2010年11月20日

大阪府の地方自治制度研究会「中間とりまとめ」の分析レポートをいただきました

 いつもコメントをいただくbafukenさんから、大阪府の地方自治制度研究会「中間とりまとめ」を分析したレポートをコメントでいただきました。
 大阪府の地方自治制度研究会「大阪にふさわしい新たな大都市制度を目指して」の「中間とりまとめ」は、大阪維新の会のHPで、大阪維新の会の政治方針として挙げられているものです。

 大阪維新の会のこの「中間とりまとめ」について説明と、議事録の内容にかなり齟齬がありそうなこともあり、議事録を含めてきちんと読み解きをしたいと思っていたのですが、まだ着手できそうにない中、ありがたいレポートをいただけたので、記事にさせていただきます。わたしの知識では、追いつかない点も多く、助かります。&感謝します。
 なお、記事掲載に当たり、改行のみ手を加えさせていただきました。

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先日、大阪市が、大阪府の地方自治制度研究会の「中間とりまとめ」に対する見解を発表しました。維新の会が、上山さんの著書とともに「自分たちの政治方針」としている「中間とりまとめ」ですが、大阪市が細かく読み解いて、大阪市なりの反論を述べています。

 維新の会のHPで浅田政調会長が、研究会の膨大な資料・レポートを覗けと言っておられるので、第1回の研究会からの議事録、会議資料を読んでみましたが、とてもじゃないけど全部は読めません。すぐに挫折。
それでも、気がついたことは、そもそも学識経験者の研究会や審議会といったところで、基本は行政側のお膳立てのベースのうえで議論をしているということです。どういうことかというと、橋下さんの肝いりで大阪都構想や維新の会の政策を理論付けするために作った研究会ですから、橋下さんの指示のもとで府の事務方が作った資料をたたき台に議論が進められているのです。
一見、中立の立場で書かれているようでいて、よく読むと、大阪市が大阪府と仲が悪いがために、あるいは大阪市が自分のことしか考えてこなかったがために、今の大阪の沈滞や低迷が起こっている、とか、いかに大阪市の施策や事務事業に無駄が多いか、というようなことをことさらにあげつらうがための(いじわるな)資料になっています。(またそれが膨大な量あります。ほんといじわる。)

 これらの点には、大阪市が「見解」のなかでいちいち反論しています。私も中間とりまとめの中で特に違和感を感じていたところがあるのですが、「府は市域外のことしか関心がなく、市は市域内のことだけをやってきたので都市圏全体の視点に欠け、都市中枢機能を高めるための交通インフラ整備が進んでこなかったのではないか。」という記述です。
前にもお話したことがありますが、大阪市は今まで、広域的なインフラ整備 ――阪神高速道路、本州四国連絡高速道路(明石大橋)、関西国際空港、片福連絡線(JR東西線)、大阪外環状線(JRおおさか東線)、京阪中之島線、阪神なんば線などの大規模交通インフラ整備に、大阪府と同額、ものによっては(京阪中之島線と阪神なんば線)大阪府の2倍の費用負担をしてきており(ただし関空は府:市が2:1)、いずれも府市が強調して国と事業スキームの協議交渉をしてつくりあげてきた経過があります。
言うまでもなく、関空も明石大橋も大阪市域外のものですし、大阪外環状線も、先行開通した南区間(現在のJRおおさか東線)はほとんどが八尾市、東大阪市を通っています。大阪府が大阪市域内に関心が無いということは当たっていますが(事業区間が大阪市域内だけで完結している京阪中之島線、阪神なんば線には、それらが広域的な役割を果たす路線であるにもかかわらず、大阪市域内にしかないという理由だけで大阪府は大阪市の半分しか負担していない)、大阪市は市域外のプロジェクトにも関西全域のことを考えて取り組んできています。

なぜかそのことに一言も触れず(資料にはこれらのインフラ整備のことが全く出てこない)に交通インフラ整備が進まなかったと述べ、そのためのケーススタディとしてこれまで府市が個々におこなってきた面開発(阿倍野再開発やりんくうタウンなど)のみをあげています。
そのうえでさらに交通インフラ整備の進まなかった事例として阪神高速道路の淀川左岸線延伸と、なにわ筋線をあげているのです。議論を進めていくうえで(橋下さんに)都合の悪い情報を意図的に出していないと思えるような露骨なやり方です。
この2つの事業は、府市の関係云々の前にその莫大な事業費のゆえに現在の財政状況の厳しい府市として事業実施に踏み込むことができないというのが実情であって、議事録の中では府か市どちらかが単独でやる前提であればできていたのではないか、府市が一緒にしようとするから、ちょっとでも相手に多く出させようという意図がはたらいて、いわばもたれあいの関係性により協議が進まなかったのではないか、といったようなことが語られています。

 また、一方で議事録を読んでいると、学識の方は結構ニュートラルに議論していて、府の事務方が作ったストーリーに対して、「そんなことないのでは」というような発言も多々見られます。

 で、とりまとめられたのが今回の「中間とりまとめ」なんですが、これもよく読むと、新たな大都市制度については、まずは現行制度下での(府市の)政策協調に努めるべきとしています。で、どうしても調整が整わないとき(橋下さんが平松市長と協議調整する気がもうないので必然的にこうなるのですが)に、新たな大都市制度ということになって、その場合でも大阪市の再編なのか、都市内分権でいくのかというのは両論併記になっていて結論は出ていません。

 維新の会の浅田政調会長は、このような「中間とりまとめ」を「維新の会の政治方針」と言ってます。「大阪都構想」とはどこにも書いてないんですけど、ほんとにいいんでしょうか。多分、よく読まないで、橋下さんが理論武装するために作った研究会だから、大阪都構想について学識の方がいっぱい理論構築してくれていると思い込んでるんじゃないでしょうか。

 先日、11月9日の大阪市会大都市・税財政制度特別委員会の冒頭で、この自治制度研究会の座長を務めた同志社大学の新川教授が大都市制度について講演をしています。その中で、教授は、
 ・世間、マスコミで言われる府市施設の重複による「二重行政」については、例えばサービス施設をつくる際、府は府民が利用しやすいということで大阪市域につくり、市は当然、市民のため市域内につくるということで市域内に施設が複数存在するのであり、これはいわゆる二重行政にはあたらない。
 ・東京都制を念頭においた制度を現状のまま大阪に導入することは適当でない。
 ・大阪経済の再生のためには、別に新しい大都市制度ではなくても十分可能だという議論を研究会ではしてきた。まずは府市の間で政策協議をしっかりやることが当面有効であるし、現実にやれることではないかということで議論をしてきた。
 ・「中間とりまとめ」については確定的な考え方は示していない。調整が整わないときに府と市を解体的に再編成して新たな大都市制度が必要となる。それを知事は都制度だといい、ある人は分市論だといい、大阪市の立場からすれば都市内分権ということになるが、どの仕組みを採用すればよいかということについては、並列に並べているだけで結論は述べていない。
 などなどの話をされています。

 橋下さんが思いつきで言ったこと(大阪都構想)を一応理論武装しとこうと考えて作った研究会ですが、府の事務方は橋下さんの指示を受けて、なんとか都構想の正当性を学識の先生方にフォローしてもらおうとして議論を誘導しようとする意思が見え見えの資料を組み立ててはみたものの、先生方の議論はすっかりニュートラルで、まずは府市が政策協議をやるべきという話になってきて、仕方がないので無理やり両論併記で府市の再編について書き加えた。というのが事の真相ではないかと思いました。

 でも、「中間とりまとめ」が発表された時の新聞報道は、市の解体・再編が必要というところだけを取り上げて報道していました。マスコミはどうして橋下さん寄りの発想なのだろう。

新川教授の講演は、大阪市会のHPで動画が見られます。
http://www.city.osaka.lg.jp/contents/wdu260/live/special_committee/20101109dai-kouen.html
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posted by 結 at 17:04| Comment(3) | 概要 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
>マスコミはどうして橋下さん寄りの発想なのだろう。

基本的にマスコミは、売り上げ、視聴率で記事を書いてるだけと思います。
Posted by koku at 2010年11月21日 02:37
マスコミが橋下氏寄りの姿勢をとることで、本当に視聴率や売り上げが上がるのでしょうか?
というよりむしろ、在阪マスコミが、自らがどんな犠牲を払ってでも橋下氏をヒーローにまつりあげようとしているように思えるのですが。
まるで彼と心中を覚悟するかのように。
一方でここ半年ばかり、全国阪のメディアでは橋下氏の露出は激減しています。
中学生の学力に向上の跡がみられないこと、鳴りもの入りではじまったスクールランチ事業が極度に不振なこと。
極めつけは大阪府が失業率全国ワースト1になったこと。
悪いニュースばかりが次々に流れてくるのですが、大阪府は本当に大丈夫なんでしょうかね。
Posted by どんごろす at 2010年11月22日 01:27
kokuさんへ

 コメントありがとうございます。
 マスコミについて、そういう面は少なからずあると思います。それでも、そんなマスコミと付き合いながら、府民・市民が必要な情報を得られる状況が作られる必要があるのだと思います。
 「より府民・市民の理解を進める情報が必要」ということについては、マスコミも旨としていることだと思いますから。

どんごろすさんへ

 在阪のマスコミが橋下知事を取り上げるのは、やっぱり読者、視聴者に受けるからだと思います。
 全国メディアで以前ほど取り上げられないのは、衆議院選挙時のように全国へ影響を与えるような状況が、今は少ないからでしょう。少なくとも、全国メディアは、大阪府のスクールランチ事業など気にもしていないと思います。
 それでも、大阪都構想の具体像を示さないことについて、少しずつ懐疑的な表現が出ていることは、少し期待を持ちたいと思っています。
Posted by 結 at 2010年11月22日 04:46
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