2010年10月26日

公選区長は競争して、今より良い行政サービスを提供するか

 前々回に宿題にしておいた、大阪維新の会HPの「大阪都構想について」で、区長公選制で区長が他の区と競って良い行政を取り入れるという話は、本当かな?というのを、少し整理してみます。

 大阪維新の会HPの「大阪都構想について」では、この点は次のように述べられています。(少し長いですが、引用します。)
 「区長公選制になれば、公選区長は他の区と競争します。役人区長では、年功序列の市役所人事の一環に乗せられ、しかも大阪市役所の市政運営の歯車となりますから、必然横並びとなってしまいます。公選区長は、有権者から票を得なければならないので、他の区で良い行政サービスが実施されれば、当然自分の区でも実施する方向に向かいます。これは公選市長を擁する市町村の動きを見れば明らかです。」ということです。

 現在の区長は、職務で行政サービスの提供をするだけなので他の区と横並びになってしまう。公選区長は、有権者から票を得るため、他の区で良い行政サービスをしていれば、取り入れようとするとしている訳です。

 では、なぜ公選区長は、他の区と競って、良い行政サービスをしようとするということになるのでしょうか。他の区に負けると、何かまずいことがあるのでしょうか。
 学者さんなんかが地域間競争の理由に挙げるのは、「足による投票」です。つまり、近くの地域に行政の内容などで負けていると、住民が引っ越していってしまうという理屈です。理論では言えなくもないのでしょうけど、引越しなんて手間の掛かること、そうそうできることじゃないことを考えると、公選区長が他の区と競い合う理由とは思いません。
 他に、他の区に負けて公選区長が何か困るのかというと、あまり直接的な理由は思いつきません。

 わたしが、この理屈の中で、公選区長が他の区の良い行政サービスを努力して取り入れようとする理由は、次のようなものであると考えます。
 公選区長が、他の区で良い行政サービスをしていて、自分の区でも導入できるのに、努力せずに放置していたとしましょう。
 それが良い行政サービスであれば、次の選挙の時、他の候補者は、その良い行政サービスを導入することを掲げます。今の公選区長が、そのまま、取り入れようとしないなら、選挙で負けてしまいます。
 公選区長は、そのようなことにならないように、他の区に良い行政サービスがあるなら、積極的に取り入れて自分の成果にするなり、選挙時の公約に掲げようとするだろうと考えられます。
 つまり、競争をするのは、他の区の区長に勝とうとするのではなく、次の選挙で他の候補者に打ち勝つためと考えます。

 でもこれは、各候補者が横一線に並んでいるような理論の中では成立しますが、現実には与党相乗りに有力な対立候補がいなかったりすると、なかなかうまく機能しない場合もありそうです。「これは公選市長を擁する市町村の動きを見れば明らか」というほどに機能しているかは、少し疑問です。
 でも、制度として、基本的にそのような行政サービスを促がすということは、十分にいえると思います。

 では、区長公選制を取り入れることで、今までの大阪市の行政サービスが現在より、よくなると言えるかというと、その点については疑問です。
 なぜかというと、この理屈でいえば、大阪市も「公選市長を擁する市」です。大阪市長も、次の選挙で他の候補者に打ち勝つためには、他の市町村で良い行政サービスを行っていて、それが導入可能であれば、積極的に取り入れようとするからです。
 次の選挙に打ち勝つために、大阪市長が取り入れようとする他の市町村の良い行政サービスよりも、区長公選制になって、公選区長が取り入れようとする他の市や区の良い行政サービスが勝っているといえる理由は、見つかりません。

 更にいえば、区長に他の区と競争して良い行政をさせようとするなら、政令指定都市の今の大阪市の方がやり易いです。
 先に述べた通り、公選区長は、他の区の区長と競う訳ではありません。次の選挙をにらんで、良い行政に努力するだけです。
 今の大阪市であれば、直接、区長を他の区の区長と競わせることができます。良い行政ができたかによって、職員の評価や処遇、区の望む事業の実現などで差を付けることができるからです。役人の区長にとって、自分の給与が少し上がることが、それほど、インセンティブになるとは思いませんが、区役所の職員全体の給与が上がったり、評価が上がったり、区民に望まれる事業に繋がるとなれば、十分にインセンティブになると思います。
 また、この方法なら、単に選挙で選ばれる区長だけでなく、個々の職員に対しても、他の区より良い行政サービスを提供するインセンティブになります。

 今の大阪市の中で、積極的に区役所同士競ってもらう方法の一例を、以前の記事「区役所への分権をどう考える?」で書いていますので、よろしければ、どうぞ。


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posted by 結 at 03:02| Comment(4) | 概要 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
bafkenさんと同じ思いです。
昨日の府議会で、橋下知事が「テレビ出演についても知事の肩書で出演しているのに、ひとつの政党の政策ばかりを主張するのはおかしいとの声があがったが、知事は政党代表でもある首相がその政党の政策を主張しているように、地域政党も国政政党と同様に考えてほしいと反論した。」と新聞報道があった。
全く、知事も分かっていないのかなあ?
国政は議員内閣制、さらに党の公約を掲げて勝利した政党が政権を担ってます。知事は、自民・公明の推薦で当選したので、この両党の政策を主張するなら分かるのですが、維新の政策を主張するのは、おかしいでしょう。
また、名古屋の市長の主張も同様で、選挙で約束した減税が議会が違う判断をしたから、行動を起こしているのであって、都の点と比べても、橋下知事のやってることはおかしい。
これに気付かないのは、「あほ府民」だからと言われるのは、つらいですね。
知事のグループが「あほ府民」扱いしているだけなのだから、メディアはしっかり、批判すべきだと思います。
Posted by minato at 2010年10月26日 10:23
「知事は政党代表でもある首相がその政党の政策を主張しているように、地域政党も国政政党と同様に考えてほしい」なら良いと思いますよ。
首相が党方針に沿って政策の主張をするならば、当然、その主張したことについては、首相としての責任を持ち、議会で質問をされれば答弁・説明をしなければなりません。

橋下知事の問題は、党代表としての発言について、知事として責任を持たないとしていることなので、「知事は政党代表でもある首相がその政党の政策を主張しているように、地域政党も国政政党と同様に考えてほしい」ならいいのです。
議会も、新聞も、それなら、ちゃんと首相と同じように責任を持って、答弁・説明をしろと何故言わないかなぁ。
Posted by 結 at 2010年10月27日 04:00
「他の区で評判が良くてもウチでは必要ないから、右へならえではなく自分たちに本当に必要なことをやろう」
ということができるのも、区長公選制のメリットでもあります。
このことを橋下氏はどこかで主張してなかったでしたっけ?
限られた予算を、横並びではなく自分たちの意思で使い途を決められますよ、ということで。
維新の会の主張とは一致していませんね。
それとも、
「他区との競合の道を歩むか、棲み分けの道を歩むかの二者択一が可能であるのが区長公選制の良さだ」
とでもいうつもりなのでしょうか。
彼らの主張はどうも一貫性に乏しく、信用できませんね。
なんだか挙げ足とりのようになってしまいますけど。
Posted by どんごろす at 2010年10月30日 02:04
「他の区で評判が良くてもウチでは必要ないから、右へならえではなく自分たちに本当に必要なことをやろう」と、「他区の評判の良い行政サービスを、ウチでもやろう。」は、別に矛盾しません。
 どちらの政策についても、「他区で評判が良いから自区でする」のではなく、「他区で評判が良い行政サービス」が自分の区で必要か否かの選別をするとしているだけですから。

 ただ、この考え方にはいくつか疑問もあります。ひとつは、記事の本文で述べている通り、大阪市も、「公選市長を擁する市」として、市民に支持される行政サービスの提供に努めていること。
 二つ目に、大阪市内で、行政需要に、それほど地域差があるのかなぁと思ってしまうこと。
 三つ目に、行政需要に地域差があるとして、例えば、この区は子育て世代が多いから、子育て世代への行政サービスを手厚くしようと打ち出したとします。でも、多い対象者へ手厚いサービスをしようとすると予算額は膨らみます。それを他の施策、例えば老人向け行政サービスを削って賄うとすると、少ない対象者のサービスを削って多額の予算を生み出すことが求められるので、削られる対象は、見るも無残な結果にはるはずです。本当に、そんな対応が受け入れられるのかなぁと思ってしまいます。
Posted by 結 at 2010年10月31日 05:05