2011年07月21日

吹田区は、必要ないのか(その2)

 前々回の続きです。(前回の「大阪都の特別区移行後に見込まれる各市の予算額は」の内容も、一部に使用します。)

 以前の記事で書きましたが、堺市を大阪都構想へ参加させることに反対した堺市・竹山市長は、橋下知事から「絶縁宣言」をされましたが、4月に大阪維新の会初の市長となった吹田市・井上市長の「吹田市を吹田区にする必要はない」の発言に対してはスルーで、事実上容認のようです。
 どうして、このような違いが出てくるのでしょうか?

 大阪都へ移行による、「府知事」の立場から考えた効果(特に特別区と関係するもの)を、次のように整理してみました。

大阪府にとっての大阪都移行の効果評価.jpg

(1)二元行政の解消
 まず、「二元行政って何?」からですね。
 大阪府が、大阪府域の広域行政を行うのに、大阪市のような巨大な市があっては「やりにくくて仕方がない」ので、邪魔な大阪市は解体して、府知事が大阪府域でただひとりの指揮官として、一元的に行政を行える体制にしたいって話です。

 標的の大阪市が「◎」は当然ですね。
 「二元」という言葉のチョイス(「二元行政」って、大阪市憎しの造語と理解してます。)からも分かるように、大阪市以外は相手にしていません。堺市とさほど規模の変わらない東大阪市の解体が、一度も話に出たことがないことからも、堺市も、吹田市など9市も、二元行政とは関係ないようです。(つまり、「×」の評価。)

(2)府市権限配分整理
 大阪都構想では、特別区以外の市町村を含めて、府の業務範囲と特別区や市町村の業務範囲を、現行法による分担と変えるとしています。
 特別区や市町村には、一般の市町村の業務範囲に加えて「中核市なみ」の範囲で府県の業務を担当させるとしています。(都は、府県の業務のうち残ったてっぺんの部分だけを担当します。)

 吹田市など9市は、東大阪市以外は少し業務範囲が広がります。ただ、特別区になっても、ならなくても、結果的に担当する業務範囲は変わらないので、府知事から見て、この点で9市の大阪都への参加は重視されないと考えます。(評価は「×」)

 大阪市・堺市は、業務範囲を政令市から中核市なみにする場合、一定の権限を大阪府へ移すことになります。ここで、府に移る権限は、都市計画の決定や港湾事業など、府知事として特に欲しい権限です。この権限を府下一律に府が所管できることは、府知事にとって、とても望ましいので、堺市だけが欠けることも、望ましいことではありません。評価は、大阪市・堺市共に「◎」です。

(3)財源移転
 財源移転を考えた時、前回の記事でも見たとおり、大阪市からの財源移転が圧倒的なので、大阪市は「◎」です。

 特別区の予算を30万人当たり800億円程度とした時、府知事からみると、堺市も吹田市など9市も、ぼちぼちの増収(財源移転)を期待できます。
 ただ、堺市はこのままの予算額で押し切るつもりのようですが、9市に参加を求めるなら、特別区の予算額を増額し、現在の各市の予算より減らさないことは最低限必要でしょう。
 このため、堺市は少しですがプラス評価「△」、吹田市など9市は、府側の減収となるので、マイナス評価「×」とします。

(4)市町村統制
 特別区は、一般の市町村よりも独自の税源が乏しい(又は無い)ため、都(=大阪府)からの予算配分に大きく依存します。このため、予算配分を通じて、都(=大阪府)は特別区に対して、強い影響力を持つことができます。
 この効果は、地域によって評価を分ける理由もありませんから、大阪市、堺市、9市共に、効果ありで「〇」の評価です。

(5)資産・事業移転
 橋下知事から、大阪市の事業や資産を、どのようにしたいと、色々話があがります。
 少し前の記事を繰り返すと、地下鉄事業や湾岸開発のための南港・北港の埋立地、関西電力株などなど。資産や事業の接収対象として、大阪市が「◎」は当然と思います。

 堺市や吹田市など9市の資産や事業で、「これは広域の事業であるべきだ」の接収宣言されたのは、聞きません。無いとは言えませんが、大阪市ほどあからさまに狙われてはいないようなので、堺市と吹田市など9市は、無さそうだけど分からないという意味で「?」かなと考えます。

(6)二重行政の解消
 わたしは「二重行政の無駄」がそもそもあるのか自体、疑問に思っています。
 「政令市が府のエリアで、広域行政権限を持つことで発生する無駄」は、府と市で担当するエリアが明確に分かれていて、それぞれ十分な規模があるので、統合効果は限定的です。(ゼロではないですが、大阪市を分割するコスト増の方が遥かに巨大です。以前の記事「二重行政が少しでもあるなら、大阪都にすべきなのか」参照)
 「府市による競合施設の設置」も、本当に無駄なのか、都制度が無駄の解消になるのか議論があるところです。さらに、橋下知事の「無駄だ!」という主張をそのまま受け入れたとして、無駄遣いをしている一方の当事者が「オレ、大阪市の生意気なツラ見てると、ついつい張り合って無駄遣いしちゃうんだよね。大阪市をボコボコに潰してやって、二度と生意気なツラ見せられないようにしたら、オレ無駄遣いしなくなると思うんだよ」と言ってる話なので、問題解決を目指すというよりも、言いがかりに近いと受取っています。

 ただ、この記事の評価は、府知事の立場でどう評価しているかを推測するものです。
 それでも、「二重行政の無駄」の言葉は勇ましいのですが、その効果は語られません。普通、大きな無駄の解消を言うなら、その効果を分け合って「みんなで幸せになろうよ」と語られるはずですが、特別区の予算は増えないのかの問いには、きっぱりと否定しているようです。マニフェストも色々書かれていますが、結論は「大阪市の予算を名古屋市なみに削れば、4500億円浮かせられるので、成長戦略=大型公共投資の資金になる」としていて、二重行政解消の効果はアテにされていません。

 橋下知事が「二重行政の無駄」を言ってるのに、府知事が効果を期待してないと決め付けることもできませんが、ただスローガンとして便利だから言ってるだけとも受取れ、本気で信じてるかには疑問が残ります。
 そのため、大阪市の評価は「?」にします。こんな話なので、堺市、吹田市など9市は「×」の評価です。


 このように整理したうえで、この表を見てみると、大阪市が標的なのは歴然です。大阪市は潰したい相手であって、欲しい権限、財源、資産、事業をいっぱい持ってますから。

 表でみると、吹田市など9市を、府知事の立場で特別区にしたいと強く求める場合とは、予算配分を通じた、市町村統制を重視する場合だと分かります。吹田市が特別区にならないと宣言し、これを容認するとすれば、「予算配分を通じた市町村統制」に重きを置いていないと考えられます。
 この点は、二通りの解釈ができると思います。
 ひとつは、特別区や市町村の自由な政策決定を尊重し、都(=大阪府)の意向に副って、政策決定を行うことを求めていない場合です。
 例を挙げると、今年2月頃に大阪府は中学校の給食導入を推進するため、給食施設整備のための補助金制度を設けました。中学校の運営は市町村の役割なので、学校給食実施を決定も市町村の権限です。市町村の自由な政策決定を尊重するとは、補助金制度の周知だけして、後は市町村が自由に判断してねとすることです。(市町村へ府の政策に従って給食導入を行うように求めたり、圧力を掛けたりしないことです。)ただ、現実に橋下知事が採った行動は、あまり「自由に決めてね」とは言えないものでした。
 もうひとつの解釈は、「特別区への予算配分」という手段に頼らず、別の方法で市町村統制を行おうとしている場合です。
 わたしは、後者と考えますが、こことは別の議論になります。

 (吹田市など9市には求めないのに)堺市に、府知事の立場で特別区にしたいと強く求める場合とは、「府市権限配分整理」を重視している場合です。
 現状、大阪府は、大阪市・堺市の都市計画の決定権がありません。府知事としては、ぜひ欲しい権限です。大阪市を解体して特別区にし、大阪市域の都市計画決定の権限を府知事のモノにできたとしても、堺市が政令市のまま残ってしまうと、堺市域が手の出せない地域として、ぽっかり空いてしまうことになります。堺市を何としても特別区にしようと、橋下知事が圧力を加えているのは、このように府下で手を出せない地域が残らないようにだと、解されます。
 政令市は別に大阪府だけのことでなく、府県の一部の権限が政令市に及ばないのは多くの府県で起こっていることなので、堺市だけであれば放っておいたかもしれません。ただ、折角、大阪市を潰してまで、欲しい権限を取り上げるのに、堺市だけぽっかりと残るのは許せないのでしょう。行きがけの駄賃で、歴史ある市を解体しろと迫られる堺市民も、いい面の皮と思いますが。


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posted by 結 at 22:36| Comment(0) | 概要 | 更新情報をチェックする
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