2010年12月27日

二重行政が少しでもあるなら、大阪都にすべきなのか

 一回、間が空きましたが、堺市竹山市長の記事の続きです。
 堺市竹山市長は、「大阪都構想は、大阪府と大阪市の二重行政の一元化に意義がある。」「堺市にとって明らかなメリットがないと思う。府と大阪市の二重行政の弊害は堺市にはない。」と語っています。
 では、府と二重行政のある大阪市には明らかなメリットがあり、大阪都構想へ参加すべきなのでしょうか?大阪市民の立場で考えてみます。
 なお、これから数回の議論の多くが、これまでの記事の内容と重なりますが、ご容赦ください。

 まず、二重行政を解消しようとするのは何故なのでしょうか。わたしは、二重行政の無駄を無くして生まれてくる予算で、もっと行政サービスを充実させたいからと考えます。
 つまり、二重行政の無駄を解消して増やせる(わたしにとっての)行政サービスが、デメリットを上回るかということです。
 こういう議論をしようとすると、自治権の制限と行政サービスの向上のどちらを重視するかとか、二重行政の無駄の推定は十分に精度があるかとか、答えの出にくいところへ嵌ってしまいそうですが、この観点に限れば比較的容易に、答えを整理できると思います。
 わたしは、次の2点から、(府と大阪市に二重行政があったとしても)大阪市民に明らかなメリットはなく(というか、大きなデメリットがあり)、大阪市は大阪都へ参加しない方が妥当だと考えます。

 第1に、府・市の二重行政解消の効果より、大阪市を8都区へ分割するコストの方が大きいと考えるからです。
 府市の二重行政解消の効果とは、主に大阪市の広域行政の部門が大阪府と組織統合することで、経費を安くできる金額だと考えます。
 大阪市の広域部門の予算規模って、よく分からないのですが、このブログでは以前の記事での推定作業で、大阪市の年間予算1兆5千億円の約1割1500億円程度を想定します。(ちなみにこの額が3000億円でも、結論には影響しません。)
 統合効果としては、ざっくり5%〜20%程度でしょうか?ここでは、10%=年間150億円のコスト減になると考えることにします。

 大阪都構想では、大阪市の身近な行政を、大阪市を8〜9に分割した都区で、それぞれ独自に運営するとしています。
 身近な行政の予算規模は、ざっくり9千億円程度です。
 2つの組織を統合する場合の統合効果の割合より、組織を8〜9に分割した時のロスの割合の方が一般に大きいと考えられるので、広域の統合効果の割合10%に対して、身近な行政を8〜9に分割した時のロスの割合を20%と考えます。
(ちなみに、組織統合して10%の効果であれば、8分割時は、(8−1)×10%で、70%が理論値です。現実はなんとか抑え込んで30〜40%増し程度にするのではと想像するので、20%想定は過大とは考えていません。)
 9千億円に対する20%=年間1800億円のコスト増が発生すると考えられます。

 大変ざっくりとした想定ですが、広域と身近な行政で予算規模に差がありすぎ、率まで身近な行政の分割の方が大きいと考えられるので、この統合効果によるコスト減と分割ロスによるコスト増が逆転するとは考えにくいと思っています。

 第2に、大阪維新の会のタウンミーティングでは、身近な行政を扱う都区の予算は増えないと説明しているからです。(具体的に上げられている予算額は、現状の所要額をかなり下回ります。この点についての詳細は、別の記事で説明します。)
 都区の予算が増えないということは、二重行政解消で効果が出ても、そこで生み出される予算は、身近な行政の充実には一切充てられず、広域行政(橋下知事が述べられているのでは、主に大規模公共事業)へ充てられるということです。

 しかも、都区では(業務の分割によって)従来よりコスト増になりますが、その分の予算措置もされないということです。都区ではコスト削減の努力もされると思いますが、行政サービスの低下や廃止が行われることになります。
 身近な行政では、法律で決まっていて、止めることのできない業務がかなりの割合を占めます。どんなに困っても、住民票の管理や交付、選挙の実施などが止められるはずもありません。そのため、行政サービスは、住民要望などで行われる(独自の)行政サービスが大幅に影響を受けることになります。

 大阪市民として考えた場合、大規模公共事業など広域行政(ちなみに、道路や学校などの設置、修繕などは、都区の事業のようです。)は、多少拡充されるようですが、身近な行政が大幅に低下するようでは、望ましいとは思えません。

 つまり、二重行政によるコスト減よりも、身近な行政のコスト増の方が大幅に大きいと考えられること。コスト増の多くの部分(というか、全部)が、身近な行政へしわ寄せされると考えられること。から、府と大阪市に二重行政があったとしても、大阪市民にとっては、大阪市は大阪都へ参加しない方が妥当だと考えるのです。

追記
 二重行政の無駄は、現状でも全て大阪市民が負っており、もし解消させるなら、身近な行政の充実に充てるのでなければ、おかしいこと。二重行政の無駄の解消を目指すのであれば、大阪都構想よりも、大阪市による政令指定都市から一般市への移行の方が妥当性が高いことを、以前の記事「二重行政より二重負担」で議論しています。

 また、二重行政の例でよく挙げられる府市による競合施設の設置は、大阪都構想では本質的には解消できず、8都区の間で(ひとつずつの規模は小さくても)八重で無駄な競合施設が整備されるようになるだけということを、以前の記事「二重行政じゃなくて、無駄な競合施設」で議論しています。


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posted by 結 at 00:03| Comment(4) | 財務 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
今日、報道2001を見て、橋下知事のすごさを感じました。
市と府の水道事業の統合を破談にしたのは、大阪市サイドではなく、大阪府サイドであるのに、番組では大阪市が悪いように表現すると、橋下知事は黙っていて、
少しでも橋下知事に都合の悪い話になると、人の話を遮ってでも自分の正当性を主張していました。この手法を使うために、テレビは生放送しかでないようです。
でも逆に、生放送での発言は、後々しっかりと責任を追及できる場です。何気なく聞いているとどうってことないのですが、録画して聞きなおすと、放送倫理に抵触するなど、問題だらけです。
今日の一番の問題は、「一度やってみればいい、だめなら元にもどせばいい」と大阪都構想のことを言ってたことです。ダメだった時には、すべて有権者が責任、被害を被るのもしかたがない、との考えはおかしいのでは?
提案し、有権者を先導した橋下さんは、だめだった時にどう責任を取るのでしょうか?
ダムのことで、訴訟リスクを勉強されているようですが、この発言はリスクがないと判断されているようですね。どうでしょうか?
それに、この番組構成自体が放送倫理に抵触するのではないでしょうか?
Posted by minato at 2010年12月27日 01:00
minatoさんへ

 報道2001はかなりの反響ですね。見逃してたのは、失敗でした。
 橋下知事、ご活躍だったようですね。まあ、橋下知事の凄さは、分かっていることで、今更、そのことで焦っても仕方がありません。(橋下知事を、わたしは、某小説に登場する大政治家になぞらえて、トリューニヒト閣下とお呼びしているくらいです。)
 一市民として、できることをコツコツ頑張りましょう。
Posted by 結 at 2010年12月28日 03:33
あくまで私の推測に過ぎませんが、橋下氏がここまであからさまな行動をとれるということは、おそらくは府庁内部にも大阪都構想を強烈にプッシュする動きがあるからなんでしょう。
最近は府職員に対する不満を全く口にしなくなり、専ら大阪市役所に対する攻撃に終始していることもそのひとつの表れかなとも思ったりします。
一度は消えた大阪都構想が甦ることを心待ちにしていた改革派(?)職員や、府が市を呑み込む形の府市統合賛成派の職員が府の幹部にいたとしても何ら不思議はないですし。
別のエントリーで結さんがご指摘されているように、橋下氏は事実上府の政策として大阪都構想を進めていますね。
維新の会や後援者、ましてや支持率だけを背景にしているだけではなかなかここまでできるものではない気がします。
大阪都構想の現状での制度設計はともかく、そのPRの仕方などにはある種の段取りの良さを感じるのですが(テレビ出演のタイミングなどもそう)、これなどは府庁内部の協力なくしてはなし得ないのではないかと思います。
良し悪しはさておき、ここまできたらもう正々堂々と、府の政策として大阪都構想を進めると宣言すればよいと思うのですが。
そのほうが、民意がどうこうというよりはいさぎよいでしょうに。
Posted by どんごろす at 2010年12月28日 14:02
 どんごろすさんへ
 さあ、それはどうでしょう。府の職員さんの中にも、大阪都構想を望む人もいれば、大阪市との関係がややこしくなるので、止めてくれと思っている人もいると思います。(以前から、府市で協調して仕事をしている部門は少なくないでしょう。)府職員が一丸となって、協力に後押ししているということはないように、思います。

 別に府職員全体が積極的に大阪都構想を推すのでなくとも、橋下知事は、府職員の長ですから、その組織力は、十分活用できます。それだけのことかと思います。

 わたしも、橋下知事が、大阪都構想を府の政策として、きちんと打ち出すことを望みますが、それももう、タイムリミットなりつつあるように思います。
Posted by 結 at 2010年12月29日 01:01