2011年03月10日

数字で見る大阪府・大阪市の財政比較

 大阪府・大阪市の財政状況について、「大阪府は橋下知事になって、強力に行政改革を推し進め財政再建を果たしたが、大阪市はボロボロだ。」との宣伝に対し、イメージと現実は結構違うかもしれないというのが、前回でした。
 そこで、大阪府政・大阪市政の行政改革を比較できないかが、今回のテーマです。

 行政改革をアピールする資料はあるでしょうが、今回はそういったものは使いません。自分が改革した点だけを強調すれば、すごく改革を進めたことになりますし、過去の改革などを無視すれば、改革を自分だけの成果ってアピールすることになるからです。
 そこで、できるだけ、経年でみることのできる、マクロな数字から追いかけることにします。プロではないので、無意味な数字を並べるだけになってしまうかもしれませんが、その時はご容赦ください。

 歳出額や人件費の数字は、決算値(総務省公表の決算カードより)を使用します。そのため、平成23年度予算案が示されている今でありながら、平成21年度までの比較になります。

 まず、最初の比較としては、公債発行の残高です。
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 前回の記事でも書きましたが、自治体の会計は、借金をして収入を増やすと黒字になる不思議な会計なので、財政状況の一番の指針となるのは、公債発行の残高です。
 グラフを見てもらえば一目瞭然ですが、府市ともに5兆円を超える大きな借金を抱えてますが、大阪府がまだ増加傾向にあるのに対して、大阪市はゆっくりとですが、減少傾向です。

 大阪維新の会の府議さんの説明では、公債にも種類があり、一部の公債はこういった増減の比較の際には含めるべきではないそうです。
 大阪府についても、一部の公債を除けば減少傾向にあるので、橋下府政では(一部の公債を除けばという条件の下で)公債発行残高は減らしてきているとのことです。

 公債の種類やその負担をどう考えるかなどは、わたしの手には余るので、詳しくはこちらのサイト「We need the Fact」の「4.基本的情報>財政状況」をご参照ください。

 わたし自身の評価としては、
○一部の公債を除くというのは大阪府独自の指標と思われること。
○橋下知事や大阪維新の会の議員さんなど(大阪維新の会のマニフェストを含みます。)が、大阪市民が負っている借金の説明をする時に、この一部の公債も含めた額で説明していること。(知事自身が、この一部の公債も残高としてカウントすべきと言ってるわけですから。)

 これらから、大阪府の公債残高を、一部の公債を除くことで、減少傾向にあると捉えることには、懐疑的です。

 次の比較として、職員数と人件費の推移です。
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 まず、たくさん注釈があります。
○大阪府と大阪市で、大きく職員数の差がありますが、職員数の差を比較することには意味がありません。やっている仕事がまったく違うからです。大阪府は、教育部門と警察部門を除いた数字を挙げていますが、この両部門を含めると大阪府の職員数は約85000人です。
○大阪府で18年度に大幅な減員がありますが、府立病院の独立行政法人化による約3000人の削減を含んでいます。大阪市も(大阪府ほど目立ちませんが)18年度の減員のうち約2000人は大阪市立大学の独立行政法人化によるものです。組織形態が変わっただけなので、除いて評価した方がいいかなと思っています。
○大阪市と比較して大阪府の人件費の方が大幅に多いのは、教育部門と警察部門の人件費を含むためです。逆に大阪市の職員数には、地下鉄、水道など、人件費が計上されない部門を多く含みます。
○このようなことから、人数や人件費の差異ではなく、増減の傾向として捉えたいと思います。

 ふたつずつ挙げたグラフのうち、主に下の平成13年度を100とした場合のグラフを見ると分かりやすいですが、大阪府、大阪市共に、職員数、人件費を抑制するために、継続した努力を続けてきたことが分かります。
 少なくとも、大阪市と比較して大阪府の削減努力が突出しているとか、大阪府の経緯の中でも、橋下府政になっての平成20年度、平成21年度が突出しているとかいったことは、この表からは読み取れません。

 府市の削減の傾きが、かなり似通っているようにも見えますが、公務員の首切りなどできず、退職不補充で減員するしかない以上、削減のペースもそれほど差が出ないのかもしれません。

 次の比較として、歳出額全体です。
s-府市比較04_02.jpg
 人件費は、府市ともにゆっくりとですが減少傾向でしたが、歳出額全体として捉えると、大阪市はゆっくりとですが減少傾向にありますが、大阪府の歳出額の傾向として減少傾向は見られません。
 大阪市は、生活保護費などが年々増大する中、他の経費を抑えることで歳出総額の抑制を行っており、行政改革を継続して取り組んできていることが読み取れます。
 大阪府も行政改革に取り組んではいると思いますが、歳出額の総額に表れるようなものにはなっていないと評価せざるを得ません。

 なお、平成21年度の増加の理由として、大阪市は生活保護費の増加の他、緊急対策資金融資に伴う預託や定額給付金の支給に伴う増加、大阪府は中小企業制度融資の融資枠の拡大に伴う預託金の増加や国の経済対策に伴う交付金や基金を活用した事業費の増加を挙げています。
 今後の推移を見守る必要はありますが、国の施策の影響が大きいようなので、平成21年度の増加だけを捉えて、歳出が増加傾向になったとまでは言えないように思います。


 総じてみる中で、大阪府の行政改革が、大阪市より格段に優れているようには見えませんし、橋下府政になってからの20年度、21年度が、突出して、行政改革の成果が出ているというようにも見えません。
 どちらかといえば、行政改革の成果は、大阪市の方が数字として現れてきているように見えます。
 少なくとも、大阪府・大阪市の財政状況について「大阪府は橋下知事になって、強力に行政改革を推し進め財政再建を果たしたが、大阪市はボロボロだ。」と喧伝されるイメージは、現実の数字とは、大きく乖離があると思われます。

 大阪維新の会のマニフェストが謳う「橋下府政が行った改革と同レベルの行政改革」とは、大阪市のこれらの状況にどのような効果を挙げるのか、まったく分かりません。


(追記)
 記事の人件費と歳出は、記事を書いた当時は、平成21年度決算カードが公表前だったため、大阪府・大阪市の決算の公表値の20年度・21年度の増減率から、平成21年度の数字を推計していました。(特に大阪府の20年度決算の公表値と決算カードの数字に1割近いズレがあるため、このような対応を行いました。)
 平成21年度の決算カードが公表されましたので、人件費と歳出の表とグラフの平成21年度の数字を決算カードのものに差し替えました。

 差し替え前の表とグラフは、次のものです。

s-府市比較03.jpg
s-府市比較04.jpg




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posted by 結 at 03:03| Comment(0) | 財務 | 更新情報をチェックする
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