2011年01月30日

大阪維新の会マニフェスト雑感(その1)

 大阪維新の会マニフェストが発表されました。新聞でも報道されましたが、内容は大阪維新の会のHPで掲載されています。(維新の会HPは当ブログからもリンクしています。)
 ざっと読んだところでは、まあ今まで橋下知事などが言ってきたことを書いただけかなというのが、率直な感想です。今度こそ、何か情報が出てくるのではと期待していた方には残念な内容かもしれませんが、そういう期待はしていなかったので別に否定的な受け止め方はしていません。
 マニフェストでいきなり、今まで語ってきたことと違う内容を打ち出されても面食らいますから、こんなものかなと受け止めています。
 勿論、制度設計について、十分な提示がないということも今までと変わっていないので、十分なマニフェストが出されたと評価するつもりもありませんが。

 そうすると、マニフェストの内容についての議論は、これまでの記事で書いてきたことの繰り返しになるのですが、マニフェストが話題になってることもありますので、報道などで取り上げられてる点など、いくつか感想を書いてみます。
 今回は、「特別区に中核市並みの権限と財源を与える」についてです。
(なお、大阪都構想でこれまで使われていた「都区」という表現に変わって、マニフェストでは「特別区」という表現になったようですので、以降、大阪都構想の区についても「特別区」という表現を使用します。)

 まず、中核市並みの権限付与について、橋下知事はテレビなどのコメントで「分権が進む」と強調しますが、政令指定都市の一部権限を都庁(=府)に取り上げる訳で、「分権が進む」はさすがにヘンだと思います。
 それでも、中核市並みの権限付与については、かなり額面通り受け取っています。

 この場合の「権限」という言葉ですが、その大半は「業務や事業の担当」と読み替えた方が近いと思います。
 橋下知事としては、(政令指定都市が府県と同等として持つ)都市計画の決定権限など特に欲しい権限だけ都庁へ集約できれば、その他の業務など担当したい訳ではないので、十分なのです。
 あとは、特別区を予算配分の決定権限で縛っておいて、知事や都庁側で特別区の業務に口出しをしたい時、言う事をきかせられれば良いわけです。

 中核市の権限についてWikipediaで調べてみると(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E6%A0%B8%E5%B8%82)、政令指定都市との違いが挙げられていました。その中でも中核市にない政令指定都市の権限で、橋下知事が欲しいと思ってるのは、次のようなものかなと思います。(ただし、マニフェストでは「中核市並み」という表現なので、中核市の権限でも欲しい分は都庁の権限にするはずです。)
○市街地開発事業に関する都市計画決定
○都道府県道、産廃施設、流通業務団地等に関する都市計画決定
○国道・都道府県道の管理(この点を特別区の業務範囲のイメージで話される維新の会の府議さんがいましたが、特定財源がセットになるべきなので一応挙げました。どちらか迷う部分です。)
○政令指定都市として移譲された所管の事務については、都道府県知事の監督が外れ、県を通さずに直接国と接触できるようになる。

 大阪市・堺市が特別区に分割されることでこういった権限を失うのは、政令指定都市と比較すると後退ですが、広域行政の一元化を目指すなら当然といえます。

 中核市並みの権限付与で気にしておきたいのは、東京都で都庁が担当している事業や業務を、大阪都では特別区の事業でいいのか?の方です。
 水道(水道企業団との統合が挙げられていますが、水道企業団は現在、浄水事業=水の卸売りだけなので、各戸への給水は特別区に残ります。)、下水道、ゴミ処理、消防など、分割が望ましいと思えない事業が特別区の担当となります。
 マニフェストでは、こういった事業の一部で民営化なども挙げられていますが、その場合でも、民営化した事業会社へ業務委託をするのは、特別区です。特別区が、事業会社の経営にどのように関与するのか、業務委託の形態やサービス内容は本当に望ましいものとなるのか、色々と気になる点が出てきます。特に、特別区が事業会社の経営に関与する場合、10区以上の区が共同してとなりますから、望ましい意思決定ができるかも気をつけておきたい点です。なにしろ、府・市の二者の意思決定が問題だとして、意思決定の一元化のために大阪都構想を目指したはずなのですから。

 また、上記の事業以外でも、現在、市役所と区役所が一体となって行ってきた、多くの業務について、(例えば、行政システム(大阪市ならプログラム数は万単位でしょう。)を、11〜12のそれぞれの特別区で開発・運用・保守が必要になってくるなど)スケールメリットを失ってコスト高になる点がどれ位出てくるのか、注意して見ていく必要があります。

 中核市並みの権限付与はこの程度として、問題なのは「特別区に中核市並みの財源を与える」の方です。各特別区が、実際にどれくらいの予算を持つことになるのか、この表現では、全く分からないのです。

 まず、ここで書かれた「財源」を、その市の自主財源=税と考えてみると、(一般市でも、中核市でも、政令指定都市でも、市町村の税目はだいたい同じですから、)特別区が中核市と同じ税目を自主財源として持つという意味になってしまいます。それでは分市と同じで、都が市税から何割かを吸い上げることができず、都制度を採る意味がありません。マニフェストに書かれている財源調整を行うこともできません。
 このように考えると、特別区が中核市と同等の自主財源を持つというのは考え難いです。

 では、30万人規模の特別区で、人口50万人の東大阪市(中核市)と同等の予算を持つということでしょうか。
 しかし、大阪市の予算で無駄が多いと批判するのに、大阪市の市民1人当り予算額が大きいことを無駄の証拠だとしてきたことを考えれば、30万人規模の特別区に50万人規模の市相当の予算を持たせるというのは、そもそもおかしいことになります。

 これまでの、橋下知事や大阪維新の会の議論を見て、妥当性が高いのは、中核市並みの1人当り予算額を持たせるという解釈です。(ただし、中核市の1人当り予算額が一般市や特例市と比較して大きいということでもないと思うので、わざわざ「中核市並み」とするのは、レトリックとしてのごまかしに近くなりますが。)
 府自治制度研究会の資料によると、市民1人当り予算額は中核市の高槻市で27万円、東大阪市で35万円です。随分と大きな差がありますが、「この辺り」として見当をつけるということになるのでしょうか???

 ちなみに、同資料では大阪市の市民1人当り予算額は61万5千円なので、現状のほぼ半額にするという解釈になります。

 住民にとって行政サービスが充実しているかどうかは、市(区)役所がどのような権限を持っているか(=どのような業務を担当しているか)よりも、担当する業務について、いかに充実した内容でサービス提供をしてくれているかや、独自の行政サービスを提供しているかなので、本当に大切なのは、権限より財源です。

 特別区の財源について、マニフェストで他に書かれているのは、「自分たちが決めた区長とともに、数百億円の予算の使い道は区で決めることができるようになります。」という部分だけです。
 この「数百億円の予算」という表現は、以前から使われている表現(わたしは、昨年7月に橋下知事の言葉で聞いたのが最初です。)で、10月のタウンミーティングでは、その具体的な金額として、500億〜600億円という数字が説明されていました。
 特別区が500億〜600億円の予算というのは、大阪市の分市案で区間格差のため財政再生団体になると試算された区の収入よりも、少ない予算額だというのは、以前の記事「都区がこんな予算なら、分市して財政再生団体になった方がマシ」で説明した通りです。

 「特別区に中核市並みの財源を与える」と言われると、特別区が現状の大阪市とあまり変わらない豊かな財源を持つように錯覚しますが、実際にこの表現が示している財源って、どんな意味でどれだけの予算額を持てるのか、全く分からない。しかも、想定の仕方によっては、相当に深刻な予算減を意味してるのかもしれないということは、しっかりと気を付けておきたいところです。

追記
1月31日の毎日放送ちちんぷいぷいに橋下知事が出演されて、ちょうど関連した内容をコメントされてました。
「中核市の東大阪市なら1800億円、高槻市なら1000億円、今度中核市になる豊中市が1200億円。これ位の予算を特別区が持っていこうと。1800億とか、1000億とかいう予算をちゃんと下に下ろして・・・」とのことです。
 これを聞いてのわたしの感想は、1000億円と1800億円では差がありすぎるでしょう。それに、大阪維新の会のコスト比較では一人当たり予算額の比較をするため、人口規模を重視するはずなのに、東大阪市49万人、高槻市36万人、豊中市39万人と、それぞれ人口規模の差があり、さらに特別区の30万人規模よりもかなり大きいことを無視しました。これらから、大きい目の予算額を印象付けるための選挙向けの表現方法と理解しました。なので、この数字をわたしは用いません。

 勿論、これをそのまま信じられるなら「1特別区で1800億円の予算が持てるらしいよ。」と、なかなか喜べるように思います。9特別区として、それぞれ1800億円だとしたら、今の大阪市予算をほぼ9分割した数字で、生活保護業務などを都へ移管する分3000億〜4000億円を府の財源を使って増やすことになります。堺市の今の予算は約3000億円ですから、1800億円×3特別区=5400億円で、移管を無視しても2400億円を府の財源を使って増やすことになります。
 ただし、今の大阪市予算額をそのまま特別区に移管するというは、マニフェスト全体の説明とは、かなり矛盾がありますし、5400億〜6400億円を今の府の予算から引き抜くことは、現実的とは思いません。(というか、マニフェストには特別区の予算数百億円と書いてるから、1000億円とか1800億円とかなら、既に違うし。)


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posted by 結 at 05:43| Comment(6) | 概要 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 久々にコメント書きます。

 マニフェスト、何回か読んでますが、この感じだと、去年の夏に突然言い出してすぐに引っ込めた分市論とあまり変わらないなという印象です。

 人口30万人ごとに特別区に分けて、自治法で規定されてる中核市(人口30万人以上)並みの権限と財源を与える。まあ、単純に30万人だから中核市並みと考えれば、名称こそ特別区と言ってるだけで、単純に大阪市と堺市を30万人ごとに切り分けて特例市に格下げしたようなもんですよね。

 そもそも、なんで特別区とするのかということの原点は、東京都のように固定資産税、法人市民税などの税源を一旦都が吸い上げて45%を収奪した後、各特別区間の財政調整をするというところにあったはずなのですが、現在の都区制度にいろいろ課題があるとか、特別区が半人前の基礎自治体とかっていう知識を後から覚えて、現行の東京都の特別区よりも(権限・財源を)手厚くするとか言い出したがために、中核市並みとかっていう要素を持ってきて、だんだん訳がわからなくなってるんじゃないかと言うのが私の感想です。
 
 とりあえず、選挙が終わるまでは詳しいことに突っ込まずに、有権者にはいい印象だけを与えることに徹してます。今まで橋下さんの「感覚」で500〜600億円としていた予算規模も、ここにきて1800億円って、大盤振舞いもいいとこです。すっかり大阪市から財源奪い取るという当初の目的を見失ってます。クーラーとか給食とか、乳幼児医療とかワクチン接種無償化とか、今まで共産党や公明党が言ってきた政策も全部てんこ盛りになってますね。

 ところで、

 まだ、詳しく読んでないんですが、先日東京の日本記者クラブで会見開いたときの資料が日本記者クラブのHPにアップされています。

http://www.jnpc.or.jp/activities/news/report/2011/01/r00021501/

結構量が多くて辟易してしまうんですけど、その中に「特例市並みの権限移譲について」という資料があります。どうも以前から府と府下市町村の間で事務の移管について協議してたみたいで、権限委譲というと聞こえはいいですけど、財政難の大阪府が体よく市町村に仕事押し付けてるだけという感じがします。

 今回、中核市並みの権限と財源を与えるっていうのが突然出てきたなと思ったんですが、この辺に伏線があったみたいです。

 それにしても、「平成21年3月大阪府」となってるこれらの資料は、橋下さんが都構想を言い出す約1年前のものですが、「府市の強調」とか、「Only one,Number one KANSAI」とか書かれてあって、何のためにこんな資料配ってるのかよくわかりません。権限は市町村にできるだけおろして、府と市は強調して将来の関西州を目指すとなっていて、今の平松市長が言ってることと同じなんですけど。

 こういうところ、私が橋下さんを信用できないところなんです。あまりものを考えずに資料出したり、自分の主張の中での整合性を飛ばしてしまったりで、その場その場で思いつきに近い言動になってしまってる。で、小難しいことは役人(最近は大阪市の職員を総動員してとか言ってますね。府の職員はどこへ行った?)に考えさせたらいいとか言って必ず逃げを用意してる。


 あ、そうそう、維新の会のマニフェスト、よく注意しとかないと、日々内容が書き換えられてますよ。どこを書き換えたとかの説明なく、こっそり加筆、訂正が入ってます。HPに公表されてからでも少なくとも1回は変わってる。特別区→特別区(自治区)という表現に変えてます。いろいろ指摘されたり、自分たちで気づいたことを気軽に書き換えていってるのかもしれませんが、まがりなりにもマニフェストとして公表したからには、勝手に変えたらいかんと思うんですけど。せめて、こことここをこういう理由で訂正し、バージョン1.5になりましたとか発表すべきだと思うなあ。議論できないやんって思ってしまいます。

 こんなこと書いてる間にも、また変わってるかもしれません。
Posted by bafuken at 2011年02月01日 03:38
維新の会のマニフェストに、堺市に関する記述が大阪市に比べてあまりにも少なすぎる(というかほとんど述べられていない)のが、いかにも不自然に感じられます。
同じ再編対象なのにこれは変でしょう。
橋下知事が平松市長に文句をいい続けているのを知っている人々にとっては、ほとんどが大阪市の話になるのがわかりきった展開なのかもしれません。
しかし、そういう背景を排して、純粋な都市再生の一提案として大阪都構想を見た場合、同じ再編対象の市なのにこれほど扱いが違うというのはどう考えても不自然に写ると思います。
橋下知事には、堺市についての現状と将来構想をメディアでもっと積極的に語って頂きたいですね。
メディア側も特集を企画してもいいくらいだと思います。
できない理由はないはずなんですが、何か不都合でもあるのでしょうかねぇ。
Posted by どんごろす at 2011年02月02日 03:21
bafukenさんへ

 わたしは、特別区の業務範囲はかなり広いと予想していたので、分市案という印象より、都構想で予想していたものに近いです。
 選挙向けに見える項目が結構ありますね。特別区の予算1800億円は完全に信じませんし、大阪市の今のサービスはすべて継続も、4500億円捻出で可能とは思えません。4500億円のことは、また記事にしたいと思っています。

 マニフェストの内容が変わっているとの情報ありがとうございます。正直、耳を疑いました。古いバージョンを見て信じている人に対して、どのように責任をとるのか・・・考えられません。
 時々見て、PDFファイル保存とか、しなきゃです。
Posted by 結 at 2011年02月02日 03:30
どんごろすさんへ

マニフェストに堺市の記述が少ないのは、同意です。
あまり何も考えていないようにも思いますが、大阪市がたくさん書いてあってうれしいかというと、全然うれしくないのですよね。
どちらにしても、複雑です。
Posted by 結 at 2011年02月02日 03:33
橋下さんへ。 あの横柄で傲慢さがイヤで不愉快でたまりません。アナタはそんなに偉いの?賢いの?勘違いも甚だしいですよ。政治は人気だけでは出来ないと思います、信頼・信用・謙虚さが必要ですがアナタには全然見られません。他人・他県批判ばかりで、まず 反対ありきからのスタートばかりしていると絶対にバチが当たりますよ、必ず。
選挙演説の前に正して欲しいと思っている府民が大勢いますよ。公平であるべき毎日放送さんが何故ペコペコ・ゴマすり・贔屓の引き倒しばかりでコンプライアンスに当たらないのか他人事ながら心配。
Posted by 大阪太郎 at 2011年02月10日 20:29
大阪太郎さんへ

 理屈から入る気持ちもありますが、感じることから入る気持ちもありますね。
 謙虚さや協調する気持ちを感じさせない態度を、「力強い」と評価するのか、「リーダーに相応しくない」と評価するのか、問われているように思います。
Posted by 結 at 2011年02月12日 05:55