2011年09月08日

橋下知事の「大阪府全部を特別自治市」構想を、ちょこっと考える

 9月7日の産経ニュース(産経新聞は9月8日)で、次の記事がありました。

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「大阪府全域を特別自治市化」なら知事辞職取りやめも 橋下知事が発言
2011.9.7 23:06

 11月の大阪市長選へのくら替え立候補を示唆する橋下徹知事は7日、記者会見で、平松邦夫市長との直接対決に反対する府内の首長連合主催のシンポジウムに出席するにあたり、「平松市長と方向性がまとまれば知事は辞職しない」と述べた。方向性一致の「落としどころ」として、平松市長も賛成する大阪市の特別自治市化のエリアを大阪市域だけでなく、府域全体に広げることを挙げた。

 橋下知事は、11月27日の市長選に合わせて知事を辞職し、他に適当な候補者がいなければ市長選に立候補すると明言しているが、知事選出直し立候補、いずれの選挙にも立候補しないという選択肢も否定していない。平松市長の動向によっては、ダブル選を取りやめ、来年2月の任期満了まで「続投」もありえると言及したのは初めて。

 特別自治市は全国の政令市長で作る指定都市市長会議が昨年、提案した制度で、大都市が一元的に行政サービスを提供できるよう都道府県と同格の権限・財源の移譲を目指す。

 橋下知事は会見で、「府域全体を特別市にして、府内の基礎自治体を存続させ、大阪市内も基礎自治体を8つから9つ置く。それであれば乗っかれる」と述べたうえで、「大阪都構想という名前にこだわっているわけではない」と強調した。
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 橋下知事から、また何とも唐突な発言です。もう少し情報が出てくるのを待ちたいところですが、自分自身の情報整理も兼ねて、少し書いてみたいと思います。もっと、情報が出てくるようであれば、また改めて記事にします。

 まず、橋下知事の言う「平松市長も賛成する大阪市の特別自治市化」とは何でしょうか?
 特別自治市は、平松市長が・・というよりも横浜市・川崎市などが中心になって指定都市市長会が「新たな大都市制度」として推進している政策です。 
 【これまでの経緯】 【概要】 【詳細】
 わたしなりに要約すると「現行の政令指定都市のような規模の都市であれば、その市域内の府県の役割も担うことができる。広域行政と基礎自治の双方を一体的に行うことで、より効率的で力強い行政を行うことができる。」ということのようです。 【イメージ図】
 ただ、政令指定都市内では、元々、府県の業務の多くの部分を政令指定都市が担当していますから、(政令指定都市内で、府県は多くの税収を上げながら役割が少ないので)政令指定都市内の府県の税収を、特別自治市に集約したいという思いもあるのだと思います。

 これに対して、橋下知事の提案する特別自治市構想とは、何なのでしょう?
 記事から読み解くと、
〇府域全体を(府県と市町村の権限と財源を持つ)特別市にする。
〇その特別市の下に今の基礎自治体を置く。
〇大阪市は8〜9の基礎自治体に分割して置く。
 ということのようです。

 指定都市市長会の「特別自治市」は広域行政と基礎自治を一体的に行うことが本旨です。それに対して、大阪府全体を特別自治市にしてしまうと、大阪府全体では一体的な基礎自治を行うことができません。それを補うために、基礎自治体を置くとしてしまっており、本末転倒です。
 指定都市市長会のいう特別自治市でも、現行の行政区は存続するでしょうし、権限の強化は図られるかもしれませんが、基礎自治の一体性を損なわない範囲にとどめられると思われます。

 つまり、橋下知事の提案する特別自治市構想は、広域行政と基礎自治の一元化もなければ、基礎自治の一体性もないなど、指定都市市長会の特別自治市とは、全く別物ということが分かります。

 では、橋下知事の提案する特別自治市構想とは、どういうものと考えれば、良いのでしょうか?

 大阪府域全体を市域とする特別自治市とは、(大阪府民全体を代表する自治体という意味で)大阪府と同じものです。その大阪府が、府県と市町村の権限と財源を全て持つとしている訳です。
 ただ、これだけを以って、府集権主義と捉えるのは早計です。特別自治市(=大阪府)の中に基礎自治体を置くとしており、特別自治市(=大阪府)と府下の基礎自治体がどのような関係になるかが、重要です。ここでいう「関係」で重要なものは、業務の分担(=権限配分)、財源(=税源など)の配分、財務構造(基礎自治体が、特別自治市からの交付金依存の構造にならないか?など)などです。

 もし、業務分担、財源配分などが、現在の府県と市町村と全く同じならば、現在の大阪府と市町村の関係と同じです。(大阪市が8〜9に分市されただけ)
 もし、業務分担、財源配分などが、都構想の都と特別区の関係となるならば、大阪府域全体を特別区とする大阪都構想となります。
 もし、業務分担、財源配分は、現在の府県・市町村と同じにするが、分割する大阪市・堺市域のみ基礎自治体間の財源調整を行うとすると、現在の大阪都構想と同じになります。
 当然、もっと違った特別自治市(=大阪府)と府下基礎自治体の関係も想定できますから、「どのような関係にする」と、きちんと説明されるまで、何も分からないというのが正しいでしょう。

 橋下知事や大阪維新の会にとって、この橋下知事の提案する特別自治市構想は、今まで提案してきた大阪都構想と、どういった違いがあるのでしょうか?
〇大阪都構想で実現しようとしてきた制度設計は、そのまま実現できます。(ということで、基本的に大阪都構想と変わりません。)
〇府県と市町村の役割分担や財源配分などを、特別自治市という「ひとつの市の中のこと」として設計することができますから、大阪都構想より、更に自由度の高い制度設計が可能です。
〇大阪市廃止の大阪都構想というより、「大阪市を大阪府全部の特別自治市にする」大大阪市構想だといった方が、大阪市長選を戦いやすいです。呼び方だけで、中身は同じなんですけどね。
〇これまで再編のターゲットとしてきた、大阪市・堺市だけでなく、大阪府域全体を制度設計の対象にすることができます。
〇大阪市・堺市の分割だけでなく、市町村合併による基礎自治体の再編も同時に推し進めると思われます。
〇府下全市町村の参加同意が必要になると思われ、実現に向けた過程は、大阪都構想より困難性が増すと思われます。

 総じて見ると、困難性は増しますが、大阪都構想で目指したやりたいことは、より幅広くできるので、大阪都構想より望ましい面も多いと考えられます。

 大阪市民・堺市民にとって、この橋下知事の提案する特別自治市構想は、今までの大阪都構想と、どういった違いがあるのでしょうか?
〇総じて、今までの大阪都構想と大きな差異はないと考えるのが、妥当性が高いと思われます。橋下知事も「大阪都構想という名前にこだわっているわけではない」と、「名前が変わるだけ」と言ってるようですし。
〇ただ、都構想がいきなり分市案に変わったり、特別区の区域が広がって予算額が大きく変わったりといった、今まで思ってもみない変更が、いきなり突きつけられることが多くなりそうです。(それも、今までと変わらない・・・と言えば、変わらない。)

 大阪市・堺市以外の府民にとって、この橋下知事の提案する特別自治市構想は、今までの大阪都構想と、どういった違いがあるのでしょうか?
〇今まで9市が大阪都の特別区にという話はありつつも、大阪市・堺市以外は、大阪都構想に直接関係しなかったのですが、「大阪府下、全部特別区」と宣言したのに近いので、巻き込まれたと思った方がいいように思います。
〇結局、今までと変わらない可能性もあるし、特別区になってしまう場合もある。市町村合併を強く求められるかもしれないし、予算が今までより減らされたり、市の財産がいつの間にか特別自治市(=大阪府)のものに変わってるかもしれない。「どう変わるか」しっかりと注意を払い、「どう変わるか」と根気よく聞き続けることが必要です。
〇ただ、以前の記事「吹田区は、必要ないのか(その1)」でも整理しましたが、特別区にされたとしても、大阪市民ほどの影響にはならないように思います。(ただし、市町村合併があると別ですが。)


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posted by 結 at 23:35| Comment(0) | 概要 | 更新情報をチェックする
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