まずは、大阪都構想の具体化についてです。
もし大阪市議会で、維新以外の他会派が大阪都構想の阻止を目指す場合、基本戦略はシンプルです。
〇3年半後の次の市議選まで、議会で反対姿勢を貫く。
〇市議会での議論で、大阪都構想の内容を明らかにするように努める。(その中で問題となる点も明らかにしていく。)
〇次の市議選で、維新の会の過半数を阻止し、できれば、今年4月の市議選で失った議席の回復にも努める。
〇大阪市の事業の府との統合や、区役所業務の拡充などの大阪都構想の準備作業については、是々非々で対応する。
国会と違って、大阪都構想に反対するからと、市議会で審議拒否などの衝突は基本ありませんから、市議さんとしては、大阪都構想に反対と言っても、よく話を聞いて、是々非々で対応するでしかありません。
また、国会議員の維新の会への接近がさかんに報じられ、他会派の一部が大阪都構想への反対を取り下げる場合が考えられますが、それでも「議会で反対姿勢を貫く」の項目が無くなるだけで、その他の対応は、あまり変わらないかなと思います。
これに対する、維新の会の大阪都構想に向けた動きは、他会派の裏返しっぽいかなと思います。
〇大阪都構想の法制化や府市統合の枠組み作りの協議などの具体化作業は、一気に進められると思います。
スケジュールでは2年程度とされていますが、法制化のための働きかけは、次期衆議院選のタイミングを睨んだ動きが必要になりますから、国の動き次第でいつでも具体案の提示を行えるように、粗方の部分は1年以内でまとめるようなスケジュールで進めるかなと思っています。
〇ただし、これらの具体化作業の結果が、どの程度公表されるかは、かなり疑問です。府市統合協議の大枠の話ぐらいは出てくると思いますが、都構想後の市民にとっての行政がどのようになるかの具体的な姿が分かるような情報は、これまで通りあまり示されないと考えます。
大阪都構想は具体化した姿を明確にするほど、批判にさらされることになりますし、総論でなんとなく賛成していた人たちを各論で反対に回してしまう可能性が十分にあるからです。
〇ただ、進んでいない印象を与えたり、忘れられても困るので、時々、様々な発表を重要そうにしますが、大阪都構想の内容を十分理解できるような情報はあまりなく、名前はよく聞くがよく分からないという、現状と同じような状況が当面続くと考えます。
〇大阪都構想の説明が市民向けに本格的に行われるようになるのは、住民投票に向けた半年〜1年の時期で、市議会への対処方法に目途が付くことが前提になると考えます。
なお、市民向けの説明に、当然のこととして不利な情報を出すはずもなく、現状のメディア戦略に加えて、ひたすら正当化し、メリットのみを強調する宣伝を、地域説明会など市役所の組織を挙げて行うということです。
それ以外の説明を求める人には、資料室いっぱいのファイルを示して、自由に調べてくださいとされるのかなと思います。
行政改革についてです。
職員の給与カットや外郭団体廃止などについては積極的に進めると思われます。
労働組合と戦っている姿勢を示したり、「市役所の既得権益」の解体を進めている印象を与えることが重要なので、そのことで、どの程度の税金の支出が抑えられるかといった効果額や、その効果額がどのように市民に還元されるかは、市民の側でよく注意を払う必要があります。記事の見出しで「すごい取組み」と報じられることほどには、重視されないかもしれませんから。
昨年の大阪府の職員組合との給与カットに関する協議のように、協議前に方針だけを大々的に発表し、協議の結果は発表しないなんて手法を採ることも考えられます。(勿論、市民にとっては、協議の方針などよりも、協議結果の方がずっと重要です。)
府市の事業の統合についてです。
府市統合本部の下で、大阪市の事業を、大阪府主導の事業主体へ移管していく作業は、積極的に進められると考えます。
これは一面として、大阪都構想の先取りになるもので、大阪都構想が頓挫した場合も、大阪府の影響力強化の成果を残すものです。
この事業統合は、ケースにもよりますが、基本としては、市の事業を、市民の利益よりも大阪府全体の利益のために活用する体制へ移管し、維持経費だけは今まで通り(または今まで以上に)市へ負担を求める内容になると思われるので、市民の利益に反する場合も多く出てくると思われます。
市議会での対立する場面も、出てくるかもしれません。
区役所業務の強化についてです。
これも、ひとつには大阪都構想実現後の特別区の先取りとして、推進しようとされると思われます。
もうひとつ、橋下氏の場合、基礎自治体業務の責任者になって関わり合いになるのは、避けたいのかなと思われるので、身代わりになる責任者を作る意味でも重要です。
橋下氏としては、こんなこと、来年度にもすぐに始めたいでしょうし、3年半後に実現するとしている大阪都構想のプレ版なら、来年度(遅くても2年後)には始めないと意味がなくなります。
けれども、現在、市役所と区役所が一体で行っている業務(あるいは市役所だけで行っている業務)を、ちゃんと区長の下で行えるようにしようとすれば、3〜4年で実施できるか分からない程度には、時間も費用もかかります。
3年半後には終了する期間限定として、区長が基礎自治体業務の責任者となれるような体制を作ることは、現実的には無理があります。
そのため、名目的には、区長の権限強化を高らかに謳いますが、現実との乖離・衝突はかなり大きいものになると思われます。そういった制度の中途半端さから発生する衝突・問題も、政令市制度の問題だとすり替えの宣伝が行われると思いますが。
最後に、大阪都構想後に、特別区の基礎自治体業務は、中核市レベルに移行するとしているので、真っ当に考えると、これを先取りしながら、徐々に中核市レベルの行政サービスレベルへ移行していくはずですが、この点は、大阪都が実現するまでやらないんじゃないのかなと思っています。
橋下氏にとって、これから、大阪都移行が決定するまでの2〜3年の期間は、ずっと選挙期間が続いているようなものです。
実質的な住民サービスの切り下げになるようなことは、大阪都移行が決まるまでは、なるべく市民に知らせたくはないでしょうから。
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