆1千億円にのぼっています。
市税収入についても、平成21年時点で合計6236億円であり、平成8年度と比較して1550億円もの減収となっいます。特に法人市民税については、平成元年当時2482億円であったものが、平成21年度は1034億円となり、6割程度もの大幅減少となっています。
地方税等の経常的な一般財源が、人件費等の経常的な経費にどの程度充てられているかの指数である経常収支比率については、平成21年度100.2%となっおり、100%を超えています。
これは、義務的経費以外に使える財源にまったくの余裕がないことを物語っています。

A 財政改革
このような硬直化した大阪市の財政状況にかんがみれば、現行の大都市制度で持続的発展を期待することは不可能であり、大阪都構想ももとより、既述の市役所改革等様々な構造改革を抜本的に行い、人件費1年以内に約1割、将来的に約3割以上削減することで、約1200億円の財源をねん出するともに、市税収入を高めるような積極的な経済施策を大阪都で行う必要があります。
また、これに加え、次のような財政改革を行う必要があります。
@ 大阪市は大阪市内の約4分の1の土地を保有しているところ、不要な資産を売却し、未利用地を売却することで財源をねん出します。
A 大阪市が所有する公共建物の管理形態を改め、管理費コストを改善します。
B 大阪都が実現するまでの間、現在の24の行政区を市内8〜9にブロック化して、合理化を図ります。
C 市債残高の削減目標値を設定して大幅に減らします。
D 補助金、交付金制度を見直します。
E 大阪府と同様の新公会計制度を導入します。
F 都市計画道路、公園計画の見直しを迅速に行います。未利用地の売却を推進 します。
G 未収金の収納対策を強化します。
--------------------------- 引用終了 ---------------------------

 まず、財政状況の苦しさは、ちゃんと分析しているようですから、選挙時、大阪市の財政状況を理解していなかったという可能性は排除していいでしょう。
 この状況に対する財政改善として、まず基本は、人件費の削減で財源ねん出を行い、それに加えて、未利用地売却、公共施設の管理コストの削減、行政区のブロック化による合理化、補助金・交付金の見直しで対策を図るとしています。

 「大阪市民の住民サービスを『他都市並み』に落として、財源ねん出をする」とは、どこにも書いてありません。
 前回記事でも書いた通り、人件費の3割削減ができれば(1500億円の財源ねん出とまでは言わなくても)500億円の収支不足は解消できます。
 市長選マニフェストでは、未利用地売却による財源ねん出を一つの柱として、人件費削減の次に掲げていますが、今回の改革PT試案の前提となる500億円の収支不足は「未利用地売却代金は除いて考える」と全く真逆の姿勢を示しています。
 行政区のブロック化による合理化は、しないようですし、特別区への移行(ブロック化と類似)後の経費の増減も計上されていません。
 補助金、交付金制度の見直しの効果も示されていません。(改革PT試案に挙げられたものが、全てということなら別ですが。)

 マニフェストのこの部分を見るだけでも、「500億円の収支不足があるから、大阪市民の住民サービスを『他都市並み』に落として、財源ねん出をする」というのは、変な話ということが分かります。

 市長マニフェストに掲げた財政改革策を精一杯取り組み、その結果が、どうだったのかを報告することは、市民に住民サービスの削減をお願いするための、最低限の前提のひとつでしょう。
 マニフェストで財政改革策を掲げていたことなど忘れた振りをして、「500億円の収支不足があるから、大阪市民の住民サービスを『他都市並み』に落として、財源ねん出をする」なんて言うのは、市民を馬鹿にした、失礼極まりない話のように、わたしには感じます。


 大阪維新の会のマニフェストと、今回の改革PT試案には、多くの矛盾があり、とても大阪市民に対して、住民サービスの削減・廃止を多く含む今回の改革PT試案を打ち出せるとは、わたしには思えません。

 橋下市長はツイッターで「国民との約束であるマニフェストは、政治的最高規範だ」として、マニフェストと異なる政策を行おうとする民主党を批判しました。
http://kiziosaka.seesaa.net/article/262779348.html
 橋下市長自身にも、大阪維新の会が掲げたマニフェストに対して、同じ厳しさを持って頂ければと思います。


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posted by 結 at 03:30| Comment(0) | 市政 | 更新情報をチェックする
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