2010年11月10日

大阪都構想の区長公選制の主張を、いぶかしく思うわけ

 先日の坂本氏とのやり取りの中で、わたしは、大阪都構想の中で、大阪市民に対する行政サービスがどうなるかは、二元行政解消の結果である「大阪市の都区への分割」の派生事項に過ぎないから、大阪市民に対する行政サービスがどうなるかについて大して精査もせず、「大阪市の都区への分割」を決定付ける大阪都構想の方針決定ができるのだろうと書きました。
 これに対して、坂本氏は、区長公選制を通じてより小さな単位での行政サービスの選択を可能にして、行政サービスの最適化を図るのは、本筋として目的とすることだとご意見をいただきました。

 坂本氏は大阪維新の会の方で、大阪維新の会では、区長公選制を2本柱のひとつとされている訳ですから、そのように説明をされるのは当然のことと思います。
 でも、わたしは、「大阪市の都区への分割」(=分割後の団体に首長を置く必要があるので、結果「区長公選制」になります。)は、二元行政解消の結果だと考えています。そのことについて考えてみます。(これは、坂本氏の意見に対して、反論として書くものではありません。また、以前の記事とかなり重複する部分がありますが、ご容赦ください。)

 橋下知事が、大阪都構想を主張される中で、区長公選制を主張された時、かなり唐突な印象を受けました。
 大阪都構想で広域行政の一元化を主張されるのは、理解ができます。まぁ、知事としては、やりたいでしょう。
 でも、身近の行政を選択する単位を小さくして、より住民の希望にフィットした行政サービスの選択を可能にするって、身近な行政を預かる市長がいうなら分かりますが、知事とは全く関係のない分野の話だからです。

 しかも、大阪都構想の二本柱のひとつにするほどに、身近な行政サービスの選択規模を重要としながら、市を解体する中で、どのようにして身近な行政サービスに悪い影響が無いようにするか、またその他の点でどのように向上させていくかという話は、ほとんど聞かれません。(一応、大阪市役所攻撃の派生として、市役所の無駄を排すというのはありますが。)
 普通は、身近な行政サービスを大切に考えるなら、まずは1日たりと止まることのない確実性、次にサービス水準の確保、それからもっと優先する様々なことがあって、行政サービスの選択は、その後のことです。
 でも、大阪都構想で身近な行政がどうなるのかと問えば、「行政サービスの選択ができる。」としか返ってきません。
 身近な行政をどうすれば一番住民のためになるかを考えた結果として、自治体の規模の話が出てきているのなら、その積み上げの検討の中で、その他の「身近な行政をどのようにして良くして行こうか」という様々な方策の話が出てくるはずなのです。
 多分、そういったアプローチをしていれば、自治体の規模が一番になるとは思えませんし、もし一番になったとしても、同列に近いものとして、様々な課題が打ち出されるはずです。
 でも、そういった過程は見えません。まるで、大阪市を分割するというところから、話に入ったかのように。

 「最適」という言葉にも、ひっかかります。
 区長公選制を柱としていて、大阪市を最適な規模の基礎自治体に分割するというならば、「最適」とは、自治体運営へ民意反映を行うに当たっての最適規模ということでしょう。
 多分、260万人より30万人の方が望ましいでしょうが、30万人より、10万人、5万人、1万人の方が望ましいのではないでしょうか。
 わたし個人の感覚では、小さければ小さいほど良いというのはありながらも、民意反映を重点としてコストも踏まえるなら、せいぜい5万人規模。10万人を超える規模が最適ということはあり得ないように思います。
 でも、この最も重要なはずの民意反映のための自治体の最適規模をどのように考えたかという議論は、全く見えてきません。

 では、30万人規模とは、何が最適なのでしょう。
 よく話を聞いていると、行政コストが最も低く抑えられるのだそうです。

 でも、例えば、人口1人当たり行政経費の比較などを行った場合、大阪市って、10万人平均で区を置いていますから、行政施設などは10万人単位の市と同じコストが掛かることになります。30万人規模の市と揃えるとなると、区役所を含め区別施設の3分の2を撤去することになります。(区役所代わりに支所程度は置けるそうです。東淀川区でいうと淡路出張所、ああいったものに区役所を置き換えるイメージです。)
 どう考えても、サービス低下になると思います。

 また、大阪市は財政的に豊かだと言われています。(実際にどの程度かは別として。) 財政的に豊かだと、行政サービスを拡充させますから、行政施策の費用は大きくなり、1人当たり行政経費は大きくなります。
 つまり、豊かな予算で行政サービスを拡充させていると、「非効率な運営をしている自治体」という評価となる訳です。

 それでもって話を戻すと、行政コストが最も抑えられるのが30万人規模だとしても、大阪都構想の2本柱のひとつである、民意反映の最適化はどこへ行ったのでしょう。
 どうやら30万人規模にするという結論へ導けるのなら、どこかへ置き忘れてしまっても、いいことのようです。

 区長公選制を柱だといいながら、大阪市分割案が出た時には、堺市は「うまくいっている」から、分割しなくて構わないという話が出たり、50万人超の規模(鳥取県1県に匹敵する規模です。)でありながら、東大阪市を都区編入時も分割するという話は1度もでなかったり、自治体の規模を最適化し、民意反映を図るというのとは、随分と矛盾して見えます。

 わたしには、二元行政の解消(=知事が、ONE大阪の唯一の指揮官となるには、大阪市のような巨大な自治体は邪魔。)には、大阪市を分割する必要があるが、そんな理由だけでは大阪市民に説明しにくいから、区長公選制(分割すれば当然そうなる。)を理由として取ってつけて、「大阪市分割は市民のためだ。」と言ってるようにしか、聞こえないのです。


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   大まかに大阪都構想のことを知りたい方は、まとめブログをご覧ください。
posted by 結 at 22:37| Comment(4) | 基礎自治体業務 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
今日の産経新聞の金曜討論で、大阪都構想について、上山信一氏と村上弘氏の意見が載っていました。
上山氏は、「否定的な意見を言う人は、区役所が遠くなるなど、目の前の行政サービスが変わるとか変わらないとかいう話ばかりをするが、レベルが違う。」と、さらに
「細かい施策や財政調整などは、革命政権ができた後に考えればいい話だ」と、つまり革命であり、革命市長が誕生するまで、何も説明する必要はないとの認識です。

村上氏は、「大阪都構想は、冷静に検討すれば深刻なマイナスが見えてくる。推進派は、危機感とスローガンで人々の感情に訴え、詳しい説明を避ける作戦を続けるだろう。」そして、反対派に対し、
「市政改革や大阪発展に必要な政策を府市共同でどう進めるか、対案を明確に示す必要がある。」と。

結さん、深刻なマイナスをわかりやすくまとめて下さい。同時に、できれば、このブログを見ている人達と対案作りを進めることはできませんか?
Posted by minato at 2010年11月12日 14:39
今日は、橋下デーです。
各紙、各社、いろんなニュースを報道しています。

一番のヒットは、片山総務大臣がクギを刺した発言。
大阪都構想「橋下さんよく勉強して」。

これで、橋下知事も構想の具体案の説明から逃げれなくなったのでは?知事、猛反発をするはずなので、メディアは、大チャンス。特にテレビが頑張って欲しい。

この発言で、橋下支持の方がマインドコントロールから、大量に解き放たれるはず。
地方自治の神様の発言だから。
Posted by 北本均 at 2010年11月12日 15:13
minatoさんへ

 村上弘氏が何を「深刻なマイナス」といっているのかは、分かりません。何を問題の重点として見るかは、ひとそれぞれだと思います。
 わたしの思うデメリットなどの整理は、各記事の下からリンクしている「まとめブログ」に挙げています。

 代案については、わたしは「身近な行政サービスを低下させたり、危うくさせたりするようなコストを支払って、どんな効果が出るとも分からない大阪都構想に賭けるのはイヤだ。」なので、大阪都構想にする位なら、現状で十分というスタンスです。ですから、大阪都構想にかえて、大阪の将来を見据えた代案なんてものを、考えるつもりはありません。
 この点について、minatoさんに思うところがあるのならば、minatoさん自身がそういった場を作られるのがいいと思いますよ。特定目的のブログや掲示板を作るだけなら、別に難しくもありませんから。

 わたしにとっては、大阪都構想って、究極単純にいってしまうと「府市の力を協調して運営すれば、今より良い行政ができる。」ということを大層な言い方をしているとしか思っていない(しかも、基礎自治体業務については、あんまり考えていないと思ってる。)ので、府市がうまく協調していく方法を模索していけばいいじゃないかといって考え方にしかなりません。

 府市協調方法の例を挙げると、府市の事業を整合させて計画するなら、事業毎に双方の経営計画を調整する経営委員会でも作ればいいじゃないか。
 でも、それだけだと、要求の押し付け合いみたいになって止まっちゃうから、相互理解を深めるために、人事交流を思い切ってやる。例えば、一気に事業毎に職員の1/3程度の人事交流を行い、その状態を継続していく。そうすると、府市の間を数年毎に職員が行き来することになるから、相手の考え方も分かり、気心もしれて、一職場みたいになれば、成功。
 それでも、大きな決定でぶつかると政治決断のようなものが必要で、今は、知事・市長の肩に全て掛かっちゃってるから、もう少しスムーズにするために、府市それぞれ部長級3名づつ程度を出して、府市戦略経営室みたいなのを作って、デッドロックに陥りそうな交渉の調整に入ったり、政治決断が必要になれば、知事・市長へ助言をするとかすれば、水道事業統合交渉みたいな経過は避けられるでしょう。

 こういう協調なら、対立もしなくていいし、移行期間、移行コストと多大に掛けなくていいしと思ってしまいます。(移行コストのわたしの感覚での見込み額は500億円〜2000億円の間くらいかなと思ってます。)

 ねっ、地味な話で対案とかにはならないでしょう。

北本均さんへ

 大阪都構想がいろいろなニュースで取り上げられ、少しずつでも、具体内容が示されていない問題が語られるようになったことは、嬉しいことだと思います。
 片山総務大臣のメッセージはとても重くて、大切なものだと思いますが、府民にはそこまで伝わるかなぁと思ってしまいます。
Posted by 結 at 2010年11月13日 00:39
minatoさんへ

村上弘氏の大阪都構想について分析した論文は、次のものです。
http://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/law/lex/10-3/murakami.pdf

面白かったですが、分かり易くまとめるのは、なかなか荷が重いです。
Posted by 結 at 2010年11月13日 03:43