2011年01月10日

特別市と比較すると、東京都と大阪都構想はかなり違うかもしれない

 大阪都構想を論じる中でひとつの対比として出てくるのは、大阪市を特別市にという案です。(大阪市の特別市化に無条件で賛成ということではないので、念のため。)
 特別市とは(わたしの理解では)、政令指定都市のように「府県の権限は一部しかなく財源は一般市と大差なし」といったものではなく、その市域内について府県の権限(及び財源)をすべて持つ市と理解をしています。(下の図のBのイメージ)
大阪都の権限配分イメージ.jpg

 特別市が、必ずしも市域を特別区に分割する必要があるわけではありませんが、ここでは(東京都のような)特別区に分割するものと考えます。
 そうすると(都制度と特別市で、都庁(市庁)と区役所の役割分担は必ずしも同じではないとしても)特別市と都制度では、比較的似通って見える部分があることが分かります。
 都庁(市庁)と区役所の役割分担が違うかもしれない点を無視した乱暴な議論でいうと、都制度と特別市の一番大きな違いは、都庁(市庁)が特別区で構成する市域のみを代表しているか、都庁(市庁)がその他の市町村を含めて代表しているかということになります。

 ただ、この違いは重要です。この違いにより、都制度では大きく次の2点が問題となります。
○府県全域の代表が、特別区の市域についてのみ、区役所がどのような業務範囲を担当するかを決定する。(他の市町村の業務範囲は、法律でのみ決められる。)
○府県全域の代表が、特別区の市域についてのみ、市税などの財源のうち、区役所がどれだけ使えるか(どれだけを都庁が使うか)を決定する。(他の市町村は、市税などの財源は当然のこととして全額、その市町村が使います。)

 これらの問題は、特別市のように市庁が特別区で構成する市域のみを代表していれば、単に市庁と区役所の役割分担をどうするかの問題ですが、都制度では、府県全体の代表が特別区の市域のみ、区役所にどのような業務をさせるか、区役所にどれだけの予算を与えるかを決めるという特別区の住民の自治権を制約する問題となってしまいます。(一般の市なら、業務範囲にしろ財源にしろ、府県の代表から制約を受けたりしませんから。)

 この2点の問題は、府県の代表が特別区以外の市町村を含めて代表することから起こるので、特別区の市域に対して、その他の市町村の割合が大きくなるほど、歪みも大きくなります。

 この点は、村上弘氏の論文でも取り上げられていましたが、特別区の市域と都全域の割合は、東京都と大阪都では大きな差があります。人口で比較すると次のようになります。

東京都 1255万人 23区 848万人(68%)
大阪府  868万人 大阪市 253万人(29%) 大阪市+堺市 336万人(39%)

 東京都の特別区23区が68%を占める状況というのは、大阪市を基準に考えると、大阪市、堺市、豊中市だけで大阪府を構成し、大阪市が特別区、堺市と豊中市がその他の市としてある状態です。知事を選出する有権者の7割は大阪市民で、都議会の7割も大阪市民が選出している状態ということになります。

 東京都政に様々な問題が指摘されるといいながら、大阪都と比較すると、東京都は特別市に比較的近く、都制度が本来持つ問題点が、まだまだ顕在化していない可能性も高いのです。

 大阪都政では、知事を選出する有権者の6割は特別区と関係のない市町村の住民で、都議会も6割は特別区と関係のない市町村の住民が選出します。
 特別区と関係のない市町村の住民が、有権者の過半数を占める知事と議会が、(市税のうちから)特別区にどれだけの予算を与えるか、そして与えなかった分を都知事と都議会で使うか、を決めるという歪み。

 東京都制を眺めるだけでは、大阪都構想実現後に発生する問題を図るのは、難しいのかもしれません。

追記
 東京都で、都庁が特別区に何でも押し付けられるような書きぶりになってるのは、ちょっと極端かなと思います。都税化された市税について、特別区への配分率などは、都庁と特別区が協議会などを作って決めてる訳ですから。
 ただ、東京都のこの配分率を取り上げてみても、普通の市町村なら100%が当たり前(元々、市税について府県にタッチなんてさせませんから)なのに、都庁と合意できないと変えられない。一般に市税だから配分対象に含めるよう特別区側が求めている税目について、都庁側が頑として認めていない(だから、配分対象とないっていない)ものもあります。
 また、極端な言い方をすると、配分率を都庁と特別区の協議会で決めるというのも東京都内部の決め事でしょうから(すみません、法律の確認までしてません。)、知事と都議会が一方的に決めるとしたら、特別区側は法的な対抗措置とかは取れないでしょう。ただ、批判するしかありません。
 東京都の場合、慣例があって、それなりの運用がされているのだと思います。

 翻って、大阪都構想を考えてみましょう。
 業務配分からして、都庁側(を担当するのだろう部署)がかなり一方的に決める流れになるのかなと思います。都区側と綱引きしながら協議し合意をする過程は、形式的にはあるかもしれませんが、実質的にはあまり想定できません。まず、それだけの体制を持った「都区側」が存在するかも疑問です。
 そして最初に決められた業務の振り分けは、都区がおかしいと思っても、都庁の合意なしには変更することは、できません。(さすがに、都庁が大きな業務を、どんどん追加で押し付けるとまでは思いませんが。それでも、小さな単位なら、それなりにありそうです。)

 財源の話は、もう少し深刻だと思っています。都制度の下、市税の配分を決めること自体、基礎自治体へ自治権の制限だと思いますが、大阪都において、配分率を都庁と都区が合意しながら決めていくなんて、何も示されてはいません。配分率を決めて、一定割合を必ず都区へ配分するということも、示されたことではありません。(地方交付税のように、大阪都の広域行政部分の所要額と都区の基礎自治業務の所要額が明確に分けられないといった厄介な問題もあります。)
 (東京都などを念頭にすると、少し極端に思われるかもしれませんが、)わたしは、都庁側が一方的に、各都区への交付金の額を決めるような手法を念頭に置くようにしています。そうならない保証はないので、一番そうなって欲しくない想定という意味で。

 都庁が都区との役割分担や都税配分率を一方的に決めるような書き方は、少し極端かもしれません。ただ、そういった書き方が、都庁と都区の関係性などを整理するために有効かなという思いでこの記事は書いています。


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posted by 結 at 01:16| Comment(5) | 概要 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
やはり東京府復活、東京市復活を考えた方がいいよに思いますね。復活となれば、大阪都構想へのそもそもの根拠、立脚点を失うわけですし。

東京都知事選挙もありますし、東京府復活構想(東京市復活)について幅広い議論を望みたいところです。東京府復活をマニフェストに掲げる知事候補が出てくればかなり盛り上がるように思うのですが。
Posted by momo at 2011年01月12日 14:43
momoさんへ

 地方分権とは、「住民自身が自分たちのあり方を決める」=「外野(市外の人)にとやかく口出しされない」ということだと思うので、東京都がどうあるべきかを、語るつもりはありません。
 なお記事は、大阪都も、東京都程度の状況ならまだ少しはマシだけど、大阪府の状況で、東京都とごっちゃにしながら説明してるのって、本気?ということです。
Posted by 結 at 2011年01月13日 05:17
え?
維新の会の案では周辺部分も特別区にするので特別区の人口は650万人ほどになるはずですが。
Posted by at 2011年01月18日 12:52
維新の会は、周辺部分の特別区化を撤回してますよ!
維新の支持者の方も、もっと勉強してください。!
Posted by minato at 2011年01月18日 16:55
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minatoさんへ

 650万人という数字に思い当たるものはありませんが、11市20都区案について、わたしの把握している事実は以下のようなようなもので、明確な撤回は把握していませんので、もしご存じの情報があるようであれば、お教えください。

○11市20都区案については、マスコミにより報道されているのみで、橋下知事及び大阪維新の会から公表されてはいない。
○橋下知事は、11市20都区案については、「府の職員が東京23区に合わせて作っただけのもの。大阪維新の会からマスコミに渡って、大きく報じられてしまった。」と語るのみで、正式な案と認めてもいないし、明確な否定もしていない。
○昨年11月に大阪維新の会の大阪市会議員候補の坂本尚之氏に、都区域についてこのブログで質問をした際には、(他の質問で答えられるものにはお答えいただいたが)都区域についてはお答えをいただけなかった。このことから、大阪維新の会から公式に発表されている(=明確に説明可能な)都区域は、存在しないと理解する。
○現状、都区域にするとして橋下知事から明確に表明されているのは、大阪市と堺市のみ。

といったものです。
 大阪市と堺市を都区域として大阪都を作ったのち、今後拡大させるともさせないとも、明確にはしていないし、その時の範囲も明確にはしていないと理解をしています。

 ただ、橋下知事が短期決戦しかできないと明言
しているのに、10年後とか20年後とかに目指すかどうかも分からない都区域拡張案など、リスクとして考慮することはあっても、アテにできるような話ではないとは考えます。

 それよりも、大阪市議会より、更に堺市議会の過半数獲得の方が困難に見えるなか、当初、橋下知事が打ち出していた、府議会、大阪市議会、堺市議会のすべての過半数獲得ができなければやめるといった姿勢は、軌道修正されつつあると受け止めています。
 大阪市議会過半数獲得、堺市議会失敗の場合、大阪市のみを都区域として都制移行を図る可能性は十分にあるため、その点はリスクとして考慮する必要があると考えています。

 minatoさんの方で、把握されている事実があれば、フォローください。
Posted by 結 at 2011年01月19日 04:34