2011年08月28日

大阪市は無くなるが、大阪市役所は再編されるだけ

 大阪都構想を巡って「大阪市役所をぶっ潰す」、でも「大阪市が無くなる訳ではない」といった説明がされているように思います。(最近はさすがに、「大阪市をばらばらにする」を肯定する発言が、橋下知事や維新の会からも、ちらほら出てきてるようですが。)
 では、大阪都構想で実際どうなるのでしょうか?

 「大阪都構想とはコレだ」と、大阪維新の会のマニフェストで示されているイメージ図です。
大阪都構想イメージ01.jpg

 大阪市域では、大阪府と大阪市を再編し、大阪都と8〜9の特別区を置くとしています。(24区は基礎自治体ではないので、大阪府と大阪市と24区の再編とは言いません。)

 前回、自治体を考える要件を3つ挙げ、
〇府域
〇府域の住民が構成員
〇府域の住民を代表する行政機関
としました。
 そして、大阪府域を行政地域とし、大阪府民を構成員とし、大阪府民を代表する行政機関を持つ広域行政体としての大阪都は、組織や権限が変わったとしても、大阪府民を代表する大阪府と同じものと整理しました。

 では、大阪市はどうなるのでしょう。
 大阪市とは、大阪市域(のみ)を行政地域とし、大阪市民(のみ)を構成員とし、大阪市民(のみ)を代表する行政機関を持つ自治体のことです。
 イメージ図を見れば明らかなように、大阪都構想実現後に、そのような自治体はありません。つまり、大阪市はなくなります。

 大阪都構想実現後、大阪市域に住む住民にとっての基礎自治体とは、8〜9の特別区になります。(ただし特別区は、市町村のような完全に独立した自治体と異なり、都の下に置かれる団体ですから「基礎自治体に準ずるもの」と表現する方が正確です。)
 1つの基礎自治体である大阪市が、8〜9の特別区になるのですから、「大阪市分割」と捉えるのが妥当でしょう。しかも再編の中で、特別区は大阪都(=大阪府)の下に組み込まれ、(市町村のように)完全に独立した自治体ですら、なくなります。

 こういった明らかな内容にも関わらず、「大阪市はなくならない」と説明されてきました。どのように説明されるか、いくつか例を挙げてみます。

 ひとつはイメージのすり替えです。
 大阪市を特別区に分割することを「区長公選制」と呼ぶのがその典型です。大阪市を特別区に分割するのではなく、区長を公選にして強化し、市役所から大幅に権限を移し、市役所に残った特別区に分割できない権限を大阪府に統合し、大阪都になると説明するのです。
 そうやって、今までの市役所−区役所が、都庁−(より権限の強化された)区役所になるのだというイメージを与えます。ただし、今の区役所と特別区の区役所とは、名前が「区役所」なだけで、全く別のものだとは語らずに。

 なおこの過程で、大阪市の(=大阪市民の)資産や大阪市民が身近な行政のために支払う市民税や固定資産税などの財源の多くが、都(=大阪府)に移管され、260万大阪市民のためでなく、850万大阪府民の利益を代表する都知事に委ねられます。

 別の説明方法として、「大阪市」とは市役所組織や市役所の職員のことだとする場合があります。
 用例としては、「大阪都になっても、大阪市がなくなる訳ではない。逆に大阪市という枠にとどまらず、周辺市も含め大阪全体のために活躍してもらう。」といった感じです。

 大阪市役所(区役所や各種の市施設を含みます。)の組織は、大阪市を代表する行政組織ですが、それは大阪市民に選出された大阪市長の下にあって、大阪市民のための行政を行ってこそです。
 都庁に組み込まれ、大阪府民に選出された都知事の率いる組織や職員を、「大阪市」というのはおかしいでしょう。元大阪市役所の組織や職員であったとしても、大阪市民との直接の関係は無くなっているのですから。

 また別の説明方法として、広域行政体の大阪都が大阪市の一部の権限を継承するから、大阪市域の一体性は確保されていて、大阪市がバラバラになる訳ではないという言い方もあるようです。
 大阪市から都(=大阪府)へ移行される権限って、例えば、都市計画のように、広域行政体の大阪府が府域一律で持つべきとして、政令市制度や大阪市を否定して、大阪府へ集約しようとしている権限ですが、この場面では、大阪市の一体性の説明に使うようです。
 用例としては、「大阪市の権限のうち、地域で決めた方がよいものは、どんどん特別区へ下ろしていくが、地域だけで決めることができないものは、大阪都へ移行して、都市圏(=大阪府域)で一体的な行政を行っていく。だから、大阪都になっても、大阪市は十分に一体性を持っている。」といった感じです。

 この理屈でいうと、現在すでに、大阪市、堺市を除いて、大阪府内は一体の「市域」という不思議な話になってしまうのですが。
 大阪市がひとつの市であるために何が必要か、ということを無視して「一体性」という言葉を貼り付ける論法で、そのうち「日本の法律が通用しているから」「日本語が通じるから」大阪市が特別区に分割されても、大阪市は一体だと言い出されるかもしれません。


 次に「大阪市役所をぶっ潰す」を考えます。
 言葉のイメージからすると、大阪都構想が実現すると市役所が無くなって、市役所の職員たちは路頭に迷い、泣いているという想像もできますが、当然そんなことはありません。

 (概ね一体のままと民営化や他団体との統合などの組織変更されると思われる地下鉄、水道、消防などを除くと)淀屋橋の市役所の数分の一の職員だけ都(=大阪府)へ移って、残った市役所の職員(区役所や、図書館などの市の施設の職員も含みます。)は、それぞれの特別区の区役所へ配属になるだけです。

 大幅な組織改編というのは確かにあるとでしょうが、住民登録の窓口に座ってる人は多分今までと同じです。国民健康保険の担当者も、今までと同じ仕事をしています。
 大阪市を特別区に分割しても、基本やることは同じなので、(市役所と24区が一体としてきた仕事が)8〜9の特別区の区役所に分割されて効率が悪くなるだけで、大きくざっくりと捉えると、あんまり変わらないのです。

 予算が減ったり、分割で効率が悪くなるなどで、一部の行政サービスを止めるとか、特別区の区内に3つも4つもある図書館や保健所、区民ホール、運動施設などの施設を閉鎖しようとかという話は出てくると思いますが、(定年などの退職者で職員を減らし)現在の担当者は、別の部署に移るだけです。仕事に責任感のある職員さんは怒るでしょうが、困るというのとは、ちょっと違うような。
 どちらかというと困るのは、アテにしている行政サービスが廃止される市民の方って思っています。

 市役所の組織や職員のこのような変化を、どのように表現するかは、ひとによるのだと思いますが、わたしには、組織の分割・再編という言い方が、一番近いように思います。


(追記)
 大阪都構想の実現過程で、大阪市職員を大幅にリストラするなら「大阪市役所をぶっこわす」に近いイメージなのかもしれません。そういった視点で、大阪維新の会が現在提案している職員基本条例案をどう考えるか書いておきます。(職員基本条例案・教育基本条例案は、教育への政治介入など、色々・相当問題はありそうですが、この記事のテーマと外れますので、取り上げません。)

 職員基本条例案は、メディアではリストラ条例案とも名付けられ、組織再編により発生した余剰人員をリストラできるようにすると、盛んに発信されています。
 ただ、わたしとしては、以下の理由で、連呼されているようなリストラがされるかは懐疑的で、大阪都構想の実現に伴い、大幅なリストラが行われるという前提には立ちません。

〇今回の職員基本条例案は、地方公務員法に副った職員規定を、今までの内規ではなく条例化するものです。(逆に言えば、それに止まります。)当然、地方公務員法、ましてや労働基準法の制約を受け、雇用者は被雇用者に対する責任を負います。
リストラが可能か、不可能かといった法律論をここで論じるつもりはありませんが、メディアで盛んに発信しているような「組織再編して余剰人員が出たから、ばっさりクビを切ればいいんだ」といった調子の、大幅なリストラは困難と考えます。(公務員は雇用保険に加入していないとか、再就職先あっせんをすると天下りになってしまうとか、法律論以外にも、民間よりハードルの高い点もあります。)

〇こういった条例案の提案が、橋下知事が知事2期目を決め、府の具体的な組織再編案を作成し、それを実現するためにの条例整備として出してきているならば、それなりに受け止めるのですが、現状は抽象論を振りかざすのみです。
大阪維新の会は、マニフェストで職員数の3割以上削減を掲げていますが、以前の記事「大阪維新の会マニフェスト雑感(その2)」で整理した通り、3割削減とは「水道、交通、ゴミ、港湾、消防等の経営形態の変更」だけで実現可能な数字で、組織再編による余剰人員の削減(マニフェスト上の表現は、二重行政解消による職員の削減)については、目標数字も目標時期も避けています。新聞の見出しを取るための「3割削減」という数字は高らかに掲げても、実人員の削減には腰が引けていると受取っています。

〇橋下知事は、昨年も秋頃にも、府職員のわたり制度廃止、現給保障廃止、職員の給与カット・ボーナスカットの継続を(組合との交渉入り前に)盛んに発表し、〇千人の降格、〇万円の給与減額と大胆な職員改革を繰り返し発信しました。しかし、その決着結果は、ほとんど発信されていません。その間に、橋下知事の大きな成果と語られることに多い職員給与カットはほとんど発信されないまま緩和され、削減額は350億円から、270億円へ引き下げられました。(以前の記事「大阪府の行政改革って、メディアイメージと違うかも」参照)
今回の発信も、現時点で発信されているイメージと現実の運用とは、大きく乖離している可能性があります。

〇現時点で、職員・教育基本条例案を出してきて、盛んに発信しているのは、選挙目的の「公務員叩き」の意図を強く感じます。(大阪都構想だけが争点になって深い議論になるのを避けたり、咲洲庁舎の失政批判をかわす意図もあるのかもしれません。)維新の会が過半数を占め、いつでも通せる府議会では、熟議を行うため、9月議会に提出し、採決は選挙のある11月議会まで議論を引っ張るのだそうです。
選挙目的の公務員叩きであるなら、(現実には実施できなくても)大袈裟なリストラを語るほど選挙に向けた支持を期待できますし、実行段階でそんなリストラをしないなら、違法を問われることもありません。


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posted by 結 at 21:56| Comment(5) | 概要 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
自分が属している大阪市というコミュニティーをつぶす、と言っている勢力を、大阪市民が強く支持している、というのを奇妙に思っていたのですが、みんな「大阪市役所はつぶすが大阪市をつぶすわけではない」という維新のおかしな主張だまされているのでしょうか?むしろ、大阪市という自治体はつぶすが大阪市役所という機構は再編されて残る、とぼくには見えるのですが。統一地方選での維新の大勝利は「それが茨の道であったとしても、大阪市に頼らずに区で独立してやっていくんだ」という大阪市民の自治への強い気概を見せている、と解釈されても反論できないですね。逆に大阪市を維新というヨソ者の手によって破壊させようとしている大阪市民は自治の意味がわかっていないのでしょうか?自治というのは役所だけが行うものではなく住民が自ら行うものであるという点についてもっと有権者に考えさせる報道・教育の機会があればよいのですが…
Posted by あさださとし at 2011年08月29日 19:10
冒頭の維新マニフェストのイメージ図を改めて見ると、騙しの手法の図であることが鮮明に分かりますね。
多くの府民・市民の方々に気付いてほしい!
Posted by ポン at 2011年08月31日 12:39
あさださとしさんへ

「大阪市役所はつぶすが大阪市をつぶすわけではない」という橋下知事のコメントを、メディアは垂れ流すだけですから、多くの人が深く考えることもなく、そのまま受け止めているのではないでしょうか。「大阪市とは何か」という議論すら見かけず、この記事のために議論の整理が必要でしたから。

>維新の大勝利が「それが茨の道であったとしても、大阪市に頼らずに区で独立してやっていくんだ」という大阪市民の自治への強い気概を見せている

という理解はありえないです。昨年8月橋下知事が大阪都構想に変えて、大阪市の分市を言い出しましたが、区間格差が試算され特別区の大半が赤字になると示されると、すぐに撤回することになりました。以後、橋下知事と維新の会は、大阪都構想について検証可能な情報は示しません。
区長公選制への期待は、今までの行政サービスが保証される中で、区役所へ自分の希望を言えば、実現して貰えるようになるという「どう考えても実現しない期待」に立脚しています。
区の単位で決めたいが、区の単位の財源では足りないので財源調整をという考え方は、基礎自治体の単位について意図的に混同した議論です。


ポンさんへ

いらっしゃいませ。コメントありがとうございます。
賛成・反対はそれぞれ、あっていいと思いますが、大阪都構想として提示している事実についての客観的な認識と、そこから考えられるメリット・デメリット程度は、みんなに認識して欲しいですね。

メディアに情報を評価し府民・市民へ情報提供しようとする姿勢が見られず、一方の宣伝活動に終始するか、一般のニュースでも、知事・市長の対立を面白がるだけで、コメントを垂れ流しに終始していることは、とても残念です。
Posted by 結 at 2011年09月01日 05:50
>大阪都構想について検証可能な情報は示しません
>基礎自治体の単位について意図的に混同

橋下維新の会が有権者にそこまで不誠実な態度をとって権力を握ったとして、その後の予想がまったくつきません。11月の市長選挙・知事選挙で維新の会が勝てば無理・無駄・無意味の都構想を実現させるために行動を起こさざるを得ません。橋下が市長になったらなおさらのことです(橋下は市長選には出馬せず次の衆院選を狙っていると思いますが)。有権者をだましてまで大阪都つまり大阪府に権限と財源を集中させていったい誰が喜ぶんでしょうか?橋下の次の知事でしょうか?次の知事の時代にはまだ大阪都は実現できていないでしょうし。橋下の次の知事は大阪都構想を実現に向けて動かさなければならないという大きな職責を背負うはめになりますが、はたしてなり手がいるのでしょうか?維新の会だけが混迷してくれるならいいのですが、大阪市全体が混迷に突き落とされるのは一市民としてなんとかして避けたいものです。
Posted by あさださとし at 2011年09月04日 10:16
あさださとしさんへ

あなたが、その未来を望ましくないと思われるのならば、あなたができることをされることをお勧めします。
Posted by 結 at 2011年09月06日 03:54
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