2010年12月22日

橋下知事の沖縄の基地負担軽減への協力姿勢豹変から思うこと

 村上弘氏の「『大阪都』の基礎研究−橋下知事による大阪市の廃止構想−」の紹介がしばらく続いたので、少し時期を失した話題になりますが、梅田北ヤードW杯サッカースタジアム建設と、普天間基地移設にかかる沖縄の基地負担軽減のための協力姿勢についての、橋下知事の豹変発言についてです。

 橋下知事は「2万%ない。」を翻して知事出馬に転じた方で、府市水道事業統合交渉から大阪都構想への経緯を思い出しても、それほど驚くことでもないのかもしれません。でも、今回は、以前の発言などがメディア報道されるなど、前言を翻し、態度を豹変させた姿が大きく報道されたことで、印象が強かったのは、確かです。

 このうち、わたしは、普天間基地移設にかかる沖縄の基地負担軽減のための協力姿勢を橋下知事が豹変させたことについて、注目します。

 この問題は、昨年12月に橋下知事が、沖縄の基地負担軽減について「政府から何か(県外での負担受け入れの)提案があれば、しっかり議論していきたい」と積極的な発言を繰り返し、今年5月の全国知事会に際しても、「アメリカが方針を出したのであれば、地方は頑張らなくてはならない。今、基地を負担しているところに訓練先を移転するのは無理ではないか。関西が最優先だ」「大阪では何も負担をしておらず、安全のただ乗りの状態。沖縄の方には申し訳ない。沖縄の負担軽減についてはしっかりと話して行かなくてはならない」などの発言を行い、全国知事会での結論を「全然だめ。沖縄の基地負担の軽減が必要なのは小学生低学年、幼稚園の子供でも言える」と知事会がまとめた合意文書を痛烈に非難したりしていたものです。

 しかし、11月28日の沖縄県知事選で仲井真知事が再選され、基地負担軽減に向け関西空港視察の意向を示したことについて、橋下知事は、「視察するなら神戸空港を見てもらいたい」と述べ、神戸空港の活用が適当との認識を示しました。関西、大阪両空港の経営統合と事業の民間売却が検討されていることに言及し「関空が負担軽減の受け皿になることは今の方向ではない」と指摘。同時に「将来性が見えない海上空港は神戸空港だ。もし仲井真知事から要請があれば神戸空港まで(視察に)ついて行く」と述べたものです。
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/212877

 わたしは、関空視察を否定した橋下知事の発言の中で、「視察するなら神戸空港を見てもらいたい」「将来性が見えない海上空港は神戸空港だ。」という点に着目します。
 これは、広げて解釈をすると、以前、橋下知事が基地負担軽減に積極的な発言をしていたのは、「当時は、関西空港が将来性の見えない海上空港だった」から。そして「将来性の見えない空港に活路を見出すためには、沖縄基地負担の軽減に積極的に協力して、国からの支援を引き出すべきだ。」という考えがあったことが推測されます。
 今回の中井真知事の関空視察を否定した橋下知事の発言は、沖縄基地負担軽減のための協力という視点から見ると「ブレ」ていますが、(沖縄基地負担軽減への積極姿勢も、関空再建の一環と捉えると、)関空再建という視点では、全くブレていないのです。

 今回の件で、テレビのコメンテーターの「大阪都構想も、やめたといったことになるのだろうか。」といった発言を聞きます。わたしは、そうは思いません。
 わたしは、橋下知事は核心的目的については、ほとんどブレないが、核心的目的以外の部分については、その時の状況で、変幻自在に態度・発言を豹変させるのだと考えます。
 ただ、例えば5月の知事会の頃に、「国の関空支援が欲しくて、基地負担軽減に積極姿勢をしているだけでしょう。」と聞いても絶対YESとは言わないでしょうし、基地負担の受入に消極的な他の知事を叩きまくる徹底ぶりで、何が核心的目的で、どれがそうでないのかを見分けるのが難しいというだけです。

 大阪都構想において、核心的目的とは何でしょうか。わたしは、「二元行政の解消」だと考えます。
 「二元行政」とは、「府市の行政が重複することで無駄が発生している。」と主張される「二重行政」とは、全く別のことです。「二元行政」とは、大阪府の中に、大阪府と別に、大阪市という巨大な自治体があり、大阪府が一元的に行政を行うことを阻害しているという考え方です。
 つまり「二元行政の解消」とは、ありていに言うと、「大阪府にとって、大阪市は邪魔だから潰しちゃえ。」ということです。
 本当に、大阪市があることが大阪成長の阻害要因に実際になっているのかは、それぞれの立場で様々な意見があることだとは思いますが。

 わたしは、「大阪市民として、身近な行政が今より低下したりしないか。」を知りたいとしてきました。この点は、橋下知事にとっての核心的目的でしょうか。
 8月に大阪市分市案を橋下知事が提起された後のゴタゴタを思い出すと、決してそうは思えません。ポイントを挙げると

○8月末 「大阪市分市案は、大阪都構想のような法改正が不要で、大阪市を小さな市に分割して、府との役割を明確に分ければ目的は達せられる。国の交付税制度で、分割後の市の財政調整もできる。」として、検討を表明。

○9月 橋下知事・平松市長の意見交換会で、「分市でどんなに財政格差が出ても、交付税制度が財源保障をしているし、不十分な点があっても幾らでも知恵を出して財政格差を調整する制度を設けることができる。」と発言。

○10月 大阪市から、大阪市分市案では「地方交付税による財政補填を考慮しても、9市中7市が年間100億円以上の赤字となり、うち5市は財政破綻状態の財政再生団体に転落する。」と発表されると、最初、「大阪市が管轄していても財政格差はある。市役所に任せるから無駄が生じており、各地域に公選の首長を置いて財政調整した方が、競争が生じて向上する。分市をした市長同士で協議会をつくり、(財源配分を)決めるやり方もある。」と説明していましたが、結局、大阪市分市案は撤回されることになりました。

○大阪市分市案の撤回後に橋下知事は、「分市の場合には、新しい財政調整の仕組みが必要になりますけども、都構想の場合には、大阪市役所が今やってる財政調整のやり方を『都』がやるんで、まったく財政格差が生じないっていうことをはっきり打ち出すために、まあ、ちょっと、議論の過程をオープンに出したんですけどもね。」という発言をされています。
 でも、大阪市は、橋下知事が「区役所は○億円しか予算がない。」と喧伝されるとおり、全市一律で行政サービスを提供していて、各区への財源調整などしていないので、「都構想の場合には、大阪市役所が今やってる財政調整のやり方を『都』がやるんで、まったく財政格差が生じない。」というのは、デタラメです。

 この経緯を見るだけでも、都区の行政サービスがきちんとできるかなど深く考えておらず、問題を指摘されるたび、ひたすら言い繕おうとしていると思ってしまいます。
 大阪維新の会では、区長公選制を2本柱のひとつだとしていますが、二元行政解消の結果である「大阪市の都区への分割」の派生事項を、お題目にしているだけではないかというのは、以前の記事「大阪都構想の区長公選制の主張を、いぶかしく思うわけ」で述べたとおりです。

 ということで、「身近な行政がどうなるか。」が橋下知事にとっての核心的目的ではなく、これに関する発言はいつ変わるか分からないと思うことから、以前の記事「大阪都構想について知りたいと思うこと」で「自分の身の回りの行政サービスが、今より悪くなってしまわないか。」について、説明と担保を求めたいとしていたことについて、撤回したいと思います。

 今後、選挙戦が進むにつれ、身近な行政についての様々な指摘がされると、「身の回りの行政をもっと良くする。」といった発言も出てくるのかもしれません。でも、いつ変わるか分からない発言を信じることは、できません。
 信じられないのに、説明や担保を求めることは、意味がないと思うからです。

 それでも、大阪都構想についての考察は、続けようと思いますが。


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posted by 結 at 03:00| Comment(0) | その他 | 更新情報をチェックする
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