2012年04月13日

橋下市長の下で住民サービスの選択をする矛盾

 大阪市の改革プロジェクトチームによる改革試案が発表されました。
 敬老パスの大幅なサービス切り下げが大きく報じられていますが、その他にも、多数の住民サービスの切り下げになる内容が含まれているようです。

 改革試案の内容や感想は、別の記事で整理しますが、その整理をしている中で矛盾に感じたことを、ちょっと書いてみます。

 橋下市長は、大阪都構想が必要だとする理由のひとつとして、「260万人規模の大阪市は、基礎自治体として大き過ぎて、適切な住民サービスの選択ができない」ということを挙げています。
 要旨としては、
〇住民に身近な住民サービス(基礎自治体の住民サービス)の選択に当って市長(特別区であれば区長)は、住民の中に直接入っていってその声を聞き、住民のニーズを直接聞かなければならない。
〇このような、直接、住民と顔を合わせ、住民の声を聞くことのできる自治体の規模は、30万人規模が限界で、50万人規模を超えると無理。260万人規模の大阪市の市長が、住民の声を聞き、ニーズに合った住民サービスを提供することなどできない。
〇大阪市では、各区に多様で異なった住民サービスのニーズがあるのに、大阪市は一律の住民サービスを強いていて、金太郎飴のような住民サービスの提供しかできていない。
〇大阪市の中で区役所の権限を強めるといった議論も聞かれるが、所詮、市長の部下である役人区長では、上司である市長や中之島の市役所の方ばかりを向いていて、住民の声を聞き、住民サービスの内容に反映することなどできない。
〇だから、住民に身近な役所(区役所)に選挙で選ばれた区長を置き、基礎自治体としての権限と財源を与え、区ごとにそれぞれ多様な住民サービスを選択できるようにする必要がある。

・・・ということなのかと思います。
(わたし自身は、この論と全く意見が異なり、一切賛同しません。)


 もし橋下市長が、これまで繰り返し説いてきたように「260万人規模の大阪市では、大き過ぎて適切な住民サービスの選択ができない」とするのならば、橋下市長自身もできないはずですし、「現役世代を重視」のような住民サービスの選択を橋下市長が大阪市全体を一律で行っていくことも、矛盾します。

 例えば、改革試案の中では、区民センターは大阪市全体で9ヶ所分の運営予算を上限として、各区長が箇所数を決めるとしています。実質、大阪都実現後の特別区につき1ヶ所にして、現在の24ヶ所のうち、15ヶ所を廃止するということです。

 でも、大阪維新の会は、地域コミュニティー充実・強化のため、現行の24区を基本として地域自治区を置くとしています。
 「地域自治区の中に区民センターが無くなったら、地域自治区単位の地域活動の拠点が無くなってしまう。」と地域の住民が考えるなら、特別区に3ヶ所の区民センターでもいい訳です。
 特別区に与えられる予算は、現行の3ヶ所分の運営費は確保されず、1ヶ所分に減らされるでしょうから、現状通りに他の2ヶ所分の運営費を捻出するためには、何か、他の部分で住民サービスを削る必要があります。でもそういう選択をできるのが、橋下市長がこれまで強調してきたはずの住民サービスの選択のはずです。

 橋下市長は、市長就任後になって「区長公募」を掲げましたが、公募自体は、区長の人材を「市役所の中から選ぶ」か「市役所以外の人材も含めて選ぶ」かの違いだけで、市長と区長の関係(区長が市長の部下であること)は、役人区長と何も変わりません。

 もし橋下市長が「260万人規模の大阪市では、大き過ぎて適切な住民サービスの選択ができない」と考えているならば、大阪都移行までの期間の市政の進め方として、わたしには次の2つの選択肢があるように思います。

〇選択肢1
 ひとつは、現在進めている区長公募ではなく、区長の準公選制を進めることです。
 平松前市長に「区長の準公選制検討」の報道があった時、当時知事だった橋下氏は、「(準公選の区長は)大阪市長の指揮命令下にあり予算編成権もない。役人の究極のだましの手口。(準公選の区長は)あくまでも市長の部下。まやかしだ」と批判をしましたが、それでも公募区長などよりも、遥かに公選区長に近いものになります。
 橋下市長は、市長選の際、大阪都へ移行するまでの期間も、区長が住民から選ばれるような仕組みを作ると発言されていましたから、それをすればよい訳です。

 (現実の区長公選でどれだけ現状の住民サービスの選択と違ったものになるかは、それぞれの意見で見方は変わりますが)橋下市長の主張に沿うならば、準公選制であれ、区民に選ばれた区長が大阪都が実現するまでの期間も、区民の意見を汲み取りならがら、住民サービスの選択をしていくならば、まだ理屈に合います。
 逆に、市長に任命された区長が、区民の意見を汲み取った住民サービスの選択ができるとするならば、大阪市のままでも区民の意見を汲み取った住民サービスの実現ができることになるので、「大阪市が基礎自治体として大き過ぎるから、大阪都」というのは必要なくなります。

〇選択肢2
 もうひとつは、大阪都実現までの期間で準公選の区長を設けるのが無理(ただし、法的な制約がある訳ではありません。)とするならば、大阪都実現までの期間は、住民サービスの選択はできるだけせずに、公選区長ができてから住民サービスをどのような形にするか決められるように、できる限りの選択肢を残すようにすることです。
 それでも、広域行政の範囲の改革もありますし、住民サービスに影響を与えない無駄の排除もあります。多分、やることは、いっぱいです。

 橋下市長が「260万人規模の大阪市では、大き過ぎて適切な住民サービスの選択ができない」とするのならば、橋下市長が260万人規模の大阪市の市長として、大阪市全体の住民サービスを一律で変更していくことは、矛盾です。
 大きく掲げた主張と、実際に行おうとする政策に矛盾があるなら、それはどこかに「嘘」があるように思うのです。
 さて、「嘘」はどこなのでしょう?

(追記)2012年4月16日
 大阪市の財源状況について新聞記事の情報のみに基づく記載をしていましたが、きちんと把握した上での記事化を要する内容と思われますので、削除しました。

・・・もし、この記事を気に入っていただけましたら、お勧め記事のまとめ目次から、他の記事もどうぞ。
   大まかに大阪都構想のことを知りたい方は、まとめブログをご覧ください。
posted by 結 at 04:41| Comment(0) | 基礎自治体業務 | 更新情報をチェックする
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