2011年10月04日

大阪都構想の「中核市並みの職員数」から見えるもの

【注意】YAHOO!ニュースの2012年3月7日「<大阪市>4年後に職員半減…戦略会議で原案」記事のリンクから、当記事へお出でになった皆様へ

 当記事は、維新マニフェスト別添の大阪都構想推進大綱で特別自治区の職員数を中核市並に(現状の大阪市より)大幅に削減する(=計算上36%削減に相当)としていることについての(主に市役所・区役所の行政職の削減についての)議論であり、現業部門(市営地下鉄・バス、ごみ収集、病院、上下水道、保育所、幼稚園など)の組織改編(独立行政法人化や一部事務組合への移管、民営化など)を中心とした、3月7日に市戦略会議での「4年後に職員半減」とは、削減対象とする職員の範囲が、全く異なります。

 毎日の記事では、市戦略会議は、職員数約3万8000人を(2015年10月に)約1万9000人に削減(約半減)するとしたとしていますが、
 産経の記事によると、当記事で扱う市役所・区役所の行政職は、今回の発表では約2万1600人を(2015年10月に)約1万9350人に削減(特別区を中核市並みとした場合の36%削減より少ない、10.4%の削減)に止まるとしています。(なお、維新マニフェスト別添の大阪都構想推進大綱では、2015年4月に大阪都を実現するとしていますので、今回発表された削減目標は、大阪都移行後の数値と思われます。)
 今回の1万9000人の削減の大半(概算86%)は、現業部門の組織改編です。

 また毎日の記事でも触れられていますが、元々、市税で給料を支払っていない地下鉄や水道などは、組織改編で「大阪市職員」で無くしたとしても財政削減効果はありませんし、ごみ収集など公費負担が必要な事業は人件費を削減しても委託料に置き換わるだけなので、財政削減効果は不明です。
 行政職の1割削減以外、実質的な財政削減効果は不明で、かなり望み薄に思われます。
 この点については、当ブログでは、過去の記事「大阪維新の会マニフェスト雑感(その2)」で扱っています。


--------------------------- 以下、記事本文 ---------------------------
 前回は、大阪都構想で「特別区は中核市並みの財源を持つ」とする特別区の財源を見てきました。
 今回は、大阪都構想大綱(案)で、「各特別自治区の職員数は中核市の職員数を基本とする」としている特別区の人員・組織を、ざっくりと考えてみます。

 大阪市役所の組織を考える時、ひとつの特徴は、地下鉄、市バス、水道など事業を行っている部門が大きいことですが、それは次回の話題として、今回は住民登録や福祉など、市役所・区役所の中で行われている業務を考えます。(保健所や保育所なども除きます。)

 大阪府議会の大都市制度検討協議会の資料を探していると、次の資料を見つけました。(議論と関連する箇所以外カットしています。オリジナルはコチラです。前後にも、関連の資料があります。)
中核市並み職員数01.jpg
中核市並み職員数02.jpg

 資料が示す結論を思いっきり簡単にいうと、本庁+区役所+出先機関のみの比較でも、人口1万人当りの職員数が大阪市59.1人に対し中核市(高槻市)37.5人と、大阪市の職員数は多く、単純にこの比較を当てはめると「特別区の職員数が中核市並み」とは、図の業務範囲で職員数を36%削減ということのようです。

 この議論方法の問題は、過去の記事で取り上げた「人口1人当り予算額の他都市比較」と同じく、大阪市と中核市(高槻市)で実現している、行政サービスの内容やクオリティーを問わないことです。(府協議会資料では、多少の比較を行っていますが、その指標として「専任組織の設置率」を取り上げ、基本30万人規模で100%になるとしていて、それ以上は基本突っ込みません。)

 大阪市の職員数が無駄に多いのか、行政サービスを充実させるために多いのかは、市民にとっては大違いです。
 大阪市の職員数が(市民への行政サービスの向上に何も寄与することなく)無駄に多いのなら、中核市並みとか言わず、無駄は削ればいいのですが、行政を充実させるために多いなら、「中核市並み」として単純に削るのは、市民にとってマイナスになります。

 この点の理論的な考え方は、「人口1人当り予算額の他都市比較」と似ています。他都市比較による予算削減に問題がないかは、これまでいくつかの記事で整理しているので、参考まで。
○大阪市は無駄が多いという話、肝心な点が分からない
○基礎自治体は、30万人規模がコスト的に最適といえるのか
○大阪市は本当に無駄が多いのか、ふたたび

 ひとつ付け加えると、不思議な話があります。

 職員数の多さは、維新の会の市長マニフェストにも挙げられていて、「市民人口1万人あたりの職員数についても、大阪市:150人、名古屋市:118人、横浜市:75人であり、大阪市が突出しています。」とされています。わたしが計算した数字だと、大阪市154人、名古屋市122人、横浜市70人、京都市109人、神戸市107人で、年度が違うのか少し数字が違いますが、ほぼ同じ傾向です。
 大阪府下の市町村では、ばらつきはありますが平均85.7人。上で大阪市と比較した高槻市は68.6人。
 やはり、大阪市の人口1万人当たり職員数の150人は、他市と比較すると多いですし、高槻市はかなり少ない方の市であることが分かります。

 ところが見方を変えて、各市の歳出に占める人件費の割合をみると、大阪市14.6%、名古屋市17.4%、横浜市13.2%、京都市16.1%、神戸市16.3%と、大阪市はどちらかというと低い方です。
 大阪府下の市町村では、ばらつきはありますが、平均は20.3%。大阪市の14.6%は、大阪府下の市町村では一番低い数字です。逆に上で大阪市と比較した高槻市は24.0%とかなり高い方になります。

 歳出と税収は同じではないので、かなり乱暴な言い方になりますが、次のような言い方ができます。
 大阪市は人口1人当たりの市役所の職員数は、割と多い市です。でも、市民が払った税金が市役所の職員の給料に消えていく割合は、大阪府下では一番少ない市です。中核市(高槻市)なみに職員を減らして、市民が払った税金が職員の給料に消える割合が、6割増しになってもいいですか?
 (職員を減らすのに、歳出のうち職員の給料に消える割合が大きくなるのは、大阪市が特別区となり、中核市並みの職員数と中核市並みの予算額になった場合、職員数の削減割合より、予算額の削減割合の方が大きいためです。なお、予算額の削減は都への財源移管により起こるため、市民の支払う税金が減るわけではありません。)

 単純に「市民人口1万人あたりの職員数が、大阪市は突出しています。」という見方だけをすることは、あなたにとって、望ましい市役所の姿を示してくれないのかもしれません。


 前置きが長くなりましたが、ここからが記事の本論です。
 上の大阪市と中核市の職員数比較の図を見ていて、質的な違いを説明できそうな点があったので、今回はその点を取り上げます。人数の比較そのものよりも、機能分担の部分に着目したいと思います。
中核市並み職員数01.jpg

 上の図から出先機能部分を除くと、大阪市は、本庁機能3980人、区役所5011人、(先の本庁機能3980人と別に)本庁における行政区関連事務989人の計9980人とされています。これに対して、中核市(高槻市)は、1194人です。

 大阪市の本庁における行政区関連事務989人とは、区役所で担当している業務の本庁側担当者で、それぞれの区役所でバラバラに行うよりも、1ヶ所で全部の区役所分まとめて行う方が効率的・効果的な作業をしていると考えます。
 つまり、区役所5011人が区役所で実施する業務を、本庁で直接支援する部門が989人いて、本庁機能3980人の中にも、総務、財務、会計など「総務課」的な業務で数百人が間接的に支援してるということなのだと思います。(ただ、とりあえずは、総務、財務、会計など間接的に支援のことは、置いておきます。)
中核市並み職員数03.jpg

 特別区を今の3区相当とすると、現在の体制は、1区平均職員200人の区役所3つを、本庁の直接支援部門989人が支えている訳です。それぞれの区役所の背後に989人がついているようなものです。
 特別区に移行すると、中核市並みに削除がなくても、単純計算で989人で行っていた直接支援部門の作業を、1/8として125人で行うことになります。普通に考えて、今まで989人で行っていた作業を、同じ内容、同じクオリティーで行うのは、無理のように思います。

 まして、中核市並みの職員数にするとは、ここから更に37%減を求めることになりますから、600人+125人=725人を更に、460人するということです。この人数でどうするのか、このように対比すると想像もつきませんが、これまで区役所で600人で行っていた住民サービスを行いながら、989人が本庁で行っていた直接支援部門の作業を、460人で、同じ内容、同じクオリティーでは行えないとは、断言できそうです。

 本庁で直接支援する部門の作業って、どんなものを想定すればいいでしょう?福祉や国民健康保険などの業務の中で、それぞれの区役所で行うよりも、まとめて行う方が効率的・効果的な作業ということで、次のような作業だと当てはまりそうです。
(1)条例の作成、整備
(2)事務マニュアルの作成、整備
(3)パンフレット、チラシ、申請書、台帳などの原稿作成、印刷
(4)広報、研修
(5)行政情報システムの作成、運用、保守

 例えば、法律が変わった時、こういう作業を担当するとして、どういう作業が出てくるかを考えてみます。
 法律が変わるというと、稀なことに思えるかもしれませんが、大きなものだと、来年、子ども手当てが児童手当に変わることとかが挙げられます。小さな法律変更だと、無数でしょう。法律などの変更を知らせる「官報」は、日刊なのですから。

(1)法律変更に従い、条例の変更必要な箇所を見つけ出し、変更します。勿論、条例の変更ですから、議会の議決を受けるまでがお仕事です。直接の条文だけでなく、関連した条文の中で不整合が起きないかの確認も大切です。
(2)事務マニュアルを作るということは、法律などの制度変更があったら、その制度変更に合せて、どんな手順で仕事をすればいいかを考えるということです。
 ひとつは、制度変更に合せて、計算のやり方や申請書類の点検の方法を変えたり、新しい申請書類を作ったりすることです。
 もうひとつには、新しく制度の対象になる人が増えるような時には、その新しい対象者をどのように見つければいいかを考えて、どんな方法で新しい対象者にお知らせをするか、考えることです。
 そうやって考えた仕事の手順をマニュアルにまとめます。
(3)法律などで制度変更になった時、パンフレットや申請書類の原稿作りに様々な影響が出ます。
 子ども手当が児童手当に変わったとすると、パンフレットやHPの子ども手当の説明を児童手当に変えなければいけません。子ども手当用の申請書類も、児童手当用の申請書類に作り変える必要が出ます。
 パンフレットやHPの中には、制度の説明ページ以外でも「子ども手当」という言葉が出てきたりします。目次や制度の一覧表だったり、相談窓口の説明などです。他の制度の中で「子ども手当受給者」を対象にしてたりするかもしれません。
 申請書類も、他の制度の申請書の記載上の注意に出てくる「子ども手当」まで見つけて、変えていきます。
 それに加えて、子ども手当が児童手当に変わるとかいったものだと、制度変更のお知らせチラシも必要になりますね。
(4)広報としては、(制度変更の影響にもよりますが)広報紙へお知らせの記事を掲載したり、広報板へポスターを貼り出したり、回覧板でお知らせするとかも、出てきます。
 研修だと、制度変更の内容や作業方法の変更が、複雑だったり、ボリュームがあるなら、区役所の人を集めて、説明会をするようなことが考えられます。
(5)制度に変更があれば、行政情報システムのプログラムを変更が必要です。新しく制度の対象になる人が増えるなら、その人を特定してお知らせ文書を作るような、新たなプログラムも必要になる場合もあるでしょう。

 こういう作業は、1区役所分でも全部の区役所分でも、あんまり作業量は変わりません。だから、大阪市を8つの特別区に分割した場合、全く同じ内容を特別区で行おうとすると、特別区の区役所毎に直接支援部門の職員数989人が必要になってしまいます。

 上の例の法律などの制度変更であれば、中核市でも当然対応が必要ですし、「中核市では、支援部門にそんなに大人数を割かずに立派にできてる。だから、中核市の方が効率的なんだ。」といった反論もありそうです。

 わたしは、この部分での大阪市と中核市の比較って、大手のスーパーマーケットと個人スーパーの違いかなと思っています。
 個人スーパーには大規模な仕入れ部門などありません。店長+数人の仕入れ担当者で、仕入れやセールの企画などを切り盛りします。
 それに対して、大手スーパーであれば、仕入れ部門などを本部が担当します。仕入れも、分野ごとに分けて担当しますから、問屋へ注文したり手近な市場で買うだけでなく、直接産地へ出掛けて交渉も行います。野菜も契約農家を作って、良い品を安く安定的に確保に努めたりします。PBの開発などもするでしょう。セールの企画、広告、商品開発なども、担当者を置いて準備します。

 大手スーパーでも個人スーパーでも、どちらも醤油は売ってます。牛肉も、さんまも、白菜もあるでしょう。こういう品目で比べると、扱っている商品は同じようなものです。でも、同じ品目の中での品揃えや価格、品質などには、大きな差が出るでしょう。
 「大手スーパーでも、個人スーパーでも、醤油はちゃんと売っている。だから、大手スーパーを個人スーパーに変えても、消費者には何の影響もない。」というのは、やっぱり違うと思うのです。

 上の制度改正の例に戻りましょう。
 直接支援部門の人数が遥かに少ないとすると、十分な制度説明をするパンフレットやHPを、最新状態で用意しておくのは、難しくなるかもしれません。全く作らなかったり、ごく簡易な説明に止めたり、数年に1度にして制度変更は正誤表を挟むだけかもしれません。
 新しい制度ができた時、その対象者に個別に説明チラシと申請書類を送るようなことはできなくて、広報紙に「こういう制度ができました。」と掲載するだけかもしれません。
 新しい制度について聞きに行った時、ちゃんとした説明をして貰えるまで、かなり手間取る場合もあるかもしれません。
 行政サービスの種類が多いか少ないか以上に、「同じ行政サービスを提供してる」の中身も、何がしか変わってくるのだと思います。

 大阪市の区役所5011人と本庁における行政区関連事務989人とは、大阪市という規模を活かした機能分担を行っていることを示しています。そして、本庁機能3980人の業務の中にも、規模に比例しない作業を本庁でまとめて実施している部分は少なくないのでしょう。
 そこには、人口1万人当りの職員数が大阪市59.1人に対し中核市(高槻市)37.5人といった比較では、比べ切れない違いがあるということなのだと思います。

 大阪都移行後、中核市並みの職員数で運営される特別区に、多分「今と同じ」行政サービスを求めることはできません。そこには、今より良い面もあるかもしれませんが、悪い面もきっとあります。
 大阪市を特別区に分割するのが、あなたにとって本当に良いのか、しっかりと見極めることが大切です。


・・・もし、この記事を気に入っていただけましたら、お勧め記事のまとめ目次から、他の記事もどうぞ。
   大まかに大阪都構想のことを知りたい方は、まとめブログをご覧ください。
posted by 結 at 04:19| Comment(0) | 概要 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。