2011年05月11日

区長公選制と「区長を選挙で選ぶ」は違うらしい

 朝日新聞によると、大阪市は、橋下知事の大阪都構想(の特に区長公選制)に対抗して、今の区役所の区長を、住民投票で選び市長が任命する「準公選制」の検討に入ったと、報じていました。

 住民投票で選んだ区長を、市長が改めて任命するというのは、まだるっこしくて、市長が権力を振りかざそうとしてるようにも見えますが、今の法律では政令指定都市の行政区の区長を選挙で選ぶとすることはできないよう(地方自治法第252条の20第3項)なので、「区長を選挙で選ぶ」にできるだけ近い方法を採ろうとすると、住民投票で選んだ区長を市長が改めて任命するという手順が必要なようです。

 ネットで流れていた情報では、大阪市の平松市長は、朝日新聞の「大阪市の区長『住民投票で』〜市が導入検討」の記事に「新聞を見てビックリした。研究会は立ち上げるが、区長を公選か準公選かに限った話ではない」と語っていたそうなので、記事のニュアンスと大阪市の研究会の意図は、かなり違っている可能性があります。また、研究会を作るとしただけの段階で、詳細をどうこうと議論しようもないので、当面は冷ややかに静観というのが、正直なところです。(例え大阪市が「区長の準公選制」を決めたとしても、「区長の準公選制いいよね。」なんて、素直に賛同する信者さんのつもりもありませんし。)

 興味深いのは、大阪市に区長公選制の導入を再三にわたって求めていたはずの橋下知事のコメントで、朝日新聞によると「(準公選の区長は)大阪市長の指揮命令下にあり予算編成権もない。」「役人の究極のだましの手口。(準公選の区長は)あくまでも市長の部下。まやかしだ」「(市長選で)勝ったら、こういう案を考える市役所の幹部連中を全員葬り去る。今の公務員制度の中でどうすれば辞めさせるか考える」と、厳しく批判したそうです。

 このコメントから、橋下知事が大阪市に導入を求める「区長公選制」とは、単に今の区役所の区長を選挙で選べればよいということではなく、次のようなことを含んでいるようです。
〇大阪市長の指揮命令を受けることなく、独自に基礎自治体の行政を行うことができる。
〇予算編成権を持つ。
〇区役所の予算額を橋下知事が批判してきた内容を考えると、区長はその人口規模の基礎自治体に相応しい予算額を持つ必要がある。
〇区長が予算編成を行うということは、その内容をチェックする区議会を置く必要がある。

 以前の記事「大阪市へ区長公選制を迫る不思議」でも書いたことですが、公選区長(公選首長)、区議会(公選議会)、予算を持つということは、区がひとつの市に近いものになるということです。
 ひとつの市に近い区(=特別区)の制度は、都道府県である東京都の下に基礎自治体を置くために設けられた、極めて特殊な制度です。政令指定都市とはいえ、あくまでも「市」である大阪市に導入を求めるのは、法律的にも、制度の趣旨的にも、矛盾しています。

 つまり、橋下知事が大阪市に「区長公選制」の導入を求めるというのは、今の区役所の区長を選挙で選べるようにしようということではなく、大阪市を特別区として分割し、都制度の下に置くようにしようということを、耳障り良い言い方をしているだけのようです。(まあ、分かってたことですが。)

 それでも、大阪市が「区長を選挙で選ぶことを検討する」と言って、橋下知事が「それは区長公選制と違う。まやかしだ。」と批判したら、大抵の人は、「どう違うの?」と戸惑われるのではないでしょうか。
 それは「区長を自分たちで選びたいと思いませんか?」という言い方だけをして、「大阪市を分割して、大阪府の配下となる特別区にしましょう。」という分かりやすい説明を、敢て避けているからです。

 ゴールデンウイークのパネルディスカッションで市民の前で、大阪維新の会の市議さんが「大阪都構想は大阪市を潰すとかではなくて、大阪市を強くして・・・」と説明されていました。こういう、まやかしの説明が、市民に大阪都構想が何なのか、余計に分かりにくくしているような気がします。

追記
朝日新聞が上記の記事を書いた翌日に、毎日新聞(2011年5月12日分)によると次の発表があったようです。

---------------------- 引用開始 ----------------------
大阪市の平松邦夫市長は11日の定例会見で、区役所改革を検討する「行政区制度調査研究会」(仮称)を設立する考えを正式に明らかにした。同研究会では市内24区を複数のブロックに分け、区役所事務の統合を検討。共通事務の省力化で各区の企画立案部門を増強し、各区の実情に合わせた住民サービスを提供することが狙い。「合区」を将来の選択肢にする可能性もあるという。10月にも中間報告をまとめ、年度末に最終案を出す方針。

 市情報公開室によると、同研究会には地方自治の有識者4人をアドバイザー役に迎え、今月中の設置を目指している。市は区政改革を掲げ、今年度から各区の裁量で使える予算を前年度の倍にするなど区長権限を強化。事務の統合により、区長を支える企画立案部門に職員を配置したり、地域で活動する団体をサポートする職員を増やしたりすることなどを想定している。

 平松市長は会見で「今年は区政元年。効率的な行政区とは何かを研究したい」と語った。
---------------------- 引用終了 ----------------------

 区長の準公選制検討を煽った朝日新聞の記事とは、随分と違う内容の発表だったようです。

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posted by 結 at 19:36| Comment(0) | 概要 | 更新情報をチェックする
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