2012年02月22日

橋下市長は、大阪市民にも応分の負担を求めていくというのだけど

 大阪市の2012年度予算案が発表されました。
 この予算には、橋下市長肝いりの新事業の予算や必要と認められる予算は1年分計上しますが、見直し対象として凍結する事業は、まず7月までの4ヶ月分のみを計上し、見直し結果で8月以降の予算を追加して、全体の予算となる考え方のようです。
 主な新規事業は、朝日新聞によると、「子どもの医療費助成を中学生まで拡充」51億円、「生活保護適正化」35億3千万円、「『保育ママバンク』創設など保育所待機児童解消」28億7千万円、「教育バウチャー交付による塾代助成(試行の西成区分のみ)」8千万円。
 「職員給与・退職手当などの削減」は、135億5千万円。

 この予算案の発表に、2月20日の産経ニュースで次の記事がありました。
http://kiziosaka.seesaa.net/article/253432037.html
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「既得権を液状化」初の予算編成でも橋下節
2012.2.20 21:36

 「既得権を液状化させる」。20日、大阪市で初めての当初予算編成について説明した橋下徹市長。記者会見は2時間余りにわたり、自信たっぷりの表情で「不連続への挑戦」への決意を語った。労働組合などの反対を押し切る形で職員人件費の削減を断行したことをとらえて「市役所も身を削った」と訴え、今後は市民に対しても“痛み”を伴う応分の負担を求めていく考えを示した。

 ■住民が選択

 橋下市長が強く訴えたのは「住民が選択できる行政システム」への転換だ。

 目玉の一つとなる西成区で中学生を対象に試行実施する塾代補助事業では、生徒1人当たり月1万円の補助について、学習塾だけでなく、文化教室やスポーツ教室などの中から選べる形を取る。市長は「これまでのように各種団体を通じて一方的に住民サービスを提供するのではなく、住民が自分のニーズにあったものを選べるようにしたい」と説明した、

 一方で、諸施策の財源については「天から降ってくるものではない」と強調し、「これからは住民の皆さんにも、他都市と比べて負担が低い部分は応分の負担をお願いする」と明言。家庭ゴミ収集の有料化などについて検討していることを明らかにした。
(以下略)
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 今後という話ですが、大阪市民に“痛み”を伴う負担を求めることを強調したようです。

 該当部分について、読売新聞では次のように報じています。
 「橋下市長一問一答」(2012年2月21日 読売新聞)より抜粋。
http://kiziosaka.seesaa.net/article/253432229.html
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 住民の受益と負担の関係を再検討する。国民健康保険料(の減免措置)やごみの収集費用も考えないといけない。現役世代を強力にサポートするため、子育て、教育の充実、雇用の創出に力を入れるが、財源は天から降ってこない。市民に応分の負担をお願いする。
--------------------------- 引用終了 ---------------------------

 この大阪市民に“痛み”を伴う負担を求めるメッセージの背景について、2月20日ABCテレビのキャストで、府市統合本部顧問の古賀茂明氏をコメンテーターとして臨席する中、次のように解説をしていました。(古賀氏は、概ね同意の様子でした。)
〇橋下市長の打ち出す新規事業を加え、橋下市長は収入の範囲内で予算を組む方針を示している(公債を発行しないというのではなく、基金の取り崩しをしないという意味)が、税収の落ち込みもあり、2012年度535億円の収入不足が発生する。
〇今回、(見直し対象として)凍結した補助金(など)が653億円なので、もしこの不足分を(見直し対象として凍結した)補助金(など)だけで賄おうとすると、ほとんど全てカットになってしまい、市民生活に大きな影響が出てしまう。
 そうもいかないので、経費カットも更に踏み込むと言ってますが、私達の生活に必ずしわ寄せが来ます。
〇また、予算のカットだけでは未来がないので、大阪の経済活性化のための予算を府市統合本部で考えているが、これに充てるお金が本当にない。府の予算も火の車。これをどうやって捻出するかが、橋下市長の悩みどころ。

 ニュース番組の解説が必ずしも正しい訳ではないでしょうが、概ね理解できますし、古賀氏が同意の様子であれば、見当違いということもないでしょう。
 橋下市長が打ち出す新規事業や、府市統合本部で打ち出す事業の予算の捻出や、税収不足を賄うためには、数百億円程度の歳出カットが必要で、そのためには、他都市より恵まれている住民サービスの切り下げを行うということのようです。住民サービスのカットで大阪市民に“痛み”を伴う負担を求めるけど、覚悟してねということのようです。
 その具体例として、一般のごみ収集の有料化や国民健康保険料の減免措置の見直し(廃止か、対象の縮小)を挙げているようです。(勿論、例ですから、これだけって話ではありません。)


 でも、この話、変だなと思うんです。
 知事時代からの橋下市長の発言からすると、大阪市役所って無駄でダブダブで、大阪市の予算なんで無駄を無くすだけで、いくらでも財源なんて出てくると言ってたはずです。
 そのことを、明確に記しているのが、1年前の維新の会統一選用マニフェストです。(昔の話と思う方もいるかもしれませんが、今の維新の会の市議さん、府議さんは、このマニフェストを掲げて、4月の府・市議選で当選された方々です。)

 このマニフェストの資料編には、次の記述があります。(原文はコチラ
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(人口一人当たりの行政経費の比較表として、次の数字を表として掲げ)
 大阪市 614957円
 横浜市 377970円
 名古屋市445370円

 また、大阪市が名古屋市なみの経費で行政サービスを提供できるようにすれば4500億円の財源が生まれます。これが成長戦略の原資になります。
(統一選用マニフェストP26)
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 また、マニフェスト本編にも、次の記述があります。(原文はコチラ
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 優しい大阪

 特別区(自治区)は、現在大阪市が提供している住民サービスの全て(敬老パス制度を含む)を提供します。また、以下のような取り組みも可能になります。

(統一選用マニフェストP12)
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 つまり、大阪市の行政は、無駄がいっぱいだから、現在の大阪市の住民サービスを維持したまま、4500億円の財源を捻出できるとマニフェストで主張しているのです。
 それならば、1兆6千億円の予算から、たかだか数百億円の財源を生み出すのに、住民サービスのカットで大阪市民に“痛み”を伴う負担を求めるなんて、変な話です。


 わたしは、維新マニフェストのような理屈で財源捻出ができるとは、全然思いません。大阪市は、財政非常事態宣言を出して10年近く、毎年経費削減に努めてきたのですから、更に歳出カットをしようとすると、住民サービスへ影響するものが多いでしょう。

 でも、「大阪市役所は無駄ばかりだ」と市役所や前市長を攻撃して、市長になったのですから、その言葉に「責任」は負わなければならないでしょう。その言葉に沿った努力をして、できないなら、ちゃんと市民に詫びなければならないでしょう。
 市長になって、たった2ヶ月。最初の予算案の説明で「お金、財源は、天から降ってくるものではありません。大阪市民のみなさんには、これから応分の負担を求めていく」だなんて。


 結局、これまで説明してきた「名古屋市なみの経費で行政サービスを提供できるようにすれば、多大な財源が生まれる」という話は、市長になって、実行する場面になったら、かなぐり捨てるようですが、この話、大阪都構想の組み立てにも大きく影響するのです。

 大阪都構想では、特別区に1000億円程度の予算を与えるとしています。これで、中核市並みの行政運営が可能で、住民サービスは基本的には変わらないとしている訳です。
 でも、特別区を3区相当として現状の大阪市予算を按分すると、(広域行政の業務として都に移管される部分を差し引いても)1850億円になります。
 大阪市を分割してもコスト増にならないという(多分に無理な)前提を置いたとしても、特別区は、今までの予算投入額1850億円を1000億円程度と、ほぼ半減させることになるのです。

 この「予算を大幅減しても、大阪都移行後の特別区の住民サービスは基本的に変わらない」という説明が立脚するのが「中核市なみの経費で行政サービスを提供できるようにすれば、1000億円で(現状と変わらない)十分な住民サービスを提供できる」という(屁)理屈です。

 「名古屋市なみの経費で行政サービスを提供できるようにすれば、多大な財源が生まれる」という説明が実行できないものならば、特別区が1000億円で現状と変わらない、十分な住民サービスを提供することも、多分できません。
 大阪市民は、大阪都移行後の特別区では、1850億円から1000億円程度と大幅に削減した予算で可能な、大幅に低下した住民サービスしか受けられないという、当たり前の現実しか、そこにはありません。(しかも、大阪市分割によるスケールメリット喪失のコスト増が、追い討ちをかけます。)

 橋下市長は「これからは住民の皆さんにも、他都市と比べて負担が低い部分は応分の負担をお願いする」と語ります。
 わたしには、この言葉は「特別区になったら住民サービスを下げるのだから、それに合わせるように、段々、住民サービスを低下させるよ」と聞こえます。


 ちなみに「大阪市は豊かな財源があって、大阪市民は豊かな住民サービスを受けているかもしれないが、他都市並みに住民サービスを下げるだけなら、いいじゃないか」という声もあるのかもしれません。

 でも、大阪市の豊かな財源って、地下から勝手に湧き出すものじゃなく、大阪市民が、高い地価に基づく高い固定資産税や高い家賃(高い固定資産税が含まれてます。)を支払うことで支えられているものです。
 都制度の議論だと、住民サービスを下げた分で生まれた財源は広域行政体に持っていかれるだけで、住民サービスを他都市並みに下げても、固定資産税の支払額を減らしてくれる訳ではありません。

 現状の地方税のルールの中で「自分たちの支払った税金で、自分たちの住民サービスを受ける」のは、当たり前の地方自治なのだと思っています。
 地価が高くて高い税金を払わなければならないなら、高い税金に相応しい住民サービスを求めます。


 また、記事では「職員人件費の削減を断行したことをとらえて『市役所も身を削った』と訴え、今後は市民に対しても“痛み”を伴う応分の負担を求めていく考えを示した。」とありますが、理解に苦しむ主張です。
 「市役所職員の給料は高過ぎる」と主張し、人件費の削減は「高過ぎる給料」の是正としていたはずです。「高過ぎる給料」を是正したら、市民は「“痛み”を伴う応分の負担」を求められるのでしょうか?

 それとも「市役所職員の給料は高過ぎる」が嘘だったのでしょうか?
 もし「市役所職員の給料は高過ぎる」が嘘だったなら、人件費削減をすべきかに話を戻さなければならないことになると思います。


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posted by 結 at 04:10| Comment(0) | 市政 | 更新情報をチェックする
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