2010年11月08日

できないのか、やらないのかは、伝わるのだと思う

 わたしはこのブログで、大阪都構想の具体像が知りたい、わたしたちにどのような影響があるのかを知りたい、と語ってきました。
 これについて橋下知事がメディアで語られているのは、「大阪維新の会は、知事や議員さんなど個人がやっているもので、既存政党のような政党交付金もない。制度設計を全部やるのは、無理。細かな制度設計を行うには、役所の力を使う必要がある。細かな制度設計は、統一地方選挙後に、役所の力を使って行う。」ということなのかなと、思います。

 この話、橋下知事が市井の一個人であったり、草の根の市民活動から出てきた話であれば、多少は頷けます。
 でも、橋下知事は、大阪府知事の立場にある人です。大阪都構想自体、太田前知事の時代に、大阪府の政策として、打ち出されたもののはずです。
 橋下知事には、大阪府の政策として大阪都構想を進める方法は、いくらでもあったはずなのです。そして、橋下与党の大阪維新の会が推進するので、全然、構わないはずです。
 それで、何か問題があるのでしょうか。府議会に責任を負わなければならない程度のことしか、わたしには思いつきません。

 大阪都構想を大阪府の政策として進めた方が、府民・市民にも、ずっと分かり易いです。
 大阪府の役所の力を使って、ずっと具体的な大阪都構想案だって、十分に作れるでしょう。(役所の力を使うといっても、5〜20人程度のチームを作って、必要資料があれば、各部署へ請求する程度のことかと思います。)
 少なくとも、大阪都構想と無関係としながら、大阪府自治制度研究会を作り、事務局という名前で、府の職員を使って「大阪にふさわしい新たな大都市制度を目指して」の「中間とりまとめ」を作らせ、たまたま方針が合致するからと、大阪維新の会の政治方針として使用するといったような、あからさまなことは、しないで済みます。

 橋下知事は、大阪都構想の具体化に役所の力を使えないのではなく、使わない方法を選んだだけのことです。

 しかも、「役所の力が使えないから、詳細な設計ができない。」ということを奇貨として、メディアなどで、大阪都構想についての制度説明を減らしているようにも、感じます。
 このブログでよく、7月末に橋下知事が毎日放送「ちちんぷいぷい」に出演された時の発言を引用しています。これは、このブログに全文記事を載せていて利用し易いこともありますが、8月末に橋下知事が出演された2番組では、出演時間はそれ程変わらないのに、制度説明がずっと浅くなっているためです。10月に参加した城東区のタウンミーティングでも、この傾向は変わりません。

 前回記事のコメントで頂いたところによると、大阪市議会で共産党の市議さんが、大阪都構想の概要設計の想定と、各都区へ与える財務上の影響についての試算を発表されたのだそうです。
 共産党はずっと野党ですから、市役所の積極的な協力があったとは思えません。公表情報や普通に請求して入手できる程度の情報だけで試算したのだと思います。
 議員さんの力だけでも、この程度のことは、十分にできるのです。

 多分こういうと、橋下知事は、既存政党は政党交付金をいっぱい貰ってるからできるのだというのでしょう。
 でも、大阪都構想を看板にしたシングルイシューの政党が、その政策で他党に遅れを取るようでは、どうしようもないでしょう。

 橋下知事は、「大阪維新の会は、個人がやっているもので、制度設計を全部やるのは、無理だ。」と語ります。
 でも、できない中でも、精一杯の制度設計を行い、できる限りの説明をしようとしているのか、役所が関われないということを言い訳に、選挙前に具体的な制度設計を提示して議論することを回避しようとしているのかは、何となく伝わってくるものです。

 大阪都構想の具体像を示さずに統一地方選挙に臨むことは、橋下知事や大阪維新の会にとって利益になるのかもしれません。けれども、それは、府民・市民にとっての利益を考えての対応だとは思えません。


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   大まかに大阪都構想のことを知りたい方は、まとめブログをご覧ください。
posted by 結 at 22:18| Comment(6) | 背景 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
>でも、できない中でも、精一杯の制度設計を行い、できる限りの説明をしようとしているのか

それをやって大失敗したのが今の民主党政権ですよ。
普天間の国外移転断念、埋蔵金も出てこない、高速無料化や子ども手当の財源も無い、八ッ場ダムも中止すると言っていましたがこのままいけば撤回することになるでしょう。
民主党には元官僚の議員もたくさんいたのに、このザマです。
共産党市議のように適当に試算したら、埋蔵金20兆円なんて数字が出てきたんでしょう。

そんないい加減な制度設計なら、民主党でも共産党でも出来るでしょうね。

でも府民や市民にそんな無責任な案は出したくないというのが橋下知事や維新の会の考えなのだと思いますよ。
民主党のデタラメぶりを見せ付けられた後だけに、よーく理解できますね。
府職員だけで制度設計をするのでもなく、選挙で勝利した暁には市職員も一緒になって素晴らしい大阪都にしていただきたいものです。
Posted by 鈴 at 2010年11月09日 01:13
 結さん、いつもお疲れ様です。当ブログでの大阪都構想に対する、というか大阪で暮らす市民にとっての将来に対する心配や不安を、少しでも取り除いていきたいというとてもひたむきで真摯な姿勢とその情熱には、いつも敬服しています。私も、自分なりの意見や情報をついつい書き込みたくなる衝動にいつも動かされています。

 さて、ここにきて、いよいよ化けの皮が剥がれ始めてきたのでは、という印象です。というより、結さんが早くから指摘していたことですが、7月の橋下さんの「ぷいぷい」出演時の発言ですでに「細かなことは選挙の後で考える」と言ってたことが、やっと現実味を帯びて多くの方(少なくともこのブログを読まれている方たち)に理解されてきたのではないかと思っています。私自身、「ぷいぷい」は観ていなかったのですが、結さんの詳細なレポートを読ませてもらって、橋下さんの選挙戦略(政策ではなく)はまたしてもこれなんだと大変がっかりしていました。

 そもそも橋下さんが知事選挙に出たときから、選挙では有権者に細かな説明をしても伝わらない、いかに単純な価値判断で理解を得ていくかが大事だ、みたいなことを発言していたのをどこかの新聞記事で読んだ記憶があり、これは橋下さんなりの、タレント時代に培った肌身の感覚なんだろうなと思っていました。つい最近の発言でも、有権者が判断するのに必要な説明は十分している。有権者のレベルの説明は足りている。と言っており、ある意味非常に首尾一貫しているところではあります。

 タレント知事である、そんな橋下さんの政治姿勢は置いておいたとして、それに迎合している多くの現職の市会・府会議員の皆さんの政治態度がどうしても理解できないのです。特に基礎自治体、直接行政を担っている市会議員さんは、本当に市民の暮らしをどうしたいのかということの議論を避けて、それで選挙を戦って、橋下人気で当選したとして、ほんとにそれでいいの?と思ってしまいます。すっかり思考停止状態になっていて、合計8時間にもわたる財政総務委員会での質疑で、なにひとつ建設的な議論もせず、ただただすれ違いの答弁に徹していたことの虚しさというか、空虚感は聴いていて悲しくなるばかりでした。

 いずれにせよ、この段階で、大阪都構想については選挙前には何ひとつ具体的な内容は示さないということがほぼ明らかとなってきました。下田議員からの財政調整制度の試算の投げかけにも柳に風といった風情でしたし、理論武装もすることなく、ほぼ丸腰の状態で橋下丸の護送船団方式選挙に突入しようといているようです。

 福島と生野の補欠選挙の結果を民意だと吹聴していますが、補欠選挙という特殊な状況下――橋下さんが知事の公務をキャンセルしまくってほぼ連日選挙区入りしていた状況、しかも1人だけを選ぶ小選挙区状態――での勝利であり、統一地方選挙では同時に何十もの選挙区で選挙戦が繰り広げられるのであって、橋下さんの身体はひとつですから、補欠選挙の時と同じにはならないと思います。しかも1区あたり2〜6人を選ぶ中選挙区ですから、複数候補を立てたところでそのすべてが当選するかどうかも難しいと思います。市会議員の本旨に立ち返って地道に政策を訴えるほうがよっぽど市民のための政治家として正しい姿のように思うのですが。

 かなり先の話までしてしまいました。ちょっと気が早かったかもです。
Posted by bafuken at 2010年11月09日 01:43
>でも、できない中でも、精一杯の制度設計を行い、できる限りの説明をしようとしているのか
私は、結さんのおっしゃるとおりだと思います。
鈴さんのおっしゃるとおり民主党の残念な結果もありますが、それでもなお、説明責任を果たさなければならないと思うのです。
「ぶっ壊してから考える」では、今の民主党の政治より怖いですよ。
地方自治という身近な生活のしくみを壊されてから、「やっぱりできませんでした」はほんとに無責任なことだと思います。
選挙で決めればいいと橋下さんは言われますが、民意がいつの時代も正しいとは限りません。マスコミの報道の仕方で変わってしまいますよね。そういう上で成り立つ多数決なやり方に最近、怖さを感じます。

Posted by 北区民 at 2010年11月09日 11:09
結さんのおっしゃるように、知事が大阪府の政策として大阪都構想を推し進めるというのは有りだと思います。
維新の会はすでに府議会では第一党だそうですから、構想の具体化を考えた場合、そっちのほうがやりやすいでしょう。
あえてそうしない理由は何なんでしょうね。
もっとも、政策としてしまうと自らが継続してこれを進める責務を負ってしまうので、次期知事選には出馬必須となるでしょうけど。。。

もしかしたら、橋下氏は次回の知事選に出馬する意思がないのかもしれません。
一部で噂されているように、知事には維新の会推薦で別の候補者を立て、自らは大阪市長選に立候補するような気がしないでもないですね。
統一地方選の大阪市議会選で維新の会が勝てば大手を振って乗り込めるし、負けたなら市長となってからまた他党から維新へ引き抜き工作をする、という予定で。
この場合、大阪都構想の制度設計は市職員に任せることになるでしょう。
もっとも、当選するかどうかはわかりませんが。

議論からそれて変なことを書いてしまいましたが、絶えず大阪市政に口出ししている橋下氏を見ていると、府知事というポジションそのものに不満を持っているように私には思えるのです。
やはりまんじゅうの皮相手じゃ嫌なのか、と。
恐ろしい話ではありますが、橋下氏は、権限をよく理解せずに府知事の椅子に座ってしまったのかな、とも思ったりもします。
Posted by どんごろす at 2010年11月10日 01:55
鈴さんへ

 コメントありがとうございます。
 意見は、お互いで異なるところかと思います。
 わたしには、ONE大阪や二重行政の解消といったワンフレーズポリティカルで世論の支持を集め、具体的な制度設計を統一地方選挙後のこととする今の大阪維新の会の姿は、政権交代を錦の御旗とし、マニフェスト実行の財源や安保・外交など基本政策に対する問題指摘を、ひたすら政権獲得後に先送りした、総選挙前の民主党の姿に、とても似ているようにみえます。
 自分の見たいと思うものを見ているだけなのかもしれませんね、わたしは。
 でも、わたしの知りたいことって、わたしの身の回りの行政サービスが下がっちゃうようなことはないよねという、ささやかな希望だけなのです。
 こういう見方もあるのだと勉強になりました。ありがとうございました。

bafukenさんへ

 気が早いというか、その辺りはもう読んでおかないといけないと思います。統一地方選の告示がマスコミを通じた議論のリミットになりますから、そろそろ迫ってきてるかなという思いを持っています。

 統一地方選挙が難しいのは、間違いないですが、流行のようなものが動く時って、かなり極端な動きをするような印象を持っています。「郵政民営化だ」「政権交代だ。」となったら、無批判で大多数がそちらへ動いていってしまうような。一理はあっても、そこまで無批判で受け入れられるようなものではないのに、疑問を呈することすら「反対勢力・守旧派だ。」とレッテル貼りをしてしまうような動きが。
 風がどのように吹くかの予想なんてできないですから、一番希望しない想定を常に念頭にしなくちゃいけないのかなと思っています。

 市議さん、市議候補さんで分からないと思うのは、都制移行後にどこへ行こうとされているかなんです。本当は、基礎自治体の責任を預かる立場として、区長や区議会を目指すような姿勢を望むのですが、あまりそのような声は聞きません。知らないだけなのかもしれませんが。

北区民さんへ

 「何も考えず、ただ大きな変革を感じて、大阪市を解体することを決めましょう。」行政を預かる方の言葉とは思えませんね。
 しかも、橋下知事って以前からの言動から想像すると、選挙の結果は選挙民が負うべきと言っておられたように思うのです。
 だから、このまま選挙で大阪都構想が選択され、市民に「こんなはずじゃなかった。」と怨嗟の声が満ちることになったとしても、すべて選択した選挙民の責任のはず。

 ただ、何が正しいかなんて誰も決められない訳で、民主主義の日本では、選挙で決まった結果は、一応「正しい」ことになります。
 だから、選挙のときに、何を望み、何を失うことを選ぶのか、それを考えられるだけの情報は、持っていたいと思います。
Posted by 結 at 2010年11月10日 02:25
どんごろすさんへ

 なぜ、橋下知事が、大阪府の政策として、まっとうに大阪都構想を提案されないのかは、よくは分かりません。
 思いつくことでは、知事は調整や協議をしていたら埒があかない的なことをおっしゃっていたので、すべて自由に決めれる状況になってから、好きに都制度を決めたいと言ってるのかなと思っています。「これは府民の意思だ。」として。
 もうひとつは、自分から提案すると色々叩かれますよね。だから、対案があれば議論すると発言されてたようです。相手の案は叩きたいけど、自分の案は出さない。それが、議論を進めるには有利だと考えているのかもしれません。
 府民・市民が正しく選択をするために、きちんと提案をしていこうとする方法とは思えませんが。

 橋下知事は独裁をしたいという言われ方をする時がありますが、あまりそのようには思いません。橋下知事は、自分があるべきと思う「知事の椅子」と作ろうとしているだけのように思います。
 たまたまその手段の一部として、大阪市の分割を迫っているだけなのだと思います。
 牛を8つに裂いても、それぞれからちゃんと元気に乳を搾れるように、大阪市を8つに裂いても、今まで通りに自治体行政が続けられると信じて。
Posted by 結 at 2010年11月10日 02:57