2011年01月16日

「大阪市の税収は、大阪市だけのものではない」と橋下知事は語る

 橋下知事は「大都市の税収は衛星都市から働きに来ている人が支えている。(大阪)市の税収は(大阪)市だけのものではない」と主張されたそうです。2010年2月の橋下知事、平松市長の意見交換会でのことです。
 大阪市民向けに語るような言葉ではないのか、わたしの行ったタウンミーティングなどで、その言葉を聞くことはありませんでしたが、昨年11月に大阪維新の会の府議さんに「大阪市内の道路補修が、大阪都移行後も現状のような補修状況を維持できますか?」と詰め寄っていたら、「そもそも、大阪市の税収は大阪市民の皆さんだけで生み出されるものではないと思いますが。周りの衛星市からの会社勤めや遊びに行かれる人がお金を落とされるわけで。別に、衛星市の道路補修までしてくれ、と言うつもりもないですが。」とおっしゃってましたので、そういう考え方は、今もしっかりとお持ちのようです。

 わたしは、橋下知事のこの見解は、言葉のすり替えがあると思っています。
 「大阪市内で発生する税が全部、大阪市(民)だけのものではない。」というのなら、別に否定するつもりもありません。でも、大阪市内で発生する税は(地方税に限定しても)大阪市が独り占めしているわけではなく、大阪府、大阪市や大阪市内に働きに来ている人の府県・市町村の間で、分配されています。
 橋下知事の見解は、大阪市内で発生する税のうち大阪市に分配された市税を、大阪市内で発生する税の全部であるかのようにすり替えて、大阪市(民)だけのものじゃないと言っている訳です。

 大阪市内で発生する税が、どのように配分されているかを見ていきましょう。
 大阪市が発表しているところ(元データ 元サイト)では、平成20年度大阪市域内からの税収で、
大阪府税は7550億円、
大阪市税は6708億円です。
府税・市税の配分割合としては、大阪市内では市税は、半分以下の47%です。
 ちなみに、大阪市を除く大阪府下での割合は、市税64%ですので、大阪市域内で大阪市が取り過ぎだとは言えないようです。(同じ法律に当てはめるとこうなるというだけなので、この割合だけを以って、大阪市が不利な扱いを受けているとは言えません。)

 基本的に市税は身近な行政サービスのための税収で、府税は広域行政のための税収です。では、大阪府税になった7550億円が、どの程度大阪市内へ還元されるかを考えてみます。
 大阪府全体の税収は1兆2813億円で、大阪市内からの税収7550億円はその6割を占めます。
 大阪府内における大阪市の人口の割合は29%、面積割合は12%です。人口の割合で均等に大阪府の行政が府民に還元されると考えると、大阪市内には3729億円が還元されることになります。
 並べると次のようになります。
大阪市内 府税 7550億円 還元額 3729億円  49%
大阪市外 府税 5263億円 還元額 9084億円 173%

 ただし、これは府税が府民に均等に還元された場合ですので、橋下知事が、大阪市外については大阪府が事業を行うが、大阪市内は大阪市が事業を行うものだと発言されていることが多数あることを考えると、市内への還元額はもっと小さく、市外への還元額はもっと大きいと考えられます。
(なお、ここでの還元額は税収ベースでみてということです。大阪府の予算額は2兆6860億円、国から交付税などが加えられて税収の約2倍です。もし、大阪府が、税収と同額の7500億円程度の予算を大阪市内に投入していると説明したならば、税収ベースでは半分しか還元されていないということなので、注意が必要です。)

 橋下知事の最初の見解は、大阪市域内からの税収(大阪府税7550億円、大阪市税6708億円)のうち、大阪市税6708億円はもう一度配分し直して、大阪全体のために使われるべき=大阪府税に充てるべきだと言っている訳です。

 では、どの程度でしょうか。
 これまでの橋下知事や大阪維新の会の方の言動から、わたしは「大阪市が広域行政に充てている予算の全額と、身近な行政に充てている予算の3割をカットして、大阪全体のために使いたい=府税に組み込みたいと考えている」と推測をしています。
 このブログでは、大阪市の広域行政の割合を1割と推測しているので、税収ベースでは、広域700億円+身近な行政の3割1800億円=2500億円程度と考えます。
 つまり、大阪市域内税収を次のように配分したいのではということです。
大阪府税 7550億円 → 都庁収入 1兆円(大阪市内分だけでです。)
大阪市税 6708億円 → 都区収入 4200億円

 わたしは、大阪市民が広域行政のために府税を支払い、その一部しか還元されないにも関わらず、更に(身近な行政サービスのために大阪市民が支払った)市税にまで、とやかく言われなければならないのか、理解ができません。


PS
 上の記事で、「大阪市内で発生した税は、大阪市内に働きに来ている人の府県・市町村へも配分されている」とした分の説明です。

 会社が経済活動を行った場合、次のように税を発生させます。
○会社が取引を行うことで発生する税=消費税(主に国、一部府県・市町村)
○会社の利益から発生する税=法人市民税(会社のある市)、法人府民税・事業税(会社のある府県)、法人税(国)
○会社が給与を払うことで発生する税=個人市民税(従業員の住所の市)、個人府県民税(従業員の住所の府県)

 このように、会社の利益からの税を会社所在の市町村・府県、会社の給与からの税を従業員の住所の市町村・府県といった形で分け合っています。

 なお、会社の所在する市が法人市民税を受け取るのは、会社が経済活動を行うために、公共サービスを必要するからという理由だったと思います。(市民が、行政サービスを受けるから、市民税を支払うというのと同じ理屈。)

 あと、大阪市内の会社から、大阪市外の市町村へどのくらいの市民税が支払われてるか、探してみたのですが、見つけることがでいませんでした。そこで、次のようにして、推測できないかと考えてみました。
 大阪市の外から、大阪市内へいっぱい働きに来ていて、大阪市内から市外へほとんど働きに行っていないなら、大阪市内発生の給与は大阪府下でダントツで、大阪市の個人市民税はそんなに大きくないはずです。大阪府下で大阪市が占める給与総額の割合と個人市民税の割合の差が、大阪市内の会社が市外の市町村へ支払う個人市民税の額にならないかと。(ただし、大阪市民が市外へ働きに行って、市外から受け取る個人市民税額と相殺したあとの額ということですが。)

 それでもって、調べてみました。平成20年の府の工業統計で、大阪府全体の給与総額のうち大阪市の事務所の給与総額は、28.0%を占めました。平成20年度府の市町村税の統計で、大阪府全体の個人市民税のうち大阪市の個人市民税収は、28.1%を占めました。
 この統計値を比較する限り、大阪市内へ大阪市以外からいっぱい働きにきているかもしれませんが、大阪市民も市外へいっぱい働きに行っているようです。
 大阪市域の税収だけを殊更、市外の人が支えているというイメージは、もう少しデータを取りながら検証しなければ、本当にそうなのか、疑問の残る結果でした。


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posted by 結 at 04:58| Comment(2) | 財務 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
昔に比べて郊外はうんと発展しています。
今の時代に、大阪府下の働き手がそこまで市内に集中しているわけではないと思います。
現に、大阪府下の市町村に限っては、大阪市内への通勤率が下がり続けているところはいくらでもありますし
(もっとも、通勤圏が広がったので、隣接他県はこの限りではありませんが)。
買い物ひとつとってみても、いまや地元の大型SCで車で出かけるというのが当たり前というところもあり、何でもかんでも梅田や難波や天王寺という時代はとっくに過ぎました。
もうずっと昔に大阪府民でなくなった私ですが、その後ちょくちょく訪れてはいましたので、そのへんの時代の流れはある程度押さえているつもりです。
大阪市内の税収に府下の衛星都市がやたら貢献していたのはせいぜい80年代初頭くらいまでだと思うのですが。

この件に限らず、橋下氏のいう大阪はどこか昭和40年代臭が漂っています。
そもそも彼がその頃をリアルタイムで知っている筈もなく、おおかた誰かに吹き込まれたのでしょうけど。
Posted by どんごろす at 2011年01月23日 02:36
どんごろすさんへ

 大阪市が、昼間人口の多さを行政需要の必要性として説明するのに付け込んだ議論です。
 市内へ働き手が集中しているような現状があるのかないのか、自分の目に映るものだけでは判断のしようがないと思っています。それは、何を以って判断するのかも含めて、きちんと整理し、データを採らないと分からないと思います。

 ただ、大前提として、例え大阪市に周辺の市から働き手が集中しているのだとしても、その状況に沿って既に大阪市内で発生する税は配分されているので、全く配分されていない振りをして、大阪市の取り分だけをもう一度配分しようという議論はおかしいということがあります。
Posted by 結 at 2011年01月24日 03:19