2011年07月07日

大阪都の特別区移行後に見込まれる各市の予算額は

 前回記事で、今回記事は(大阪都構想への参加を断ったことで)「堺市と吹田市で、橋下知事の対応に、何故このような差がでてくるのか」としましたが、この点と前回記事の「吹田市民にとって、大阪都構想への参加は必要ないことなのか?」を考えるために、ひとつ情報の整理をしておきたいと思います。それが、特別区移行で、各市の予算額は増えるのか・減るのかということです。

 前回記事で、吹田市民にとって、特別区になる大きな影響のひとつは、「吹田市民の市税などの財源が都(=大阪府)に移管され、都(=大阪府)からあてがわれた予算で行政を行うことになる」ことだと、しました。ですから、「吹田区」の予算額がどうなるかは、気になるところです。
 また、府市全体での予算額の総額は基本的には変わりませんから、吹田区の予算額が増えるなら、都(=大阪府)の予算額は減ることになり、府知事の立場からも、気になることになります。

 大阪都移行後の特別区の予算額を予想するに当たって、よく議論に出るのは、東京都の都税制度でいう配分率です。東京都では、市町村税のうち法人市民税と固定資産税が都税に移行され、55%が特別区への配分、45%が東京都の取り分となります。(東京都では、個人の市民税などは特別区の税として基礎自治体に残されています。)この配分率55%が、大阪都では何%がよく問われ、橋下知事はTV出演時などに問われても、答えるのを拒否しています。

 (この配分率を前提とした試算も以前の記事でしましたが)わたしは、現在この考え方を採りません。
 橋下知事の特別区の予算額に関する見解を聞いていると、「他市なみとして〇〇億円程度」という説明をよくされます。つまり、東京都と同じような配分の制度を作るとしても、結果の予算額を先に決めて、その予算額を配分するには、配分率は何%にする必要があるかという考え方を採ると思われるのです。
 そして、この方法を採る場合、都税移行の税目を検討する意義も薄いと思われます。予算額全体の半分以上を配分額が占めるなら、一部の税目が特別区の独自財源として残っても、予算が都(=大阪府)からの配分に全面的に依存するのと、何も変わらないからです。

 では、実際の配分額の想定です。
 今年9月に報道された大阪都構想大綱(案)では、「大阪市に交付される交付税、固定資産税、法人市民税、特別土地保有税を財源とし、その61%を特別自治区に配分すれば、各特別自治区は中核市並みの財源を有することになる。」とされ、特別自治区の区長は1000億円規模の財源を扱うとされていましたので、概ね1000億円と捉えるのが妥当性が高いと思われます。

 なお、今年11月に発表された大阪都構想大綱では、「大阪市に交付される交付税、固定資産税、法人市民税、特別土地保有税等を財源とし、その約6割を特別自治区に配分すれば、各特別自治区は中核市並みの財源を有することになる。」とされ、特別自治区の区長は「特別自治区の執行機関として区長を置く。区長は特別自治区の住民が直接選挙する。」とのみ記述され、「1000億円規模の財源を扱う」の記述は外されました。
 これについては、財源規模などの考え方が変わったというよりは、明確な数字を挙げることで問題も明確になるので、記述から外したと捉えます。
 勿論、特別区の予算規模は、昨年のタウンミーティングでは500億円〜600億円とされたり、今年1月のマニフェストでは数百億円とされたり、その時々で変わりますので、今現在、もっとも妥当性の高い予算規模と考えるのが、良いように思います。

 人口30万人当たり1000億円(ケース分けとして600億円〜1100億円も掲載)の予算があてがわれた時の、各市の予算の増減額は、次の通りです。(人口30万人当たりを基準にしているので、大阪市の分割数が8でも9でも変わりません。)

特別区移行による予算増減_R3.jpg
 1000億円想定として、大阪市以外は2割前後の予算削減となります。大阪市は半減近いの46%減です。また、都(=大阪府)へ移転される予算額は約7275億円ですが、大阪市がそのうち8417億円を占めて、都の増収と他市の黒字部分の大半は、大阪市民の予算削減で生み出されることが分かります。(黒字市を除く赤字市のみで、赤字額の96%を大阪市民が負担します。)

 なぜ大阪市民は、どう考えても大阪市民に不利な予算配分が想定される大阪都構想に反対しないのでしょうか。(当然、わたしは含めて反対する市民はいますが、大阪維新の会は4月の市議会選挙で3割の得票を得ています。)
 その理由として、次のようなことが考えられます。
〇予算額を明確にしないこと。(最初に挙げたように、府・市議選マニフェスト記載の数百億や市長選マニフェスト記載の「中核市並みの予算編成権」では具体的な算定がやりにくく、不確かな試算しか示せません)
〇特別区になった時、特別区が担当する業務に現状掛かっている予算額が〇〇〇億円で、特別区になった時に、予定している予算額が×××億円という、当たり前の予算比較の提示を徹底的に避けていること。
〇大阪都移行に当たり、大阪市の業務の一部が都(=大阪府)へ移管されるので、予算も移管されるという説明が受け入れ易いこと。(ただし、業務移管規模が一般財源ベースで330億円に対し、移管される財源は2436億円が想定されるので、全く釣り合っていないのですが。)(また、政令市から中核市への移行だと一般会計事務は業務量としては、大して移管されないし、府県の仕事を政令市で担当するのに財源の配分はほとんどないのに、府県の仕事を戻すときに市町村の財源を付けて返すのは、おかしいでしょう。)
〇「今の区役所の予算は2億円。これを数百億円にするんです。」といった、何に対する予算なのかを無視した「意味のない比較」で一般市民を誤魔化す説明を、メディアもそのまま垂れ流す傾向がある。(政治的思惑で、ちゃんとした知識のない市民に嘘や誤魔化しの説明をすることがあっても、メディアなどがきちんと正せばいいのですが、現状は機能していないようです。)

 ということで、話を戻します。

 吹田市民として見た場合、1000億円の予算額では、予算が1割程度増える可能性があります。中核市なみとして「吹田区」が担当する仕事が増えることも含めながら、どのような予算額が提示されるのかを、注視することが重要です。
 ただし、予算額がちょこっと増えても(都からあてがわれ予算で行政を行うような)「特別区なんて真っ平」という方は、そんな必要もありませんが。

 府知事の立場から、予算額の増収という観点で見た時、とにかく増収額の大半を負担する大阪市が大切です。大阪市以外を取り込もうとして、大阪市以外に赤字が出ないようにしようとすると、配分予算額をそれなりに増やす必要があるので、吹田市など9市を特別区にするのは、減収要因と評価します。
 9市を含まない場合の増収額見込みは、1000億円配分で大阪市・堺市のみの7275億円が期待されるのに対して、9市を含む場合の増収見込みは、1100億円配分で11市計の5217億円の期待と考えます。

(追記)
 大阪都構想大綱(案)によると、特別自治区は中核市並みの財源を有し、それは1000億円規模と示されましたので、記事を一部修正しました。
 なお、修正前は、800億円配分を中心とした想定として、次のように評価をしていました。

--------------------------- 以下修正前 ---------------------------
 では、実際の配分額の想定です。
 大阪維新の会が今年1月に発表したマニフェストでは、数百億円の予算を持つと書かれていますが、具体的に何百億円なのかは、書かれていません。
 昨年秋のタウンミーティングで説明されていた予算額は、特別区で500億円〜600億円ということでした。2〜3月に橋下知事が、ツイッターで流されていた時の予算額は1000億円という数字を挙げていました。
 何が正しい数字なのでしょうか?

 わたしは次のように考えます。
 昨年秋に500億円〜600億円という数字を挙げていた時は、特別区に「中核市なみ」の業務を担当させるということは念頭にしていなかったと考えます。一般市か同規模の市であれば特例市を、比較の対象にしていたと思われます。
 「中核市なみ」にすれば、担当する業務の範囲が広がりますから、予算額も多少増えるのは当然です。だからといて、500億円が1000億円になるということはなく、100億円とか200億円の増でしょうけど。

 橋下知事がツイッターで挙げた1000億円は選挙時のリップサービス的な眉唾に思っています。
 特別区の予算額が1000億円を想定しているのなら、マニフェストに「数百億円」なんて書く必要はありません。当然「1000億円程度」と書くでしょう。マニフェストでは、特別区の業務範囲は、「中核市なみ」を既に想定していますし。
 文書など、後に残る形で「1000億円」と言わない点も疑うところです。それでなくても、知事は著書で、一度発言したことでも「こういう前提があったんだ」と条件を後付して撤回するのが腕前だと書かれている方です。

 ということで、「数百億円」に該当して600億円より上ということで、700億円〜900億円程度を想定に置いてみます。算定としては、800億円を使用します。(ただし、根拠はこの程度のことなので、まだまだ動くかなと思っています。)

 人口30万人当たり800億円(ケース分けとして600億円〜1100億円も掲載)の予算があてがわれた時の、各市の予算の増減額は、次の通りです。(人口30万人当たりを基準にしているので、大阪市の分割数が8でも9でも変わりません。)

特別区移行による予算増減_R2.jpg

800億円想定として、大阪市以外は2割前後の予算削減となります。大阪市は半減以下の57%減です。また、都(=大阪府)へ移転される予算額は約1兆678億円ですが、大阪市がそのうち8795億円(82%)を占めて、都の増収の大半は、大阪市民の予算削減で生み出されることが分かります。

 ただ、この想定にひとつの疑問を持ちます。吹田市など9市を大阪都の特別区にしたい時、その主要な影響になる予算額なのに、削減を提示するでしょうか?しかも、「中核市なみ」と、現在も中核市の東大阪市以外は、業務の範囲まで広がるのに。
 わたしは、吹田市など9市を大阪都の特別区にしようとするなら、例え移行当初だけでも、今までより増える予算額の提示を行うと考えます。吹田市など9市全ての予算が増えるためには、30万人当たり予算額を1100億円まで増やす必要があります。この場合の都(=大阪府)へ移転される予算額は、5217億円。大阪市民は、この都の増収額の全てと、他市の増収額の全てを大阪市の予算を減らして、負担します。

 吹田市民として見た場合、マニフェスト記載の「数百億円」の予算額では、予算が1〜2割減らされる可能性があります。ただ、吹田市など9市を取り込もうとする場合、予算額が増えるように大盤振る舞いをする可能性もあります。中核市なみとして「吹田区」が担当する仕事が増えることも含めながら、どのような予算額が提示されるのかを、注視することが重要です。
 ただし、予算額がちょこっと増えても「特別区なんて真っ平」という方は、そんな必要もありませんが。

 府知事の立場から、予算額の増収という観点で見た時、とにかく増収額の大半を負担する大阪市が大切です。大阪市以外を取り込もうとすると、配分予算額をそれなりに増やす必要があるので、吹田市など9市を特別区にするのは、減収要因と評価します。
 9市を含まない場合の増収額見込みは、800億円配分で大阪市・堺市のみの9516億円が期待されるのに対して、9市を含む場合の増収見込みは、1100億円配分で11市計の5217億円の期待と考えます。

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posted by 結 at 02:31| Comment(6) | 概要 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちは〜。
やはりどう考えても大阪市民にとって、大阪都はマイナスです・・・。
財源をたくさんもってる市から大阪府がお金を吸い上げたいだけの政策にしかすぎないと思います。
しかも、ひとつにばれば「よくなる」という幻想つきの・・・。
判断する材料が、関西マスコミの橋下知事のコメントの垂れ流し報道、コメンテーターのいい加減なコメント・・・であるうちはもうだめかなぁって思います。
歴史を学ぶことは、過去に犯した過ちを繰り返さないため学ぶと思います。
誰か一人に権力が集中するのはほんとにコワイです。それを学んできた日本のはずなのになぁ・・・。
Posted by 北区民 at 2011年07月08日 11:23
北区民さんへ

 今回の記事は、吹田市民と府知事の立場の整理が目的で、大阪市民にとっての大阪都構想を議論するつもりはなかったのですが、吹田市民の参加を促す要件を整理してる中で、文章を書きながら言葉に詰まってしまいました。やっぱり、どうしても大阪市民が大阪都構想を支持することが、合理的に説明できなくて。

 大阪都構想は、基礎自治体の予算額だけで評価するものではないと思いますが、大阪市民が身近な基礎自治体の半分近い予算を府に移管することを支持するのが合理的であるためには、身近な行政の予算があり余っていて、もう身近な行政などどれだけ減らしても良いから、府に持っていって遣ってやってと思ってるか、府が行う事業に多大な期待を抱いていて、そのためには身近な行政が大幅に削減されても耐えるよと思っているかですよね。
 前者の身近な行政があり余ってるという認識は、市民として当然ありませんし、後者の府の事業に期待するなら、他市にも参加を求めるのが当然で、身近な行政で失うものと府の行政で得るもの(とその実現可能性)にもっとシビアじゃないとおかしい。

 何を大切に思うかで、何を選ぶか人によって変わるのは当然ですが、それでも個々人にとっては合理的な判断であって欲しい。
 今のメディア報道は、合理的判断を促すどころか、阻害してるかなぁと思ってしまいます。
Posted by 結 at 2011年07月09日 23:24
素晴らしいブログにお会いできたことに感謝します。
私はこういったことの知識がなく、橋下知事がやるなら、
大丈夫だろうと自動的に応援していました。

思考停止ですね。

しっかり勉強させていただきます。
質問させていただく場合もありますが、
宜しくお願い致します。
Posted by タイガー at 2011年07月17日 04:35
タイガーさんへ

 いらっしゃいませ。コメントありがとうございます。

 気に入っていただけたようで、嬉しいです。
 このブログは、大阪都構想で大阪市民の身近な行政サービスってどうなるのだろう?というのを、一番の関心にしています。メディアなどの切り口と少し異なる点もありますが、メディアやネットで手に入る情報が基で、特別な取材をしているとかではありません。
 ただ、そこから「きちんと考えてみる」と橋下知事や維新の会の方が語る未来に、かなり疑問に思う点も出てくるように思っています。

 質問は歓迎ですが、特別な情報を持ってる訳じゃないので、なかなかご期待に副えないところも出てくるかとは思いますが、ご容赦ください。

 どうぞ、よろしくお願いしますね。
Posted by 結 at 2011年07月18日 03:12
私は、ただの神奈川県民ですが大坂都構想は(名古屋市の中京都構想も)問題あると思います。他の県でも、市区町村の統廃合を昔やってましたが、最終的には中心部にインフラもお金も人も集中して問題になっているような(どこの県の話だったか忘れてしまったんですけど…)。

あと世の中の風潮で、既存のものは全て駄目で全部ただ壊していけば全てがいい方向に行くっていうのがあるように思うんですけど、わたしはそれがどうも納得いきません。


大坂のテレビの内情は分かりませんが、偏った報道がされるのは結局スポンサーや株主がそれを望んでるからだと思います。企業っていうものの基本理念は社会貢献じゃなくて成長なわけで、自分たちのために良いようにするのは当然ですし、ましてや印象が悪くなることはやりたくない訳で。


私の周りのテレビでもTPPや米の先物取引で、もっと詳しく報道してもいいと思えるのにあえて報道せずに、国民が気づかない内に進めるといった雰囲気があります。

なんかテレビがおかしいと思って最近本をたくさん読むようになりました。

それで、やっぱり思ったのがテレビの報道は市場主義に偏ってるなということです。

市場主義は弱肉強食なのでテレビの言うことを真に受けすぎると世の中が弱肉強食になってしまう……と今更感じています。。

私は今までは社会の情報源がほとんどテレビだったので、よくよく気をつけようと思っているところです。本はすっごくいいと思います。本の中に次の本の情報もあるし誰がどういった論調かも分かって自分が客観的になれます。

今は大坂都構想について調べてたんですが、凄くわかりやすかったです。ありがとうございました。自分の県じゃないから他人事っぽく聞こえてしまうかもしれませんが、頑張って情報発信して下さい。
Posted by 神奈川県民 at 2011年08月11日 23:30
神奈川県民さんへ

 いらっしゃいませ。コメントありがとうございます。他府県の方でも、応援いただけるのは、とてもありがたいです。
 市町村合併の問題を挙げられていますが、正直、市町村合併であれば、こんなブログはしていなかったと思います。
 大阪都構想は、府県による市の吸収合併です。東京都の存在で、何か正当化されがちですが、普通に考えれば、その歪さは理解いただけると思います。

 関西のメディアの状況は、やはり関西で体感してないと分かりにくいかと思います。一部の庶民派情報バラエティ番組が一方的な肩入れをし、ニュースは中立の振りをしながら、発信力の高い知事のコメントを垂れ流し、政策内容の精査をせずに、政局話に明け暮れてるというのが、わたしの印象です。メディアの商業主義と矛盾はしないので、スポンサーとかを特に疑うつもりもありません。
 ちょうど、2年前の衆院選前の「政権交代」報道を、政策内容にほぼ踏み込まずにやってるようなものと思ってください。「まずやってみなければ、何も変わらない。」なんて、アナウンサーが真顔で言ってるような状況です。

 小さな個人の発信としてのブログですが、今後もお付き合いいただけるなら、嬉しいです。

 また、このブログでは、コメントの書き込みは、コテハン(固定ハンドルネーム)の使用をお願いしています。(「通りすがり」、「一市民」などの捨てハン禁止。)管理人としては「神奈川県民」はコテハンには該当しません。コメント削除やコメント欄閉鎖をさせていただく場合もあります。ご協力よろしくお願いいたします。

Posted by 結 at 2011年08月13日 05:03
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