2011年02月13日

大阪維新の会マニフェスト雑感(その4)

 大阪維新の会マニフェストで大阪都構想実現まで4年というスケジュールが示されました。平成27年4月には、区長・区議会選挙を行い、特別区の立ち上げを行うのだそうです。
 これに対して、制度を作っていく困難さや法律整備の困難さを指摘し、このスケジュールを困難だとする意見があります。この意見に橋下知事は、役人の大部隊を作り2〜3年かけて制度設計を行うとしています。

 わたしは、このスケジュールは不可能に近いと考えます。わたしの指摘は、制度設計などの住民投票までの期間ではなく、住民投票による実施決定後、大阪都実現までの移行期間に問題があると思うからです。(住民投票までが大丈夫と思ってるのではないので、念のため。)
 なぜ不可能に近いかというと、様々に発生する移行作業の中で時間のかかりそうな項目を取り上げてタイムスケジュールを引けば、無理が出るものが色々あると思うからです。
 例として、問題になりそうな点のひとつ、特別区への行政システムの移行を取り上げて、考えることにします。

 まず、行政システムの知っておきたい、いくつかのこと。
○今の市町村の行政事務で、コンピュータを使わないなんて考えられなくて、システムが「どういう行政サービスを提供できるか」「役所が、どんな風に仕事をするか」を決めてしまう面がある。
○「行政システム」なんてシステムはなくて、住民基本台帳のシステムと税金のシステムは別物。税金のシステムでも、税務署のような住民税のシステムと不動産屋のような固定資産税のシステムは別物。多分、数十とか数百?のシステムを使う業務があって、数万とかプログラムがあるんじゃないかと思ってます。
○役所のような(大きな会社の基幹系システムも同じだけど)、絶対に間違いがあってはいけないシステムは、管理するのも、プログラムを修正するのも、大変。
 例えば、「市長」の表示を「区長」に変えるだけでも、いっぱいテストしなきゃいけないから、1本のプログラムで数万円、数十万円とかかっちゃう。でも1ヶ所の修正が20万円なら、2ヶ所修正しても21万円で済んじゃう。つまり、思いつきで4回修正すると80万円かかるけど、まとめてやれば23万円で済む。
 とにかく計画的にまとめてやらないと、経費ばかりかかることになる。

ということで、何の発表もされてないから、勝手に想定して移行手順を作っちゃいます。
○まず、行政システムをどう変更するか決めるためには、その区の行政サービスをどういったものにするか、決める必要があります。そして、区の行政サービスを決めるのは区民という形式を取りたいでしょう。
 ということで、公選による特別区準備委員会を、特別区ごとに設けることにしましょう。区長と区議会のプレ版です。進行役と補佐役で、市役所から1名、外部のコンサルタントが1名加わるとします。

○準備委員会の進め方としては、最初に各委員に思っているイメージ、希望などを話してもらい、他の委員の反対がなければ役所に反映を求めます。
 次に役所の業務ごとに、担当者が次の内容を説明をします。
 @業務の内容 A現状の問題点 B市民から今までに受けている要望 C委員要望の可否 D予定している変更点などです。
 この説明を受けて、委員で議論し、方向を出していくことにします。
 1日に1〜2業務、週に1〜2日のペースかな?(連日にしないのは、空きの日に委員が準備作業などを行うため)
 全業務の議論が終わったところで、全体を通して予算枠との整合性や、業務間でバランスの悪い点を調整し、他の区とも必要があれば調整して、「区のあり方」をまとめます。(区に十分な予算がないと、この時、たいへん悲しい結果になります。)

○「区のあり方」に基づき、システム開発に必要な予算を組みます。
○システム開発の入札を行い、開発会社を決定します。
○システムの開発を行います。
・・・といった手順でしょうか?

 それぞれの工程の所要期間を想像してみると
準備委員会の選出  3ヶ月
準備委員会での検討 半年〜2年
予算編成      半年(検討期間が長いなら、うまくすれば並行してできます。)
入札        半年
システム開発    3〜4年(大規模システムの開発なら、これ位かなと思いますが、特別区ごとということで8〜12セットを並行で開発するとなると、もっとかかるかもしれません。)
 ざっくりと短めにみても、5年程度はかかりそうです。

 これに対して、大阪都構想の実現までは4年。そのうち、2〜3年を制度設計に充て、議会での議決、法制化、住民投票に順調にいって半年から1年程度と考えると、移行期間は長くみても、1年程度。
 不可能に近いと思ってしまうのを、分かっていただけるでしょうか。

 これはたまたま、システム開発を取り上げてタイムスケジュールを想像しただけです。もっと時間のかかる項目が、他にいくらでもあるかもしれません。
 そして、それが必要な項目なら、一番時間のかかる項目のタイムスケジュールに合わせて、移行期間を設定する必要があります。もし、新しい区役所の建設が必要とかなったら、10年とか。

 ただ、大阪維新の会の議員さんの話を聞く中で、区議会の議場なんて会議室でいいだろうとか、2〜3の区役所を合わせるとしても、今の建物でなんとかするのかなと思ってしまう話を聞きましたので、無茶でもとにかく27年4月までの移行をという話になるのかもしれません。
(もし、3区役所を統合して1ヶ所にするのなら、大幅な人員削減を例えしたとしても、人員2倍、業務量3倍、加えて区議会・教育委員会なども新たに設置となりますから、それだけの建物は要るように思います。新築や建替えなら、何年かかるか分かりません。)
 どんなに無茶でも、とにかく1年で移行となったらどうするでしょう。行政システムの例だと、わたしはひとつしか、思いつきません。
 大阪市・堺市が現在使用している行政システムへ、「市長を区長に変える」とか「区の単位をかえる」とか、どうしても変えないとダメな点だけ修正して、今のままのシステムを使うといった方法です。
 区民の意見を聞かずに移行作業の内容を決められるなら、住民投票前から準備しておくなどで、住民投票後になる作業を1年とかに押し込める可能性があります。
 建前上の説明は、「特別区ができるまでは、変更は最小限にしておいて、区の体制が出来上がってから、思うように変更してもらえばいい。」といったものでしょうか?

 この方法を採った時の問題点として、次のようなことを想像します。
○最小限といっても、多くのプログラムに影響を与えると思うので、結構費用はかかると思います。特に、大阪市のシステムで区が24区でなくなる影響は大きいはず。
 勝手な思い込みでいうと、数十億円で済まなくて、百億円台に乗るんじゃないでしょうか?(WTC=府庁咲洲庁舎から市の部局が引っ越すのに40億円、府庁の一部が引っ越してくるのに17億円と聞くと、そんなに無茶な数字にも思えないでしょう。)
 しかも、それぞれの区で、システムをきちんとすると、全部無駄になる費用です。

○一度、この最小限の修正で特別区をスタートさせると、特別区ごとのちゃんとしたシステムって、作れないんじゃないかと思います。
 だって住民サービスはできてて、(小さな不都合はいっぱいあっても)どうしてもダメな不都合はないのに、多額の費用を掛けてシステム作り直しますか?ってなるじゃないですか。その費用を使って、住民のための別のサービスに充てようってなりそうに思います。(都が、システム開発費用を面倒見てくれないなら、何か住民サービスを削ってシステム開発の費用に充てることになるので、更にありえないように思えます。)

○でも、そのまま大阪市の行政システムを他の区と共用していると、住民サービスを区独自で実施したり、止めたりしようとすると、かなり制約を受けます。最初に書いた通り、行政システムって「どういう行政サービスを提供できるか」「役所が、どんな風に仕事をするか」をかなり、決めてしまいますから。
 そのため、行政システムが関係する住民サービスの変更には、旧大阪市の8〜9区が足並みをそろえる必要が出てきます。現在のように、市役所が一元的に意思決定をすることはできないので、行政サービスを変更しようとすると、現在よりも難しかったり、時間が掛かるようになるかもしれません。


 ここまで、大阪維新の会のマニフェストのスケジュールから想像を広げてみましたが、ふと思ってしまいました。「何のために、特別区を作ると言ってたんでしたっけ?」
 実現までの4年間というのは、今度の選挙の府議会議員・市議会議員の任期中ということかと思います。
 でも、特別区の自治を大切に思うなら、あるべき手順を踏んで特別区を作ることのできない、こんなスケジュールにはしない気がするのですが?


・・・もし、この記事を気に入っていただけましたら、目次から、他の記事もどうぞ。
   大まかに大阪都構想のことを知りたい方は、まとめブログをご覧ください。
posted by 結 at 01:25| Comment(2) | 概要 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
結さん こんにちは
毎回詳細な分析、大変勉強になり感謝です。

久しぶりに書き込みさせていただくのですが、最近の橋下氏の動きで理解できないことがあります。

橋下氏は、維新の会が過半数を確保した(大阪都構想推進を決定した)暁には、大阪府と大阪市の精鋭部隊(役人)で制度設計を進めていくみたいなことを言い出しています。本来ならば、先に制度設計をしてから民意を問うのが筋だと思いますが・・。

構想の最大の「区割、財源調整」など肝心な点もこの制度設計の中で考えるとのことですが、私は以前よりこの構想自体、財源調整の問題から実現不可能だと考えています。

そこで、仮にですが、橋下ポピュリズムによって維新の会が大勝したとして、府と市の役人が詳細を設計し始めれば、結さんの指摘する問題が山ほど噴出し、実現困難となることが目に見えています。

橋下氏は、その場に及んでどうするつもりなのでしょうね?
たとえ利点よりも欠点が大きいことが明らかとなった場合でも強引に進めるのですかね?

橋下氏は、構想を推進することを政治(選挙)で決めて、あとは役人に任せると・・逃げているようにしか思えないのですが、結さんはどう思われますか?
Posted by 小市民 at 2011年02月13日 02:06
 制度設計をしてから選挙、または今回の選挙後に4年後に制度設計をしてから選挙が当然ですね。設計図だけでも作らせてくださいといいながら、選挙に勝ったら大阪都構想は民意だと言って、制度設計後に法制化を迫り、府議会・市議会で議決するのだと言ってるのですから。

 大阪都構想は不可能かという件ですが、何を不可能というかによりますが、わたしは不可能とは考えていません。
 問題があって、最初の理念が失われても、そのことで大阪市民・堺市民が望むものでなくなったとしても、大阪都の実現だけを目的としてひたすら目指すというなら、出来ないとはいえません。

 ただ、そんな結果を目指したいとは、少しも思いませんが。
Posted by 結 at 2011年02月14日 05:20