2011年07月04日

吹田区は、必要ないのか(その1)

 前回、堺市の竹山市長が、堺市の大阪都構想への参加に反対を表明し、橋下知事が「絶縁宣言」を行った件を取り上げました。
 この件から、4月25日に吹田市・井上市長の当選直後に産経新聞で掲載された、次の記事が思い出されました。振り返ってみましょう。
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橋下維新初の首長、都構想NO?「区になる必要なし」
2011.4.25 11:52

 大阪府の橋下徹知事が代表を務める地域政党「大阪維新の会」(維新)公認の新人で大阪府の吹田市長選に初当選した井上哲也氏(54)が25日、吹田市内の事務所で産経新聞の取材に応じた。

 井上氏はこの日、JR吹田駅前に立ち、通勤客らにあいさつ。その後、事務所に戻り、当選を祝って訪れた支援者らを出迎えた。

 井上氏は「選挙に勝たせていただき、感謝の気持ちと、『政治を変えないといかん』という市民の期待、責任の重さを実感する」と当選の感想を述べた。

 選挙戦で訴えた市の財政再建については「市民生活に関係のない支出面の無駄を切りつめ、収入に合わせた支出を組んでいく。府下の自治体で、最も高い職員の給料は改める」と述べ、公約としていた財政改革、公務員改革に本格的に取り組む決意を強調した。

 ほぼオール野党となる市議会については「私の政策について、白紙から説明をして賛否を判断していただきたい」と粘り強く説得していく考えを示した。

 また、大阪都構想では「基礎自治体の長として協力するが、吹田市を吹田区とする必要はない」と述べた。
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 大阪維新の会公認で初の市長である吹田市・井上市長(堺市・竹山市長は、橋下知事の支援で当選したが、当時大阪維新の会はなく、その後も所属はしていない。)は、大阪都構想について「基礎自治体の長として協力するが、吹田市を吹田区とする必要はない」と述べています。これは、堺市・竹山市長の発言と同趣旨のものですが、橋下知事は反論せず(何も語らないことで)容認の姿勢を示したと言えます。

 実は橋下知事は、かなり以前から、大阪市、堺市以外の市を大阪都構想の特別区にすることに、消極的な発言をしています。

 大阪市、堺市など11市を、大阪府と再編する大阪都構想を大阪維新の会が示したのは昨年4月ですが、橋下知事は昨年7月のTV出演時に既に、11市を対象とする案は、メディアが勝手に報じたもので、正式に発表したものではない。まずは、大阪市・堺市が対象だと発言しています。
 なお、その後も、大阪都構想が何なのか、大阪維新の会から、ちゃんと説明されないこともあって、メディアでは11市案で説明されていました。昨年末に橋下知事が出演するTV番組で11市案で説明しても、知事はすぐには訂正せず、知事が解説を迫られた時になって、訂正をしています。11市案がイメージとして都合が良いのか、メディアが勝手に報じる分には、橋下知事や大阪維新の会は放置しているようなので、余計に分かりにくくなっているようです。

 話を戻して、「大阪維新の会の市長、吹田市・井上市長が『吹田市を吹田区とする必要はない』としたのは、なぜか。」(=吹田市民にとって、大阪都構想への参加は必要ないことなのか?)ということと、「堺市と吹田市で、橋下知事の対応に、何故このような差がでてくるのか」を考えてみることにしましょう。
 今回は「吹田市民にとって、大阪都構想への参加は必要ないことなのか?」です。

 まず、「大阪都構想とは何か?」を大阪市民の立場でいうと、端的には「大阪市(大阪市役所ではない。)を分割して、一般の市より独立性に劣る特別区にすること」ですが、もう少し具体的に挙げると、次のようなことだと思います。
(1)大阪市を分割する。(そして特別区にする。)
(2)分市された特別区の業務の範囲は、政令市よりやや狭いが、一般市よりかなり幅広い中核市なみの業務を担当する。(一般市の業務に加えて、府県の業務のかなりの部分を特別区が担当するということです。それでも、大阪市や堺市のような政令市よりは、やや業務の範囲は狭くなります。)
(3)市税などの基礎自治体の財源の全部(または多く)は、分市された特別区のものとならず、都(=大阪府)へ移管され、特別区は主に、都(=大阪府)から配分される予算で運営されることになります。
(4)土地・建物を含む大阪市の資産の多くが、分市された特別区ではなく、都(=大阪府)へ移管されます。

 ちなみに、大阪維新の会が大阪都構想の柱と主張する「区長公選制」が上の説明に入っていないのは、大阪市を分割すれば、分割後の基礎自治体に、公選の首長と議会を置くのは当然だからです。
 また、このブログで強く主張する、大阪市の分割でスケールメリットを失って、現状より行政コストが上がり、行政サービスの低下が危惧されるとする点が挙がっていないのも同様です。(つまり、上記はメリット・デメリットではなく、外形的な事象を挙げたものです。)

 では、この(1)〜(4)を吹田市民に当てはめると、どうでしょうか?

 (1)の市の分割ですが、橋下知事はこれまでの発言の中で、大阪市・堺市以外の9市は特別区にしても、統合・分割はしないとしているので、関係なさそうです。(特別区になって、完全には独立した自治体でなくなるということは、ありますが。)

 (2)の特別区の業務範囲が中核市なみという点ですが、吹田市は特例市(一般市<特例市<中核市<政令市)なので、業務の範囲は現在より少し広がると考えられます。代表例でいうと、保健所を大阪府ではなく、特別区が設置するようになります。
 ただ、井上市長は、今後、中核市を目指すとしていますし、大阪維新の会のマニフェストでは、特別区にならなくても、大阪府下の市町村の業務範囲は「中核市なみ」で揃えたいとしていますから、特別区になるか、ならないかで、あまり大きな差異があると捉える必要はなさそうです。

 (3)の吹田市民の市税など市の財源の全部(または多く)が都(=大阪府)に召し上げられ、都(=大阪府)からあてがわれた予算で行政を行うことになる点ですが、この点は吹田市でも、大きく影響がありそうです。
 主に気になるのは、次のような点です。
・予算は現状と比べて、増えるのか、減るのか。
・長期的な伸びは、期待できるのか。また同時に、予算は安定的に保証されるのか。
・吹田区の区長や役人が、吹田区民のことよりも、予算を与えてくれる都(=大阪府)の意向を重視するようになったりしないか。
 なお、都(=大阪府)の影響が現在よりも大きくなるのは、確かです。過去にも、学力テスト結果の公表で府と各市の意向に差異が出てきた時、橋下知事は、知事の意向に逆らい、学力テスト結果の公表をしないとした市に対して、交付金をどうするかは考えると、TVでのコメントを通して脅したこともあります。予算をすべて、都(=大阪府)に握られるとなると・・・

 (4)の市の資産の都(=大阪府)への召し上げは、吹田市だとどうでしょう?
 大阪市の場合、これが気になるいくつかの理由があります。
・橋下知事の発言を聞いていると、大阪市の資産が欲しくて仕方がないようです。
 地下鉄は民営化といいながら、広域的観点で経営されるべきだと奪う気、満々です。
 南港の咲洲庁舎への移転に拘るように、湾岸開発にも興味があるようですから、大阪市が埋め立てた南港や北港の土地も欲しくて仕方がないでしょう。
 大阪市保有の関西電力株は、半年前は売り払って、大阪駅北ヤードを森にする資金にすると言っていました。最近は、関西電力へ脱原発を求めて株主権行使を行うそうです。

・大阪都移行の時、大阪市から都(=大阪府)へ一部の事業が移管されます。代表としては港湾事業で、事業と関係する資産も移管されます。そのため、事業移管にかこつけて、欲しい資産の召し上げがやり易いのです。

・大阪都移行の時、大阪市は特別区に分割され、24区も再編されます。そのため、どこに所属するか明確にならない資産がたくさん出てきます。どこに所属するか明確でないなら、全部、都(=大阪府)のものといったこともやり易いのです。

 これに対して、吹田市の場合はどうでしょうか?
・大阪府や橋下知事から、移譲を求められている資産や事業は、(大阪市ほどには)聞きません。
・大阪都移行の時も、府へ移管する事業はあまりなさそうですし、吹田市の資産が吹田区へ移管されるのは、明確で、当然と認識されるでしょう。

 こういったことから、資産の召し上げは、吹田市の場合、それほど心配の必要はなさそうです。(それでも、誤魔化されないか、細心の注意と監視が必要だと思われますが。)

 このように(1)〜(4)について見てくると、吹田市が大阪都構想に参加して影響を受ける主な点としては、
・「市」から「特別区」になり、完全には独立した自治体でなくなる。
・吹田市民の市税などの財源が都(=大阪府)に移管され、都(=大阪府)からあてがわれた予算で行政を行うことになる。(金額の想定などは、次回の記事で見ていきます。)

・・・といった点が、主な影響となりそうです。

 大阪市民と比較すると、吹田市が大阪都構想へ参加した場合の吹田市民への影響は限定的です。
 それでも、大阪維新の会から吹田市長へ当選した井上市長は、「大阪都構想へ参加することが吹田市民の利益だ」とは、判断されなかったようです。

 次回は、「堺市と吹田市で、橋下知事の対応に、何故このような差がでてくるのか」を考えてみることにします。

(追記)
 大阪維新の会の大阪秋の陣マニフェスト(主に知事選マニフェスト)に、大阪都構想の一貫として「府内市町村が基礎的自治体としての適正規模を実現するよう、規模が過小な自治体については近隣自治体との合併をコーディネートする。そして府の事務を積極的に移管し、合併新市が中核市として基礎自治体業務を提供できる体制を整備する。」という文言が入れられました。
 この間、中核市並みの業務を行う適正規模としては、30万人規模として大阪都構想の中で議論されているようですから、規模の小さな市町村やその周辺の市町村では、大阪府から強力に合併が推進されると思います。
 大阪都構想は府下の市町村にとって、特別区として大阪都に参加するかよりも、市町村合併を強く迫られるということの影響の方が大きいのかもしれません。


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posted by 結 at 05:24| Comment(0) | 概要 | 更新情報をチェックする
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