2011年05月18日

大阪市分割後も、住民基本台帳システムを共同運用する影響は(その1)

 先日5月7日の朝日新聞の記事の一部に次のような内容がありました。
--------------------- 引用始め ---------------------
「大阪市分割後も一部事務存続 維新の会、組合案検討」

 大阪府の橋下徹知事が代表の地域政党「大阪維新の会」の大阪市議団は6日、13日からの市議会に議員定数や市長退職金削減のための条例改正案を提出する方針を固めた。また市を特別区に分割する一方、国民健康保険などの事業では「一部事務組合」を設けることで、現在の市としての一体性を残す案も検討していることを明らかにした。

(中略)

 さらに坂井氏は、市を8〜9の特別区に分割したうえで、現在の市域に一部事務組合を設立。国民健康保険や介護保険事業のほか、中学校給食の提供、住民基本台帳ネットワークシステムの管理などを担わせる案を検討しているとした。

 一部事務組合は地方自治法に基づき、市町村や特別区が事務の一部を共同で処理するために設ける特別地方公共団体。分割後の特別区で個別に実施するより集約した方が効率的なうえ、大阪市解体のイメージを和らげ、協議会への参加を促す意図もあるとみられる。
--------------------- 引用終り ---------------------

 今回は、このうち、大阪市を8〜9の特別市に分割したうえで、一部事務組合で住民基本台帳システムなどの共同運用を検討するという点に注目してみます。

 住民基本台帳システムを共同運用する理由(=メリット)は、何なのでしょうか。

〇記事では、一部の事務で大阪市の一体性を残し、大阪市解体のイメージを和らげると説明していますが、この点には懐疑的です。内部事務の共同化で大阪市解体のイメージが和らぐとは思えませんし、次回記事の説明になりますが、この点を強調するほど、矛盾が大きくなる点も出てきます。

〇一番の理由は、経費的なことだと思います。記事では「特別区で個別に実施するより集約した方が効率的」という説明をしていますが、現状より効率的になる点はありません。大阪市全体で行っていた事務・事業を、特別区で分割して実施することで非効率になる(=コストアップになる)のを、一部事務の分割を止めることで避けようとしているのだと思います。
 特別区へ分割することによる行政経費のコストアップは、これまで何度か維新の会の方に投げ掛けてきて、コストアップはない、逆にコストは下がると主張されていたのですが、具体的な話をしようとすると否定しきれなくなったようです。

〇もうひとつ注目点としては、住民基本台帳システム(国民健康保険や介護保険の業務も。)の共同運用の単位を大阪市の現在の市域としていて、堺市域の特別区を含まないとしていることです。単に共同で運用すれば効率的になるというだけなら、特別区全体で共同運用すればいいはずです。
共同運用の単位を大阪市の現在の市域としているのは、現在の大阪市の住民基本台帳システムをそのまま使用しようとしているのだと思われます。これにより、新規のシステム開発を避けることができます。(それでも、システム修正とデータ移行には相当の費用が必要とは思いますが。)
現行のシステムをそのまま使用というのは、国民健康保険システム、介護保険システムも同様と思われます。また、市税の権限が「都」へ移管され課税・徴収などの事務だけが特別区に残されると思われる市税システムも、同様と思われます。

 次に、住民基本台帳システムの共同運用が、幅広いシステムに影響を与える可能性を見てみます。
 住民基本台帳システムは、住民を基本とする他の業務の大元になるシステムです。それと市税システムは、住民の所得情報の大元になるシステムです。国保情報や介護保険の情報も、福祉関係では必要とする場合は少なくありません。
 選挙、福祉、生活保護、子ども手当など、住民情報を基本とするシステムは、住民基本台帳システムと連動するシステムとなっているため、住民基本台帳システムや市税システムが現行のシステムを使用してシステムの共同運用を行うならば、選挙、福祉、生活保護、子ども手当など、住民情報を基本とするシステムも、同じように現行システムを共同運用することを想定します。(分割すると非効率になったり、新規開発に多大な経費と時間がかかるのは、これらのシステムでも同じなのですから。)

 次回の説明になりますがシステムを共同運用することの問題も多々ありますから、選挙、福祉、生活保護、子ども手当など住民情報を基本とする関連システムだけ、住民基本台帳システム、市税システムと手法を変えて、特別区別にシステムを構築し、別々に運用することは、理論的には可能です。

 ただ、もしもこれらのシステムを分割運用するのであれば、せめて住民基本台帳システムくらいはセットで分割運用する方が、システム構築も運用も容易です。(特にパッケージシステムの活用などを考慮すると、必須に近くなります。)そのメリットは、恐らく住民基本台帳システムを共同運用するメリットを大きく上回ると思われます。(関連システムの方が、制度も複雑で、システム数もシステム規模も、ずっと大きいと思われるからです。)
 もし、住民基本台帳システム以外の関連システムについて、特別区ごとの分割運用を検討しているのならば、せめて住民基本台帳システムの共同運用の検討をこのタイミングで発表することはしないと考えます。住民基本台帳システムの共同運用を前提にしてしまうと、他の関係システムの運用や構築の仕方を大きく拘束してしまうからです。

 このタイミングで住民基本台帳システムの共同運用を発表したということは、他のシステムも現行システムのまま共同運用の方向で考えているか、他の関係システムへ与える影響や行政システムを一部事務組合などで共同運用する問題を十分に考えていないからだと思います。どちらにしても、その後としては、他の関係システムも現行のシステムを共同運用する結果になる可能性が高いと考えます。(システムの関連性や共同運用の問題を十分に考えていないなら、住民基本台帳システム以外の関連システムも共同運用で現行システムを使用する方が、運用コストも上昇しないし、大阪都移行時のシステム開発経費も抑えられ、システム開発期間の短縮も期待できるので、メリットばかりに見えますから。)

 選挙・福祉・生活保護・子ども手当など住民情報を基本するシステムを使用する業務に、住民基本台帳、市税、国民健康保険、介護保険の業務を加えると、現在区役所で行われている、主だった業務の過半(大半と言ってもいい?)になってしまいます。
 このように一部事務組合で住民基本台帳システムなどの共同運用を検討する点から、大阪市が特別区に分割されても、現在の区役所の業務の過半(又は大半)で、現在の行政システムを大阪市域の特別区で共同運用して業務を行うと想定します。

 大阪市域の特別区で、住民情報に関わる多くの業務で行政システムを共同運用することになった時、特別区のあり方に、どのような影響を与えるかを、次回は考えてみたいと思います。


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posted by 結 at 03:46| Comment(2) | 基礎自治体業務 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
知事がされることに賛成です。教職員が起立するのは当たり前のことです。私の高校で起立を拒否し卒業式で暴れた先生が一人います。ニュースにもでました。その先生は卒業式前に各クラスに周り起立をするなと言ってまわりました。最初なんのことかわからずでしたが今、大人になって、やっと理解できました。せっかくの卒業式、楽しく学校を卒業したいと思っていたのに、その先生が暴れたことで式は中断し気持ち良く卒業とまでいきませんでした。とても悲しかったです。

式の前に起立はするなと、まわっていた時は恐怖も覚えました。その先生の顔が、あまりにも狂喜じみていたからです。そんなに君が代で起立することはよくないことなのか不安になったのを覚えています。確か、この歌は戦争なんとか言ってたように覚えています。

しかし、それは全く違いました。大人になってみれば生徒の卒業式に暴れ、大切な生徒の式を台無しにするほうが、おかしいことくらい気づくべきですよね。

これから私の子供には、しっかりと教育していきたいと思います。応援しています。これからも頑張ってください。負けないでください!!
Posted by よし at 2011年05月25日 14:55
よしさんへ

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 よろしくお願いいたします。
Posted by 結 at 2011年05月27日 06:42
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