2011年10月28日

吹田市「行政の維新プロジェクト」は、維新の会の限界を教えてくれる

 選挙戦最終日の23日夕、駅頭で応援演説に立った橋下氏は、雨模様の中で足を留めた市民らを前に「役人天国の吹田市役所」とまくし立てた。
 「市職員の給料は、府内43市町村で一番高い。もうむちゃくちゃですよ」。その上で「職員の組合から応援を受けた市長では職員の給料は削れない」と現職を責め立て、「政治を市役所から取り戻す。一回正さないと、本当に変わらない」と迫った。(産経ニュース「大阪府吹田市長選 “橋下旋風”第2幕…維新、首長選も初V 敗戦の現職『不条理感じる』」2011.4.25 00:27 より抜粋)

--------------------------- 引用終了 ---------------------------

 橋下知事はいつも同じような話をしてるので、ここ数日の話に聞こえるかもしれませんが、今年4月の吹田市長選についての記事からの抜粋です。
 
 この選挙に大阪維新の会は、同会所属の府議・井上哲也氏を立て、大阪維新の会初の市長が誕生しました。
 当選当時の記事がコレです。
--------------------------- 引用開始 ---------------------------

再び橋下維新の風「大阪一高給の吹田市職員…削減」首長選初V、井上氏
産経ニュース 2011.4.25 08:26 [2011 統一地方選]

 吹田(すいた)にも“維新の風”が吹いた−。橋下徹・大阪府知事が率いる地域政党「大阪維新の会」(維新)公認の新人で元府議の井上哲也氏(54)が初当選を果たした、24日投開票の大阪府吹田市長選。混戦の中から抜け出した井上氏は、無所属現職の阪口善雄氏(62)=民主、社民推薦▽無所属新人で社会福祉法人理事の正森克也氏(44)=共産推薦▽諸派新人で元市議の石川勝氏(42)=みんな推薦=の3人を破り、改めて維新の強さを証明した。

 同市末広町の井上氏の選挙事務所には開票前から多くの支持者らが集まり、当選確実の連絡が入ると、大きな拍手と歓声が上がった。

 壇上に立った井上氏は、「あらゆる団体が現職側について厳しい選挙戦だった。市民のみなさんに今の吹田を変えないといけないと思っていただいた」とあいさつ。「大阪一高い市職員の給与を下げないといけない。行財政改革をしっかり進め、その財源で教育施策などを進めたい」と抱負を語った。

 市職員の人件費削減をはじめとする制度改革や、現職の多選の是非などが問われた選挙戦。井上氏は市長退職金の半減や市職員の給与適正化などの財政改革や全国学力テストの全面公開など教育改革を政策の柱として訴えた。

 4選を目指した阪口氏は「維新の手から吹田の自治を守る」と訴えたが、統一地方選前半戦から府内で吹き続く“維新の風の流れ”を変えることはできなかった。

--------------------------- 引用終了 ---------------------------

 新聞の記事などを見る限りでは、井上・吹田市長は、市長と市職員の給与カットと(赤字財政の黒字化という)行財政改革を訴えたようです。
 これらの報道から、「市職員の給与カットで赤字財政の建て直しをする」という印象を持った人も多いのではないでしょうか。更に、それによって、行政サービスも拡充されると期待した人もいたように思います。

 ちなみに「吹田市職員の給料が府内43市町村で一番高い」は、ラスパイレス指数で比較すると101.6と一番なのは事実ですが、101.4、101.3、101.1と101台が他にも3市あり、98以上に43市町村中30市が入る団子状態。突出して高いというような状況では全くありません。(ちなみに大阪市は99.3と、お団子状態の中です。)

 この井上市長が政策を具体化したものとして打ち出したのが「行政の維新プロジェクト」で、臨時財政対策債を含む赤字地方債を発行しないで、(「借金も収入」とする大阪府と違って言葉通りに)「収入に合せて支出を組む」とするものです。(公共工事の公債発行までは否定してませんが、それは当然のことです。)
 削減目標額ですが、2011年度の赤字額を85億円としていて、この解消と吹田市の歳出規模を1150億円から1000億円程度にすることを目指し、1期4年目となる平成26年度で70億円程度の収支の改善を目指すようです。
(参考:吹田市「行政の維新プロジェクト」

 そして、具体的な行政改革の内容は、次のものです。(平成26年度の効果額)

給与制度改革    8億10百万円
職員数の削減   13億40百万円
歳入確保策の充実 21億02百万円
事業の見直し   28億93百万円

合計       71億45百万円
(HPに効果額の合計がなかったので、わたしが積み上げました)

 それぞれの内容は次のようなものです。
〇給与制度改革
給与カット、特殊勤務手当の見直し、実質わたりの是正
非常勤職員やアルバイト報酬の引き下げ

〇職員数の削減
平成30年度までに、職員数を住民千人当たり6.00人以下を目指す。
平成23年度の職員数2313人を、平成26年度には2171人へ142人の削減

〇歳入確保策の充実
市税徴収の強化など市税収入の確保      5億51百万円
使用料、手数料の値上げ、減免見直し     3億63百万円
公共施設の活用見直し、市有地の売却・貸付 10億00百万円
公共施設駐車場の有料化             19百万円
法人市民税の軽減対象の縮小(実質増税)   1億68百万円

〇事業の見直し
・市独自の行政サービスは、原則廃止・縮小を検討
・単独扶助費は、住民1人当たり額を府内特例市並みに抑える
・事務事業はアウトソーシングを進める
・市の施設で目的・意義が薄れたもの、費用対効果に問題があるものは早期に廃止を検討
という基本的な考え方のもと、見直し会議で次の結果になりました。

(廃止)
市民会館事業
短期入所生活介護事業
老人医療費助成事業
福祉巡回バス(きぼう号)運行事業
福祉バス貸付事業
高齢者団体用福祉バス貸付事業
住宅改造助成事業
高齢者理・美容補助事業
高齢者無料入浴事業
高齢者万博自然文化園・日本庭園無料入園事業

(縮小)
福祉年金支給事業
特定疾患者給付金支給事業
重度障害者福祉タクシー料金助成事業
日中活動重度障害者支援事業
居宅サービスに係る利用者負担額の助成事業
一部負担金相当額等助成事業

小学校安全対策事業
幼稚園安全対策事業
私立幼稚園安全対策助成事業
保育所安全対策事業
わかたけ安全対策事業
杉の子学園安全対策事業
私立保育所安全対策助成事業
高等学校等学習支援金支給事業
私立幼稚園保護者補助金支給事業

高齢者日常生活用具給付等事業
高齢者寝具感想消毒サービス事業
はり・きゅう・マッサージ助成事業

生活困窮者支援事業

再生資源集団回収報償金交付事業
ごみ分別排出啓発事業

(現状維持)
なし

(促進)
小中学校校務員業務のアウトソーシング
小学校給食調理業務のアウトソーシング


 結局、市職員の給与が高いと批判をしてみても、人件費の削減余地は限定的です。府下で1番の高給と言っても、大阪府を含めて、府下の自治体の給与って10%幅に全部収まる程に差は小さいですから、極端に削れるものでもないようです。
 吹田市の人件費削減が甘いか厳しいかの判断材料はありませんが、維新の会の新市長にすれば、市民向けサービスを削るより、人件費を削って削減効果を上げたいでしょうから、できるだけ削って、これなのでしょう。

 給与カットで8.1億円、人員削減で13.4億円、合せても21.5億円。歳出全体の1150億円と比較すると「それだけしか削れないの?」と思いますが、歳出のうち人件費は265億円でしかなく、人件費の8%削減というと、まあそんなものなのでしょう。

 でも削減全体の70億円に対して、人件費21.5億円の削減だけでは、全然足りません。残りは、税金や手数料などの収入を増やすか、行政サービスを削って支出を減らすしかなく、結局、大半は市民の負担になるのです。

 以前、このブログへ意見をいただいた維新の会の市議候補の方は、「役所の予算など、行政サービスを下げずに予算を3割削減して作って来いと命じれば、その位できるんだ」とおっしゃってましたが、そんな都合よくはできなかったようです。
 大阪都構想に関して大阪維新の会の方が主張されてる方法を当てはめて、「予算1000億円で運営している特例市のように、1から吹田市役所を作り直せば、行政サービスを何ら下げることなく、予算額を1000億円に削減できる」(行政サービスを下げないといいながら、「予算1000億円の特例市」と吹田市の行政サービスの違いを何も比較してない議論というのは、お断りしておきます。)というのが可能であれば、吹田市民に行政サービスの廃止・縮小という負担をかけることなく、予算を1000億円に下げることができるはずですが、井上・吹田市長がその方法を採らなかったのは、ただの言葉遊びでしかなかったか、「莫大な移行コストが掛かるのに、結果は行政サービスを下げるだけ」など、この方法を現実に適用できない問題点があるからなのでしょう。

 吹田市では、この行政サービスの廃止・縮小に既に批判の声が上がっているようです。行政サービスを切られる人には、やはり切実な問題ですから。
--------------------------- 引用開始 ---------------------------

吹田市:行政維新プロジェクト 通所施設運営社会福祉法人、市に連日申し入れ /大阪
 ◇「財政だけで判断おかしい」

 吹田市の井上哲也市長が進める「行政の維新プロジェクト」で福祉政策が相次いで廃止・縮小されていることについて、市内で五つの通所施設を運営する社会福祉法人「さつき福祉会」が反対する申し入れを連日、市役所で行っている。同会は10月3日の事業見直し会議で検討される「日中活動重度障害者支援事業」の見直しに特に反対しており、鈴木英夫理事長(73)は「これまでの活動を知らない外部委員が財政面だけで判断するのはおかしい」と憤っている。

 市は過去4回の事業見直し会議で、高齢者や在宅療養者などを対象とする福祉政策を中心に30事業について検討。12事業を廃止、15事業を縮小と結論づけている。同支援事業は重度障害者が通所する施設に対する同市独自の補助。

 同会が市から委託を受けて運営する市立障害者支援交流センター「あいほうぷ吹田」では、利用者約120人のうち、48人が胃ろうやたん吸引などの医療行為を必要とする。職員は常勤・非常勤で計300人おり、昨年は運営費が2000万円不足。今年は寄付を集め、さらに一部の常勤職員を非常勤に切り替え、ぎりぎりの線で運営している。鈴木理事長は「市の支援がカットされれば職員を減らさざるを得ず、重度の利用者はすべて受け入れられなくなる」と話す。

 同会の通所施設に脳性小児麻痺の長女(44)が24年間通っているという母親(71)は「娘は生活リズムの変化に敏感で、祭日で1日通えないだけでストレスがたまり、寝付きが悪くなる。利用が制限されたらどこに行けば良いのか分からない」と困惑していた。

 井上市長は「事業の選択と集中で市民サービスの向上を図っていく。市民の意見は検討の参考にしたい」としている。

毎日新聞 2011年9月29日 地方版

--------------------------- 引用終了 ---------------------------

 この改革が吹田市民が望んだものなのか、望まないものなのかは分かりません。でも、「市職員の給与カットで、吹田市の赤字財政を建て直す」と期待した人には、思ってもみない結果でしょう。

 でもこの吹田市民の大きな負担も、吹田市の1150億円の予算を約1000億円に抑えるための行財政改革でしかないのです。

 大阪市の現状の予算と、大阪都実現後の特別区の予算を比較してみましょう。
 大阪市の予算は、平成20年度1兆5500億円。1区平均650億円なので、大阪都後の特別区が3区相当とすると、特別区対応する大阪市の現予算額は1950億円です。ここから都に移管される業務(一般財源で330億円。予算では700億円〜1000億円程度になるので、1特別区当たり100億円)を差し引くと1850億円。

 これに対して大阪都構想では、特別区は中核市並みに1000億円程度の予算を持つとされていますから、大阪都実現後の特別区は、現状の1850億円の予算を1000億円まで削減することを迫られます。

〇期待の二重行政の解消ですが、(わたしは大した効果があると思いませんが)効果があったとしても、効果の大半は、都へ移管されて府の業務と統合される100億円(×8特別区分)の側で発生するので、特別区が担当する業務で発生する効果は、極めて小さいと考えます。
 逆に、今まで大阪市一体で行っていた業務を、特別区に分割してそれぞれで行うコスト増は大きく、コスト増は特別区が負担します。(区議会の経費がよく話題になりますが、特別区が担当する業務全体で発生する「特別区に分割することによるコスト増」と比較すると、ちっちゃな話と思っています。)

〇特別区でも、人件費の削減で予算削減をカバーできないか期待したいですが、大阪市の人件費は2565億円。特別区に単純に分割すると約320億円。
 1850億円を1000億円に削減する時に、人件費を1〜2割削減しても焼け石に水です。(しかも、消防を一部事務組合に移管して人件費削減みたいなのは、人件費が分担金に変わるだけなので、ここでは意味がありません。)

 結局、特別区予算の1850億円から約1000億円への削減の大半は、行政サービスの事業費を削減して賄うしかなさそうです。

 吹田市では、大阪維新の会の市長が1150億円の予算を1000億円にするだけで、上に挙げたような大幅な行政サービスの削減や税や手数料などの負担を、住民が負うことになりました。
 大阪都の特別区では、1850億円を1000億円にするのです。その影響がどのようになるか、想像もできません。

 橋下知事はテレビの発言で、「今、大阪市がやっている住民サービスは全部できます。」と断言します。
 それならば何故、「予算をいっぱい削りながら、住民サービスは維持する魔法」を吹田市民には、見せてくれないのでしょうか?


(追記)
 吹田市の人口規模は約35万人。大阪都構想の区長公選制で民意反映のために目指すとしている理想的な規模です。
 橋下知事は、区長公選制が実現され、大阪市が30万人規模の基礎自治体となれば、行政に市民の意思が反映され、大阪市の抱える様々な行政課題が解決すると語ります。

 でも、区長公選制で理想とするはずの吹田市の状況が、大阪市と比較して素晴らしく市民の意思が反映されている状態とは、わたしには思えません。大阪市民の中に「もっとこうして欲しい」と思ってる方が沢山いるように、吹田市民の中にも、今も「もっとこうして欲しい」と思っている方は沢山いるように思うのです。

 大阪市という基礎自治体を30万人規模の基礎自治体に分割すれば、(予算削減や規模縮小によるコスト増などの問題を無視したとして)本当に良くなるのでしょうか。
 わたしは、260万人にひとりの市長が遠いと感じている方にとっては、30万人にひとりの市長でも十分遠いと思ってしまうように思います。
 それでもってわたしは、今現在も260万人にひとりの市長は、市民を良くするための頑張られていると思うし、ちゃんと「市民の代表」だと思っています。

(追記2)
 井上・吹田市長が、選挙前に、障がい者支援団体へ市長候補者として説明した内容が、同団体の会報に掲載されていたので、井上市長の部分のみご紹介します。オリジナルはコチラです。

(PR文)
 ローカルパーティー「大阪維新の会」「変えなアカン」「変わらなアカン」

 財政が厳しくても、福祉を切り捨てることには反対。ただし、財政健全化も重要。徹底して無駄を排し、公務員制度改革しかない。市長自ら給料を下げ、府下で最高となっている公務員の給料を下げなければならない。「障がい者が暮らしやすい街づくり」宣言をして、年金と給料で最低限の生活ができるよう頑張ります。

(発言1)
 私は「障がい者施策検討委員会」(仮称)の設置を公約しています。行政の立場ではなく、当事者のご意見をしっかり聞かせて頂くことが重要だと考えています。そうしたニーズに沿った維持と改善・拡充をしっかりとやらなければなりません。官は官として、民は民としてしっかり協同して障がい者施策を充実させていきたいと考えています。作業所については、地域活動支援センターV型への移行を、交付税の有無にかかわらず、地方自治体がしっかりとやっていかねばならないことは、言うまでもありません。

(発言2)
 障がいのある方が、「自分のことは自分で決める」権利を保障することは、行政の重要な仕事です。障がいがあるなしにかかわらず、等しく保育と教育を受けられるように努力をしていきます。ただし、財源のない政策は嘘つきになりますから、財源をしっかり検討して、施策の選択が必要となることはご理解頂きたいと思います。


運営上のおしらせ

 これから大阪府知事選・市長選が近づくにつれ、ブログの荒れなどが心配されるため、当面、コメント欄を閉鎖します。
 ご不便をお掛けしますが、ご理解をよろしくお願いいたします。


・・・もし、この記事を気に入っていただけましたら、お勧め記事のまとめ目次から、他の記事もどうぞ。
   大まかに大阪都構想のことを知りたい方は、まとめブログをご覧ください。
posted by 結 at 20:09| Comment(0) | その他 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。