2011年08月07日

都に業務移管があっても、市税を都税にする理由にはならない

 以前の記事「大阪都の特別区移行後に見込まれる各市の予算額は」で大阪市が大阪都の特別区になると、市税などの税源が都(=大阪都)に移管され、都(=大阪府)から特別区へ配分される予算は、住民30万人当たり800億円として、大阪市域の特別区全部で6734億円と(現状の1兆5500億円に対して)43%にとどまる(大阪市の予算の57%:8800億円が、都(=大阪府)の予算にされる。)と指摘しました。

 このようにいうと、「大阪都になったら、大阪市が今まで担当していた広域の仕事を都がやるようになるのだから、大阪市の税金や予算が都のモノになるのは当たり前」という意見があるように思います。
 この意見に対する反論が今回のテーマです。「大阪市の広域の仕事が都に移るなら、市の税金の一部を都の収入にするのは妥当か」と「大阪市の広域の仕事が都に移るのに伴って、都へ57%の予算が移されるのは妥当か」です。

 まず、「大阪市の広域の仕事が都に移るなら、市の税金の一部を都の収入にするのは妥当か」です。
 大阪維新の会のマニフェストでは、特別区は「中核市なみ」で府県の業務を担当するとされていますので、政令市と中核市の差分の業務程度が、大阪市から都(=大阪府)に移行することになります。
 では、大阪都構想と関係なく、政令市が中核市に移行し、差分の業務を府県に移管する場合、どのように財源を移すのでしょうか?残念ながら、事例はなかったと思います。
 ただ、逆のケースが参考になるように思います。最近も堺市が政令市になたように、中核市が政令市となり、差分の業務を府県から政令市へ移転する場合、財源をどのように移すかです。

 中核市から政令市になると、府県から政令市と中核市の差分の業務を引き受けますが、この時、法人府民税や事業税といった府税の一部移譲といったような税源の移行はありません。(道路特定財源を除く)
 道路管理に付随する地方揮発油譲与税など(道路特定財源について)一部が、譲与税や府からの交付金として移行されますが、業務量との対比でいうと、とても十分とは言えないものです。

 その代わり、国からの地方交付税が、財源調整を果たすことになります。
 市と府県が両方とも地方交付税交付団体の場合が分かりやすいですが、府県で業務が減れば、その分府県の地方交付税が減り、市の業務が増えれば、その分、市の地方交付税が増えて調整されます。
 ただ、地方交付税は収入が不足する時に交付されるものなので、府県も市も財政が豊かで不交付であれば、何も調整されませんが。

 堺市は平成18年に中核市から政令市になったところですが、大阪都の特別区にされて、業務範囲が中核市なみとなり、差分の業務が都に移行されるからと、財源として、法人市民税と固定資産税を業務に付けて寄越せと言われたとすると、そりゃあ堺市は怒るでしょう。(政令市になって受取るようになった地方揮発油譲与税を、道路管理がなくなるなら都へ移行というのは、異存ないでしょうけど。)
 この関係は、大阪市の場合も(政令市になったのが、ずっと昔というだけで)同じことです。

 もしかして、東京都では、市町村税である法人市民税と固定資産税が都税とされ、45%を都の取り分としてるから、大阪都でも同じように、市税を都の収入にしてもおかしくないという意見はあるのでしょうか?
 東京都の都税制度は、特別区が一般の市町村より少ない業務しか担当せず、都が一般の府県の業務に加えて、一部市町村の業務を担当するため、市町村の財源を都と特別区で分けるのだそうです。

 大阪都構想では、都は一般の府県より大幅に少ない業務しか担当せず、特別区は一般の市町村の業務に加えて、大幅に府県の業務を担当します。
 東京都の都税制度の考え方を採るならば、都と特別区で府県の業務を分担するのですから、都と特別区で配分するのは、市税ではなく、法人府民税や事業税などの府税の方になります。(少なくとも、都が市税の一部であれ、都の収入にする理由など見当たりません。)

 以前、大阪維新の会の府議さんに、都と特別区への予算配分の財源に府税は含めないかと聞いたことがあります。きっぱりと否定されました。
 大阪都構想は「府と市の財源を結集する」そうですが、これは、都が市町村の財源を自由にするという意味で、(特別区が府県の財源を自由にするという)逆の意味は、全く含まれていないようです。


 次に、「大阪市の広域の仕事が都に移るのに伴って、都へ57%の予算が移されるのは妥当か」です。

 先日7月22日に、大阪市議会の大都市・税財政制度特別委員会で、次のような質疑がありました。
 大阪市が大阪府に代わって、どれだけの財源負担をしていて、どれだけ税の移譲がされるべきかという趣旨の質問として、大阪市が政令市として大阪府に代わり行っている事務にかかる大阪市の負担は?という質問がありました。
 これへの回答は、一般財源等所要額は、平成22年度予算ベースで564億円。うち国・府道にかかる地方揮発油譲与税の譲与や軽油引取税交付金の交付など120億円は措置されているが、差し引き444億円は、税制上措置されていない・・・というものでした。

 少しベースが違いますが、平成21年度決算ベースで、一般財源額合計は約7300億円です。564億円は、このうちの7.7%を占めるに過ぎません。
 7.7%は、政令市と一般市の業務の差分に対する割合ですから、政令市と中核市の業務の差分であれば、これよりも更に小さいことになります。

 どう考えても、政令市と中核市なみの差分の業務を都に移行するからといって、大阪市の予算の57%を都の予算にしてしまう正当性があるとは思えません。


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posted by 結 at 04:26| Comment(2) | 財務 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
大阪市の政令市としての特権を返上させて中核市並にしたとしても、大阪都構想の言うワン大阪・財布を一つに、というのは実現のしようがないということですね。そこまでは考えたことなかったです。特別区の権限を中核市並にする、と言っている一方で、国民健康保険・介護保険・生活保護の権限は都に吸い上げる、と言ってみたり、8〜9の特別区をつくっても旧24区に地域自治区を置く、と言っていたり、最近は維新の言うてることがばらばらで迷走していると思っているのですが、こんな財源配分の根本的な部分に無理があるということは、市長選で維新が勝っても新しい市長のもと、大阪都構想はますます混迷を深めるでしょうね。大阪市民にとっての不利益が最少でおさえられることを祈るしかありません。
Posted by あさださとし at 2011年08月07日 10:37
あさださとしさんへ

 大阪都構想が実現されるとしたら、財布はひとつになります。(市の財源も都が握ります。)ただ、府の財源は府県業務のため、市の財源は市町村業務のためという、地方自治制度の大原則に反しているだけです。
 通常、法制化を行う場合、法案を提出する総務省は、こういった制度の原則はしっかり踏まえますから、なかなか衝突しそうに思います。
 ただ、そういった他力本願な話だけではなく、市民が自らの生活に影響しそうなことは、ちゃんと知って判断した方がいいんだろうなと思います。
 本来、こういったことは、メディアがニュースを流す際に合わせて解説すべきと思いますが、そういう現状はないので、市民が自分で汗をかくしかありません。

 それと、政令市は「特権」なんて持っていないと思いますよ。府県の仕事を(財源の裏付けも乏しくても)たくさん担当してるだけです。
 市町村は、学校の運営をしているから「給食を導入するかどうか」を決められます。仕事を担当するなら必要なことです。それは多分「権限」という言葉のイメージとは、かなり違うように感じています。
Posted by 結 at 2011年08月09日 03:28
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