2011年09月17日

大阪都構想「特別区の税財源は61%の配分率で大丈夫!」を読み解こう(改訂2版)

-------------------- 改訂記事です(2011年10月15日)--------------------
 この記事が、文章が込み入って読み難くなってしまったので、結論だけを再整理します。以前の記事の議論がベースですが、そこから少しだけ、議論を進めています。

 大阪維新の会の大阪都構想推進大綱(案)によると、「特別自治区間の税収格差問題は(中略)新たな大阪都区財政調整制度を創設すれば解決できる。大阪市に交付される交付税、固定資産税、法人市民税、特別土地保有税を財源とし、その61%を特別自治区に配分すれば、各特別自治区は中核市並みの財源を有することになる。」としており、後段の説明から「中核市並みの財源」とは1000億円規模を指すことが分かります。

 大阪府議会の大都市制度検討協議会に大阪維新の会が提出した資料を見ると、大阪市税のうち都市計画税・事業所税813億円が都に移管され、大阪市の交付税、固定資産税、法人市民税、特別土地保有税4159億円を特別自治区間の調整交付金の財源とし、そのうち39%(1623億円)を都の財源にするということが分かります。

 同資料によると、現在の大阪市の一般財源8782億円のうち、2436億円(調整交付金1623億円+都市計画税・事業所税813億円)が都に移管され、その他の一般財源も300億円程度減少するため、特別区に分割された大阪市の一般財源は6068億円に減少することになります。
 なお、この6068億円のうち、その他一般財源に計上されている1300億円は公債発行による収入(つまり、借金)と思われるので、公債収入を引いて比較すると、現在7500億円程度の一般財源が、特別区分割後の大阪市全体で4800億円程度に減少することになります。

 4800億円は、8分割で平均600億円、9分割で平均533億円ですが、特別区の予算規模としては、これに国庫支出金や公債発行収入を加えると、1000億円規模になるということだと思われます。

 大阪市から都へ一般財源2436億円が移転されるのに対して、政令市権限のうち都へ移管される業務は、一般財源330億円に過ぎませんので、特別区の財源は大幅に不足することになります。

 予算規模としては、平成20年度の大阪市の予算規模は1兆5500億円で1区平均650億円。特別区を3区相当規模として1950億円。都へ移管される業務分を差し引いたとしても現在、約1850億円の行政サービスを行っていることになります。
 特別区の予算は、この1850億円規模から1000億円規模へ削減されますから、大幅な行政サービスの削減があると考える方が妥当です。更に、大阪市を特別区に分割することによるコスト増(スケールメリットの喪失)も巨大なものとなりますから、実質はこの金額差よりも更に厳しい状況になると考えられます。

 ただ、特別区が大赤字になって、大幅な行政サービス削減を明らかにしたくないのか、大阪府議会の大都市制度検討協議会での議論では、基礎自治体業務の一部も都へ移管するような案を挙げていましたが、「コレだ!」という案を提示することはできませんでした。
 大阪市議会の大都市・税財政制度特別委員会で大阪維新の会は、大阪市の既発公債の償還2040億円を都側で引き受けるとして試算すると(分割してもコスト増が発生しないと仮定するなら)特別区の財源不足は起こらないと主張しました。
(参考:財源配分試算の資料 )
税源配分シュミレーション01(市大都市特別委員会提出分).jpg
 ただ、この案には次の問題があり、あまり有効な案と捉えません。(大変話を分かりにくくし、問題点が見えにくくなる点で、維新の会にとって有効な案かもしれませんが。)

〇調整財源の61%配分(39%を都へ移転)は既定路線なのに、大阪市の既発公債の償還の都側引き受けは、ただ試算の前提に置いてみただけであり、「これで実施するというものではない」とわざわざ断っている案なので、「だから大丈夫」という話に全くならないものです。
〇この試算では、調整財源が大阪都構想推進大綱(案)の「大阪市に交付される交付税、固定資産税、法人市民税、特別土地保有税」だけでなく、都市計画税・事業所税が加えられているのに、61%配分という結論のみ一致します。「調整財源の61%配分」に辻褄を合せる説明を「単なる試算」としてしただけとしか、評価できません。
〇この案の通り、大阪市の既発公債の償還を都側が引き受けたとしても、当初の数年は試算の通りにうまく行きますが、特別区が発行した区債の償還が始まると(その償還財源を都が握ったままのため)区が行政サービスを削って区債償還の財源を生み出す必要があり、特別区が大赤字になって、大幅な行政サービス削減が必要になる点は、変わりません。
〇この案の通り、大阪市の既発公債の償還を都側が引き受けたとして、当初それでうまく行くのは、特別区の行政サービスの提供規模が1850億円規模のままだからです。大阪都構想推進大綱(案)の示す、特別区が中核市並み1000億円の予算規模、中核市並みの職員数という考え方と明らかに矛盾します。
「特別区が中核市並み1000億円の予算規模」の方が、より基本的な理念であることを考えると、この案はその場しのぎの正当化のための説明と捉える方が、妥当です。


 なお、大阪都移行後の特別区は現状の予算規模1850億円から1000億円程度の削減となり、分割によるコスト増も合わさって、大幅な行政サービスの削減を余儀なくされるという、ここでの結論は、大阪都構想推進大綱(案)で掲げる「現在大阪市が提供している住民サービス分の財源は特別自治区に保証する」の主張と、矛盾するように見えます。
 ただ、わたしは、大阪維新の会のいう「大阪市の現状の住民サービスの財源保証」を次のように捉えるので、矛盾しないと考えています。
〇まず、大阪市が独自に提供する行政サービスのみ抽出します。多分、数十〜数百事業で数百億円の規模と思われます。(ここでは、仮に400億円規模とします。1特別区50億円。)
〇独自の行政サービスを除いて特別区の予算を1850億円から1000億円に削減し、その後、独自サービス分として50億円を加え1050億円にすることで、独自の行政サービスの財源は確保と主張すると考えます。
〇1050億円でどのような行政サービスを実現するかは、特別区の区長と区議会の選択。

 辻褄は合いますが、これで大阪市民の行政サービスが維持されるとは思いません。大幅な行政サービスの削減を余儀なくされると思います。


-------------------- 以下改訂前です(2011年09月17日・25日) --------------------
 秋の知事選・市長選ダブル選挙に向けて、大阪都構想に関する記事が新聞紙上に踊っています。肝心の大阪維新の会のマニフェストも、大阪都構想大綱も発表された訳ではないのですが。
 現状、聞こえてくる限りでは、これまで想定してきた大阪都構想の姿と特に変わらないので、総論としては、これまでこのブログで語ってきたままです。(今まであまり明言されなかった大阪市・堺市以外の市町村の再編に言及されたのは、それなりに大きい変更点ですが。)

 それでも取りあえず、新聞記事などから読み取れることから、少しずつ書いてみましょう。

 では、記事の本題に入ります。
 朝日新聞(asahi.com 2011年9月12日15時0分)で、次の記事がありました。
--------------------------- 引用開始 ---------------------------
2015年に「大阪都」 維新の会、ダブル選公約固める

 大阪府の橋下徹知事が率いる大阪維新の会は、11月の知事・大阪市長のダブル選で提示するマニフェスト(公約)と、大阪都構想の具体像や工程表をまとめた「推進大綱」の概要を固めた。2013年度中に「都移行計画」をつくり、14年度に住民投票にかけ、15年度に都への移行をめざす。

 公約と大綱では、ダブル選後すぐに府、大阪・堺両市に「大阪都移行本部」を立ち上げ、知事や市長らがメンバーの協議会を設けるとした。15年4月以降に両市を人口約30万〜50万人で中核市並みの権限を持つ特別自治区に分割。16年度以降には両市以外の市町村合併も進め、人口30万人以上の中核市に再編する方針。

 大阪都は、成長戦略や警察、環境、広域的な危機管理、雇用対策などを受け持つ。特別自治区は、住民生活に近い保健衛生や福祉、小中学校教育、防災などを担う。区議会のほか住民代表からなる地域協議会も設置し、住民の意見を反映させる「ボランティア議員」の役割を担う。区議会の定数と議員報酬は今の市議会より低いコストに抑える。都と区の職員数は現在の3府市の8割以下にする。税財源は、地方交付税などを都に39%、区に61%に配分すれば、中核市並みの運営は可能と試算した。
--------------------------- 引用終了 ---------------------------

 色々論点のある記事ですが、今回取り上げるのは、文末の「税財源は、地方交付税などを都に39%、区に61%に配分すれば、中核市並みの運営は可能と試算した。」の部分です。

 このブログでは、大阪都構想への主な批判点として、「都税制度により基礎自治体の税財源の大きな部分が都に吸い上げられて減る上に、大阪市の特別区への分割はコスト増を招き、大阪市民の身近な行政サービスが低下する」ことを挙げています。
 これに対して「税財源の61%を特別区に配分すれば、中核市並みの運営が可能」としています。

 大阪市の1区平均の予算投入額は650億円ですから、3区を合せた規模の特別区は現行1950億円の予算を持つことになります。これに対して、大阪都構想大綱(案)で「中核市並みとしての特別自治区の財源」は1000億円規模としていますから、「中核市並みとは、今の予算を半減させること」と解釈すれば、全く矛盾しませんが、大阪府議会の大都市制度検討協議会での検討数字を用いながら、もう少し見ていくことにしましょう。

 この財源配分について、大阪都構想大綱(案)での表現は「特別自治区間の税収格差問題は、基礎自治体間の財政調整制度を創設すれば解決できる。大阪市に交付される交付税、固定資産税、法人市民税、特別土地保有税を財源とし、その61%を特別自治区に配分すれば、各特別自治区は中核市並みの財源を有することになる。」です。

-------------------- 以下改訂しました(2011年09月25日) --------------------
 大阪市を特別区にした際の区間の財源調整の案として、大阪市議会の大都市・税財政制度特別委員会で大阪維新の会から示された内容が次のものです。(フォーマットを変更しています。オリジナルはコチラ

 大阪都は、大阪市から「政令市権限(中核市権限を除く)」(330億円)と既発公債の償還(2040億円)を引き受け、調整用財源(法人住民税、固定資産税、特別土地保有税、事業所税、地方交付税、臨時財政対策債)の39%を受取るとするものです。
 また、ここでは示していませんが、この案によって基礎自治体の財源全体の63%を調整用財源にして、区の行政需要の割合で配分すれば、行政需要に対して区間格差を生じない財源配分が可能だと示せたと主張しています。(特別区を基礎自治体とみなしながら、地域の財源に対する権利を認めず、「区の財源を集めて行政需要の割合で配分すれば、行政需要の割合で財源配分ができる」と同義反復の証明をしただけなんですけどね。)
 そして、この配分を行うことで、特別区は現状の市民サービスを削ることなく実施できるとしています。

 ただ、この案が既に大阪都構想大綱(案)と配分率の61%は同じですが、調整用財源の内容が違っています。(都市計画税、事業所税、臨時財政対策債1212億円が追加されています。)
 また、あくまでも配分の可能性を示したもので、「この通りにする」とは言ってません。(ご丁寧にオリジナルでは、「今後、移動が生じる。詳細は協議会で検討する。」としています。

 結局、どのような財源配分になるのか、何ひとつ示されておらず、何も分からないというのが、結論です。
 「この通りにする」とすらしていない財源配分案を、真面目に扱うのは馬鹿みたいな話ですが、それでも、その案が何を示しているか考えるのが、このブログの趣旨ですので、上記の財源配分案を前提として考えてみます。


 根本的な問題点として、収支差がプラスになっており、この財源配分案で「特別区は現状の市民サービスを削ることなく実施できる」と主張するのですが、その結論に必要となる「6412億円で行っていた業務は、いくつの特別区に分割しても、6412億円で実現できる」という前提にかなり無理があると思うのです。
 少し違う例えをすると、父母子2人の4人家族が月30万円で生活していて、支出内容で按分すると父5万円、母7万円、子9万円×2だったとします。だから4人がバラバラで生活するとして、父は5万円あれば、今まで通りの生活ができると確認できた・・・というと変な感じでしょう。

 次に、この配分率がもたらす影響を考えたいのですが、61:39の配分率が毎年、固定的に運用される場合と、毎年、再算定を行う場合で、かなり状況が違ってきます。わたしは、最初に決めた配分率は、余程でなければ変更しない、固定的な運用がされると予想しますが、ここでは両方の場合を考えることにします。

(配分率が固定の場合)
 上記の表での地方交付税算定は、広域自治体へ移す「政令市権限(中核市権限を除く)」(330億円)を特別区側で算定した結果と思われます。翌年以降の地方交付税算定では、この330億円は広域自治体側で算定され、地方交付税(府)の増加、地方交付税(市)の減少になるので、特別区は財源不足に陥ります。(330億円×61%=201億円の不足)

 次に、大阪市の既発公債を都が負う名目で、市財源の配分を都が受けることは大きな問題があります。
 大阪市は一般会計で2兆5千億円の公債残高があり、2009年度では2200億円の償還をしながら、1550億円の新規発行を行っています。
 都制移行時に大阪市の既発公債の償還を都が負い、都がその償還原資として調整用財源の一定割合を受取ることにするというのは、評判は良いと思われますし、当初の数年はそれで問題は起きないと思われます。
 ただ、市債の多くが5年債、10年債であることを考えると、ある程度の借り換えはあっても、5年後、10年後には、毎年の償還額は大幅に減少します。都が引き受けた公債の償還額が減少しても調整用財源からの配分率は一定ですから、余剰の財源は都の一般財源にすることになります。(最終的には、2040億円の大半は都の一般財源となります。)

 逆に、特別区は当初は公債残高を負いませんが、それでも新規の区債発行は必要になります。代表例としては、小中学校の新設や増改築でしょうか。
 これまでと同額程度の発行が必要として、臨財債を特別区が負う場合で年1500億円程度、負わない場合でも1000億円程度でしょうか?
 この新規発行の区債の償還は、5〜10年後に始まり、特別区の財源で行うことになります。ただ、大阪市の時の公債償還用の財源は、都が握ったままですから、特別区は行政サービスを削って、公債償還の財源を捻出することを迫られます。

 大阪都構想推進大綱(案)では、特別区を中核市並みとして1000億円の予算規模と中核市並みの職員数を持つとしていますが、この案で移行した場合、当初は(都が既発公債を負担する部分を含めて)1800億円以上の行政サービスを行い、職員数もそれなりに必要になります。
 行政需要の移転や区債の償還が開始されると、特別区は急速に財源不足に陥り、1000億円規模へ向けて、行政サービスや職員数の縮小を強いられるため、かなりの問題が発生すると予想されます。

(配分率が、毎年再算定される場合)
 特別区の配分率は徐々に上昇し、既発公債の償還が完了すれば配分率は100%に近いものになります。(ただし、臨時財政対策債の償還部分が一定残ります。)

 ただ、大阪都構想推進大綱(案)では、特別区を中核市並みとして1000億円の予算規模と中核市並みの職員数を持つとしていますが、この案では、特別区は1800億円以上の予算で行政サービスを行うことになり、全く違うものとなります。
 また、都に新たに集約される広域行政とは、一般財源で330億円に止まり、しかも大半の使途は決まっていますから、新たな投資の財源はかなり限定的です。1月のマニフェストでは、大阪市の予算を4500億円程度圧縮し、都での成長戦略投資の予算にするとしてましたが、この案では、そのような投資はされないことになります。

 「配分率が毎年再算定される」は、特別区を中核市並みとする考え方と矛盾するため考えにくいです。でも、配分率が一定だと、特別区は長期的に深刻な財源不足になり、行政サービスを削りながら、1000億円の予算規模へ移行していくことが予想されます。
 また、どちらの場合にしても、「調整用財源の61%に特別区に配分すれば、中核市並みの運営は可能と試算した」という内容にはなっていません。

 ・・・とはいえ、今回の案でも、大阪維新の会は「この案なら大丈夫でしょう!」とは言っても、「この通りにする」とは示さず、どのように財源配分されるのかは何も分かりません。
 そして、示された案をそのまま信じたとしても、現状の予算と比較して、長期的には特別区で大幅な財源不足が生じそうですし、分割しても同じ予算額で「現状の行政サービスが確保される」かなんて、誰も確認していないのです。
 「税財源は、地方交付税などを都に39%、区に61%に配分すれば、中核市並みの運営は可能と試算された」と、新聞は平気で書いてしまいますが、こういうことは、教えてはくれません。

 結局、始めに戻ります。
 大阪都構想は「都税制度により基礎自治体の税財源の大きな部分が都に吸い上げられて減る上に、大阪市の特別区への分割はコスト増を招き、大阪市民の身近な行政サービスが低下する」ので、わたしは反対です。

(注)この記事は、現時点で把握した情報で書いています。大事な点でもあるので、大阪市長選までの間に新たな情報が出てきた際は、修正又は追記を行います。



-------------------- 改訂前の初稿(2011年09月17日)です --------------------
 大阪市を特別区にした際の区間の財源調整の方法は、大阪府議会の大都市制度検討協議会第4回で取り上げられており、固定資産税、法人市民税、特別土地保有税を配分財源にすることから、パターンA−2と思われます。(参照:第4回大都市制度検討協議会座長提出資料A−2
 この図に「地方交付税(市)を調整交付金原資にする」と「特別区への配分率を61%にする」の修正を加えると、次のようになります。

財源配分構成図02.jpg

 結論として、特別区は(一般財源ベースで)1,390億円の財源不足に陥るのですが、それでも「中核市並みの運営が可能」な財政状態ということのようです。

 更に加えると、この表での地方交付税算定は、広域自治体へ移す「政令市権限(中核市権限を除く)」(330億円)と「広域が行う基礎自治体事務」(994億円)の計1324億円を特別区側で算定した結果と思われます。翌年以降の地方交付税算定では、この1324億円は広域自治体側で算定され、地方交付税(府)の増加、地方交付税(市)の減少(というかゼロ)になるので、特別区の財源不足は更に深刻になります。


 少し話が変わりますが、大阪府議会の大都市制度検討協議会での財源調整の議論についても、触れたいと思います。

 同協議会の財源調整の議論とは、上の配分図で、収支差がゼロ又はプラスになれば、今の歳出に見合った財源を持つから問題はないとする議論です。区間格差の解消を目指すので、広域自治体と特別区の別だけでなく、所要財源額を人口按分し、24の全ての行政区で収支差がゼロ又はプラスになることを目指します。

 何をやりたいかは分かるのですが、これで全ての区で収支差がゼロ又はプラスになったからといって、「特別区に分割されても、現状の行政サービスが実現できることが確認できた」と言われたとすると、ちょっと違うかなと思うのです。
 その結論に必要となる「7458億円で行っていた業務は、いくつの特別区に分割しても、7458億円で実現できる」という前提にかなり無理があると思うからです。

 少し違う例えをすると、父母子2人の4人家族が月30万円で生活していて、支出内容で按分すると父5万円、母7万円、子9万円×2だったとします。だから4人がバラバラで生活するとして、父は5万円あれば、今まで通りの生活ができると確認できた・・・というと変な感じでしょう。

 大阪市が大き過ぎるからと、いくつかの基礎自治体に分割し、それぞれ公選の首長と議会を持つべきとするのなら、各地域の税財源はそれぞれの基礎自治体のものです。分割すると財源不足で困る基礎自治体が出るからと、多くの財源を取り上げて、財源調整をするということ自体、基礎自治体の財政自主権(簡単に言えば、自分たちの払った税金の使いみちは、自分たちで決めるという権利のことです。)への侵害です。だから、今の法律では、そんな財源調整はできないのです。(唯一の例外の東京都を除いて)

 基礎自治体の財政自主権など無視して、基礎自治体の頭越しの財政調整をすれば、大阪市分割後の基礎自治体間の財政格差を無くす方法は、見つかるかもしれません。
 でも、そこまでして財政格差を無くす方法が見つかったとしても、「現状の行政サービスが確保される」ことの確認なんて、全然できていません。

 「税財源は、地方交付税などを都に39%、区に61%に配分すれば、中核市並みの運営は可能と試算された」と新聞は平気で書いてしまいますが、現状の予算と比較して、特別区で大幅な財源不足が生じそうなこと、分割して「現状の行政サービスが確保される」かなんて、誰も確認していないことなど、教えてはくれません。

 結局、始めに戻ります。
 大阪都構想は「都税制度により基礎自治体の税財源の大きな部分が都に吸い上げられて減る上に、大阪市の特別区への分割はコスト増を招き、大阪市民の身近な行政サービスが低下する」ので、わたしは反対です。

(注)この記事は、現時点で把握した情報で書いています。大事な点でもあるので、大阪市長選までの間に新たな情報が出てきた際は、修正又は追記を行います。


・・・もし、この記事を気に入っていただけましたら、お勧め記事のまとめ目次から、他の記事もどうぞ。
   大まかに大阪都構想のことを知りたい方は、まとめブログをご覧ください。
posted by 結 at 01:34| Comment(14) | 概要 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
今回の39:61という数字と、協議会資料との差異は、確かに謎ですね。

そもそもあの協議会の資料ってのが、もともと維新の会が言ってる都構想とはどれも微妙に違うパターンになってて、それ見て橋下さんや維新の会の府議さんたちが財政調整制度さえできれば財源問題は解決できたと単純に豪語してはる姿もすごい違和感あったんですが。

結さんのおっしゃるように、分割によるコスト増とか、基礎と広域の業務分担変更に伴う交付税算定の変更とかを些末なこととしているのか、まったく考慮に入れてないところも酷く乱暴ですし、いずれにせよ、24区に割るにせよ、8〜9区に割るにせよ、まあ机上論で単純に平均してるだけなんで、その区の人口構成とか商業地か住宅地かとか、税収や歳出の違いを特徴付けるいろいろな要素も当然考慮されていません。

リアルな区割り案が出されて、そういった要素まで含めてシミュレーションしとかないと、危なっかしくてとても任せて見ようなどとは到底思えないのですが、選挙までの間にそこまですることはまず不可能でしょうし、やる気も無いでしょう。

多分区割り案すら出さないだろうと思ってます。維新の市議さんたちで、特に先代、先々代から地盤を引き継いだ方々が、本当に市を分割して無くしてしまい、あるいは長年自分も、自分の支持者の人たちも慣れ親しんだ区を無くしてしまうなんてこと、できるとは思えないんですよね。地域自治区とか、地域協議会を作って今の行政区の姿というか形は残します。などと言ってますが、ものすごく付け焼刃的に聞こえてなりません。支持者向け、あるいは支持者に対しているときの自分向けの慰みでしかないのではないかと思っています。

ひさびさにコメントさせてもらいましたが、なんかとりとめない内容で申し訳ありません。
Posted by bafuken at 2011年09月17日 03:27
bafukenさんへ

 61%配分のキレイな答が出ないか考えたのですが、無理だったので、自然体でパターンに落とした記事にしかできませんでした。
 府協議会の議事録では、D案を推してる様子もあったので、市債の償還を都で引き受けるとして、財源配分の正当化を図らないかと疑ってます。
 ただ、それだとD案の「一体的に処理する事務」2040億円から650億を減じた1390億円にしないと61%で収支ゼロにならないため、恣意的な結論になるので避けましたが、気になります。

 「財源問題は解決できた」の豪語は凄いですね。自分で配分案を作るつもりでいたら、府協議会の検討内容だけだったら、わたしには言えません。

 区割り案の提示は、選挙に不利だからずっと隠し続けるとして、「大胆な改革!」を打ち出す割りに、大阪市民に安心されられるようなものは何も提示されていないのですが、メディアすらも、そんなことは語ってくれないようです。
Posted by 結 at 2011年09月18日 05:50
市債の償還を都で引き受けるというのも、発想としては至極当然のようでいて、現状の公債償還基金のことを考えると、大阪府は5000億ほど食いつぶしちゃってますから(若干返済はしたと思いますが)、府の基金と市の基金をこの際がっちゃんこにして府の過去の罪を有耶無耶にすることのほうに、より大きな企図であるのではと思っています。
Posted by bafuken at 2011年09月19日 00:48
bafukenさんへ

 大阪市の既発公債の償還を都が負うことを大義名分として、市財源の配分を都が受けることには、大きな問題があると考えます。

 大阪市は一般会計で2兆5千億円の公債残高があり、2009年度では2200億円の償還をしながら、1550億円の新規発行を行っています。(うち、減収補填債と臨財債は650億円。また、この償還額が一般財源ベースにした時、もう少し少ない額で評価すべきなのかは、把握していません。)

 都制移行時に大阪市の既発公債の償還を都が負い、都がその償還原資として都税化分税収の一定割合を受取ることにするというのは、評判は良いと思われますし、当初の数年はそれで問題は起きないと思われます。
 ただ、市債の多くが5年債、10年債であることを考えると、ある程度の借り換えはあっても、5年後、10年後には、毎年の償還額は大幅に減少し、都税化分税収からの配分率は一定ですから、余剰の財源は都の一般財源にすることができます。

 逆に、特別区は当初は公債残高を負いませんが、それでも新規の区債発行は必要になります。代表例としては、小中学校の新設や増改築でしょうか。
 これまでと同額程度の発行が必要として、臨財債を特別区が負う場合で年1500億円程度、負わない場合でも1000億円程度でしょうか?
 この新規発行の区債の償還は、5〜10年後に始まり、特別区の財源で行うことになります。ただ、大阪市の時の公債償還の財源は、都が握ったままですから、特別区は行政サービスを削って、公債償還の財源を捻出することを迫られます。

 特別区は当然、都税化税収の配分率の見直しを求めると思いますが、(自動調整の制度でもない限り)都が簡単に応じることはないと思います。そのための「一定の」配分率ですし、東京都と特別区の間でも長年に渡って揉めている点です。「配分率の見直しをしなくても、十分に中核市並みの予算を持っているのだから、区債の償還もその予算の中で十分にできる」と、多分、都側は主張してくると思われます。

 この方法で都側は、1000億円〜2000億円程度の財源移転を受け、加えて都市計画税と事業所税の都税化(特別区への配分なし)で800億円程度が移転されますから、予算規模にすると4000億円から5000億円の移転を(少し時間は掛かりますが)得ることになります。

 都側として、問題にならないか懸念される点としては、都の実質公債費比率が一時的に高くなる可能性があるので、再建団体落ちしない整理が必要になるか、検証がいるかと。(それでも償還財源はあって数字の話だけなので、大阪都の特別法の中で移行時の一時規定を置くような逃げ方はあります。)

・・・と、こういった点を懸念しています。

 ただあくまでも、府協議会の財源配分議論では、政令市存置のD案で、特別区と本庁で既発公債の償還分担を検討しているだけなので、勝手な想像です。
 それでも、協議会第4回議事録では、維新がD案を評価していること。D案は、大阪市を特別区と特別区に移せない機能に分割して、「特別区に移せない機能を都が代行する」と主張するための整理にも見えることから、十分な注意が必要と考えています。
Posted by 結 at 2011年09月19日 03:05
皆さん大阪の市政、府政に大いに関し研究、考察されていることに関心しまた驚かされています。私などさっぱりわけが分かりません。
ただここにいらっしゃる方だけではなく、大阪都構想に賛成、或いは反対されていらしゃる方々の意見などを拝見させていただいていると「木を見て森を見ず」的な感じがします。
大阪都構想の一番の肝は「大阪の競争力回復」にあります。それをまず語るべきです。そこに行かずに別の部分で大阪都構想を語っても、ピントがずれ過ぎていてチャンチャラおかしいです。「大阪の競争力回復」のために何をすべきか、どういう体制で望むべきかを考え、その他のもの(予算、住民サービス等)はその体制における最適化を考えるべきでしょう。
大阪の競争力が回復しなければ、会社の売上が減るし、失業者は増えるし、税収は減るし、一方失業保険、生活保護の費用は増えるし...
今の時点であんまり細かいところに入っていく必要はないでしょう。今は今後の大阪の体制をどのようにするのか、競争力を失い続けている大阪をどうすべきかを議論すべきです。

会社員として働いている経験からすると、なすべきことにリソースを集中し、マネージメントが「決断」することが出来る会社はいい会社(その決断が正しいかそうでないかは後にならないと分からないが、すくなくとも決断しないと没落していくしかない)。 一方変化が必要であるにも関わらず、これまでがそうだったのだから、これからもこのままでいいだろう、とか思っている会社はだめになっていきます。都市においても上記は同様ですし、都市というのは過去においても、現在も常に他の都市の競争にさらされているものです。

Posted by KY at 2011年09月28日 01:11
KYさんへ

 コメントありがとうございます。

 政策のどういった点に期待し、どういった点に重きを置かないかは、ひとそれぞれの考え方と思いますが、ご指摘の点については、わたしは次のように考えています。

 このブログの議論を「木を見て森を見ず」とのことですが、自分の住む市の身近な行政のための予算が(他の市はそんなこと無いのに)4割も召し上げられ自分の払った税金の使いみちを自分たちで決められなくなったり、市の行う交通・病院・水道・図書館などなどの事業が市民の手から離れてしまったり、自分の生まれ育ってきた市が分割されて無くなってしまうことを、「木を見て・・・」といったように、豪気な気持ちにはなれません。大阪市民は、大きなコストを負うと考えます。

 大阪都構想の肝を「大阪の競争力回復」とされている点ですが、大阪都構想が実現したとして、「都」が今の大阪府より強い広域行政体になるとは思います。でも、ある程度確からしいのは、そこまでです。
 大阪都が、今の大阪府より多少強い広域行政体になったとして、「大阪の競争力回復」を実現できる道筋が示されているようには思えません。昨年の府の研究会での議論を見ても、大阪府の「低迷」(ただ、低迷か否かも色々議論はあるようです。)の原因について、十分な検討がされた様子はありませんし、都市制度の変更が経済成長に繋がるかには、強い疑念が示されています。

 原因を見誤った経済政策が成功するとは思えませんし、対処の方針が正しかったとしてさえ、大阪府が「都」になって新たに得る権限や財源が、「大阪の競争力回復」のために必要とされるだけの大きさあるのか、きちんとした検討がされたという話をわたしは知りません。

 (大阪市民が身近な行政で負うコストを無視するなら)大阪府が強い広域行政体となることをマイナスとは言いませんが、「大阪の競争力回復」は願望が語られているレベルとしか、評価できません。その実現可能性が高いか、低いか、評価できる情報がそもそも見当たらないですから。
 かつて、関西国際空港が完成すれば、関西は復権すると真剣に語られていた頃がありました。大阪都構想による「大阪の競争力回復」が、それよりも実現可能性が高いかすら分からないです。

 大阪府が自社のリソースの活用で成長に向けて頑張るというのならば、わたしは応援すると思います。
 でも現状は、大阪市民・堺市民に身近な行政の資産・資源を大幅に、(何の負担もありませんよと誤魔化しながら)大阪府に投資しろと求めている状況で、その割りに事業計画が示される気配はありません。でも、将来は大幅なリターンがありますとだけ、力強く説明するのです。

 自分が大きなコストを負わないならば、ともかく、大阪市民として大きなコストを負う以上、実現可能性も含めて、将来のリターンがその掛け金に見合うのか、見定めることを「細かいこと」だとは思いません。

 わたしは、掛け金の重さと、実現可能性が全然分からないなぁというところで、この賭けには乗れないなと、思っている人です。
Posted by 結 at 2011年09月29日 04:21
はじめまして、山野と申します。
都構想について詳細に研究されており、非常に興味深く拝読させていただきました。

誠に勝手で恐縮ではございますが、今回管理人様とご連絡をとりたく思いましてコメントを残させていただきました。もしもよろしければ記載されているメールアドレスにお返事を頂けないでしょうか。
どうぞ宜しくお願い致します。
Posted by 山野 at 2011年09月30日 11:39
山野さま

 いらっしゃいませ。コメントありがとうございます。
 こちらのブログに興味をお持ちいただき、ありがとうございます。
 なお、お求めいただいたメールでのご連絡ですが、メールアドレスがどれを指すのか分からないため、ご返事できません。

 今後も、興味をお持ちいただけるようなら、うれしいです。
Posted by 結 at 2011年09月30日 14:22
これは大変失礼いたしました。
メールアドレスを記載し忘れていたようです。
差支えがなければお時間がある時にでも下記までご連絡ください。
どうぞ宜しくお願い致します。
newj_yamano@yahoo.co.jp
Posted by 山野 at 2011年10月01日 13:34
山野さんへ

 ブログ内でのメールアドレスの確認場所に手間取り、失礼をいたしました。
 再度のコメント、ありがとうございました。
Posted by 結 at 2011年10月01日 14:10
御見それしました。膨大な資料をきちんと読み込み、その本質を的確に捉えられているとお見受けしました。
御仁は、地方財政学に携わる学識経験者の方ですか?

私も貴台とメールのやり取りなどさせていただきたく存じます。

よろしくお願いいたします。
Posted by 福井 at 2011年10月16日 13:50
福井さんへ

 いらっしゃいませ。コメントありがとうございます。

 過分のお言葉をいただき、ありがとうございます。
 ただ、わたしは、大学の研究職などではなく、サブタイの通りの一市民です。「八百屋をやってて、屋号は・・・」(ただの例ですが、似たようなものです。)などと名乗るのは、ここではあまり意味はないかと思います。

 メールのご希望をいただきましたが、メールは基本として対応していません。記事などへのご意見は、ブログへのコメントでいただければ、幸いです。
 どうぞ、よろしくお願いいたします。
Posted by 結 at 2011年10月17日 02:56
メールの件承知いたしました。
お書きの文書をすべて目を通すには膨大な時間がかかりますが、大阪都構想に批判的な知人にあなたのブログの存在を知らせたいと思います。
二重行政の水道と消費者センターの文章を拝見しましたが、わかりやすかったご説明でした。
「滋賀、京都、大阪が関わっているからと言って三重行政ではない」という当たりは、ナイスショットですね。
Posted by 福井 at 2011年10月18日 11:53
福井さんへ

 日々書きためる形のブログのため、記事の量はかなり多くなっていると思います。
 一番簡便に見ていただくには、まとめブログのこちらをお勧めしています。
http://miniminiosaka.seesaa.net/

 4月の統一地方選までの記事で、ある程度お勧め記事をまとめているのが、こちらです。
http://miniosaka.seesaa.net/article/193301921.html
 4月以降の記事は、最新の分はトップページから見ていただきたいですが、その他は、こちらの目次で、これまでの記事の一覧をまとめています。
http://miniosaka.seesaa.net/article/150716152.html

 少しでも参考になる点があれば、幸いです。
Posted by 結 at 2011年10月20日 03:09
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